マジシャンから翻訳家へ。フリーランスは自分らしい人生をデザインする方法の一つ。

マジシャンから翻訳家へ。フリーランスは自分らしい人生をデザインする方法の一つ。
ランサーズに登録して、自分らしい働き方を体現している人たち=「ランサー」。たくさんのランサーの中から、活躍目覚ましいランサーを表彰するのが『Lancers of the Year』です。6回目を数える2020年の『Lancers of the Year2020』は、新型コロナウイルス対策のために初のオンライン開催となりました。盛況のうちに幕を閉じたオンライン開催を記念し、受賞ノミネートをされた中からオンラインやメールで取材協力をいただいたランサーの皆さんの軌跡を紹介します。第7弾は翻訳家としてご活躍の堂本秋次さんです。
LANCER SCORE
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Lancersに出会って――札幌から翻訳家として活躍。堂本さんの自分らしい生き方

プロのマジシャンとして活動されたのち、翻訳家への転向を果たした堂本秋次さん。

翻訳の同業者からも高い評価を得る堂本さんは、ランサーズの新しい働き方LAB・札幌コミュニティマネージャーとしても活躍されています。

「自分だからできる仕事」を大切にして、自分の生き方をデザインする――。翻訳家としてだけでなく、2020年以降はさらなる飛躍を遂げようとする堂本さんに話を伺いました。

プロのマジシャンから翻訳家へ

マジシャンの腕を奮う堂本さん


――ほかの翻訳者・執筆者の翻訳物や記事に対しても、日本語・英語のプルーフリーディング(※)を行うなど、翻訳家として大変なご活躍をされている堂本さんですが、もともとはプロのマジシャンとして活動をされていたとか。なぜマジシャンから翻訳家へとキャリアチェンジされたのでしょうか。

※注)原文と翻訳文を照合して誤りがないかどうかなどチェックすること

堂本:プロのマジシャンとして活動するうちに、商業として観客に受けるマジックと自分が極めたいマジックの方向性が違うと感じるようになって、プロではなくアマチュアに戻ることを選びました。その方が、自分の趣味嗜好に合ったものを研究し続けられると考えたからです。ただ、そうなると別の稼ぎ方が必要になります。自分に何ができるだろうか、と考えたとき、翻訳はどうだろうかと思ったのです。

プロマジシャンとして活動していた頃から、海外のマジシャンの著作を自分で輸入して翻訳し、研究資料としていました。特に身の回りの多くのマジシャンは、海外で発表されたものが翻訳されるのを待ってから取り入れようとしていましたので、発表直後の作品をいち早く研究できることがアドバンテージになると考えていたからです。学生の頃から英語・日本語を含む言語全般が好きで、大学でも言語学をメインに勉強していたこともあり、その経験から一連の流れが翻訳家に転向する土台になると思いました。

――どうやって翻訳家としてのスキルを身に着けたのでしょうか。

堂本:英語そのものについては、大学の頃からネイティブの教授のもとで言語学を学び、また自分自身で文法書を紐解いて英文法や語法に関する研究を進めていたということ、留学生に日本語を教えるアルバイトをしていたことなどが、自分の英語に関する知識や自信のベースになっていると感じています。今でも文法の研究や語法の分析などはライフワークとして行っていますが、毎回新たな発見があって楽しいですね。

翻訳の技術についても独学ですが、独学故に知識が固まってしまうといけないので、色々な本を読みました。先人の翻訳家がどういった哲学を持って仕事に臨んでいるのかといったことも学びましたし、海外の本の原文と翻訳された文を比較してどういった技術が用いられているかを学んだりもしました。事実、色々な本を読んだことで、様々な翻訳のスタイルやテクニック、考え方があることを知り、幅広い文体を習得することにも繋がったように思います。

また、翻訳に関連して、初期の頃に『翻訳にはリライトの要素が含まれる』ことに気付きました。英語を日本語にする場合も、日本語を英語にする場合も、いわば『原文の書き直し』の要素が必ず入ってくるということです。そこで、日本語の作文技術ですとか、英語のライティング技術についても学びました。もともと日本語で、あるいは英語で、綺麗な文章を書けないのでは、綺麗な翻訳をすることはできませんから。

そうした『分析的』な視点は、大学で言語学を学んでいるときに根付いたものであるように感じています。私自身の主観による感覚的、直感的な翻訳ではなく、言語的に分析して正しく意味を再構成し、それがクライアントの翻訳物の使用意図に最適になるようにテイラーメイドするといったことを今も心がけています。

翻訳家としてランサーズを利用する理由

――翻訳家として活躍するに十分な素地をお持ちだったんですね。翻訳家として活動するにあたって、ランサーズを利用するようになったのはなぜでしょうか。

堂本: 翻訳家として活動するにあたって、受注経路をひとつでも増やしたいと考えたからです。目の前に既に仕事があって、クライアントとのマッチングさえできれば得られるというのが、右も左も分からない状態で闇雲に営業をするより、精神面でも楽でした。そうしてクライアントの立場に立った提案書を書く経験は、異業種交流会などでの営業でも役立っていると感じています。今では海外に拠点を置く複数の翻訳会社様からご依頼を頂いておりますが、ランサーズは初期の頃の一番の受注経路で、「これはやれる」と感じたことをはっきり覚えています。もちろん、今でも収入の大きな割合を占めています。

――ランサーズが収入の柱になったんですね。ランサーズでは、具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか。

堂本: 英日翻訳、日英翻訳、またその校正や推敲を行っています。また、英語のキャッチコピーのレビューとして、「こういう言い方をしても海外の人に通じるだろうか」といったご相談を受けることもございます。その他、英語の資料を読んで要約したり記事にまとめたりするライティングに近いお仕事や、ゼロベースで英語のキャッチコピーを考えるといったコピーライターに近いお仕事をさせて頂くこともあります。

ランサーズ以外では、特許翻訳を得た学習ソフトの監修のほか、英語学習に関する記事のライティングを継続的にお手伝いさせて頂いております。また、英語学習のノウハウや学習サポートのコーチングを行うこともあり、2020年はそうした分野でのお仕事でお手伝いさせて頂く機会を作っていきたいと思っています。

また、Lancer of the year 2016を受賞させて頂いたこともあって、『働き方』そのものに関する登壇をご依頼頂くこともあります。そうした講演の中で特に多かった質問などをまとめて、『失敗しないフリーランスの働き方』という本を書いたりもしました。

フリーランスとなって変わったのは時間への意識

――翻訳にとどまらない幅広いご活躍をされているのですね。ランサーズで仕事をするようになって何かご自身に変化はありましたか。

堂本:実際に翻訳の仕事を受けるようになって、翻訳の仕事にもさまざまな種類があること、必要とされている文脈が仕事によって違うことを肌で感じました。そうした多様な翻訳の仕事に、求められる以上の水準で応えるためには、英語の能力だけでなく幅広いジャンルの横断的な知識を身に着けることが欠かせません。そのため、翻訳に限らず、第一線の専門家が書いた専門書などを読むことも増えました。

そうした学びを通じて好奇心の対象も広がりましたし、また同時にフリーランスとして自由に時間を使えるようになったので、勉強や息抜きの質が上がりました。それがまたフリーランスとしてのスキルに生きてくるので、好循環であることを感じています。

――時間の使い方が変わったんですね。

堂本:そうですね。言ってしまえば、働きたいだけ働き、その分だけ稼げるという状態ですから、時間に対する価値観や意識が大きく変わったのは間違いありません。時間を無駄にしたくないと思うようになりました。時間って、取っておけるものではありませんからね。

一方でたくさんの人に出会い、人から学びを得ることも多く、友人が増えて付き合い方も充実しています。収入も右肩上がりに増えていく中で、一日の24時間をどう上手く使うかを考えるようになりましたね。

仕事をする上で大切にしていること

札幌を拠点に躍進を続ける堂本さん


――フリーランスの翻訳家として活躍されている堂本さんが、仕事する上で大切にしていることは何でしょうか。

堂本:仕事をお引き受けするにあたって大切にしているのは「自分だからできる仕事」です。

翻訳に限らないことですが、フリーランスにわざわざご依頼頂くということは、何か理由があるはずですよね。その仕事は、企業やもっと大手のサービスに依頼しても良かったかもしれない。知り合いに頼んでも良かったかもしれない。それを、敢えて個人の事業者に依頼するということは、何か期待されていることがあるに違いないと思います。その上、他のフリーランスではなく自分を選んでくれたことには、もっと大きくて深い理由があるはずです。だからこそ、「自分だからこそできる仕事」は大切にしたいと考えています。

例えば、翻訳業界では近年、AIの台頭が大きな注目を浴びています。単なる英訳や日本語訳ならば、AIの機械翻訳でまかなえる部分が増えてきました。しかしそれは、英訳や日本語訳であって、翻訳ではないと思っています。

前述したように、翻訳とは意味の再構築です。『鋼の錬金術師』という漫画があるのですが、その中で『錬金術』というものを、『理解』『分解』『再構築』の3つの段階に分けて説明しているんですね。実はこれ、翻訳が全く同じ段階を辿っているんです。

機械翻訳は、ある程度文脈をパターン化して、その文脈で出てくる単語の意味に最も近いものを類推し、それを転換先の言語の語彙から見つけてきて出力しています。したがって、原文の『意味』を理解して再構築しているわけではありません。

もちろん、それでも目的にとっては充分ということも多いかと思います。その『言語変換』の精度は、かなり高くなってきていますしね。しかし、それでも人間だからできる”翻訳”はあり、それは求められていくだろうと私は信じています。そういった、自分だからこそできる翻訳を、私を選んでくださったクライアントの方にお届けしたいと思っています。

フリーランスとは人生をデザインする生き方の一つ

――選ばれるからには、他にはない自分の特性がクライアントの役に立っているのだろう。その特性を自覚し積極的に役立てていこう、ということを大事にしてこられたのですね。

堂本:その通りです。そうして自分らしさを追求することでクライアントの役に立つことができるというのは、フリーランス冥利に尽きることだと思います。

自由に働く人というイメージがあるフリーランスですが、この場合の『自由に』というのは『自分が好きなように』ということで、それは自分らしさの追求なのではないか、と思うのです。LOY2018のパネルディスカッションでもお話して、有難いことにその後何度か引用して頂いているのですが、私にとって『フリーランスとは、働き方ではなくて生き方』なのです。

でももちろん、独りよがりになってもいけない。クライアントにとって何が最善であるかを理解しながら、自分らしさを忘れないようにしつつ、クライアントにとって最善の提案と成果をお届けできるよう、柔軟かつオープンに考えられるようにしておくことも、同じように必要だと思います。

――堂本さんは、ランサーズの新しい働き方LAB・札幌コミュニティマネージャーとしても活躍されています。これからはどんなチャレンジをしていきたいと考えていますか。

自分の能力で他に何ができるのか、どこまでできるだろうかということをもっと掘り下げていきたいと考えています。『新しい働き方LAB』という、フリーランスとして目標や野心のある人々が集まっている集団に属したことで、私自身のモチベーションもかなり高まっているように感じています。

そうした意欲を燃料にして、2020年は今までとは違った新しい仕事や事業に挑戦していきたいと考えています。挑戦の中から新たな成功事例を生み出していきたいですね。

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