マジシャン兼翻訳家。異色のパラレルワーク両立の秘訣とは

マジシャン兼翻訳家。異色のパラレルワーク両立の秘訣とは
北海道札幌市に住む、堂本秋次さん。英検1級や国連英検A級など英語の高いスキルを持ち、Lancer of the year2016の受賞を始めとして、翻訳家として高い評価を得ています。しかし、実は彼にはもう一つ、マジシャンとしての顔もあります。異色のパラレルワークを行う堂本さんに取材しました。
LANCER SCORE
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相手の心理を読み解く。マジックと翻訳の面白さ

訪れたのは、札幌大通り公園から少し歩いたところにある、お洒落なシェアオフィス&コワーキングスペースの「SALOON」。

「今日はよろしくお願いします」

と、爽やかに挨拶していただいたのは本日インタビューする、堂本秋次さん。現在翻訳家として活躍され、2016年にはLancer of the yearを受賞されています。マジシャンとしては主に札幌で、翻訳家としてはランサーズのサイトで全国から多くの依頼を受ける堂本さんは、一体どのような人物なのでしょうか。

きっかけは「趣味」。やがてプロの世界へと…

ーーどういった経緯で今のキャリアを形成されたのでしょうか?

最初は中学2年生の頃、趣味としてマジックを始めたことからです。僕は割と飽きっぽいところがあるんですが、マジックだけは高校・大学とずっと続けていました。大学の卒業が見えてきたころに、「仕事」として最初に思いついたのがマジックでした。大学生の後半では、プロとしての意識を持つために、学生という身分を隠してマジシャンとして活動していました。「学生マジシャン」という肩書だと、学生じゃなくなってからのブランクができてしまいますので。

僕にとってマジックは、「お客様の喜ぶマジックをする」というよりも、どちらかというと「自分がやりたいマジックをやる」という自己表現の延長という面がありました。その点ではあまりプロらしくないマジシャンだったかもしれません。マジシャンとしての活動を重ねるうちに、自分が今後どう活動していきたいのか、ということについて、考える機会がありました。その時に僕は、やっぱり自分自身が楽しいと思えるマジックをやりたい、と思ったんです。じゃあ何を仕事とすれば良いか、と考えたわけです。

ーーそこで「翻訳」をやってみよう、と思われたんですか?

はい。マジックの他に何が自分にできるか、と考えたら、翻訳だな、と。

他のマジシャンと差別化をするために、海外のマジックに関する文献を自分で翻訳して勉強していたんです。実は、日本よりもアメリカなど海外のマジックのほうが技術的に進んでいるんです。そんな中、日本のマジシャンが海外のマジックの勉強をしようと思うと、その翻訳に時間がかかることが多いんです。

マジックと翻訳を両立できるマジシャンは、中々いなかったんです。海外からマジックの文献などを直接仕入れて自分が最初に翻訳に着手し、技術を自分のものにできたら、相当な武器になると考えました。実際、業界でもかなり先端の技術を身につけることができました。

自分がマジックの技術を発表する際にも、英語ができるととても便利なんです。実は僕もレクチャーノート(マジシャンが自分の考えたマジックを解説・考察する、作品集のようなもの)を5冊ほど書いたのですが、うち2冊は英語で書きました。

やがて本格的に翻訳家としてのデビューを決意

ーー英語ができると、マジックの世界ではかなり役立つんですね。いつ頃から本格的に英語の勉強を始めたんですか?

実は英語って最初はあまり得意ではなかったんです。中学2年生くらいまでは、be動詞の意味とかよくわかってませんでした(笑)。

中学3年くらいから流石にまずいと思って、中学英語をやり直して。そもそも自分のやりたいこと(マジック)をやるためにも、それ以外の稼ぎが必要だな、じゃあ英語だな、と。マジシャンとしての勉強に使うため、という目的もありましたが、英語を勉強するうちに、大学で英語を専門に研究をするくらいには、マジックと同じくらい英語が好きになっていました。ですので、マジシャンからさらに翻訳家も、というキャリア選択は、僕にとって全く苦ではありませんでした。

ーーTOEICで非常に高いスコアをお持ちとか(Listening:495/495 Reading:470/495)

翻訳家になるためには、自分の得意分野だけでなく、いろいろな文体に触れる必要があるんです。そのために色々な分野の本を読みなおしたり、リスニングを改めて鍛えなおしたりなど、趣味趣向でなく、自分の能力でへこんでいる部分を意図的に底上げを図りました。TOEICや英検の受験もその一環でした。

僕の中で翻訳家といえば「言語の専門家」というイメージなんですよね。大学卒業時点で英検準1級は持っていましたが、「さすが翻訳家ですね!」と皆が見てもそう思う、というだけのスキル・ステータスがほしいと思って、英検1級を取得しました。もちろん全ての翻訳家に必ず必要な資格、というわけではないのですが、僕自身がなんか嫌だなあと。今後の目標として、TOEICの満点を目指しています。

ランサーズでの仕事がスタート

ーー翻訳の仕事はいつ頃からですか?

おおよそ6、7年前からになります。当時22か23くらいでしょうか。実は当時、どうやって翻訳の仕事を受注したら良いのかわからなかったんです。まずネットで「翻訳」というのを調べてみて。その時にたまたまランサーズさんを見つけて興味を惹かれました。翻訳会社に登録して、というのも考えたのですが、実績がないと厳しいかと思って。だったらフリーで仕事を受注できれば良いなと思って、ランサーズさんに登録しました。

ーーLOY2016を受賞してから何か変化はありましたか?

仕事の面でいえば、恐らくクライアントさんの側で、僕の評価は良くなったと思います。オブザイヤーって言っているんだから凄いだろう、と(笑)。僕自身、翻訳家としてのキャリアを説明する際にも、「ランサーズさんで働いていて、2016年にはこういった賞もいただいているんですよ」と説明できるので、ハクがつきますしね(笑)。

内面的な部分でいえば、僕自身がロールモデルになったというプレッシャーはありました。受賞したからには、より高い品質が求められるので、今後もより一層責任感を持って仕事にあたりたいです。

ーー翻訳家になろうと決めた時は、どういう心境でしたか?

翻訳家になる、と決めた時は、どうやって働いたら良いのかわからなかったので、色々と情報収集をしました。もしその結果「会社に入って仕事を請け負うのが、翻訳家になる一番の近道である」という結論が出ていれば、真っ先に会社に就職を目指したかもしれません。結果として最初にランサーズさんに出会うことができたので、「これでダメだったらまた考えよう」と思って始めることができました。

クラウドソーシングを使った働き方との出会い


ーークラウドソーシングを使ってみて最初はどう思いましたか?

「こんな簡単に?」というのが第一印象です。マジシャンの場合だと、まずは人に会うために時間やお金を使わなければいけない。その上で自分に興味を持ってもらわないと、「仕事の受注」には繋がらないため、今思うとかなり営業が難しい仕事なんだと思います。一方ライティングは、「ネットを介してこんなに簡単に仕事を受けられるんだ」という驚きがありました。

最初は提案書の書き方にもかなり気を配りました。大学では劇団の座長をやっていまして、その際に身につけた脚本を書くときのノウハウを活かして、「相手の求める文章を書く」という事を常に意識していました。相手の心理に近づく、という点はマジックと共通しています。

ーー翻訳をする上では、特に気を付けていることはありますか?

「原文が透けないように翻訳する」ことです。訳文を見て、最初からその言語で書かれたような翻訳をすることを心がけています。技術翻訳(契約書の翻訳など)は情報を削ったりすると意味が変わってしまうので、依頼を受けるときに「どういう翻訳をお望みですか?」ということは必ず確認するようにしています。基本的には、日本語として違和感の無いように翻訳しています。

マジシャンと翻訳家、2つの仕事を持ってみて

ーー現状、マジシャンと翻訳の仕事はどちらが多いですか?

現在は、翻訳家としての活動が圧倒的に多いです。昔は同じくらいの比率だったのですが、ランサーズさんで継続的にお仕事を頂くうち、翻訳家の仕事がメインのライフワークになっていきました。

ーー2つの仕事をこなす中で、共通点はありましたか?

僕の感覚では、マジシャンは手先ではなく言語的な要素が大きいんです。たとえばカードを選んでもらう時に、「1枚選んでください」と言うと、一番上や一番下のカードを選ばれることがありますが、これを「1枚どうぞ」や「1枚取ってください」というと、真中のカードが選ばれるんです。相手の無意識下に働きかけるというテクニックには、翻訳で得た感覚や表現を使うことが多々ありました。

自分の人生を決断できる強い意志

ーーお話を伺うと、大学卒業後の進路然り、翻訳家になる時然り、ご自身で自分の道をハッキリ決断した、という印象を強く受けます。なにか自分の中で哲学・モットーのようなものがあるのでしょうか?

僕の中での絶対のルールとして、「絶対自分で決める」というのは徹底しています。流されるのではなく、何か学びとるためにも、それは貫いています。皆と同じでないことに責任を持たないといけない、という気持ちからも来ているのかもしれません。

高校・大学くらいから「考えることが楽しい」みたいな時期があったので、その頃から色々と本を読んだりして、考えるようになりました。

ーーご自分の進路を決める時には、かなり先まで考えられてから決断されているのですね。ちなみに現在はマジシャンとして、翻訳家として、何年後に人に教えられるようになっている、というような到達目標はありますか?

マジシャンとしては、常に勉強し続けてきたので、何年後に、という明確な目標はあまり無いです。

ただ、一つのことを突き詰めていくと、どこかで「誰かにこれを教えようかな」と思う瞬間があるんです。マジシャンとしては、レクチャーノートを書いたときがそうでした。翻訳者としては、まだです。もしかしたら今後翻訳のノウハウを教えてくれ、というご依頼をいただくことがあるかもしれませんが、こちらもマジシャン同様、何年後には、という具体的な目標ではないです。

英語そのものに関しては、ある程度自分で納得できたので教えることもありますが、翻訳のノウハウに関してはまだまだ生徒側です。

ーーこれからの仕事の展望を教えてください。

マジシャンとしても、翻訳家としても、色々な仕事をしていきたいと思っています。人の心理的な部分に関わる仕事が好き、というのはわかっているので、ここから派生すれば多分大体の仕事は楽しんで出来ると思います。

ランサーズさんの仕事では、校正・校閲の仕事の地位を向上したいと考えています。現状、翻訳の下積みや前段階としての風潮がありますが、僕は逆に、スキルのある人こそ校正をすべきだと思うんです。誰がやってもその人のチェックを通ると品質が保てる、という人がいたら凄いと思うんです。例えば校正の最低単価を上げたりすれば、全体的なチェッカーの状況改善にもつながるのではないでしょうか? 

これからは、そういう仕事も作っていたいし、僕自身がそういう業務に携われるよう、スキルを磨いていきたいと思います。

取材後、堂本さんに英語と日本語でマジックを行っていただきました。

コインマジック

トランプマジック

撮影協力:札幌シェアオフィス&コワーキングスペースカフェSALOON

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