プロジェクトマネジメントを学んで、できるフリーランスに! 大学教授直伝、プロジェクトを成功に導く特別講座5

・特別講座 Part1 | プロジェクトを成功させるにはコツがある!
・特別講座 Part2 | 目的・資源・期限を設定しプロジェクトを進める!
・特別講座 Part3 | フリーランスの上手な時間管理術!
複雑なコトを整理する構造化
わたしたちが文章を書いたり、デザインをしたり、システムを作るとき、その対象は複雑であることがほとんどです。たとえば、ある観光スポット「A」についての記事を依頼されたとき、その場所についての何を伝えるべきなのか、頭の中では様々なアイデアが渦巻きます。
きっと皆さんは、メモ書きで特徴をリストアップしますよね。こうした整理をする際に重要なのが構造化です。構造化というのは、ピックアップされた要素間の関係性を階層化したものです。構造化を行なうことによって、複雑なことの整理ができ、抜けや漏れが少なくなります。
手順1 | 解決すべきテーマを決める
構造化を行なう際に、まず行なうのはテーマ決めです。先ほどの例では、「観光スポットAに関する情報」でしたが、案件によっては明確に決まっていない場合があります。
今回のテーマは何なのか? ほとんどの場合は、依頼主や相手がいますので、しっかりとテーマについての合意をとることが大切です。ホームページであれば、誰に見てもらい、どんなアクションを起こしてほしいのかが重要。テーマが決まらないと、何をどのようなテイストで伝えたら良いのかわかりません。
チラシにおいても、受け取った人にどんなアクションをとってもらうために、いつ誰に配布するのかで描く内容は変わってきます。
あれもしたい、これもしたいでは実施する内容にまとまりがなくなります。テーマは『一つに絞る』ことも大切です。最初にじっくりと時間をとり、解決すべきテーマを決めて、トップにテーマとして置きます。
ぶら下げるのは5個まで
テーマの一つ下に、テーマを解決するのに必要な基本項目を配置します。目安は多くても5個までにしてください。なぜ5なのか? 認知心理学者のGeorge A. Millerが短期記憶できる数として唱えたのは7、マジックナンバーも7。
しかし私が組織やプロジェクトの中での体験した結論からは、通常5テーマあるいは5人が目の行き届くちょうどよい数なのです。それ以上では管理が行き届きにくくなります。
以降の作業でも同じように一つの箱には最大5個までの項目をぶら下げるようにしてください。図に示した例では、「観光スポットAに関する情報」の下に「説明」、「場所」、そして「施設情報」という項目がぶら下がっています。
観光スポットの紹介に何があれば良いかということを考えて設定しましょう。このとき、項目のレベルにも注意しましょう。「説明」と同じレベルで「開園時間」と並べてしまうと詳細レベルが違いますね。これを粒の大きさ、粒度(りゅうど)と言います。管理や確認をするためにも粒度を横でそろえることが大切です。
手順2 | 正展開で全体の把握を
基本項目が設定できたら、次は、各基本項目の下にぶら下がる項目を決めていきます。この際に「上位の項目を実現するには何と何をすれば充分か?」ということを考えながらリストアップしていきます。これもあった方がよい、というような余分なものではないか充分吟味しながら書き出してください。
リストアップにおいては、横のレベルで粒度を揃えることも忘れずに。細かい項目が出てきたら、細かい項目を束ねる項目は何なのかを考え、構造を作っていきましょう。
このようにして、「上位の項目を実現するには何と何をすれば充分か?」という展開を繰り返して全体を把握します。この作業を正展開(英語ではexplosion)と言います。出来上がったら全体を見渡して、テーマを解決するのに必要な項目が全て入っているかを確認しましょう。
手順3 | 逆展開で成立するかの検証を
一旦、正展開でできあがったら、今度は下から上へ項目を追いかけます。下の項目一列ができると上の項目が実現するかです。「開園時間」「入場料」「駐車場」についての情報があれば、「施設情報」として十分でしょうか?
「トイレ」や「バリアフリー」の情報が抜けているかもしれません。このようにして上から展開していただけでは気づかなかった項目を、下から検証していくことで抜けや漏れを防止します。
この作業を逆展開(英語ではimplosion)と言います。これさえできれば本当に大丈夫なのか?という視点で見ていくと意外に気づかなかった項目が見つかるものです。
共有と改変作業でテンプレート化
構造化の作業は、一人でやるのもいいですが、一緒にやってくれる人がいると、視点が増えてさらに精度が上がります。複数の方々のチェックを受けて、「これは必要なのでは?」という項目を出し合いながら仕上げていきます。
このようにして出来上がった構造は、非常に汎用性が高いので、テンプレートとして使うことができます。例題の構造は、観光地を紹介するときのテンプレートとして使うことができますね。
足りない項目や、必須でない項目など都度改変を加え、多くのテンプレートを持っておくことは後々の作業を楽にします。
テーマをタスクにするとWBSになる
今回ご紹介した構造化を、ワーク(作業)で行なうとWBS(Work Breakdown Structure)というものになります。あるテーマのワークを実現する際、実行すべき具体的作業としてブレークダウンしていくと、構造化された業務指示書が出来上がります。
さらに各作業に担当者と所要時間を書き入れると業務分担表とスケジュールになります。このように仕事、課題、イベント、悩みなど様々なものを構造化することによって全体の構成とやるべきコトが見えてくるのです。構造化は私たちの強力な武器ですので、短時間でサクッと構造化できるよう普段から訓練しておきましょう。
- 複雑なことを整理するのに便利な構造化
- ぶら下げる項目は5つまで
- レベル内の粒度を揃える
- 正展開で全体把握、逆展開で実現を検証
- 共有と改変で最強のテンプレートに
- ワークの構造化WBSで業務内容も構造化