プロジェクトマネジメントを学んで、できるフリーランスに! 大学教授直伝、プロジェクトを成功に導く特別講座9

・特別講座 Part1 | プロジェクトを成功させるにはコツがある!
・特別講座 Part2 | 目的・資源・期限を設定しプロジェクトを進める!
・特別講座 Part3 | フリーランスの上手な時間管理術!
利害関係者は誰だ?
昨今のプロジェクトにおける利害関係者(ステークホルダー)の管理はますます複雑になり、そして重要性を増してきています。その理由は3つあると私は考えています。
まず1つ目が、プロジェクトの複雑度の上昇です。多くのプロジェクトで個人情報管理、セキュリティ管理、マルチデバイス対応など気にしなければならないことが増えてきています。そのため、関係者も多岐に渡って巻き込む必要がでてくるようになりました。
2つ目は、プロジェクトの難易度の上昇です。社会環境、経済環境の変化が速いことで、しくみの変更のスピードも速まり、プロジェクトの難易度は上がってきています。難易度の高いプロジェクトにおいて利害関係者の管理がうまくできていないと、プロジェクトの成功確率は下がってしまいます。
そして3つ目が情報の非対称性が薄れていることです。以前は、一部の人だけが情報を持ち、必要な情報だけをプロジェクトメンバーに流していました。情報を持つことが権力だと誇示するようなケースもありました。
しかし、今では大量の情報が共有されるようになり、むしろ秘密が少なくなってきました。迅速に情報を流すことでメンバーの動きを活性化するほうが良いというのが今の流れです。そうした時に、誰に情報を流すべきかが分かっていないと活動の妨げになってしまうのです。
「俺は聞いてない!」問題
プロジェクトのスタート時点において特に重要なのが、この利害関係者管理です。今回のプロジェクトに誰が関わるのか、どのような関わり方をするのかを認識していないと、後で大きなトラブルを招きます。
プロジェクトをスタートさせる前に、「こういう狙いでプロジェクトをスタートしたいと思う」という想いを関係者に話して、意見を聴取します。いわゆる『根回し』です。ここで賛同を得て、メンバーを獲得することでプロジェクトの組織が出来上がってきます。
プロジェクトにおいて重要な役割を占めている人に話をするのが遅れ、別のルートから「こんなプロジェクトの話が来ているが知っているか?」と耳に入ってしまうと、「俺は聞いてない!」という怒りを買います。
プロジェクトのスタート時点から、不満を持って参加してもらうのは運営に支障をきたすので、誰に話をするのか? 誰から話をするのか? はとても重要です。
「俺は聞いてない!」問題は、組織の中で自分のポジションを重視する人ほど発生しやすく、国も性別も関係なく起こります。利害関係者の管理は、プロジェクトに関連する組織と人の洗い出しと、情報を流す順番について整理するところから始まります。
利害関係者の計画
利害関係者の関わりかたについて、まず計画を立てます。今回のプロジェクトで利害関係者は誰か? その人たちはどのような役割があり、どのようなアクションを、いつ起こしてほしいか? そのために必要な情報や場は何か? プロジェクトの進行に合わせて利害関係者をリストアップしていきます。
各利害関係者の役割や関与の仕方が決まった段階で、当人たちにお知らせします。当人たちがしっかりと役割を認識するよう丁寧に目的からアクションプラン、評価方法まで説明を行ないます。
商品やサービスに関わるプロジェクトの場合、最も重要な利害関係者は、顧客です。顧客にどういう体験をして欲しいのか? その結果をどのようにして計測して評価するのかをプロジェクトがスタートする前に計画しておきましょう。
顔合わせ・食事・チームイベント
利害関係者の役割の伝達の前に重要なことは、顔合わせです。人は、顔を見て、一緒に食事をすることで、仲間意識がうまれてきます。特に、プロジェクトの途中では空間的に離れて作業を行なう場合があります。
メールでのやり取りやウェブ会議なども増えてきます。そうした際に、一度でも顔を見て食事などをして一定の時間を一緒に過ごしていると、相手がどのような人物か認識ができます。
この顔合わせができていないと、どんな人だろう? と想像の翼が広がり、疑心暗鬼になり不安が増していきます。不安は多くのエネルギーを消費し、円滑なコミュニケーションを妨げる原因となります。
キックオフミーティングというと日本的な感じがしますが、海外のプロジェクトでも行なわれる重要な顔合わせのイベントなのです。
一緒に食事をすることは、食事しているときの動作で人を見ることができるので、よい機会です。その他にも、野外スポーツやキャンプなどを一緒にやるというのも有効です。
利害関係者がどういう人で、どんな価値観を持ち、どんなことに興味があるのかということが分かってくると、後々の仕事がグッとやりやすくなります。
うまくいっているかを確認! 顧客も利害関係者
そして、利害関係者管理においても重要なのは、計画を立てた後の実行管理です。計画したような関係構築ができ、それぞれが想定通り動いているかを確認しましょう。
うまくいっていればOK。うまくいっていなければリカバリ策を立てて修復です。複雑化する利害関係で実行するプロジェクトだからこそ、成功した時の成果も大きくなります。それだけ波及効果の大きなプロジェクトなのです。
抜け漏れなくメンバーをリストアップし、「話すべき時に」「話すべきことを」「話すべき人に話す」。営業の基本がプロジェクト活動においても基本的な行動様式であるということを覚えておきましょう。
- プロジェクトはますます複雑化していることを認識すべし
- プロジェクトスタート前の利害関係者への『根回し』は重要
- 利害関係者とその関係性を整理すべし
- キックオフミーティングの顔合わせは後のコミュニケーションに重要
- 計画を立てたら、必ず実施確認とリカバリ
- 「話すべき時に」「話すべきことを」「話すべき人に話す」