脱サラでフリーランスとして働きたい人必見! 脱サラの際に必要になる手続きとは?

脱サラでフリーランスとして働きたい人必見! 脱サラの際に必要になる手続きとは?
サラリーマンを辞めてフリーランスとして働く人が近年増えています。「脱サラ」とも呼ばれるこうした選択ですが、起業の有無によって、開業届や登記など、必要な書類が異なります。今回は、脱サラの手続きや必要な書類について徹底解説します。
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脱サラする際に必要な手続きを解説

サラリーマンを辞めて独立する際、起業をするのかフリーランスとして活動していくのかによって必要な書類の準備は変わってきます。今回は、税理士紹介24年の株式会社ビスカスが運営する税金情報サイト『マネーイズム』の編集部が、脱サラの手続きや、脱サラ後に必要な書類、起業をする際の必要書類について解説します。

脱サラとは?

脱サラとは、一義的には「サラリーマン生活を脱する」こと、すなわち、勤め先の会社を退職してサラリーマンとして生きることを辞めることを指します。しかし、一般的に脱サラはただ勤め先を辞めることだけでなく、退職後に自ら起業をしたり、独立してフリーランスになったりすることも含意します。

起業とフリーランスの違い

起業とは、新しく事業を始めることをいい、一般的には新法人の設立を意味します。他方のフリーランスは、特定の団体や組織に所属せずに個人で業務を請け負って遂行する働き方、またはそのような働き方をする人のことを指します。

フリーランスと混同されることの多い個人事業主は税務上の所得区分で、開業届を提出したフリーランスは個人事業主として確定申告を行います。脱サラをする際はこの他にも様々な書類の提出が必要となりますので、以下では、脱サラ後にフリーランスとなる場合を詳しく解説していきます。

脱サラで必要になる書類

脱サラをしてフリーランスになるには、退職後に健康保険や年金関係の書類を提出すると同時に、税務関係の書類も作成して提出する必要があります。ただし、事業内容によっては提出が不要な書類もあります。ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

健康保険

健康保険は、これまで勤め先が加入していた健康保険組合の任意継続をするか、国民健康保険に加入するかのどちらかを選択する必要があります。一般的に、任意継続のほうが保険料は安くなる傾向がありますが、任意継続するには以下のような要件を満たしていなければなりません。

・退職日(資格喪失日の前日)までに継続して2ヶ月以上の被保険者期間があること
・資格喪失日から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すること

また、手続きが滞りなく行われたとしても、任意継続被保険者証が届くまで2~3週間程度かかります。その間に病院で診察等を受けた場合は一時的に全額自己負担となりますので注意が必要です。

国民年金

脱サラをして勤め先を辞めたときには、これまでの厚生年金から国民年金の被保険者へと変更になります。変更の手続きは自動で切り替わったり、勤め先が手続きを行ってくれたりはしませんので、自ら居住地の市区町村役場の国民年金窓口で手続きを行う必要があります。

手続きは退職日から14日以内に行い、その際には年金手帳や離職票、身分証明書、印鑑などが必要となりますので忘れずに持参しましょう。

開業届

開業届は正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、所得が生ずベき事業を新たに開始することを税務署に対して通知するための書類です。

提出期限は開業後1ヶ月以内で、納税地を所轄する税務署へ届けることになっています。提出期限を過ぎてしまっても罰則はありませんが、できるだけ期限内に提出しておきましょう。届出書は国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。

事業開始等申告書(個人事業税)

開業届と良く似た名前ですが、こちらは都道府県税事務所および市区町村役場へ提出する書類です。この事業開始等申告書は、都道府県税事務所へ出せば市区町村役場への提出が不要となる場合もありますので、居住地の役場に確認をしておきましょう。

所得税の青色申告承認申請書

所得税の青色申告承認申請書は、所得税における青色申告の承認を受けるための書類です。

開業日(非居住者の場合は事業を国内において開始した日)から2ヶ月以内に、所轄の税務署に持参または郵送で提出します。この申請書を提出しなければ青色申告の特典が受けられなくなりますので、開業届を提出する際に同時に提出しておくことをおすすめします。

所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書

この届出は、2種類の資産の取り扱いに関する申請を行うものです。「棚卸資産の評価方法」は、棚卸資産の評価方法を選択する際に提出します。提出しなければ最終仕入原価法によって算定を行うことになります。

「減価償却資産の償却方法」は、償却資産を法定の償却方法とは異なる方法によって償却したい場合に提出します。法定の償却方法は定額法であることが一般的ですので、定率法による償却を選択する際に届け出ることになります。いずれも、新たな事業を開始した日の属する年分の確定申告(3月15日)が期限です。

青色事業専従者給与に関する届出書

青色事業専従者給与に関する届出書は、青色申告者が、生計を一にする配偶者その他の親族に対して支払った給与を経費として計上するために提出する書類です。よって、給与を支払う配偶者や親族がいない場合はこの書類を提出する必要はありません。

提出期限は青色事業専従者給与額を経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した人や新たに専従者がいることとなった人は、その開業の日や専従者がいることとなった日から2ヶ月以内)です。

登記とは

登記とは、法人(会社)の概要を一般に公開するための制度を指し、一般的にはその手続きのことも意味します。法人(会社)は登記をすることによってはじめて成立します。そのため、登記を済ませずに法人を名乗ることは法律で禁止されています。

脱サラ後、会社を作らずに個人事業主として事業を行うこともできますが、法人登記をすると、法人に関する様々な情報が第三者から確認できるようになるため、社会的信頼性が高まるなど様々なメリットがあります。その一方で、下記のように法人登記を行うことにはいくつかのデメリットもあります。

個人事業主のままで事業を続けるのか、法人として登記して将来的な事業規模の拡大を目指すのかなど、法人登記の長所と短所をよく把握した上で中長期的展望を持つことが大切です。

登記を行うメリット

・銀行の融資が受けやすくなる
個人事業主は個人のお金と事業のお金の線引きが難しく曖昧になりがちですが、法人の場合は、資産の状態が金融機関からも分かりやすく融資の判断がしやすいため、資金調達の可能性が高くなります。

・人材確保がしやすくなる
法人は社会保険の加入が義務付けられています。責任を負う分、働く人にとっては安心感を得やすいため、長期的な人材の確保が可能になります。

・節税面でメリットが大きい
個人事業主の所得税は累進課税のため、最大で45%もの税率になります。しかし、法人であれば細かな区分ごとに法人税率が設定されており、最大でも23%程度です。

・決算月を自由に決められる
個人事業の場合は1月~12月が事業年度と決められていますが、法人の場合は決算月を自由に決められるため、決算月を事業の繁忙期からずらすことができます。

登記を行うデメリット

・赤字でも税金が課せられる
法人は、たとえ事業が赤字であっても法人住民税の均等割が課せられます。

・社会保険の加入が義務付けられている
法人は健康保険と厚生年金の加入が義務付けられています。保険料は個人事業主の納めている国民年金や国民健康保険料と比較すると高額であり、労使折半のため、従業員が増えるほど法人の負担が大きくなります。

・設立に費用がかかる
法人設立には定款の作成や登録免許税などで、最低でも合同会社で6万円、株式会社で21万円~25万円の費用がかかります。

登記に必要な書類

法人登記には以下の11種類の書類が必要です。なお、場合によっては提出不要な書類もあります。

・登記申請書
法務局のウェブサイトでテンプレートをダウンロードできます。

・登録免許税分の収入印紙を貼り付けた用紙
登録免許税は収入印紙で納付します。登録免許税の下限は、合同会社の場合は6万円または資本金額の0.7%、株式会社の場合は15万円または資本金額の0.7%と定められています。

・定款
必要な事項を記載した定款をあらかじめ作成します。法人の規模、取締役の人数などの規模に応じた定款の雛形は公証人連合会のウェブサイト等で簡単に見つけられますので、参考にしましょう。作成した定款は、公証人役場で認証を受けます。

・取締役の就任承諾書
会社の取締役となる人が就任を承諾したことを証明する書類です。

・資本金の払込証明書
定款に記載されている通りの資本金の払込を証明する書類です。通帳の表紙、表紙裏の個人情報ページ、振り込みの記帳ページをそれぞれコピーし製本します。

・印鑑(改印)届出書
あらかじめ作成した法人実印の届け出をするための書類です。法務局のウェブサイトからダウンロードが可能です。

・発起人の決定書
発起人全員の合意のもと、本店所在地や代表取締役が決定されたことを証明する書類です。当該事項について定款に詳細な記載がない場合に必要になります。

・代表取締役の就任承諾書
代表取締役が一人で、取締役と兼務の場合はこの書類は不要です。

・取締役全員の印鑑証明書
取締役が複数人いる場合は、全員の印鑑証明書が必要です。ただし、取締役会を設置している場合は代表取締役の印鑑証明書のみで構いません。

・監査役の就任承諾書
監査役を設置する場合に必要となります。

・登記すべき事項を保存したCD-R等
上記の書類は紙媒体だけでなく、CD-R、CD-ROM、DVD-R、DVD-ROMによる提出も可能です。

脱サラしたら起業するべき?

退職前から入念にプランを練って新規事業の立ち上げに十分な準備している人や、市場のニーズを把握し事業展開のノウハウを持っている人は、脱サラ後に起業することで活躍できるでしょう。

将来的には事業規模を拡大して上場したいと考える人もまた、起業して登記をしておくべきだといえます。他方で、エンジニアやライター、デザイナーなどとして自分の得意分野を活かしたい人や、時間的自由度を求めたいと考える人であれば、フリーランスとして働くほうが適していると考えられます。

もちろん、脱サラ後しばらくはフリーランスとして活動し、事業拡大の時機を見て起業するという人もいるでしょう。いずれにせよ、自分の状況に適した形態を選ぶことが重要です。

まとめ

今回は、脱サラの手続きや、脱サラ後に必要な書類、起業をする際の必要書類を解説してきました。サラリーマンを辞めて独立する人が増えている昨今、フリーランスとしてやっていくべきか、起業するべきか悩む人も多いでしょう。どちらにしても後悔のないよう慎重に考え、必要書類は期限内に提出できるよう準備しておきましょう。

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