「日本で一番もったいない町」に革命を起こす。下田市役所樋口さんインタビュー

「日本で一番もったいない町」に革命を起こす。下田市役所樋口さんインタビュー
「自分らしくを、もっと自由に」をテーマに掲げているコミュニティ「LivingAnywhere Commons」。拠点のひとつがある下田市の市役所職員で、ICTを活用して町の活性化のために奮励する樋口 有二さんにお話を伺いました。
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場所やライフライン、仕事など、あらゆる制約にしばられることなく、好きな場所でやりたいことをしながら暮らす生き方(LivingAnywhere)をともに実践することを目的としたコミュニティ「LivingAnywhere Commons」。

LivingAnywhere Commons(以下LAC)のメンバーになると、日本各地に設置されたLACの拠点の共有者となり、仲間たちと共に場所に縛られない暮らし方を体験できます。

今回はLACと協力して下田の活性化に取り組む、下田市役所産業振興課の樋口有二さんにインタビューしました。

総務省から下田市役所へ。ミッションはICTを活用した町の活性化


――まず樋口さんが現在されているお仕事について聞かせてください

私は下田市役所の産業振興課に勤めており、農業・林業・水産業・商工業に関する施策の企画や運営をしています。例えば、農業の担い手の支援を集めることや、商店街の活性化、漁師の皆さんが仕事がしやすいように環境を整えるといったことをしています。

――そもそも、樋口さんはなぜ所縁のない下田市に?

もともとは総務省で働いていて、情報通信を担当する部局に長く在籍していたのですが、国には地方創生に取り組むため市町村に人を派遣する制度があるんです。そこに手を挙げました。

一方で、下田市はICT(情報通信技術)などを使って産業を活性化し町を盛り上げたいというミッションを掲げ、国からの派遣を受けることを希望していたので、総務省から私が行くことになりました。それが下田に訪れた背景ですね。

――樋口さんは以前から市町村で仕事をしたいと思っていたんですか?

▲下田市の魅力と課題を説明する樋口さん

総務省で働きながらも、市町村が抱える問題への意識は常に持っていました。

今までITと縁遠かった一次産業や二次産業でもICTを活用する事例は増えているのですが、さらに促進させようと国が支援策を考えたとします。しかし全国に約1,700以上ある市町村すべてがすぐ活用できるかというと、現実にはとても難しいです。

支援策を活用するには地域の戦略・課題に応じてカスタマイズする必要がありますが、それを自らできる自治体の方が少ない印象です。

理由は様々ありますが、地域の実情にちょっとハマらないだけで活用してもらえず、新しいモデルケースをいくつか生んだだけで結局全国には広がっていきません。「国は地域のことをよくわかってない!」なんてことも言われます。

そんな難しさを感じていた頃に派遣制度の存在を知り、直接地域と関わって仕事をする中で、小規模の自治体の実情をよく知ることができるチャンスだと思い、行動に移しましたね。

下田は夏だけ盛り上がる町。それが現実だった

――下田に抱いていたイメージと、住んでからのギャップはありましたか?

下田に住んで1年以上経ったのですっかり慣れましたが、当初はものすごくギャップを感じましたね。

私は海で遊ぶのが好きなので、移住する前に白浜海岸へ何回か訪れたことがあったのですが、人が賑わい海もきれいで温泉もある。おまけに魚介も新鮮で美味しく、非常に魅力的な町という印象でした。

▲下田には美しい景色と自然を感じられる場所がいくつもある

ただ実際に住んでみると色んなことが見えてきます。賑わっているのは夏の海水浴場ですし、町のさまざまな活動も夏が中心で、それと比べると他の季節はかなりさみしい。

人も店も思ったより少なく、町も古い。バスもタクシーも少ないし、買い物するにもクレジットカードが使えないところばかりなど、不便さを至る所に感じました。

有名な観光地とはいえ、どこの地方でも抱えている悩みが同じようにあるんだなぁ、というのが当初の印象です。

ワーケーション勉強会が奇跡の出会いを呼んだ

――そんなギャップを感じながら下田で過ごす中、LACとはどんなきっかけで関わるようになったのでしょうか?

赴任してから感じていたのは、地元の中だけで新しいことをやるよりも外部との交流が必要だということです。

総務省で働いた経験から、テレワーカーやワーケーションという言葉への理解が多少あったので、下田にワーケーションが合うんじゃないかと思ったんですよね。

きれいな海もあるし都心部からある程度距離も離れていて、旅行している感もある。

働く場所やコミュニティはまだ整っていないものの、そこさえ整えれば興味を持ってくれる人は必ずいると思い、ワーケーションに関わる施策を下田でやってみようと思ったんです。

それから早速、今年の1月に市役所内の方々に協力を仰ぎ、下田でワーケーションができないか提案し議論を進めていきました。

町の人たちはワーケーションのワの字も知らないと思ったので、まずは他の自治体や企業の例を学び、下田でワーケーションの可能性を話し合う勉強会を開くことにしました。

勉強会を盛り上げる為に、参加の打診をしたのがヴィレッジインクの梅田さんと橋村さん。その時にヴィレッジインクとLACがコラボレーションする予定だと聞いたのが、LACの存在を知ったきっかけです。

▲ヴィレッジインクの梅田さん。LACと提携を結び、居心地の良い空間を提供してくれている

下田市×LivingAnywhere Commonsの強力タッグが間もなく実現

――LACと関わり始めてから、具体的に実現に至った企画や取り組みはありますか?

12月11日、下田市と株式会社LIFULL(LACの運営会社)との連携協定が締結しました。目的は、関係人口の創出・増加、空き家等の活用、新しいビジネスの発掘、イノベーションの促進です

協定をきっかけに、ドローン・AIその他ウェブ関連のスキルに長けた人たちを含め、LACを通じて様々な人たちが下田に来ることが期待できるので、スキル・ノウハウをシェアして新しいビジネスの可能性を広げ、町の活性に繋げていきたいと思っています。

また下田の空き家情報を集約して、移住希望者やサテライトオフィスを作りたい企業にPRしていきたいですね。

▲下田市ホームページ内でも「ワーク・ライクバランスが自慢の下田」を目指すと宣言している

LivingAnywhere Commonsがイノベーションの発信拠点に

――将来的にLACと実現したいことはなんでしょう?

地元の人たちと外から来た人が繋がり『第3の黒船』が生まれる場所、と言われるようなところにしたいですね。ちなみに、第1の黒船がペリー来航、第2の黒船が電車(伊豆急行)の開通、と地元ではよく言われています。

新しい建物や道路ができることを第3の黒船だなんて言ったりもする人もいるんですけれど、僕としては「人こそが第3の黒船」だと思うんです。

スキルを持った人やアイディアを持った人が地元の資源を持った人たちと繋がり、掛け合わさっていく。そこから生まれるものには無限の可能性があると感じています。

交流が進んでいく中で、下田を盛り上げようにも「どこに行けばそんな人に出会えるの?」と疑問に感じる人が出てくると思うんです。そんな時に「LACに行けば何とかなる」と言われるくらいにまで発展してほしいですね。

そのためには、LACの会員さんや地元の企業や人がみんな仲間となって一緒に何かを作り上げていくという意識が必要です。

もっと意識を高めて高いレベルで融合したときに様々なイノベーションが生まれると思うんですよね。LACにはその発信拠点になることを期待しています。

やり方はいくらでもあると思いますが、絶え間なく進化していってほしいですし、我々行政も一緒に進化していきたいです。

――最後に、移住や多拠点居住を考えている方に向けてひと言お願いします!

下田は「日本で一番もったいない町」だと思っています。

自然も特産品も文化も、素晴らしい資源が沢山ありますが、まだその魅力が人々に伝わっていないんです。私も、下田に来る前からなんとなく知っていた魅力より、関わるようになってきてから新たに発見した魅力の方が多いです。深いですよ(笑)

まだみんなに知られていない下田の魅力を発見して一緒に町を盛り上げて欲しい。そんな下田に興味を持って下さったらぜひ1度遊びに来てください。

『第3の黒船』である”あなた”を受け入れる体制が下田にはある

私は今回のインタビューを通して樋口さんの下田を活性化したいという情熱を、至る所から感じました。

印象的だったのは、『人こそが第3の黒船』という言葉。そもそも黒船が来たことによって日本にどのような影響があったのでしょうか。

江戸幕府によって約200年に渡り鎖国が行われていましたが、ペリーの黒船が来たことをきっかけに日米和親条約を結び日米間で取引ができるようになりました。日本の経済や文化が変わった歴史的な出来事です。

ちなみに、ペリー率いる黒船艦隊が初めて入港したのは浦賀ですが、開港したのは函館と下田の2拠点。下田は外国との取引をできるようにした初めての町だったんですね。

それから約100年後、日本は世界と自由に取引ができる体制になりました。確かに世界と自由に取引できるようになりましたが、島国である日本において、地方のあり方はまだまだ閉鎖的なのではないでしょうか。これは下田だけでなく、多くの地域に共通した課題と言えます。

そう考えると、地域の課題を内部と外部の人間が協力して解決して町が活性化し、経済が循環していく。そんな経済のあり方は少子高齢化で人口が減少する日本において理想的な形なのかもしれません。

実現する上でのカギとなるのは樋口さんが言うように“”なのだと思います。条約や協定ではなく、1人ひとりの協力が地域をつくり、経済をつくっていくのでしょう。

そして、下田は“あなた”という『第3の黒船』を受け入れる体制をまさに今作り上げとしています。

下田を本気で盛り上げたいと思う行政と、下田の変革拠点としてのLivingAnywhere Commons、そして第3の黒船である”あなた”。どんなものが生まれるのか、考えるだけでワクワクしてしまいますね!

LACが提供するのは宿ではなく、地域活性化の役割を担うコミュニティ

▲LACのラウンジ。ゆったりとした空間が確保されており、快適に仕事を行える環境が整っている

私が今回下田を訪れたのは、下田の地域課題を解決するというテーマで行われた1泊2日のワーケーション企画に参加するためでした。

樋口さんや地元企業の方と地域の課題について議論を交わし、下田名産の食事をいただいたあとにLACで体と心をゆっくり休めて就寝。

翌日になるとカモメの鳴き声で目を覚まし、早朝に下田の海を眺めながらランニングをしてリフレッシュしました。

地元の名物おばちゃんのお店で焼き魚定食をいただいてエネルギーを充電したあとはLACに戻ってラウンジで仕事をし、また下田の町を練り歩く。ワーケーションをたっぷりと満喫した1泊2日間になりました。

下田って何だかほっとけない町。沢山の魅力がありながら、その良さは地元の人やごく一部の人にしか伝わっていません。そんな気持ちにさせてくれる地域ってなかなかありませんよ。

LACを拠点にして自分の新しい生き方・働き方を見つめ直すもよし。
シゴト×アソビを満喫するもよし。
地域と交流を重ねて地域課題の解決に取り組むもよし。

色んな楽しみ方がある下田で、LACを拠点に”自分なりの正解”をつくっていきませんか?

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