2019年の財政検証で年金受給額の目減り必至。老後資金準備は今すぐ始めよう(2)

2019年の財政検証で年金受給額の目減り必至。老後資金準備は今すぐ始めよう(2)
2019年財政検証から読み解く、フリーランスの年金受給額。目減りすることが不可避ないま、どのような対策と将来設計をするべきか、専門家の意見をご紹介します。
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会社員もフリーランスも老後対策は重要ですが、フリーランスの方々など自営業世帯は、夫婦で10万円前後(2019年の物価水準)の年金しか受け取れない可能性があるため、特に気を付ける必要があります。幸い、iDeCoなど活用できる制度があるので、制度をフル活用することをオススメします。

数十年後の未来は、今は存在していない職業が増え、働き方はより多様化する可能性があります。老後も長く働ける環境を作ることはもちろん大切ですが、同時並行でiDeCoなどをそなえておくことが、老後の安心に必要ではないでしょうか。

前回の記事(1)では、2019年に行われた年金制度の財政検証により、会社員でもフリーランスでも、年金受給額の目減りはほぼ避けられない理由について解説しました。

経済成長が大きく進まない限り、年金保険料の引き上げや増税、年金受給開始年齢の引き上げといった可能性があることについてもお伝えしましたね。年金制度の現状を踏まえ、この記事では「今後年金受給者はどう対応していくべきなのか」について見ていきたいと思います。特に、

  • フリーランスの世帯で特に注意すること
  • 年金受給額の目減りに対応する方法

という2点について、詳しく解説していきます。

 

年金受給額の目減りは不可避、特に自営業世帯は要注意!


前回の記事(1)では、公的年金の給付水準を示す指標である所得代替率について、厚生労働省の設定するモデル世帯を基準にお伝えしました。しかし、国が示すモデル世帯とは、「40 年間厚生年金に加入している夫と、40 年間専業主婦の妻がいる世帯」を指します。

つまり、所得代替率とは、会社員を前提にした指標なのです。モデル世帯の注意点や、フリーランスの年金受給額について、くわしく解説していきましょう。

厚生労働省のモデル世帯は会社員が前提

所得代替率を計算するうえで設定されているモデル世帯とは、会社員の夫と専業主婦の妻という家族構成で、夫が40年間厚生年金に加入しているという前提です。夫婦2人の基礎年金に加えて夫には、現役時代の収入に応じて支払われる厚生年金があり、この2つを足した数字を平均手取り収入額で割って所得代替率を算出しています。

しかし、フリーランスの場合は、会社に雇用されていないため厚生年金がなく、国民年金、つまり基礎年金しか受給できません。国民年金は現役時代の収入とは関係なく、定額で受け取る制度です。

会社員であれば、現役時代の稼ぎに比例して、公的年金の受給額が増えるものです。しかし、フリーランスでは、稼いでいても稼いでいなくても、公的年金の受給額は加入年数による定額制です。

厚生労働省のモデル世帯や所得代替率をうのみにしてしまうと、「現役時代の半分は年金がもらえるのか」と考えがちです。しかし、それは会社員だけの話。フリーランスは違うという点を、忘れないようにしましょう。

フリーランスの基礎年金は2019年でも夫婦で13万円だけ

そもそもの話として、フリーランスは会社員よりも年金受給額が少なくなっています。2019年度の年金受給額から、会社員とフリーランスとの差について見てみます。

2019年度に会社員の夫が年金を受け取る場合、現役時代の手取り収入が35.7万円であれば、毎月の年金受給額の目安は22万円です。
夫婦の基礎年金(国民年金)13万円+夫の厚生年金9万円=毎月の年金受給額22万円という計算ですね。

しかし、夫がフリーランスで、それぞれ国民年金に加入してきた夫婦が年金を受け取る場合は、夫婦で受け取れる基礎年金(国民年金)は月々約13万円だけです。

自営業時代の稼ぎが少ない方であれば、稼ぎに関わらず定額受け取れる国民年金はラッキーな制度かもしれません。しかし、会社員並みに稼いでいる方からすれば、厚生年金の上乗せがない分、圧倒的に不利です。

このように、フリーランスは、元々の年金受給の仕組みが会社員とは違うという点を、覚えておく必要があります。
※上記の計算は、40年間厚生年金や国民年金に加入したという前提で算出しています。

6つのモデルケース別基礎年金受給見込額

先ほど、2019年度時点で基礎年金(国民年金)を満額で受給する場合、夫婦で毎月13万円になるという話をしました。しかし、13万円とはあくまで2019年時点における受給額です。フリーランスも会社員と同様、基礎年金受給額が目減りする可能性があるので見てみましょう。

前回の記事(1)で紹介した、2019年の財政検証で設定されている6つのモデルケースに沿って、それぞれの基礎年金受給見込み額を見てみます。

財政検証で設定されている6つのモデルケース

経済前提シナリオ 経済成長率 物価上昇率 所得代替率(2046年)
ケース1(最良シナリオ) 0.9% 2% 51.9%
ケース2 0.6% 1.6% 51.6%
ケース3 0.4% 1.2% 50.8%
ケース4 0.2% 1.1% 46.5%※
ケース5 0.0% 0.8% 44.5%※
ケース6 ▲0.5% 0.5% 36%~38%※

2019年の財政検証は、次の6つの経済前提シナリオをもとに進められました。経済成長率・物価上昇率・所得代替率の3つの設定は上記の通りです。所得代替率とは、公的年金の給付水準を示す指標で、現役男性の平均手取り収入額に対する年金額の比率で表されます。
※【所得代替率】=(夫婦2人の基礎年金 + 夫の厚生年金)/ 現役男性の平均手取り収入額
※ケース4~5は年金の財政バランスが取れるまで給付水準調整を進めた場合の所得代替率。ケース6は、2052年度に年金の積立金がなくなり、完全な賦課方式に移行してからの給付水準。

基礎年金受給見込み額

モデルケース1
※経済成長がもっとも進むケース
2046年度:13.5万円 2060年度:16.8万円
モデルケース2 2046年度:13.1万円 2060年度:15.8万円
モデルケース3 2047年度:12.4万円 2060年度:14.2万円
モデルケース4 2044年度:11.6万円 2053年度:11.0万円
モデルケース5 2043年度:11.4万円 2058年度:10.2万円
モデルケース6
※経済成長が進まないケース
2043年度:11.6万円 2052年度:11.1万円

経済成長が進むという前提のモデルケース1~3では、物価の上昇に伴い基礎年金の受給額も上昇しています。しかし、経済成長が一定の範囲にとどまるモデルケース4~5や、経済成長がないモデルケース6では、基礎年金受給額は数万円減少しています。

この数値は将来の予測物価で算出されており、物価は時間を経るごとに上がるものですから、現在の価値で考えるともっと低いと言えるでしょう。

このように、フリーランスの国民年金は定額制とはいえ、将来的には目減りする可能性が大きい点は、会社員と同様です。フリーランスはただでさえ年金受給額が少ないという点とあわせて、注意しておきましょう。

 

年金受給の目減りに対応するためには


2019年の年金の財政検証の結果から、現時点でフリーランスが受給できると予測されている基礎年金の受給額を見ると、老後の生活を年金だけでまかなうというのはもはや不可能に近いと言えます。そう考えると「老後の生活が不安」と感じる人は少なくないでしょう。

しかし、現実をきちんと把握しているからこそ対策が取れるというもの。漫然と何もせずに過ごすのではなく、1日も早く年金受給の目減りに対する対応策を取ることが、老後の生活を守るために大切です。年金受給の目減りに対するフリーランスがすべき対応策について、おすすめしたい方法を3つ紹介します。

年金の受給開始を遅くする(繰り下げ受給)

基礎年金が受給できるのは原則として65歳からです。しかしその時点で受給請求をせず、66~70の間に受給を申し出るいわゆる繰り下げ受給が選択できます。

繰り下げ受給制度を利用すると、一般の人よりも遅れての基礎年金の受給開始となるため、受給金額が増額されます。65歳に達した月から繰り下げ受給を申請した月の前月までの月数×0.7%が増額されることになります。増額は70歳までですが、受給開始をできるだけ遅くするほど増額できるので、フリーランスが簡単に受給金額を上げる方法としておすすめです。

長く働ける環境を作る

会社員にはないフリーランスのメリットのひとつが、定年がないということです。

会社員でも定年後に働くことは可能ですが、これまで勤めていた会社に嘱託などで再雇用されない限り再就職活動をしなければいけません。対してフリーランスは、これまで続けてきた事業を年齢制限なしに継続できますから、会社員より年金受給額が少なくても収入を確保しやすいのです。

体力減少や持病の対応など、加齢による労働力の低下をカバーしながら、少しでも長く働ける環境を早めに作っておくといいでしょう。

iDeCoなど私的年金制度の活用


公的年金の受給額が少ないフリーランスは、老後の生活の自衛策として自分で年金を準備しておくという意識を持ちたいもの。公的年金に加えて私的年金制度を上手に活用しましょう。

私的年金制度とは、フリーランスやその妻などの国民年金第1号被保険者が任意で加入できる制度です。国民年金基金や、毎月掛け金を支払い60歳以降に給付を受け取れるiDeCo(個人型確定拠出年金)などを指します。少しでも早く利用することで、より有効な老後の収入保障になり、生活レベルを落とさずに老後を過ごすことができます。

特にフリーランスは夫婦で制度をフル活用しよう

夫がフリーランスで妻が専業主婦である、夫婦ともに自営業であるといった場合は、公的年金の受給額は基礎年金部分だけになります。2人分を受給しても、生活するには十分ではありません。

私的年金制度を利用することで公的年金の受給額の不足分を補えるため、老後の生活を見据えて積極的に、そして早めに利用を検討しましょう。

 

まとめ

会社員もフリーランスも、老後対策が重要であるのは同じです。ただ、自営業世帯の場合、公的年金の受給額は夫婦合わせて10万円前後(2019年の物価水準)しかありません。

また、会社員であっても、今後数十年の間に現在存在していない職業が増えると同時に、現在存在する職業の中には淘汰され消えていくものもあると言われています。今は働く環境があったとしても、それがずっと続くとは限らないのです。

安心して老後を過ごすためにも、できるだけ長く働ける環境を作るのと同時進行でiDeCoなどの私的年金制度を上手に利用してみてはいかがでしょうか。

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