2019年の財政検証で年金受給額の目減り必至。老後資金準備は今すぐ始めよう(1)

2019年の財政検証で年金受給額の目減り必至。老後資金準備は今すぐ始めよう(1)
財政検証ってなに? 2019年財政検証を紐解くと、年金受給額の目減りは不可避であることが濃厚。その理由と対策、特にフリーランスがやっておきたい将来設計についてお伝えします。
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2019年財政検証から見えてきた未来とは。会社員でもフリーランスでも年金受給額は必ず減ることが確定しており、経済成長が進まなければ年金保険料の悪化や増税、年金受給開始年齢引き上げなどの可能性もあります。

年金受給額の目減りは避けられない状況です。ただ、受給額の目減りや受給年齢引き上げは必ずしも悲観的なものではなく、年金制度をより盤石なものにして、年金を確実に受け取るために必要な対処だといえます。受給者が今できることは、現実を受け止め、年金受給の目減りに対応していく自己防衛策をとること。

本記事では、2019年財政検証の読み解き方、フリーランスの自己防衛についてお伝えします。

 

どうして年金受給額が減ってしまうの?

最近何かと騒がれている年金について、気になるという人は多いでしょう。2019年に厚生労働省が発表した財政検証の結果によれば、今後の年金受給額が目減りするのはほぼ避けられない状況であることが濃厚になってきました。連日の年金に関するニュースである程度予想はついていても、数字として確定的であると示されると不安が増しますよね。

しかし、現実に即した効果的な対応策を取るには、たとえ厳しくても現実をまず把握しておくことが非常に重要です。どういった状況になりそうかをあらかじめ想定しておけば、自身で取るべき対応策の内容がより具体的になるからです。

そこで今回は、老後資金の準備のために知っておきたい、年金制度の状況の把握にも重要な「公的年金の財政検証」について紹介します。財政検証とはどういったものなのか、2019年に行われた財政検証のポイントを解説するとともに、なぜ年金受給額が目減りする可能性があるのかについてお伝えします。

公的年金の健康診断、「財政検証」とは


公的年金の健康診断とも言える財形検証とは、公的年金の運営にあたって定期的に収支のバランスをチェックし、その見通しを作成するものです。公的年金の状況は、財源となる年金保険料収入と、年金給付のために必要な支出とのバランスによって見通しが立ちます。

ただし、年金の収支バランスは人口構成や社会情勢、経済情勢などの変化によって年々変わっていくため、長期的な計画を立てたとしても見通しどおりにはなりません。人口構成はある程度見通せているとしても、社会情勢や経済情勢は得てして予想以上のスピードで変化していきますし、変化する内容も予想した通りとはいかないからです。

こうした計画と現実の乖離をなるべく避けるために、少なくとも5年ごとに新しい見通しを作成し、その都度見直していくための公的年金の健康診断、財政検証なのです。

2019年の財政検証のポイントとは


公的年金の収支の現状と将来の年金受給額を推定するための、いわば公的年金の健康度チェックとも言える財政検証。もっとも新しい財政検証は2019年に行われました。今回の財政検証で注目しておきたいポイントについて見ていきましょう。

財政検証は6つの経済前提で試算される

2019年の財政検証は、次の6つの経済前提シナリオをもとに進められました。経済成長率・物価上昇率・所得代替率の3つの設定は下記の通りです。

所得代替率とは、公的年金の給付水準を示す指標で、現役男性の平均手取り収入額に対する年金額の比率で表されます。

※【所得代替率】=(夫婦2人の基礎年金 + 夫の厚生年金)/ 現役男性の平均手取り収入額

経済前提シナリオ経済成長率物価上昇率所得代替率(2046年)
ケース1(最良シナリオ)0.9%2%51.9%
ケース20.6%1.6%51.6%
ケース30.4%1.2%50.8%
ケース40.2%1.1%46.5%※
ケース50.0%0.8%44.5%※
ケース6▲0.5%0.5%36%~38%※

※ケース4~5は年金の財政バランスが取れるまで給付水準調整を進めた場合の所得代替率。ケース6は、2052年度に年金の積立金がなくなり、完全な賦課方式に移行してからの給付水準。

ケース1~3は、内閣府が試算した成長実現ケースを元に、経済成長と労働参加が進んだ場合を想定しています。ケース4~5についても、内閣府が試算したベースラインケースを元に、経済成長と労働参加が一定程度進んだ場合を想定しています。つまり、ケース1~5までは、基本的に経済が成長し、労働参加が進むことが大前提なのです。

6つのモデルケースのうち、経済成長も労働参加も進まない悲観的な前提はケース6だけです。経済が後退する可能性がほとんど考慮されていないというのは、楽観的ではないでしょうか。

6つの経済前提シナリオの諸前提について、もう少し見てみましょう。

6つの経済前提シナリオの諸前提は甘い

2019年の財政検証では、前回の2014年の財政検証と比べて実質賃金の上昇率は低めに設定されています。その反面、共働き世帯が増加することで就業率や出生率が増加し、労働参加が進むという前提になっているのです。

たしかに、共働き世帯の増加などで労働参加は進むかもしれません。だからといって、国内の経済もそう簡単に成長するとは限りません。国内の経済状況は常に変化があり流動的です。

労働参加が進んでも経済は後退するかもしれませんし、こんな時代だからこそ悲観的なケースを複数入れないと、現実味に欠けるのではないでしょうか。

就業率や出生率がこの前提よりも下がると、もっとも悲観的な想定になっているモデルケース6よりもさらに悪い事態になる可能性があります。こうした、諸前提の甘さ、楽観的すぎるモデルケースについては、注意が必要と言えるでしょう。

どんなシナリオでも年金受給額は目減りする


先ほど、6つの経済前提シナリオは、楽観的で諸前提が甘いとお伝えしました。
しかし、この楽観的すぎるシナリオのいずれでも、年金受給額が目減りすることが確定的になっています。

6つの経済前提シナリオによって行われた2019年の財政検証を踏まえて、想定される年金受給額の現状についてもう少し詳しく見てみます。

最良のシナリオでも、所得代替率は約10%下がる

2019年度の所得代替率は61.7%です。しかし、2019年の財政検証の結果では、最良の経済前提シナリオであるモデルケース1であっても、2046年度には所得代替率が51.9%になる計算がされています。

政府の目標である物価上昇率2%を達成し、経済が成長しても、所得代替率は約10%減少してしまうのです。老後の大切な収入源となる公的年金ですから、10%という減少率は、けして低いとは言えません。

年金受給額の目減りは避けられない

2019年の財政検証では、経済前提シナリオが最良のケースでも、現役世代の平均手取り収入の51.9%の年金しか受け取れないということがわかりました。
社会情勢や経済情勢の変化によっては、これよりもっと下がる確率の方が高くなることも考慮しておく必要があります。

最悪のケースでは、2052年度には国民年金の積立金が底をつき、年金制度の運営は積立方式から完全賦課方式に移行します。そうなれば、所得代替率は36~38%になるという結果も出ています。つまり、どんな経済状況であっても将来の年金受給額が目減りすることは、ほぼ避けられないと言えるでしょう。

所得代替率が50%を切ると、増税の可能性も

特に注目しておきたいのは、経済前提シナリオのケース4~6の場合です。この3つのシナリオは現状の年金制度だと所得代替率が50%以下になるという計算ですから、少しでも改善させるためには抜本的な年金制度の見直しが必要になることを意味しています。

年金制度の見直しとは、すなわち年金の財源という収入部分を増やし、年金受給という支出部分を減らして年金制度の維持を目指すということです。さらなる消費税の増税や年金保険料の値上げによって財源を確保すると同時に、年金受給開始年齢を67歳に繰り上げるといった措置で対応していく可能性があると言えるでしょう。

繰り返しますが、2019年の財政検証のケース1~5は楽観的な前提です。悲観的な前提がケース6しかないので、今後の経済情勢によっては、増税や年金保険料が上がる可能性は、十分あるでしょう。

まとめ

年金は、私たちの老後の生活基盤を左右する重要な収入源です。しかし、今後未曾有の超高度経済成長期でも訪れない限りは、年金受給額の目減りは避けられません。会社員であっても、フリーランスであってもです。

国内の経済成長が大きく進まない限り、年金保険料の引き上げや増税、年金受給開始年齢引き上げなどの厳しい措置が次々と行われる可能性があります。年金受給の現状が分かると、年金受給前から生活がさらに厳しくなりそうだと考えたり、年金受給への不安が高まってどうしても悲観的になったりします。

しかし、年金保険料引き上げなどの措置は、年金制度をより盤石なものにして、国民一人一人が年金を確実に受け取るために必要な対処です。

将来の年金受給者が今できることは、厳しい現実を受け止めた上で、年金受給の目減りをただ見守るのではなく積極的に対応することです。つまり、自己防衛策を1日でも早くスタートさせることが重要でしょう。

次回の記事では、年金受給額の目減りに対応する方法と、特に気をつけなくてはいけないフリーランスが取るべき対応策について解説していきます。

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