フリーランス保護のためにいま、国が取り組んでいること ー 厚生労働省のレポート報告 ー
『働き方改革実行計画』に基づき、自営型テレワーカー向けガイドラインを刷新
永倉:平成29年3月28日に可決された『働き方改革実行計画※1』では、雇用類似※2の法的保護の必要性を含めて中長期的検討を進めるという点と、自営型テレワーカーの実態を把握したうえで2017年度中の改定を進めていく、という2点が盛り込まれました。
自営型テレワーカー※3は雇用関係にありませんので、基本的には労働関係法令※4が適用されません。そのような方々に対して、契約に関わる紛争を未然に防ぎ、良好な就業形態とするために、今年2月にガイドラインを刷新させていただきました。
※1 働き方改革実行計画:働き方改革の実現のため、安倍内閣総理大臣を議長とする「働き方改革実現会議」でまとめられた実行計画のこと。同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正、といった事項も盛り込まれている。
※2 雇用類似:自営型テレワークをはじめとする、雇用契約によらず、雇用に類似した働き方のこと。
※3 自営型テレワーカー:事業者と雇用契約を結ばずに仕事を請け負い、自宅等で働くテレワーカーのこと。
※4 労働関係法令:労働基準法、労働組合法、労働契約法など、労働者であれば対象となる法令。
ガイドラインで定められた「クラウドソーシング事業者を含む仲介事業者」が守るべき事項とは?
永倉:ガイドラインの大きな改定箇所は「仲介事業者」の定義を定め、ガイドラインの対象としたことです。
1.他者から業務の委託を受け、当該業務に関する仕事を自営型テレワーカーに注文する行為を業として行う者
2.自営型テレワーカーと注文者との間で、自営型テレワークの仕事のあっせんを業として行う者
3.インターネットを介して注文者と受注者が直接仕事の受発注を行うことができるサービス(いわゆる「クラウドソーシング」)を業として運営している者
永倉:今回改定したガイドラインは2月に局長通達というかたちで発出しています。パンフレットを作成し、厚労省のHPにも掲載して周知しており、より自営型テレワークが良好な就業環境となるよう努めています。
フリーランスの働き方の実態や課題整理のため、検討会を実施
永倉:続いて、雇用類似の働き方についてご説明します。 雇用類似とは、雇用契約によらない、雇用に似た働き方のことです。
厚労省では、まず実態を把握しようということで昨年10月24日より『雇用類似の働き方に関する検討会』を開催。東洋大学法学部教授・鎌田先生を中心に先月3月26日まで計4回開催しました。
1.就業状況
仕事内容は多岐に渡る。契約期間がない者が多い一方、定めがある場合は、比較的短期の傾向。特に副業の場合は、10日未満が多い傾向にあった。
2.契約書の作成・重視する内容
契約条件を文書等で明示していないケースも多くあると考えられる。明示されていないため、仕事終了後、トラブルが生じたという声もみられた。
3.契約条件の決め方・交渉
仕事がなくなる等の恐れからワーカー側から労働条件の交渉が難しいとの声もあり。交渉力に格差が生じていることも考えられる。
4.契約の相手先の数
業界によって傾向は異なる。専属義務はなくとも、仕事量から複数の発注者と契約ができず、結果的に専属関係にあるケースもみられた。
5.クラウドソーシングについて
クラウドソーシングのようなシェアリングエコノミーの分野では、サービスを受ける者が一般消費者であるケースも多いと思われるため、発注者は誰かと考える等の論点も想定される。
6.受注ルート
自己の営業活動、過去の取引先、知人等からの紹介などから仕事を得ている場合が多いと考えられる。
7.仕事をする時間や場所
比較的、発注者に指示されない方向での回答が多かった。
8.トラブル・仕事上の悩み
約半数はトラブル経験がないとの回答。作業内容・範囲について、仕様や作業期間等の一方的変更、報酬関係のトラブルは比較的多かった。ハラスメントや事故、解約等に関する声もあった。
9.制度の希望
問題点は「収入の不安定さ」「失業保険や労災保険のようなものがないこと」が多かった。今後希望することは「特に必要な事柄はない」「取引相手との契約内容の書面化の義務付け」「トラブルがあった場合に相談できる窓口やわずかな費用で解決できる制度」「取引相手との契約内容の決定や変更の手続き(プロセス)の明確化」の順で多かった。
フリーランスの安心・安全のため、引き続き活動を進めていく
永倉:雇用類似に関する実態を調査したうえで、今後の保護等の在り方の方向性については、まだ「検討中」の段階です。今後とも企業間取引、BtoBのみで捉えていくか、労働者に準じるものと捉えていくのかについては、さらに議論が必要です。
その際、このような働き方の方が安心・納得して働くことができるよう、そして経済社会全体の付加価値の源泉としても望まれる働き方になるようにはどうすればいいか、という観点から、「雇用類似の働き方の者」や保護内容をどのように考えるかといった点も並行しつつ、精力的に議論していく必要があると思っています。
検討会では、保護が必要となれば、このような課題があるのではないかと、課題等についても整理していただきました。必要性も含め、今後検討を進めていく必要があると考えています。
1.契約条件の明示
2.契約内容の決定・変更・終了ルール明確化、契約の履行確保
3.報酬額の適正化
4.スキルアップやキャリアアップ
5.出産、育児、介護等との両立
6.発注者からのセクシュアルハラスメント等の防止
7.仕事が原因で負傷し又は疾病にかかった場合、仕事が打ち切られた場合等の支援
8.紛争が生じた際の相談窓口等
9.その他(マッチング支援、社会保障等)
永倉:『雇用類似の働き方に関する検討会』は終了しましたが、今後も厚労省の審議会等で議論を進めていく方針です。
以上が自営型テレワーク、雇用類似の働き方について、厚生労働省の取り組み報告になります。ご静聴いただき、ありがとうございました。
(おわり)