推奨企業は、本当に社員の副業を応援している? 新生銀行/ソフトバンク人事の本音が見え隠れ。

推奨企業は、本当に社員の副業を応援している? 新生銀行/ソフトバンク人事の本音が見え隠れ。
7月3日に開催されたイベント『【#アタラシイ時間】ドーナツを食べながら「副業」について考える!?~輪になって対話しよう!』から、パネルディスカッションの内容をお届けします。本稿では前編として、「副業推奨企業の人事部に聞く、メリットとデメリット」を中心に語られた内容です。
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副業する側・される側、それぞれの思惑に迫る

7月3日に開催された副業について考えるイベント『【#アタラシイ時間】ドーナツを食べながら「副業」について考える!?~輪になって対話しよう!~』から、パネルディスカッションの内容をお届けします。

登壇いただいたのは、副業を推奨している企業として『株式会社新生銀行 中尾 陽平 氏』『ソフトバンク株式会社 石田 恵一 氏』、副業の実践者として『ヤフー株式会社 岡 直哉 氏』『コクヨ株式会社 岸 健二 氏』。ハフポスト日本版編集長の竹下 隆一郎 氏をモデレーターに、副業を許可する会社の人事/副業をする従業員によるディスカッションが開催されました。

当日の様子を前編・後編に分けてお届けします。本稿では前編、「副業推奨企業の人事部に聞く、メリットとデメリット」を中心に語られた内容です。

■会場協賛:The Millennials Shibuya(運営:株式会社グローバルエージェンツ)
『世の中に新しい価値を生み出し文化を創る企業。未来が見える​宿泊体験。暮らす・泊まる・働く・遊ぶ テクノロジーが進化し全ての境界線がなくなっていく時代 暮らすように泊まり 遊ぶように働き 働きながら旅する ここはそんな未来のライフスタイルを切り開く世代のためのホテル』をコンセプトにしたホテルや、ソーシャルアパートメント、ホテル、カフェなど様々なライフスタイル事業を手掛ける。

副業のメリット、両者の言い分


左から、竹下 氏(ハフポスト)、石田 氏(ソフトバンク)、中尾 氏(新生銀行)、岡 氏(ヤフー)、岸 氏(コクヨ)

竹下 隆一郎 氏(ハフポスト日本版:以下、竹下):ここからはパネルディスカッションというかたちで、進めたいと思います。

(パネルディスカッションの前のコンテンツで)結構、盛り上がっていましたね。実は、ハフポストの記者も待機していて、質問が全く出なかったら、パッと入ろうと思っていたんですけど。もう記者会見並みに質問が出たので、すごい盛り上がってよかったなと思います。

まずは、(前のコンテンツで話をした人、していない人がいるため)初めて会う方もいらっしゃるので、自己紹介を簡単にお願いします。

岸 健二 氏(コクヨ:以下、岸):普段はコクヨという会社で、オフィス家具のビジネスのデータを使ったマーケティングをやっています。そのかたわら、楽曲の提供という副業をやっております。

岡 直哉 氏(ヤフー:以下、岡):普段は、ヤフー株式会社でデザイナーをしております。デザインの内容は、会社全体のプロモーションページだったりとか、CM周りの、ブランディングのデザインとディレクション担当です。副業でもフリーのデザイナーとしてやっておりまして、3年ぐらい前からデザインの仕事を、個人でもやらせていただいております。

中尾 陽平 氏(新生銀行:以下、中尾):新生銀行のグループ人事部で仕事をしております。副業については、社内の検討チームで、いろいろ考えたところがあるのでお話ししたいと思います。私自身も、いろいろ副業をやりたいなと思ってはいるものの、今は子育てのほうに時間を取られているところです。これが終われば、自分も副業をやっていきたいと思っております。

石田 恵一 氏(ソフトバンク:以下、石田):仕事は、人事制度の企画や運用、ダイバーシティーの取り組みもやったりしています。昨年、当社の働き方改革の一環で副業制度の企画に携わったことから、呼んでいただきました。私も自分では、活発にはやっていないので、これを機に取り組んでいけたらなと思っているところです。

竹下:ありがとうございます。まずはポジティブな質問なんですけど、副業のよいところ、ひとつだけ挙げるとしたら、どんなところでしょうか。

石田:企業目線で言うと、やっぱり、社員ですね。本業とは違う場所で、違う経験とか、違うスキルを身につけてもらえるというのは、すごいポジティブだと思っています。

ある意味、武者修行みたいなことだと思っていますので、少しでもそういったところで活躍して、スキルや人脈をつくって本業にも還元してもらいたいなと思っているところです。また、社外の人との関わりで得られる知識を活かして小さなことでもよいのでイノベーションにつなげて欲しいですね。

中尾:石田さんがおっしゃったところは、新生銀行でも同じです。外で武者修行して得たものを、会社に還元してもらえることを期待しています。あと、一番よかったと思うのは、副業を始めた方の顔が生き生きとしてきた点です。

活性化という言葉がキーワードになりますが、そういう経験をしてきた人に、社内がかき回されたほうがいい。生き生きとした人が増えるということは、一番大きいメリットではないかと思っています。

岡:やっぱり、自由というところが一番いい点かなと思います。本業と違って、自分でやりたいことを選べたりとか、やりたい職種も選べますし、時間帯も自分が好きなように調整できるので、その辺の融通が利くのが副業の魅力かなと思います。

岸:ひと言で言うと、人生を豊かにしてくれるものという感じですね。生き生きという話がありましたけど本当に、「生き生きしているね」って周囲の人に言われます。

竹下:今、企業さん側、あるいは社員の立場からなんですけど、どっちも共通しているのは、視野が広がって、生き生きとしたりとか、モチベーションにつながるということで、副業のいい点は、そこに尽きるのかなと思います。

明日から全員が副業を始めたら、日本はどう変わる?

竹下:少し話題を変えて、個人や会社にメリットがあるということでしたけど、日本にとってはどうでしょう。ちょっと大きな話ですけど。例えば、この場にいらっしゃる方が全員、明日から副業を始めたらどんないいことがありますか。

石田:日本にとってだと、明日から始めたらいいということもそうですが、もっともっと広がっていくと、日本型の雇用システム、年功序列とか、長時間労働とか、終身雇用とかが崩れていく大きなきっかけになると思います。

自分のスキルを発揮できる場が本業の会社以外にあって、そこで対価を得られる状態が広がっていくということは、ひとつの会社に縛られ続ける必要がなくなりますので。そういう人が増えてくると、本当に大きく広がっていけばですけど、成長産業に人が移っていったり、日本自体の労働生産性というのも上がっていくのかなと思います。

竹下:いきなり転職というと、あるいは起業というのはハードルが高いですけど、副業で試してみて「これはいけるな」と思う人が増えて、産業としてばっと盛り上がると日本も成長する気がしますね。

中尾:ふたつあります。ひとつは、効率化が進むだろうと思います。(副業する側が)時間管理をしっかりしないと、なかなかうまくいかないと考えています。一方で企業側も、副業を進めるためには、業務内容や仕事の要件を整理する必要があるため、効率化が加速するのではないかなと思います。

もうひとつがイノベーションです。月並みなお話かもしれませんが、企業間でまたがってお仕事をされると、インフルエンサーとして、他社での知見を自社に還元していくなど、いろんな情報交換がされて、イノベーションが起きやすくなるのではないかなと思います。

岡:企業の働き方が多様化してくるのかなと思います。今はやっぱり、企業という枠組みがあると思うんですけど、そのうち、それもなくなってきて、やりたいことにすぐチャレンジできるような世の中になってくるんだろうなというふうには感じています。

岸:前の3人にほとんど言われてしまっているんですけど(笑)。

竹下:4人目、大変ですよね。よっぽど面白いことを言わないと。

岸:何となく、いろんな融通が利いて、よくなっていくイメージが漠然とあります。やっぱり、生産性は上がるんじゃないかと思います。私も本業へのシナジーを感じる部分があり、より本業で生産性高く成果を出そうという頭になりますので。

それが重なっていくと、企業も働きがいを与えるみたいなことを考えますよね。働きやすさではなくて、働きがいを与えないと、人も集まってこないみたいなところがあって、そこに行き着くのかなと感じています。

人事部が考える、会社に副業者が必要な理由

竹下:ありがとうございます。ここから個別に、まずは中尾さんと石田さんに、企業さん側の目線を伺います。副業というと、ちょっと言い方悪いんですけど、人事部の人とか企業側は、敵みたいに思えちゃう。いかにバレないようにするかとか、怒られるんじゃないかみたいなことを思っちゃうんですけど、企業にとっても、必要だというメッセージを教えていただくと、副業するほうも安心というか。

小さな例なんですけど、副業をするとお金とか経費に対して意識が高まってきて、会社の財務とかに関心がいって、今まで何気なく使っていた経費を少し考えて使うようになったりとか。ひとりの社員の方が、すごく経営者意識を持つみたいなことを聞いたことがあるんです。それはなるほどなと思ったんですけど。それに限らず、副業解禁というのは、本人の生き方にとってもいいけど、企業にとってもいいよというのがあれば教えてください。

中尾:今、竹下さんに言っていただいたところもありますが、力試しみたいなところはあるんだろうと思います。20年ぐらい同じところに勤めている人だと、自分がどれぐらい外で通用する力を持っているのかが見えなくなっていることもあります。副業を通じて今の実力を試し、あるいはそれに磨きをかけていく。外を見ることは、個人としての実力を高めることにつながり、その結果として会社に大きく貢献できるようになると考えています。

石田:違う環境で働いて、違う経験をできるというのは大きいかなと思っています。当社の例でいうと、エンジニアの社員が大学の講師を副業でやっていたり、書籍を書いたりしているケースがあります。いろんな副業があると思うので、あくまで例なんですけど、(副業するにも)専門性を常に高めていかなきゃいけない。講師なんかだと、特に専門性が求められるでしょうし、社内ではできないネットワークも外でできるんです。そうすると専門領域の幅も広がっていく。社員自身のパフォーマンスが上がる、成長していくというのがあると思います。

もちろん企業にとっては、社員の専門性が上がって、より活躍できるような状態になって戻ってきてもらうというのはすごくいいこと。その社員は専門領域が広がったり、活躍が社内で伝わって、今までやっていたエンジニアの仕事だけじゃなくて、新規事業の開発なんかの分野にも携われるようになるんです。会社としても任せられる仕事の幅がすごく広がって、そういう意味でのメリットというのは大きいです。

副業推奨企業にあえて聞く、導入のデメリットは

竹下:すごくいい話なんですけど、本当かなって、ちょっと思っちゃうんですよね。絶対デメリットあるだろうみたいなことをちょっと思っちゃって。やっぱり、中尾さん、石田さんにとって、企業さんにとって「ちょっと心配だな」とか「こういう副業があると困る」なみたいなことありますか。それとも、全員が副業をすれば万々歳なんですか。

中尾:個人的な心配という点でいうと、副業をされる社員の健康管理について考えます。当社では問題が起きていませんが、一般的には趣味が兼業に発展するケースでは、副業にのめり込んでしまって体調に影響が出るのではないか。ただ、不安はありますが、基本的には前向きに、やりたいことは認めていきたいと思っています。

それから人事としての目線ですが、多様な働き方に対応することは、それなりに技術が求められるということです。今ままでは、同じ働き方人を前提にルールを定めていたわけですけれども、副業で、週3日、あるいは、午後からほかの仕事する場合、現状のルールのままで対応できるのか。その辺を個別に対応していかなければいけないというのは、人事としては今後の課題だろうと思います。

石田:会社として大きくデメリットに感じるというのは、正直、今のところは、あまりないと思っています。強いて言うと、社員の申請を許可するというかたちをとっているのですが、当社の場合、ビジネスの幅が広いことがあって、競業にあたるかを審査するときに、それなりに工数がかかるというところがあります。

弊社がお客様から受注しているものを、副業の社員が取ってしまうかたちになるのは、やっぱり、会社としては許容できないです。いくつか審査があるのですが、その辺は、間違いがないようにチェックしているので、そこの工数は多少かかっています。

副業の相談をするなら、どのタイミングが最適か


竹下:
(前のコンテンツの)トークセッションでちょっと耳を澄ましていると、人事部の方にいつ言うべきかという疑問がありました。早く言ってくれたほうがいいんですか。それとも、ちょっと固まってからとか、こっそり言ってほしいとかありますか。

中尾:悪いこといことではないので、こっそり言っていただく必要はありません。検討段階から早めに言っていただきたいと思います。新生銀行で改めてルールを設けたのは、「非公認でやらないでね」ということでもあります。きちんと言っていただければ、内容に問題ない限り認めますので。早めにご相談いただいたほうが、親身になって一緒に検討できると思います。

竹下:ありがとうございます。中尾さん、石田さんの話を聞いていて思ったのは、一生懸命工夫をしていらっしゃるなと思って。どうしても会社の立場があって、(社員が副業を申告すると)罰を受けるんじゃないかと思っちゃうんですけど、コミュニケーションをスタートさせるのも大事だなと、二人のお話を聞いて思いました。

(後編につづく)

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