フリーランスの経理業務ガイド

フリーランスの経理業務ガイド
フリーランスとして活動を始めたら、実際の経理業務はどのような流れで行っていくことになるのでしょうか?ここでは、フリーランスの経理事務を、「日」「月」「年」の時間単位ごとに追ってみました。
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フリーランスの経理とは

フリーランスは「個人事業主」です。したがって、税制上は、「白色」か「青色」のどちらかの個人事業主としての経理に関する義務が課せられることになります。

近年、フリーランスで個人事業主になる人、副業で本業以外に収入のある人が増えたことから、平成26年1月以降は、白色申告でも収入金額とは無関係に、雑収入や報酬については記帳と帳簿の保管が義務付けられるようになります。今後、こうした法律は厳しくなっていく傾向にあります。

一方でフリーランスの収入は、給料のように、毎月一定額が入ってくるといったものではありません。仕事の受注量や単価で毎月の収入額はまちまちになります。

それに対して、家賃、水道光熱費、電話や携帯、プロバイダー料金といった通信費などは、毎月固定で支出されます。こうした固定支出は「お金がないから、払えない」というわけにはいかない出費です。さらに、税金や健康保険までをフリーの収入だけで賄うとなると、「少しでも節税したい」という切実な希望も出てきます。

ですから、年間を通して

  • いくら入って、いくら出て行ったか?を把握する
  • 無駄な出費を抑える
  • 余計な税負担を減らす

という目的のために、もうけと費用の状況を正確に把握する必要が出てくるのです。それには、経理事務が必須事項となってきます。

さらに、一人親方であるフリーランスの場合、「少しでもシンプルに経理事務を行う工夫」も重要になってきます。

経理も重要な業務の一つですが、まずは受注した仕事を納期に間に合うように、確実にこなさなくては、報酬は得られません。経理事務でもたついて、無駄に時間を割かれることで、本来の業務がこなしきれなくなってしまうのでは、本末転倒です。

したがって、フリーランスの経理は、なるべくシンプルなステップで、まとめられるところはまとめ、最低限、日々行わなくてはならないところだけは確実にこなす、といった、メリハリのある方法をとるのがコツだといえます。

将来的には、収入がある程度大きくなったところで、家族を専従者に、経理事務を担当してもらって、専従者控除か専従者給与を活用できるようにするか、経理に専任してもらうスタッフを確保することも検討すべき事項です。

1. 日々の経理業務

フリーランスで業務を開始したら、日々、確実にしておかなくてはならない業務は

  • はいってくるお金の記録…売上、入金、借入など
  • 出ていったお金の記録…支払、購入、返済など

の2つです。

白色申告と、青色申告10万円の個人事業主の場合は、簡易簿記で差し支えありません。実際のお金のやり取りがあったときの日付で、記帳をしておけばOKです。家計簿と要領は同じです。

もし、なんの取引もないときは、手書きの場合は日付のみ、0円の記帳または伝票を切っておきます。手書きの仕訳をしない場合は、会計ソフトでの入力は省略しても構いません。

青色申告65万円の特別控除を受けたいときは、「正規の簿記の原則に従って記帳」というルールになっています。正規の簿記=複式簿記の場合、取引の記帳は「発生主義」で記録するよう定められています。

発生主義というのは、出ていくお金も、受け取るお金も、「代金を払いますよ」と約束した日で記録を残す、ということです。例えば、「納品して、実際の入金は10日後」という場合:

  • 納品した日→売上と売掛金の発生
  • 支払を受け取った日→売掛金がなくなり、現金の増加が発生

という状態になります。複式簿記の場合は、この「納品した日の出来事」と、「支払いを受け取った日の出来事」の両方を、それぞれの日付で記録していきます。

支払の場合でも、「クレジットカードで購入して、引き落としが1か月後」といった場合

  • カード払いで購入した日→品物(資産)と買掛金の発生
  • 口座引き落としの日→買掛金がなくなり、預金の減少が発生

という形で、「カードで購入した日のできごと」「口座引き落としの日のできごと」を、それぞれ記録する決まりとなっています。これらはこまめに記帳しないと、勘違いやうっかりが増える恐れがあります。複式簿記では、毎日記帳することを原則にしておいたほうがよいでしょう。

記帳処理の実作業そのものは、必ず毎日しなくてはいけないというわけではありません。取引0円が続くようなときは、数日分をまとめて処理しても、ルール違反ではありません。ただし、漏れ、抜けが起こらないようにチェックは厳重にする必要があります。

こうした取引の記録と並行して、証拠となる領収証や、請求、受取の証拠となる請求書の控えや、領収証の控えは、なくさないように確実に保管しておきましょう。専用のファイルを1冊用意して、月ごとにまとめて入れておく、毎回記帳処理のたびに、ノートに張り付けていく、など、無くさない工夫をしておきましょう。

【実務のヒント】ランサーズでの「売上」は、手取り?それとも?

弊社サービスにて誠に恐縮ですが、クラウドソーシングサービスの「ランサーズ」を経由して、フリーランスの方々が受け取る報酬は、システム利用手数料が差し引かれた金額が手取りとなります。では、この場合、「売上」は、手取り金額のことでしょうか?それとも、手数料を引く前の金額でしょうか?

経理上では「ランサーズ手数料を引く前」がよろしいかと思います。考え方としては、「手数料込みの金額をいったん受け取ってから、システム利用手数料をランサーズに払っている」という形。もちろん、手数料は「経費」になります。源泉徴収税についても同じで、「売上」は源泉徴収前の金額です。ただし、源泉徴収された所得税は経費にはなりません。

【実務のヒント】ランサーズにおける口座の売上帳はどうやって処理する?

ランサーズでは、専用の口座に入出金の記録が残されているので、これを利用しないのは勿体ないかもしれません。特に、タスクなどを頻繁に利用していると、毎日のように、いくつもの件数の入出金が入り乱れることになりますから、これをいちいち、1件ずつ伝票に書き写して、会計ソフトに入力していたのでは、時間もかかり、間違えやすいですし、チェックも大変です。

ところで、税法上では売上について、「同じ日に、同じ業務で生じたものは、一括して記入してよい」というルールもあります。また、売上帳は、取引先ごとに作るのが基本ですが、小口のものは「その他」でまとめてもよいという決まりもあります。

そこで、ランサーズでは、口座の記録をオンラインでコピーして、エクセルシートに「形式を指定して貼り付け」して処理するのがオススメです。業務内容が違うものや、源泉徴収されている特定の取引先のものだけを抜き出して、残りを月次ごとに分け、SUM関数で処理すれば、月ごとの売上帳が簡単に作れます。抜き出したものは、個別にまとめて合算処理し、顧客別の売上帳にします。

また、改ざんが疑われたりしないよう、口座の取引記録そのものは、原本としてPDF化するかプリントアウトして残しておくと良いでしょう。

【実務のヒント】システム利用手数料、振込手数料は「ナニ費」?

ランサーの方々が、ランサーズを利用する際にかかる「システム利用手数料」や、ランサーズの口座から自分の口座へ報酬を振り込んでもらうときかかる、「振込手数料」、これらは、「ナニ費」になるか分かりますか?

正式には「雑費」が良いかと存じます。「振込手数料は、「支払手数料」では?」という意見も出るかもしれません。間違いではないのですが、一般に、自分の口座から出金するときの手数料は「雑費」で処理する場合が多いのです。例えば、休日などにATMを使って出金したときの手数料も、雑費で計上します。

これに対して、第三者宛に振込を行うときかかる手数料は、「支払手数料」として計上されます。ですから、依頼主の方々が利用するときにかかる、システム利用手数料や、エスクローのときの手数料は「支払手数料」で処理するのが妥当です。

注意しなければならないのは、一度、科目を決めたら、常に同じ科目で計上すること。「先月は、支払手数料にしたけど、今月は雑費にしておこう。」はNGです。正確な経費計上ができなくなるうえ、あらぬ誤解を生む可能性があります。

2. 月々の経理業務

毎月忘れずにしなくてはならない業務は、以下のようなものがあります。

  • 通帳の記帳と入出金チェック
  • 請求業務
  • 帳票の入力、確認チェック作業

雇っているスタッフや、家族従業員がいる場合は、これらに加えて、

  • 給料計算、支払い
  • 源泉徴収と納税(対象者のみ)

が入ってきます。

【記帳】

通帳の記帳は、毎月必ず1回は行うようにしましょう。これを忘れると、一括記帳で処理されてしまうため、細かい取引の記録を連続して残せなくなってしまいます。一括記帳された場合は、後日、銀行が明細を別紙に打ち出して送ってくれることがあります。そうしたものも、大切な証拠になりますから、保管しておきましょう。

口座管理は、オンライン取引を開始すれば、在宅のままパソコンで取引をチェックすることが可能になります。地方都市などでは、ATMや支店が少ないこともあり、出かけていく時間がもったいない、という側面もありますから、利用を検討してもよいかもしれません。

【請求業務】

請求は、忘れると支払の遅れや、滞りの原因となります。締日が来たら速やかに請求書を出せるようにするには、請求の事由が発生した時点で、手すきのときに、相手の宛名や、摘要などを途中まで記入しておくとよいです。

【帳票の入力と、確認チェック作業】

毎月日を決めて、帳票や領収証、通帳と、会計ソフトのデータを突き合わせて入力して、入力ミスがないかをチェックします。これらは同じ日に行っても、入金のタイミングなどに合わせて、別の日に分けて設定してもOKです。必ず毎月行っていればよいのです。

【給料関連】

給料計算は、フリーウェアを使って行うと事務負担が軽減されます。専従者1,2名分くらいの処理でしたら、それでも差し支えありません。

源泉徴収が必要なほどの給与を払うような事業規模になったら、事務経理には専任のスタッフや、税理士への依頼も必要になるかもしれません。

【実務のヒント】同居の子供に払った給料は経費にできる?

仕事が立て込んでくると、お子さんを呼んで、「ちょっと、手伝って!」なんてことも出てくるかもしれませんね。領収証を日付順に並べるとか、中学生くらいなら、やり方さえ教えれば、会計ソフトの入力作業くらいなら、十分やってもらえる範囲です。手伝ってもらえば、その間、作業がはかどるというもの。助かります。

さて、ここで、「ご苦労様、これ、お給料」なんて、お金を出してあげたら、これは、経費になるのでしょうか?これは、「なる場合と、ならない場合がある」という答えになります。

白色申告の場合、お子さんが15歳以上で、専従者として働いてもらえれば給料を経費にできる場合もあります。ですから、中学生三年生未満は、まず、アウトです。高校生以上でも、昼間部の学生が専従者になれるケースは条件が厳しいようで、税務署に「要相談」ということに。

青色申告専従者の場合は、条件そのものは、白色と同じです。ただし、届出が必要になりますから、「今日働いてもらったから、今日から専従者!」というわけにはいきません。

また、いずれの場合も、給料と仕事内容が適切であることが求められます。経費を膨らませるために、簡単な仕事をちょろっとさせて、ごっそり払ったことにする、というのは認められません。

【実務のヒント】業務を整理する工夫

フリーランスになって、経理事務を3~4か月経験すると、だんだんと要領が飲み込めてきます。大体のパターンが決まってきたら、次は、「まとめて行える業務がないか?」を考えてみましょう。

紙にフローチャートを書いてみるのも良い方法です。(下記、参考画像参照のこと)

まとめられる作業は整理して、一括で処理してしまうようにすると、時間の短縮につながります。

年度末の経理業務

年度末になると、通常の業務に加えて、税務のための作業が加わってきます。

  • 決算整理仕訳
  • 確定申告の準備(添付書類の収集、整理)

決算整理仕訳は、1年間のまとめでその年の終わりに一括して計上する仕訳です。

この、決算整理仕訳が終わって、やっと、確定申告の準備が完了!ということになりますから、ここを済ませないとその先には進めません。
決算整理仕訳は「ちょっと難しい、ややこしい作業」といわれ、苦手にしている方も多いようです。年に1回しか行わないため、慣れにくいせいもあるでしょう。

しかし、手順を追って行っていけば、計算そのものは算数の四則計算だけです。重要なのは、「どういう意味のお金を指しているのか?」のほうで、計算方法は、税制の変更で変わる場合もあります。ここでは、各決算整理仕訳の意味と、計算方法の概要を知っておきましょう。

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決算仕訳が終われば、あとは確定申告書の作成と提出です。

フリーランスの確定申告については、他の業種と違って気を付けるポイントがあります。詳細は、また、別記事にてご案内したいと思います。

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