「専従者」のフリーランス活動について

専従者とは?
白色申告および青色申告の個人事業主は、配偶者および、15歳以上の同居の家族を従業員として一定の条件のもと働かせて、給料を支払い、その分を収入から差し引くことを認められています。
こうして働く家族従業員のことを『専従者』といい、一定の条件で、給料を事業主の経費として計上する(または控除する)ことができます。こうすることで、事業主の所得が小さくなり、節税効果を得ることができます。
『専従者』について所得税法で定められている事項は以下のとおりです。
- 生計を共にする親族であること
- 1年の半分を超える期間を、事業主の事業のために働くこと
- 白色申告では、専従者控除を配偶者は86万円、その他の親族は50万円とする
- 青色申告では、届出を行った上、届出で定める金額を上限とし、専従者給料を経費にできる(上限に対する制限はなく、合理的な理由があれば金額は自由に決定可能。詳細は後述)
『専ら事業に従事する者』ということで「1年の半分以上」と定義されており、「1日2時間を365日」等といった勤務では、専従者とは認められません。目安として「1日6時間以上、月に15日以上ないしは、年間で6か月以上相当」を事業に従事することが原則となっています。
農業のように、農繁期と農閑期で労働時間の偏りが生じる等、無理のない事情であれば、労働時間は必ずしも年間を通して一律でなくても構いません。しかし、極端に短い場合は「専ら事業に従事している」と認めてもらえない可能性はあります。
これらの条件から、15歳以上とはいっても、昼間部の高校生は専従者には認めてもらいにくい傾向です。なぜなら、学生の本分は「勉学」である、というのがその理由。しかし、定時制高校の学生を始め、一定の要件を満たせば、専従者として認めてもらうことができます。
専従者に払うのは、控除?給料?
働いてもらうからには、その対価としてお金を払うのは当然です。ところで、事業主が専従者に支払うのは「控除」でしょうか。それとも「給料」でしょうか。
こちらは、事業主が白色申告か青色申告か、で変化します。白色申告の場合は「専従者控除」であり、青色申告の場合は「専従者給与」になります。
白色申告の場合は、控除の上限は86万円とあらかじめ決められています。一方で、青色申告の場合は、届出のときに決めた金額が上限となります。これは「仕事に見合った金額」というルールもあり、「簡単すぎる仕事に、見合っていない高額すぎる報酬」という状況は認められません。
税制上の扱いが異なるということで、給料の払いを行うことには変わりはありません。白色申告の場合は、控除として事業主の収入から直接差し引くのに対して、青色の場合は、経費として差し引くという違いがあります。
専従者給料から源泉徴収は不要?
フリーランスの事業主の方々が配偶者等を専従者にしている場合、源泉徴収をしていないケースが多いという実情があります。
これは「フリーランスは専従者から源泉しなくてもよい」のではなく、源泉徴収が不要な金額に専従者給与の金額を決めているからです。
専従者であっても給与所得者であることには違いないですから、一定金額以上を事業主から給与として受け取るようになれば、源泉徴収をされることになります。
一般的に多く見られるのが「月収8万円でボーナスなし」というもの。この額ですと、年額96万円となり、所得税の源泉徴収は不要です。この場合、「月々の生活費として渡すお金の、一部が奥様の給料、残りが、ご主人からの生活費」という形で現金支給される方法をよく見かけます。
専従者が副業でフリーランスをするときの注意点
専従者が副業としてフリーランス収入を得ることは違法ではありません。しかし、専従者としての条件を満たせなくなったときには、専従を外れなくてはなりません。専従者と、フリーランスを掛け持ちする場合は、いくつかのデメリットがあります。
・65万円の経費の特例が使えない
家内作業のフリーランスが利用できる「経費の特例」は、ほかに給与所得を得ている場合は、適用されません。専従者も給与所得者になりますから、給与から65万円の控除は受けられますが、経費の65万円の控除はできません。
・副業の作業時間のほうが長くなると、専従者とは認められなくなる
専ら副業に従事している、という判断がなされれば、フリーランスのほうが「本業」となり、専従者の要件を満たしていない、と判断されるときがあります。
・事業主になれない
事業主になるためには、専従を外れなくてはならないという決まりがあります。
副業が本業にあたるか?の判断は税務署によるところが大きく、判断の基準はあいまいです。しかし、専従と副業を並行して維持しようとすると、一定時間以上作業ができず、また、事業主にもなれないという制限から、副業の収入が頭打ちになる可能性は高いといえます。
こうした点から、「専従者を取るか、副業を本業にするか」を自分でも見極めて決定することも、いずれ必要となってくるでしょう。