地球全体がオフィスのフリーランス |パワートラベラー 阪口裕樹、世界在住。
地球中をオフィスにして、働き、旅を続けるフリーランス
自分のライフスタイルを『パワートラベラー』 と名付け、時間と場所にとらわれない働き方を実践する阪口裕樹さん。
Webサイト『STORYS.JP』に掲載された『あいりん地区で元ヤクザ幹部に教わった、「○○がない仕事だけはしたらあかん」という話。』という記事がきっかけで、2014年には自らの半生を綴ったを書籍 を出版。
そこで語られている凄まじい体験は……。うつ病を患い退職。自殺をはかるも失敗。その治療のため入院。退院後は実家で引きこもり。人生の再起をかけて大阪の「あいりん地区」と呼ばれる路上生活者が集まる地域へ。 三畳一間の部屋で、ネットで収益を上げる仕組みを構築し海外へ出発。
現在はヨーロッパやアジアを中心に、海外を旅する生活を送られています。自由な働き方・生き方を実践するためのヒントを阪口さんに伺いました。
フリーランスになって海外へ。12カ国をPC一台で働きながら飛び回る
―阪口さんはご自身をパワートラベラーというネーミング、ブランディングをなさっています。まずこのパワートラベラーの働き方、ライフスタイルについて教えてください。
パワートラベラーというのは、「旅をしながら旅資金を稼ぐ、そんな働き方をしたい」というところから始まったライフスタイルです。働き方はフリーランスやノマドと同じですが、僕の場合は仕事を積極的に海外に持ち出しているというのが特徴ですね。
パワートラベラーは世界のどこででも生きることができる力を持っている状態、経済力であったり、仕事を持っている状態だったり、外国語でのコミュニケーションができるような状態ですね。そうした力がある人のことを指しています。
―具体的にはどんな働き方になるのでしょうか。
ベースとなっているのはWebメディアの運営です。
アフィリエイトやGoogleアドセンスなどのインターネット広告を利用しながら、個人でも収益をあげることができるメディアをPCひとつで作っています。
運営しているメディアは様々です。私立学校の資料請求サイトや、スマートフォン用のゲームのまとめサイト、バレエ情報をまとめたニュースサイトなど、自分の趣味が反映されているサイトや、収益性だけを考えて運営しているサイトなど色々ですね。
これに並行して、Facebookやブログを通じて情報発信も行っています。僕の「パワートラベラー」というライフスタイルを広める活動ですね。
旅をしながら仕事をしている様子や、面白い出会いや海外だからこそ気が付けたことなどを配信して、このライフスタイルに共感してくれる仲間を増やす活動をしています。
あとは日本に帰国したときに勉強会を開催したり、日本を縦断しながら「自分も自由になりたい!」という人の相談に乗ったり、僕と同じようなライフスタイルを叶えたいという人を集めたオンラインサロンなども運営させていただいてるんです。
基本的には「PC一台でできる仕事」かつ「個人でできる仕事」に特化した働き方を追求しているという感じですね。これを、旅をしながら続けています。
―旅をしながらということですが、これまで何カ国くらいで仕事をしてきたんでしょうか。
あまり多くはないのですが東南アジアだと、タイ、ラオス、ベトナム、ミャンマー。ヨーロッパは、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、オーストリア、チェコ、オランダ、ベルギーで仕事をしてきました。まだ12ヶ国なので、バックパッカーや世界一周をしている旅人と比べると、滞在国数は多くありませんね。
僕は滞在型の旅が好きなので現地にアパートを借りて拠点を作り、その街に暮らすように旅をしています。
日本で部屋を借りるとなると、保証人や敷金礼金が必要で物理的、経済的にハードルが高いです。しかし海外では外国人向けに気軽に借りられるアパートが多くあるんです。最近だとAirB&Bなどのサービスが有名ですが、そういったサービスで気軽に部屋を借りることができるんです。
インターネットがつながる部屋を選べば、その部屋を生活拠点かつオフィスにして仕事をすることができます。外に出たらお洒落なカフェがたくさんありますし、スターバックスなどのチェーン店はWi-Fiがつながるので、そうしたところを転々としながら仕事をしています。
このスタイルの面白いところは、観光しながら仕事ができることなんです。
たとえば、午前中はサグラダファミリアに登って、午後はその近くにあるスタバに篭って仕事をする。お腹が空いたら地下鉄で地中海まで出てパエリアを食べたりとか、このような1日を過ごすことができるんです。
旅や旅行というと、予算や期間が決まっていますよね。僕も昔はバックパッカーをやっていたのですが、なかなか……予算の関係で、好きな街ができてもそこに長く留まることはできませんでした。
でもこのパワートラベラーのライフスタイルだと、気に入った街に住み着いて、そこでネットを繋げて資金を稼ぎ続けることができるんです。収益が伸びればその分選択できるものは増えます。語学学校に通ったり、現地の変わったツアーに申し込んだり。逆に収益が落ちれば、荷物をまとめて東南アジアに逃げ込めばいいですし(笑)。そのときの自分の状況に合わせながら、柔軟に行き先を決めています。
夢見た働き方、フリーランスになって感じた孤独
―フリーランスとして生きていく、しかも海外でという不安や葛藤はなかったんでしょうか?
はい、それはありましたね。
もともと僕は、うつ病になり誰かと一緒に働くことが出来なくなりました。「会社員には戻れない。ひとりでもできる仕事をしよう」と思いフリーランスで仕事をはじめたんです。結果的にうまくビジネスが伸びて出国できたわけなんですが、実際に異国の街に暮らしてみたら、寂しくて仕方がなくて……(笑)。
僕はもともと人付き合いが苦手なのですが、それは海外に行っても変わりませんでした。現地の人と仲良くなったり友達を作ることもできなくて、最初の2ヶ月くらいは誰ともしゃべることができずに過ごしました。この時期は本当に辛かったですし、何度も帰国しようと思いました。
でも、日本に戻っても行き場はなかったので、「これじゃダメだ!」と思い必死に英語とタイ語を学びました。言葉が話せるようになってからは、少しずつ友達ができたのですが、仕事の方は相変わらず一人ぼっちでした。
「夢見たライフスタイルは叶ったけれど、ひとりはやっぱり寂しい。つながりが欲しい」と日に日に強く感じるようになりました。
ランサーズでゆるいチームを作って仕事をする
そんなときに出会ったのがランサーズでした。僕がランサーズに出会ったのは2012年、まだクラウドソーシングという仕組みが一般的ではなかった頃です。「個人が、個人に自由に仕事を依頼することができる」そんなことは考えたこともありませんでした。
この頃、僕は運営しているメディアの全業務をひとりで行っていました。サイトの企画を立て、その分野についての情報取集をし、記事を書き、そしてサイトにアップ、といった業務です。
試しにランサーズでサイトの記事を書いてくれる人を募集したところ、たくさんの人から返答があり驚きました。色んな人に記事を書いてもらうことで、僕は違う作業に集中することができ、その結果メディアを大きくすることが出来ました。
タイから仕事の依頼を出して、静岡や北海道から返信が来る。その体験はすごく衝撃的で面白かったです。つい調子に乗って仕事の依頼を出しすぎたこともあります。その時は予算を依頼費にあてるために、一時的に安いドミトリーに引っ越しました(笑)。
ランサーズで仕事を募集するようになって3年経った現在では、収益を生むであろうサイトの企画を僕が考えて、その企画に合う人をランサーズで募集するという方法を取っています。「メンバー募集!」というような声のかけ方はしませんが、僕の中ではインターネットを通じて、ひとつのゆるいプロジェクトチームを作っているイメージです。
「海外にいても、誰かとつながって仕事をしている」という感覚を持てたことで、旅をしながら仕事をするライフスタイルも楽しめるようになりました。
―自由な働き方っていいな、海外を旅したいなって人は何万人といるでしょう。でも一歩を踏み出せない人も大勢いると思います。その背中を押すものって、何だと思いますか?
僕の場合は、うつ病になり勤めていた企業を辞めています。
病気がマシになった後、企業に戻る選択肢もあったのですが、僕がフリーランスになる道を選んだのは「自分は、自分の人生に何を求めるのか?」と自問した時、その答えが企業で働く道では見つからなかったことが大きかったからです。
僕は色んな世界を見て回りたかったし、色んな人や言語に触れてみたかった。でもそれは企業で働いていたら叶うことはありませんし、叶ったとしても何年先になるかわかりません。僕はそのライフスタイルを何年後といわずに今すぐにでも叶えたかった、だからフリーランスになることを選ぶことにしました。この働き方であれば、僕が願ったライフスタイルを叶えることができると信じていたんです。
同じように周りで自由なライフスタイルを叶えている人を見ると、彼らに特徴しているのは、なにかしら「フリーランスを選択しなければならなかった人」が多いです。切羽詰まった状況であったり、どうしても叶えたいものがあったり。ポジティブでもネガティブでも、何か強烈な気持ちが背中を押してくれるのかも知れませんね。
無理に一歩を踏みだそう、と思うではなく、「その一歩を踏み出す理由が自分の中にあるのか?」「その一歩を踏み出したあとで一体どんなライフスタイルを叶えたいのか?」を考えてみてください。その理由が見つかれば、自然と前に踏み出せるはずです。
―単純に「海外を旅し続けられたら幸せ」という話ではありませんよね。そこに至る苦労もそうですし、もっとずっと先まで続く人生そのものを考えて、自分の意志で選んでいくことが大事なんだと思いました。ありがとうございました。