スキルを掛け合わせ価値を上げ、幅広い仕事を受注する|フリーランスが生き抜く術
小さい頃からの夢だった「物を書く人」
私がフリーランスのライターになったのは40歳を過ぎてからでした。小さな頃から漠然と「何か物を書く人になりたい」という夢は持っていたのですが、人縁があるわけでもなく文才に自信があるわけでもなかったので、本当に漠然とそう感じていたにすぎませんでした。
これからお話しする“フリーランスになった理由”は、20代で初めて就職した時にまで遡ります。
20代で運良くある民間病院の医事課に採用が決まり、7年間実務を重ねたあと、某総合病院の入院係長職に転職する、とステップアップを果たしました。
私の人生の中で最も順調だった「勤め人の時期」です。その総合病院に入院係長として勤務6年目に伊豆にある分院の医事課長への人事打診がありました。本来なら大栄転のはずなのですが、どういうわけか、いまひとつ煮え切らない気分になり、思い切って病院を辞めてしまったんです。
振り返っても随分と思い切った辞職を決意したと思いますが、この時自分を突き動かしていたのは「物書きになりたい」という気持ちだったような気がします。この小さい頃からの夢…いや、夢というのは語弊があるかもしれません。本が好きだからというだけで、小説家になりたいのか記者になりたいのかさえ曖昧だったのですから。
ソフト関連会社、そしてサイト制作会社へ
病院を辞めてからも、出版社や新聞社にツテがあったわけではありませんでした。しばらくはどうしようかと途方に暮れていたのですが、とりあえずはバイトでもしながら公募や出版社に応募をし続けようと考えていた中、勤めたのがソフト会社でした。
「医療事務」に関するソフト開発に力を入れていたので、医療事務経験者というキャリアがとても役に立ちました。プログラムに関してはズブの素人だったのですが、ある程度のソースコードの書き方やコツを勉強させてもらい、次第にITへの興味も湧くようになってきました。
しかし、この会社も業績不振に陥り倒産するという憂き目に遭い、あえなく無職に。
そうこうしているうちに偶然にもハローワークの斡旋する「サイトデザイン講座」を受講できることになりました。半年後に、サイトデザイン会社に就職。そこでの主な仕事は「ライティング」でした。不思議な巡り合わせですが、ここにきてようやく「物を書く人になる」という獏とした夢が叶うことになるのです。
3・11運命の日〜そしてフリーランスへの道程
2年ほどサイトデザイン会社で仕事をしていた折、私をフリーランスへと導く決定的な出来事が起こります。「東日本大震災」でした。
当時会社は神田にあったのですが、社屋が一部破損し事務所は移転せざるを得なくなりました。また顧客の多くが東北地方の太平洋側だった関係で、地震被害が甚大な地域のクライアントさんもあり、会社の将来に暗雲が立ち込めていたのを思い出します。
会社は事業規模を縮小させざるを得ず、非正規雇用であったため、私がリストラの対象にされたのは必然でした。日本全体が暗澹とした状況のなか、年齢的にも次の仕事がなかなか決まらない。ライティングなら在宅でもできると思い、ネットで「在宅ワーカー」を探し出したのがこの頃です。
最初の仕事は思わぬところから舞い込んできました。某SNSの「キャリアを見て興味を持った」というメッセージで、「仕事の依頼」が来たのです。
最初の仕事はこちらから探したのではなく、ヒョンなところから舞い込んできたのです。それから半年ほどその会社を中心としたライティング活動をしていました。
フリーランス・ライターだけで食べていける?
ライターの仕事というのは単価が安く、今でも平均的なギャランティはランサーズ+他のライティングの仕事を合わせて10万円前後。良い時はもう少し稼げますが、フリーランスのライターだけで生活していこうというのは非常に厳しいと言わざるを得ません。
フリーライターを目指すなら、文章力+別のスキルがあった方がいいでしょう。例えば“デザイン”や“システム構築”は単価がライティングよりずっと高額であることがわかります。
サイトに掲載する記事のライティングをメインにしたいと希望している場合でも、サイトデザインやコーディング・スキルを合わせ持つことで、「サイト構築」というビックプロジェクトの依頼を受けることもあるのです。ライティングに関連する複数のスキルがあれば、フリーランスで暮らしていける程度には稼げるような気がします。
フリーランスで“名前だけで仕事が取れる人”というのはごくごく限られた一部の人だけ。現実はそれほど甘くはないと、フリーランスになってから何度も思い知らされています。
ただ、納期さえ責任を持って守れるなら、タイムスケジュールや仕事のペースには融通が利くので精神的なストレスは普通のサラリーマンに比べるとずっと少ないことも実感しています。
サイトデザイン会社に身を置き、制作する側の立場で見ていると、サイト制作の際に最も難渋するのがサイトに使う“画像と文章の準備”です。誰もがクオリティの高い撮影スキルや文章力を持ってるわけではありません。
この世にサイトが存在し続ける限り、ライターの仕事は無くなることはないでしょう。私はまだまだ無名のライターですが、「物を書く人」という夢は叶いました。なので、次のステップは人並みに稼げるライターを目指したいと思っています。