「イタリア=陽気でおおらか」だけじゃなかった。移住したローマで出会ったワークスタイルとは

「イタリア=陽気でおおらか」だけじゃなかった。移住したローマで出会ったワークスタイルとは
世界各地に住むフリーランスが、“住んだからこそわかったその国の魅力”を紹介するシリーズ。 第三弾は、イタリア・ローマをご紹介。イタリア=おおらかで明るく陽気、というイメージがありますが、実際生活してみるとどんな環境なのか、滞在歴15年のライターがレポートします。
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自分探しの留学の末に辿り着いたローマ。そこで感じた日本との違いは?

イタリア旅行が大好きだったOL時代。まだバブルの名残が残っていた大手企業で、優雅に花形の販売促進部勤務。ところが30歳を迎えるころ、将来、会社員ではなく自分だからこそできる仕事をしたい、という安易な願望が湧き上がり、当時流行りの「自分探し」のためのイタリア留学を決意しました。ところが、留学中に出会ったイタリア人の夫と結婚、2人の子供にも恵まれ、気が付けば専業主婦になっていました。

公立保育園の数が少なく、小学生までは送り迎えが義務であるイタリアでは、仕事と家庭の両立は難しいので、子供が小さいうちは子育てを選択しました。「専業主婦」と言えど、イタリアの専業主婦は、家族のために家をピカピカに磨き上げ、下着までアイロンをかけまくる家事のプロで、とてもじゃないけれど完璧にこなすことは一苦労。下の子の幼稚園入学を機に、空いた時間を利用して、私の15年のイタリア生活の知識や経験でできる仕事、翻訳、ライターとして活動を始めました。

旅行中では見えない現実の生活

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実際の生活で付き合ってみると、イタリア人はとても現実的な国民性です。いろいろな民族に支配されてきた歴史背景からか、国や他者をあてにするという概念は存在しません。自分や自分の家族のことを一番に考え、その時々に状況に応じて、個人の判断で臨機応変に対処していくのに長けている民族です。仕事は生活のための収入を得る手段であって、生活の楽しみ、生きがいは仕事とは別だ、きっぱり割り切った考え方が主流です。

家族が何よりも大事を体現するワークスタイル

その考えだと、私の住む首都ローマでは、官公庁の公務員が花形職業。公務員は収入が安定しているうえ、仕事は比較的楽で勤務時間は短く、休みが多い。残りの時間は、趣味に副業にいそしむ人、それぞれですが、なんといっても家族と過ごす時間が大切です。イタリアでは、転勤はほぼ皆無で、国家公務員でも、銀行員でも、大多数の人が自宅から職場へ通い、夕食や週末は家族と一緒に過ごす、というのが、一般的な生活スタイルです。

フリーランスとして働くネックは “税制”

屋外のテラス

逆に、フリーランスは、とても難しいのがイタリア。個人の所得税率の平均が約50%という恐ろしい高税率なので、フリーランスだと働いても働いても税金で消えてしまいます。しかも、税制が複雑で、収入の申告が確定されるまで、いくら払えばいいのかもわからないという複雑怪奇ぶりです。会計士に相談し、ちゃんと注意していても、覚えのない罰金がいきなり届き、利子をつけて払う羽目になったりすることまでよくあるのです。

ただ、観光地だけあって、街のあちこちにWIFIが整備されているので、どこでもパソコンが使えるという意味では便利です。近所の区立公園でもWIFIフリーなので、子供たちに付き添いながらパソコンを使うことも多いのですが、私以外にも、パソコンで仕事や勉強をしている人たちの姿も見かけます。

人生で、一番楽しい時間の過ごし方は?

子供が小さかった頃は、ほぼ毎日通っていたイタリアの公園では、子供を連れて来ているのは、母親はもちろん、おじいさんやおばあさん、外国人のベビーシッター、そして父親まで人それぞれです。日本の公園デビューとは異なり、いろいろな年代や国籍の人と知り合う貴重な経験になりました。

当初“昼間公園にいる男性”、というのはある意味衝撃で、失業中かと思いきや、フリーランスの建築家、レストラン勤務、自営業、など、夫婦で交代しながら子供と過ごしているお父さんたちでした。長期の海外勤務の後だから、久しぶりに子供と過ごせるという軍人の父親までいて、働き方や人種など、公園で出会う人々はまさに社会の縮図、といった様相でした

働くイタリア人ママにとってベビーシッターは当たり前

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外で働く母親に雇われているベビーシッターは、主にフィリピン人、ルーマニア人、ポーランド人、そしてペルー人などの外国人が一般的です。中には、子供を本国に置いて単身で出稼ぎに来ている人までいました。

驚くことに、こうした外国人のベビーシッターたちは、少ない収入の一部を、国にいる親や兄弟などの家族へ送金しているのが普通なのです。イタリア人だって不況にあえいでいるという物価高のイタリアで、働く女性の代わりにベビーシッターや家政婦として働き、送金までしながら頑張って暮らしている外国人がたくさんいるのです。

夏も近いある日、みんなでバカンスの話で盛り上がっていた時のことです。「夏休みは家族に会いに国へ帰るの?」と問いかけたイタリア人に、「私は、ここに夫と息子という2人の家族がいるの。国に帰る余裕はないけれど、自分の家族3人で暮らせているのだから、帰れなくても大丈夫!」と言いきったルーマニア人のベビーシッターの言葉が忘れられません。

日本の“家族サービス”はイタリアでは理解不能?

カップル

以前、イタリア人の友人からこんなことを聞かれました。「世界の国々の習慣の違いについてのテレビ番組で、日本人男性が“一番楽しい時間の過ごし方”についての質問に対して、『仕事の後に会社の同僚と飲んでいる時、週末に会社の人とゴルフに行ってる時、それから、晩酌しながらテレビで野球の試合を見ている時』って答えたけど、これって日本人がワーカーホリックっていうやらせだよね」と聞かれました。

「たぶん、本当だよ。大多数の日本人男性の意見だと思う」と答えた私に、「えーッ!!!!」という驚きの大合唱!「家族は?」というのが、その場にいた全員の質問。残念ながら、“家族サービス”という言葉まであるとは、口が裂けても言えない雰囲気だったということも、付け加えておきましょう。

イタリアで探し続ける、フリーランスとしての生きる道

経済的には日本にいたころとは比べ物にならないけれど、自分の好きなことを仕事にしながら、3人の自分の家族とたっぷり過ごす時間がある今の生活。欲を言えばきりがないけれど、人の暮らしって、所詮はこういうことなんだろうな、と思うのです。

今はまだ、日々、進化し続けている子供たちへの興味が尽きないので、仕事のキャリアはまだまだなのが実情です。一度にすべてを手に入れることは不可能だけど、子供たちの成長につれて、徐々に仕事へと時間をシフトして、イタリアの魅力に触れながらフリーランスとしていつまでも現役で働くのが、自分探しの末にたどり着いた今の私の夢なのです。

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