フリーランスは育児休業給付金をもらえる? 出産・育児の支援制度まとめ

フリーランスは育児休業給付金をもらえる? 出産・育児の支援制度まとめ
出産・育児期の所得を補うものとして、育児休業給付金などの制度を活用したいと考えるフリーランスの方々は多いのではないでしょうか。今回は、フリーランスは育児休業給付金をもらえるのか、出産・育児のときにフリーランスが活用できる制度について、税金情報サイト『マネーイズム』の編集部に解説いただきます。
LANCER SCORE
0

出産・育児の支援制度

子どもが生まれると、より多くのお金・時間・労力が必要になります。そこで、出産後の働けない期間中の所得を補うものとして、育児休業給付金などの制度を活用したいと考えるフリーランスの方々は多いでしょう。この記事では、税理士紹介25年の株式会社ビスカスが運営する税金情報サイト『マネーイズム』の編集部が、フリーランスは育児休業給付金をもらえるのか、出産・育児のときにフリーランスが活用できる制度にはどのようなものがあるのか、詳しく解説します。

育児休業給付金とは

「育児休業給付金」は育児休業中の収入を保障する給付金です。出産前後には、産休・育休制度の活用と併せて育児休業給付金の給付を受けることができます。

産休と育休

「産休」とは産前産後の休業のことです。産前休業は出産予定日の6週間前から請求によって取得できます。産後休業は出産の翌日から8週間にわたって就業できない期間のことで、請求は必要ありません。

「育休」とは育児休業のことです。育休は1歳に満たない子どもを養育する男女が会社に申し出ることにより取得できます。育休を習得するには、「継続的に雇用されていること」などのいくつかの条件を満たさなければなりません。

育児休業制度とは

育休を取得するためには、過去に継続的に雇用されており、今後も雇用され続ける見込みが必要です。以下の場合は育休を取得できません。

・雇用期間が1年未満である
・1年以内に雇用期間が終了する
・週の所定労働日数が2日以下である

育休の期間は原則1歳までです。保育所に申し込んでいても実際に利用することができなかった場合は、休業期間を最長で2歳まで延長することができます。

両親がともに育休を取得する場合は、休業期間を1歳2ヶ月まで延長することもできます。

育児休業給付金の内容や申請方法

育児休業給付金は、雇用保険の「雇用継続給付」に属する育児休業期間中の収入を補う給付金です。給付金を受けるためには一定以上長く働いている勤務実績や、育休期間中に賃金をもらっていないか、もらっていても少ないことなどの条件を満たさなければなりません。

育児休業給付金の支給額は、最初の半年間は賃金の67%、その後は50%です。育児休業給付金は基本的に会社を通じて2ヶ月ごとに申請します。

フリーランスは育児休業給付金をもらえない

フリーランスは雇用されて働いている存在ではないので、産休・育休や育児休業給付金の対象ではありません。そのため、多くのフリーランスが出産後の早い段階で仕事に復帰しているのが現状です。

産休制度と育休制度の対象は労働者

産休と育休はいずれも労働者のための制度です。労働基準法では労働者とは「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義されています。労働者ではないフリーランスは両制度の対象ではありません。育児休業給付金はあくまでも育休中の労働者の収入を保障するものなので、育休制度の対象外であるフリーランスがもらうことはできません。

フリーランスは出産手当金も対象外

出産に関してフリーランスがもらうことのできない給付としては、育児休業給付金の他に「出産手当金」があります。出産手当金は、会社などに勤めている場合に労働者に対する給付として所属する健康保険から支給される給付です。出産手当金の支給額は、月当たりの収入の2/3程度です。被雇用者ではないフリーランスは出産手当金をもらうこともできせん。

フリーランスは産後すぐに仕事に復帰している

月収30万円で1年間の育休を取った場合について育児休業給付金・出産手当金・社会保険料を計算すると、会社員とフリーランスでは300万円程度の収入差があるという試算もあります。

早期復職で収入を元に戻そうと考えるのは自然なことで、妊娠・出産・育児を経て仕事を継続しているフリーランスの約59%が2ヶ月以内に、約45%が産後1ヶ月以内に仕事に復帰しているというアンケート結果もあります。(試算とアンケートは2017年 雇用関係によらない働き方と子育て研究会調べ

フリーランスが使える出産・育児支援制度

育児休業給付金や出産手当金の対象外であるフリーランスも、いくつかの金銭的な出産・育児支援制度を利用することができます。ここでご紹介するような制度を活用すれば、出産・育児にかかる出費を大きく抑えることができるでしょう。制度の申請先は市役所などの市区町村です。産前・産後、また育児と仕事の両立でどんなに忙しくても、申請を忘れないことが肝要です。

妊婦健診の補助

「妊婦健診」は、妊娠中の母体と胎児の健康状態を定期的に確認する健診です。妊婦健診は妊娠初期には4週間に1回程度、中期には2週間に1回程度、出産前は1週間に1回程度、計14回程度行うことが推奨されています。

妊婦健診の費用については、各自治体が実施する補助制度があります。補助を受けられる健診の回数や補助金額は自治体によって異なりますが、全国平均としては14回以上の健診に対して10万円余りが補助されています。

出産育児一時金

「出産育児一時金」は、出産手当金と同じく健康保険から支給されるお金です。出産手当金を受け取るためには労働者である必要がありますが、出産育児一時金にはそのような制限はありません。

そのため、フリーランスが国民健康保険に入っていても出産育児一時金を受け取ることができます。出産育児一時金の金額は42万円です。市役所などに申請することで、入院など出産にかかる費用のうち42万円が軽減されます。

国民年金保険料の免除

会社員の場合、「産前産後休業保険料免除制度」によって、健康保険・厚生年金保険の保険料の納付が一定期間免除されます。フリーランスが加入する国民年金でも2019年度から産前産後期間の免除制度が始まっており、出産前後の4ヶ月間の国民健康保険料が免除されます。免除を受けても年金を納めたものとして計算されるので、忘れずに届出ましょう。

児童手当

生まれてから中学卒業までの間は「児童手当」を受け取ることができます。児童手当の支給額は3歳未満で一律15,000円です(所得制限あり)。児童手当の支給は申請した月の翌月分からになるので、出産後速やかに申請しましょう。

フリーランスの「保活」

働くために子どもを預ける場所を確保する活動を「保活」と呼びます。保活のためには現行の「子供・子育て支援新制度」によって認定を受ける必要があります。

子ども・子育て支援新制度とは

「子ども・子育て支援新制度」は2015年に発足した国の子育て支援制度です。働く男女が子供を預ける場所には、幼稚園や保育所、認定こども園、地域型保育があります。これらの施設を利用する場合、利用者は市町村から保育の必要性の「認定」を受ける必要があります。

認定が受けられるかどうかは、それぞれの自治体が定めた方法で定まる点数で決まります。認定結果や所得によって負担するべき保育料が決まりますが、2019年から幼稚園・保育所の利用料無償化が始まっています。

フリーランスが「認定」を受けやすくするには

認定により保育の必要性が高いと判断されるためには、自治体ごとに定められたルールで算出される「点数」を上げる必要があります。フリーランスの場合は働いていることを客観的に証明できないと点数が低く計算されてしまう可能性があります。

こうした事態を避けるためには、まずは各自治体の認定の仕組みをよく確認することが重要です。必要に応じて開業届を提出して個人事業主となり、取引の記録を保存しておくとより確度が上がるでしょう。

保活の成功は事前準備が決め手

保活でやるべきことは認定を受けることだけではありません。自分が住んでいる地域にどのような施設があるか調べ、良いと思える施設を見つけた後は見学して確かめたり、地域の順番待ちの状況を確認したり、認定から漏れたときに備えて認可外保育園を探したりと、やるべきことはたくさんあります。

産後の万全ではない身体で子どもの世話をしながら保活を行うのは、多くの苦労を伴うものです。できるだけ早く保活を始めて、子どもと自分にとってベストな状態を実現しましょう。

まとめ

会社員などの労働者に対しては、産休や育休、その間の収入保障などの手厚い制度が用意されています。雇用されていないフリーランスには産休や育休がないので、その間の収入補償もありません。結果として、フリーランスと会社員の間には大きな格差が生じています。フリーランスでも使える制度をすべて使うことや、保活を早期に始めること、収入を増やす努力をすることなどにより、出産・育児を乗り切っていきましょう。

RECOMMEND
関連記事