業務委託契約を組み立てる法律・契約を知ろう!

仕事をします!という契約関係は、法律ではどうなっている?
「仕事をお願いできますか?」「わかりました、やりましょう!」・・・これで、両者の間には「合意」が出来上がり、法律上、仕事を行う「契約」が成立したとみなされます。
ところで、この場合、二人の間に結ばれた契約(双務契約)は、「何の契約」になるのでしょうか? そういわれてみると、実は「仕事をして(してもらって)お金をもらう(払う)」という契約関係は、実はたくさんあることに気づきます。
ここで、改めて考えてみると、『この二人の間の関係はどのようなものか?』で、両者の法律上の関係は変わってきます。
そして、『どの法律が両者のかかわりを規定するのか?』で、仕事を提供する側と提供される側との、指揮命令関係や、制限の範囲が変わってくるのです。
フリーランスと依頼人の間で交わされる「業務委託契約」の場合、法律上、「業務委託」を直接規定する条文がありません。そのため、個々の契約内容によって、個別にあてはまるような条文に照らして、義務と権利を定めていくことになります。
契約の中身がいくつかの法律にまたがることで、「契約当事者間の関係」「権利の範囲」が曖昧になることもあり、思わぬ誤解が起こる場合も実際に起こっています。
こうしたトラブルそのものは、業務委託契約という契約が「法律上、何に該当する内容か?」を理解できれば相当軽減されるであろうと考えます。そこで、今回は「仕事をする契約」を振り返ってみましょう。
雇用契約と派遣労働
【雇用契約】
「仕事をする契約」で、最も一般的に思い出されるのが「雇用契約」です。近年、急増している派遣労働も、雇用の一形態である、と考えられてきましたが、こちらは新しく法律が制定されたことから、対応する法律が労働基準法と派遣労働法に分けられました。
雇用契約は、「労働者が雇主と労働契約を結び、労務を提供する代わり、雇主は賃金を払う」という契約です。パートやアルバイト、正規雇用と、「労務の提供の形」は色々あり、賃金の算出方法も時給から月給まで様々です。
しかし、いずれの形でも「一定期間、決められた場所で働く」ことが基本で、勤務時間・休憩・時間外手当・休日など、労働の内容を労働基準法はじめ、関連する法律で細かく規定されています。
こうした、雇用契約については、雇用契約書を作って、相互に確認するよう指導がされており、悪質な違反には、罰則が適用されます。
労働者側も、雇主に対して、業務遂行のためには、業務命令に従わなくてはならない、という規定があります。業務命令に従わない場合は、一定の手順を踏んで契約を打ち切ることができる(解雇)という決まりもあります。
労働者は、雇主の指揮に従って働く(=労務を提供する)のであって、成果物の納品を求められたり、雇主の代行をするわけではありません。
ただし、賃金で生活していることから「明日から来るな」という解雇をされては生活することができません。そのため、最低でも30日前に予告をするか、それよりも短期間で解雇するときは、1か月分の賃金相当の「解雇予告手当」を支給すること、という決まりもあります。
【派遣労働契約】
派遣労働契約は、一見、雇用契約と似ているように見えますが、雇主と、労務の提供先が違います。「派遣」とは、「派遣元の社員を、派遣先の指揮命令の下で働かせる」という意味で、派遣労働者の雇い主は、仕事先ではなく派遣元になります。
賃金は、派遣先から、雇主である派遣元へ一旦支払われて、そこから所定の範囲の割合を派遣労働者が賃金として受け取るという形をとっています。人を送って仕事を任せるという点は後述する請負にも似て見えます。
派遣先は、派遣労働者を直接雇用しているわけではありませんから、人員が余る等して削減が必要になれば、解雇予告なしに、突然、派遣の打ち切りをすることができます。
また、派遣元が派遣社員の社会保障を負担しなくてもよい等、雇い主側にはコストカットの点では非常にメリットが大きいということが挙げられます。
以前は、派遣元が高額の中間マージンを「紹介料」名目で搾取する事例、賃金が労働基準法の最低賃金を下回る事例、突然の一方的な雇止めをされてその後の派遣先が保証されない事例。
劣悪な環境で健康を損なう事例が見られ、労働基準法なら違法であるのに、規制する法律がないという悪質な派遣が実在しました。
現在では、派遣労働法が整備されたことにより、一定の条件を守らなければ罰則の適用がされるようになり、違法性のある派遣は激減しています。
請負とは
請負は「何かの仕事を完成させるかわりに、報酬を払う」という契約のことを指します。民法632条で規定されており、最近になって厚生労働省により告示も行なわれています。
古くから、フリーランスを含む一人親方や、会社同士の業務提携・委託で、良く使われる形態です。「大工さんが家を建てる契約」 = 建築請負契約を思い浮かべると分かりやすいのではないでしょうか。
大工さんは、施主の希望に沿った家を建てることを約し、施主は、定めた日に、希望通りの家が建ったことを確認して報酬を払うことを約します。
大工さんは、いつ作業を行うか?作業員を何人入れるか?どんな道具を使うか?下請けを使うか、使わないか? などは請け負った棟梁が自由に決めます。作業時間も、施主から指図されることはありません。
一方で、施主は注文通りの家が建たなければ、報酬を払わないで、やり直しを命ずることができます。期日までに納品ができなかったら、契約を打ち切って代金を払わないということもあり得ます。
請負の場合、実際の業務を行う時間帯や、業務のこまごまとした指揮命令は、請負人に決めることができます。道具をはじめ、納品すべき成果物を作成するのにかかる経費は自分で負担します。報酬は、こうした経費を含んだ金額であるということです。
「ソフトウェア・グラフィック・文書の作成」などは、「注文の成果物を作成する」という請負契約です。「データ入力作業」「所定条件の検索を通した情報収集」なども、「特定の作業を請け負う」という請負契約であるといえます。
委任
委任は「誰かの代わりに定められた範囲の仕事を肩代わりする」という契約です。PTAなどの会議の際に、「出席できない代わりに、誰かに採決の権利を代行してもらう」ようなことは、もっともポピュラーな委任の一つです。
委任は、「一定の範囲の権限」を肩代わりしてもらうものであり、本人とまったく同様に、本人の権限を行使するものとは違います。
例えば「オークションに出品を代行する」は委任の一種ですし、「ホームページ管理」「商品受け取り」「無料ブログの開設」等も委任になります。
委任では、あらかじめ決められた範囲の権限にのみ、依頼人に代わって業務を行うことができます。決められた範囲を超えて、業務をすることはできません。
請負+委任の例
ところで、フリーランスで良く見かける、「ホームページ作成・管理」や「ブログ記事の作成・投稿の代行」はどうでしょうか?
これは、どちらも「作成」は請負になりますが、「管理や投稿」はホームページやブログサイトの開設者である依頼人の業務を代行するということに当たり「委任」になるのです。
また、作成した成果物の著作権の譲渡を記載する契約書を良く見かけますが、これは「委譲」「譲渡」の契約内容が、請負や委任に付け加えられている、という意味になります。
代理
派遣、請負、委任には、権限や作業の範囲に制限が掛けられています。それに対して、「法律上、本人が行ったものと同じ、とみなす」というのが「代理」です。
依頼主が「代理人」を依頼して、様々な行為を代わり行ってもらうと、代理人が行ったことは、本人がしたことと同じ意味になります。
日常生活で、気軽にお願いする代理人は、法律上は委任に当たり、代理ではありません。法律上「代理」が行えるのは「法定代理人」ということになり、これは、原則として弁護士の資格を持っている人だけが行なえることになっています。
※契約・法律関連情報:「2013年3月現在」