フリーランスでも家族の扶養に入れる! 扶養の条件や種類を知って税金の負担を減らそう

フリーランスでも家族の扶養に入れる! 扶養の条件や種類を知って税金の負担を減らそう
フリーランスの仕事が少ないうちは収入が安定している家族の扶養に入っていた方が、保険料や国民年金などの金銭面での負担を抑えられます。今回はフリーランスが入ることのできる扶養の基本的な種類や、扶養に入る際の条件・注意点について解説します。
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フリーランスでも家族の扶養に入れる条件や種類

フリーランスに転身したいけど、安定した収入を得られるようになるまでは家族の扶養に入りたい、またはフリーランスになったばかりで収入が少ないため、家族の扶養に入りたいと思っている方も多いのではないでしょうか。

仕事が少ないうちは収入が安定している家族の扶養に入っていた方が、保険料や国民年金などの金銭面での負担を抑えられます。この記事では、税理士紹介26年の株式会社ビスカスが運営する税金情報サイト『マネーイズム』の編集部が、フリーランスが入ることのできる扶養の基本的な種類や、扶養に入る際の条件・注意点についても解説します。

入ることのできる扶養の種類

扶養とは、自身の所得のみでは生活するのに十分なお金が得られない人を、家族などが養う仕組みです。家族を養う側を「扶養者」、家族の扶養に入る側を「被扶養者」といいます。フリーランスは所得税・住民税や社会保険について被扶養者になれる場合もありますが、それぞれにおいて扶養の意味合いは異なります。

税法上の扶養

税法上の扶養とは、家族を養い納税している扶養者が、所得税や住民税の控除を受けられるという仕組みです。被扶養者の属性によって扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除といった種類があり、それぞれ対象となる条件が異なります。

社会保険上の扶養

社会保険とは、医療保険や年金保険、介護保険などの総称ですが、一般的には健康保険と厚生年金保険の2つを指すことが多くあります。社会保険上の扶養とは、扶養者が厚生年金保険に加入しており、被扶養者である家族が条件を満たしている場合、扶養者の社会保険に入ることができるというものです。

フリーランスが家族の扶養に入るための条件

税法上の扶養、社会保険の扶養どちらもにおいて、フリーランスが家族の被扶養者となるためには一定の条件をクリアする必要があります。

所得税の扶養の場合

税法上の被扶養者に該当する場合、扶養者は扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除などの控除を受けられます。被扶養者の対象となるためには、扶養者との関係性によっていずれかの条件を満たしている必要があります。

扶養控除を受けるための条件
国税庁によると、扶養控除の対象である扶養親族となるのは、下記の4つの条件を全て満たす人とされています。

1.配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
2.納税者と生計を一にしていること。
3.年間の合計所得金額が48万円以下であること。
 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
4.青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

No.1180 扶養控除|国税庁

配偶者控除を受けるための条件
配偶者控除の対象となるのは、下記の4つの条件を全て満たしている人です。

1.民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
2.納税者と生計を一にしていること。
3.年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
4.青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

ただし2018年以降は、扶養者の所得が1,000万円を超える場合、配偶者控除は受けられなくなっているので注意が必要です。

No.1191 配偶者控除|国税庁

配偶者特別控除を受けるための条件
配偶者の所得が48万円以上であるため配偶者控除が受けられない場合、配偶者特別控除が受けられる可能性があります。配偶者特別控除は配偶者の所得に応じて、夫婦どちらかが一定金額の所得控除を受けることができる制度です。配偶者特別控除の対象となるのは、下記の5つの条件を全て満たしている人です。

1.控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額が1,000万円以下であること。
2.配偶者が、次の要件全てに当てはまること。
・民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)。
・控除を受ける人と生計を一にしていること。
・その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
・年間の合計所得金額が48万円超133万円以下であること。
3.配偶者が、配偶者特別控除を適用していないこと。
4.配偶者が、給与所得者の扶養控除等申告書または給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除く。)。
5.配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除く。)。

No.1195 配偶者特別控除|国税庁

社会保険の扶養の場合

社会保険上の被扶養者になるための第一の条件は、年間の収入から経費を差し引いた金額が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)であることです。

被扶養者自身がアルバイトやパートとして従事している場合は、年収そのものが130万円未満となっていなければなりません。しかし、フリーランスの場合は年収から経費を引いて計算しなければいけない点に注意が必要です。また、収入には手当金等も含まれるので注意してください。

加えて、以下の条件を満たす必要があります。

収入面
・同居の場合は、収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満であること
(扶養者の年間収入を上回らず、日本年金機構がその世帯の生計の状況を総合的に勘案して、扶養者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認めるときは被扶養者となる場合あり)
・別居の場合は、収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満であること

扶養者との同居面
・被扶養者が扶養者にとって、配偶者、子、孫、および兄弟姉妹、父母、祖父母などの直系尊属であれば同居の必要なし
・被扶養者が扶養者にとって、上記以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)や、内縁関係の配偶者の父母および子(当該配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)は同居している必要あり

フリーランスが家族の扶養に入るメリット・デメリット

フリーランスが家族の扶養に入る場合には、金銭面でのメリットがある一方で、年収の調整が必要になってしまうといったデメリットもあります。税法上の扶養と社会保険の扶養でメリット・デメリットが異なるため、それぞれを吟味した上で、働き方を検討し家族の扶養に入るかどうかの判断をしましょう。

メリット

フリーランスが「税法上の扶養」において家族の扶養に入るメリットは、扶養者の所得税・住民税が控除されることで、家族全体として負担する税金が軽減されることです。

また、フリーランスが「社会保険の扶養」において家族の扶養に入るメリットは、被扶養者が扶養者の社会保険に入れるので、年金や健康保険を負担する必要がない点です。年金においては、被扶養者は第3号被保険者となり、保険料は第2号被保険者の保険者が負担します。健康保険においては、被扶養者として被保険者の健康保険から保険給付が受けられるため、年金や保険料の負担がありません。

会社員が加入する健康保険は会社の健康保険組合の健康保険で、会社が保険料を半分負担しているため、扶養者が負担する厚生年金・健康保険料は半分となります。

一方で、フリーランスが加入する健康保険は国民健康保険で、保険料は全額自己負担となっています。そのため、フリーランスとしての働き方によっては扶養者の社会保険に入ることで得となるケースもあります。

また、会社員が加入する年金は厚生年金、フリーランスが加入する年金は国民年金です。国民年金は給与の額で保険料が変動する厚生年金と比べ、保険料は一律16,490円です。なお、老齢年金・遺族年金・障害年金において受け取ることができる年金は、厚生年金では基礎年金に加え厚生年金が受け取れるのに対し、国民年金では基礎年金のみとなっています。そのため、フリーランスの収入によっては扶養に入る方が負担する保険料を抑えることが可能となります。

デメリット

フリーランスが家族の扶養に入る際に懸念されるデメリットは、年収を抑えなければいけないため、働き方が制限される点です。年収をギリギリで抑えて被扶養者となっている場合、仕事量を調整しなくてはいけなくなったり、大きな仕事が舞い込んできても受けられなくなったりする、といったことが考えられます。なお、一言に扶養から外れると言っても、収入額によって増加する負担は以下のように異なります。

・年収100万円を超える:住民税が発生
・年収103万円を超える:配偶者控除が適用されなくなり、所得税が発生
・年収106万円を超える:社会保険に加入する場合もあり
・年収130万円を超える:社会保険に加入する必要あり
・年収150万円を超える:配偶者特別控除が減少
・年収210万円を超える:配偶者特別控除を受けられない

扶養に入る・扶養から外れる場合

手続き方法

扶養に入るための手続き
まず、扶養者と被扶養者の続柄を確認するための書類を用意します。また、税法上の規定によって被扶養者となっている配偶者や扶養家族以外は、直近の確定申告書の写しなど、収入を確認できる書類の用意も必要です。さらに、学生を除き扶養者と被扶養者が別居している場合は仕送りの事実と金額が確認できるよう、振り込みの場合は預金通帳等の写し、送金の場合は現金書留の控えも必要です。

書類が用意できたら、協会けんぽの場合は書類とともに事業主に「健康保険 被扶養者(異動)届」「国民年金第3号被保険者関係届」を提出し、事業主が日本年金機構へ提出します。健康保険組合など、協会けんぽ以外の健康保険の、被保険者の配偶者が被扶養者となる場合は、「国民年金第3号関係者届」のみを事業主に提出し、事業者が日本年金機構に提出します。

扶養から外れる際の手続き
扶養から外れる場合は、まず被扶養者の健康保険被保険者証を用意します。そして扶養に入る際の手続きと同様、事業主に「健康保険 被扶養者(異動)届」「国民年金第3号被保険者関係届」を提出し、事業主が日本年金機構へ提出します。

扶養から外れた方が良いケース
家族の扶養に入っていると、収入を調整する必要があるため、扶養から外れないために大きな仕事が入ってきても断らざるを得なくなってしまうことも起こり得ます。そういった場合、キャリアを積んでいきたい人にとっては障壁となってしまうことでしょう。収入を大幅に上げられる可能性がある場合は扶養から外れることも検討してみてください。

また、年収130万円未満に抑えて扶養に入っていた頃よりも、年収130万円を少し超えて扶養から外れ、自身の所得から保険料や年金を差し引かれた手取りの方が少なくなってしまう場合もあるので注意が必要です。扶養から外れることを検討する際は、見込み年収と、住んでいる地域の自治体での保険料や年金を照らし合わせ、損をしないか計算するようにしましょう。フリーランスでも年収が160万円以上あれば、130万円未満の場合よりも手取り収入が増え、損をすることはありません。

まとめ

フリーランスでも家族の扶養に入ることができる制度は、収入の不安定な方にとっては助けとなる制度です。ただし、収入が増えてきて一定の上限を超えてしまうと扶養から外れなければいけなくなるため、自身が今後希望する働き方を一度考え直し、それに伴って扶養に入るか外れるかを検討する必要があります。

扶養の仕組みやメリット・デメリットを正しく理解することで、家計における税金の負担を可能な限り減らし、生活をより豊かにしていきましょう。

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