在宅ワークの喜びなんかじゃない、フリーランスがコロナ禍で得た未来につながる豊かさ

新型コロナウイルスが猛威を振るう中、フリーランスへの影響や保障はどうなっているのでしょうか。出口の見えないトンネルに入ったような、不安な気持ちが長らく続いています。でも、だからこそ、コロナ禍に負けない、ポジティブなフリーランスの話をご紹介します。在宅ワークの先駆者であるフリーランスは、未曾有の危機をどう乗り越えていくのでしょうか。
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フリーランスはコロナ前から在宅ワークが前提

コロナ禍によって様々な業界が影響を受ける中、リモートワークが注目されています。

在宅ワークへの移行が不可能な業種・職種もあるので、一概にその是非を語ることはできませんが、あくまで『出社しない』という働き方だけを切り取ったとき、その先駆者として思い浮かぶのはフリーランスという存在です。

もちろんフリーランスという働き方を選んでいても、コロナ禍と無関係ではありません。経済が停滞すれば、企業の発注量が減って、フリーランスが受けられる仕事も減るでしょう。

在宅ワークを取り入れやすい自由な働き方である反面、社会保障が整っていないことは以前から指摘されていました。

フリーランスの保障はどうなっている?

世界中が混迷を極める中で、こと日本のフリーランスに対して、保障のあり方に変化はあったのでしょうか。新型コロナウイルスのリスクが深刻化してきた2020年3月以降、政府は段階的に緊急経済対策を発表しています。たとえば……

日額4,100円の給付

政府が3月10日に決定した緊急経済対策では、育児のために仕事を休まなくてはいけないフリーランスに対して日額4,100円が給付されることとなりました。

上限3,000万円まで無利子・無担保の融資

続いて、業績悪化の著しい個人事業主(フリーランスを含む)が、上限3,000万円まで、無利子・無担保で融資を受けられる『新型コロナウイルス感染症特別貸付』。休業状態で生活に困窮している世帯向けに、申請から2日以内に上限20万円まで無利子・無担保で借りられる『特例貸付制度』も整備されました。

最大100万円の現金給付

また、東京など7都道府県に緊急事態宣言が出された4月7日、売上が半減して事業継続が困難なフリーランスを含む個人事業主に、最大100万円の現金給付で減収分を補填することが閣議決定されています。

 

新型コロナウイルスに翻弄された、2人のフリーランス

未曾有の危機に直面して、政府はフリーランス支援を検討し、具体策を提示し始めました。とはいえ、とても充分ではありません。経済活動が停滞するほど、フリーランスへの依頼も減ってしまいかねません。

そんな困難な状況でも前向きに動き続ける2人のフリーランスがいます。彼女たちも新型コロナウイルスの出現によって、多くの人たちと同じように翻弄され、不安を抱えながら働いていました。

LOY2020を受賞した2人のフリーランス紹介

レッツノート賞を贈られたフリーランス

Lancer of the Year2020受賞の やなめ さん(左)と 中川 さん(右)

「Lancer of the Year」は、フリーランス支援プラットフォーム「Lancers」を運営するランサーズ株式会社が2015年から毎年行なっているフリーランスの祭典です。1年間でもっとも、自分らしく活躍したフリーランスを讃え、またフリーランスの学びにつながるコンテンツや交流会が開かれています。

2020年3月15日に開催されたLancer of the Year 2020も、コロナウイルスの影響を受け、史上初の無観客、オンラインでの開催となったのです。フリーランスが一堂に会することはかないませんでしたが、これまでと同様にこの1年で大いに活躍した6名のフリーランスが表彰されました。

今回紹介する2人の女性フリーランスは、そのなかにいました。ひとりはパラレルワーカー、もうひとりは2019年に独立したルーキーフリーランスです。

シンガー&グラフィックデザイナー、歌って踊ってデザインできるフリーランス

Lancer of the Year2020受賞 グラフィックデザイナーやなめ

Lancer of the Year2020受賞のやなめさん(グラフィックデザイナー)

京都府在住、グラフィックデザイナーとして活躍している『やなめ』さんは、ボーカルスクールの講師であり、ステージに立つシンガーでもあるパラレルワーカー。

音楽関連の企業に勤めていましたが、並行して行なっていた音楽活動に本腰を入れるため、退職を選んだそうです。しかしいきなり音楽だけで食べていくことは難しく、悩んだ末にたどり着いたのがランサーズでグラフィックデザイナーとして働くことでした。

やなめ:
接客業などのアルバイトという働き口はありましたが、それを選んでしまうと、シンガーとしての活動に支障をきたすとわかっていたんです。
音楽を一番にしたかったから会社を辞めたのに、シフトが決まった仕事を選んでしまうと、急にステージの仕事が入っても対応できない。それでは意味がないと思いました。

グライフィックデザイナーを選んだのは、過去に経験があったからなのかというと、そうではありません。

やなめ:
昔から絵を見るのとかは好きでした。あとは前職で、私は営業やミュージシャンのマネージャーみたいなことをやっていたんですが、隣の席にはデザイナーの人がいて。フライヤーをつくっているのを眺めていたことはあったんです。
ランサーズで仕事をすれば、働く時間を自分で調整できるし、たとえ移動中にでも仕事ができるからいいな、と。じゃあ、自分にできる仕事ってなにかなと考えたときに、デザインかなと思いました。……やったことはなかったけど。

まったくの未経験から、フリーランスのグラフィックデザイナーという道を歩き始めたのでした。かといって専門学校などに通うわけではなく、Googleで調べたり、過去の.aiファイルを開いて構造を学んだりと、独学に独学を重ねて、少しずつ仕事を得られるようになったとか。

やなめ:
ステージに立ったりボーカルスクールで教えたりと、歌に関わる仕事をやっていますが、そこにもうひとつデザインの仕事があるというのが、私にとってお守りみたいなもので。
音楽だけじゃなくて、デザインの仕事も好きなので、好きな仕事をふたつもできているって幸せだなって。

好きなことを掛け合わせて働くことに、喜びを感じているそうです。

やなめ:
以前は音楽の仲間たちに、デザインの仕事をしているのを内緒にしていたんです。「音楽が一番じゃないんだな。音楽だけじゃないんだな」って思われるのが嫌で。
でも今では堂々と言えますし、周りから「音楽とデザイン、両方やってるのが『やなめ』なんだな」って言ってもらえるようになりました。

働き方改革の潮流もあって、副業をする人が増えてきました。特に『会社員』×『フリーランス』の副業は、副業解禁企業の増加とともに増えている印象です。同時にやなめさんのように、まったく異なる本業を複数かけもつフリーランスも今後は増えていくことでしょう。

Webクリエイティブ経験10年超、経験豊富な遅れてきたルーキーフリーランス

Lancer of the Year2020受賞の中川さん(Webクリエイター)

福井県在住、Webクリエイターとして活躍している『中川祐子』さんは、約10年、会社員として現業を経験し、2019年から独立してフリーランスという生き方を選択。

中川さんは、学生時代からホームページをつくっていたそうで、就職先としても自然にWeb制作に関わる仕事を選びました。Webデザイナーとして働く中で、グラフィックデザインを担当したり、マークアップまでも行なったりするようになり、Webクリエイティブ全般を手がけること10年以上。

会社員生活の途中では、転職も経験しているそうです。福井県の県庁所在地から離れた場所に住んでいたこともあり、やっと見つけた転職先では、片道2時間の車通勤をしていました。

中川:
日付が変わるまで働いて、翌朝は6時くらいに家を出たりと、ハードな環境ではありました。でもその会社で学んだことは多くて、Webクリエイティブの実務はもちろんですが、とても大事な考え方を教わったと思ってます。
失敗することはダメじゃなくて、とにかくチャレンジ。社長は「君たちがチャレンジできるチャンスを与えたい」とずっと言ってくれて。その言葉や仲間に勇気をもらって、どんどんチャレンジすることが怖くなくなりました。

さらなるスキルアップ、そしてクライアントの声を聞き入れて、その想いに応えられる仕事をしたいと考えたのが、フリーランスへのきっかけだったそう。会社員として11年、社会人になる以前と合わせて15年のキャリアを持って、2019年に独立。

経験豊富なルーキーフリーランスとして、新しい一歩を踏み出したのです。フリーランス初年度は、働き方の試行錯誤を繰り返した一年だったと語ります。仕事を詰め込む1ヶ月、勉強に時間を割く1ヶ月……。ルーキーイヤーを終えて何を感じたのでしょうか。

中川:
会社にいると決まったスキルしか使わないけど、フリーランスだと求められるものが相手によって変わるので、都度勉強したり、知識を取り入れたり。どんどんどんどん、成長しているのが自分で分かって楽しいです。
もっと早く、もっと若い時にフリーランスになっていたら、今頃どうなっていたかなと思う。でも、今はフリーランスになったので、ここから巻き返せばいいんだって。ワクワクがとまらないくらい希望に満ち溢れていて、可能性が無限だなと感じた。フリーランス2年目になった今でも、ずっと1年目、初心者の気持ちでやっています。そういう気持ちがあるから、いろんな意見も取り入れられるし。すごいと思う方の真似もする。そういう気持ちは一生持ち続けて、成長につなげていきたいです。

フリーランスに贈られたレッツノート賞

貸与されたレッツノートを日頃の仕事にも活用中の2人。

Lancer of the Year2020を受賞した6名のうち、やなめさんと中川さんには、イベントスポンサーであるパナソニック社より『レッツノート賞』が贈られました。Lancer of the Yearにレッツノート賞が創設された理由は、モバイルパソコンであるレッツノートの貢献したい対象にフリーランスが含まれるから。

レッツノートの特徴は、高処理能力・軽量性・長時間駆動・LTE対応、さらには衝撃に強い頑丈性やセキュリティの高さです。この機能をもって、『組織に縛られないパラレルワーカー』であり『場所に縛られないテレワーカー』でもあるフリーランスたちが、価値創造を行なうことに貢献したいと考えています。

では肝心となる、賞の中身はというと……。高性能モバイルパソコンであるレッツノートの貸与がひとつ。デザインなどのクリエイティブワークにおいて、レッツノートを使うイメージは薄いかもしれません。しかし実際に貸与を受けた2人に違和感はなかったようです。

やなめ:
Illustratorで作業をしていて、トラックパッドを使うときはオブジェクトを手で持って移動する感覚だったのが、レッツノートのホイールパッドでやってみると、視線を動かす感覚で操作ができました。
中川:
レッツノートを持ってみて、物理的な軽さに驚きました。使ってみると、想像していたよりも圧倒的に処理が高速。複数のAdobeソフトやコーディング用のエディタ、調べ物のブラウザを同時に起動してもまったく問題ないんです。

持ち運びに便利なモバイルパソコンを貸与されるだけでも、場所にとらわれない働き方をするには心強いところ。しかしレッツノート賞の目玉は別のところにありました。

レッツノートとしてフリーランスの価値創造を支援をするために、『学びの機会を提供し、その成果をアウトプットすることで、支援をする当人のみならず、より多くの人々にも貢献したい』という考えがありました。今回、学びの場として選ばれたのが、サウス・バイ・サウスウエスト(※)です。
※South by Southwest:略称SXSW|テキサス州オースティンで開催される世界最大規模のカンファレンス。テクノロジーや音楽、映画などの最新・最先端が一堂に会する場。

過去の開催では、Twitterが世界的に流行するきっかけになったり、iPhoneに入っているSiriが広く知られることになったり……。未来を変えるようなプロダクト・サービスに触れられる、学びと刺激の多いイベントなのです。

約1,000ドルのチケットと、渡航費用、滞在費に加えて、日本にいては味わえない刺激。学びに飢えているフリーランスにとっては、貴重な機会となる特別賞です。

開催6日前に決まったSXSWの中止

SXSW2020中止

画像:Tech Crunch, 2020.03.08 https://techcrunch.com/2020/03/06/sxsw-cancelled/ より

ところが……。SXSW開催6日前(2020年3月7日)になって、新型コロナウイルスの影響によってイベントの中止が発表されてしまいます。2人の心は、既にテキサス州オースティンへ飛んでいたというのに。

自分の力で仕事を得て、未来を切り拓いてきたフリーランスの2人でしたが、大流行するウイルスに対しては、屈するしかなかったのです。泣く泣く渡米をキャンセルして、日常に戻っていったのでした。

コロナが与えたフリーランスへの悪影響

SXSWに行くことはできませんでしたが、世界中が一丸となって危機を乗り越えないといけないタイミングです。日本に留まって、健康と安全に配慮しながら、フリーランスとしての生活を続けていかなければなりません。しかし、やはり新型コロナウイルスは、フリーランスの仕事に影響を与えていました。

やなめ:
コロナの影響というと、デザインの方は増えたり減ったり。店舗を閉めなくてはならないので、お知らせのチラシをつくりたいというのが急遽、入ってきました。逆にイベント系は自粛で、私への仕事自体がなくなってしまって。
歌の方は完全に、ステージがなくなってしまって。やはりライブハウスなりに大勢の人が集まれないので。ボーカルスクールも、会社員や社長の生徒さんが多かったので、趣味で感染したなんてあってはならないので、お休みになってしまいました。空いた時間は、曲をつくったりレコーディングの準備など、創作活動に充てています。
中川:
もともと4月から、新しいことしようと思ってたので、Web制作の仕事は3月までに極力終わらせようと動いてました。でも私も、例えばサイトにお知らせを出したいとか、コロナ関連で急な仕事を依頼いただくことが増えてます。
あとは時間のできた社長さんが、新規事業を考えたので、そのWebをつくって欲しいとか。仕事自体は減ってなくて、むしろ増えた感覚があります。とはいえ、自粛ムードが長く続くとどうなるかはわかりませんけど。

テキサスよりも大きな学びと、未来の可能性

と、ここまでだと、新型コロナウイルスに泣き寝入りしたフリーランスの話で終わってしまうわけです。しかし二人は、前に向かって動き始める選択をしました。

100万人以上登録するフリーランスの中から、6名だけが選ばれたLancer of the Year2020の受賞者として。フリーランスに学びの機会を提供したいという、レッツノートの想いに応えるため。自分自身の未来を明るくするため。

京都に住むフリーランスと福井に住むフリーランスは、たまたま同じサービスを利用していて、たまたま同じ年に活躍して、たまたま授賞式で出会っただけですが、不思議な縁をきっかけに、未来につながる取り組みを開始したのです。

サイト作成にむけて、オンラインミーティングを重ねる様子。

それぞれの得意分野を活かして、それぞれがもっと世の中に価値提供できるように。まずは共同でWebサイトを立ち上げる計画が進行しています。シンガーとしてのやなめさんを、もっと世の中に知ってもらいたいという中川さんの気持ち。中川さんの勤勉さとバイタリティ、そしてクライアントに貢献したいという想いを広めたいというやなめさんの気持ち。

直前でSXSWに参加できなかった二人でしたが、ピンチをチャンスに変えるがごとく動き始めたのです。新型コロナウイルスの影響を少しでもチャンスに変えるため、自分たちの未来を切り拓くために。

転んでもただでは起きない2人の活躍は、これからも期待できそうです。

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