“移住しやすい国”は本当に住みやすい?在豪6年のフリーランスが語るオーストラリア

“移住しやすい国”は本当に住みやすい?在豪6年のフリーランスが語るオーストラリア
“住んだからこそわかった「その国らしさ」”を、世界各地に住むフリーランスが紹介するシリーズ。 今回は、オーストラリア在住6年のフリーランスに移住体験談をお聞きしました。広大な自然、穏やかな国民性を連想するオーストラリアは、まさに理想の移住先かもしれませんが、実際の生活はどのようなものなのでしょうか。
LANCER SCORE
26

満を持してのオーストラリア生活!でも一番の心配は……?

大学卒業後、語学スクールで出会ったオーストラリア人の彼と3年のお付き合いを経て結婚しました。彼との長い話し合いの結果、彼の夢でもあったため、オーストラリアへ移住することになり、現在在豪6年目です。今は子供達にも恵まれ、シドニーから少し離れたビーチの近くで暮らしています。

移住の相談を義父にした当初、「一つだけ心配な事がある」と言われました。それはオーストラリアの物価、特に家の値段がここのところ何年も上がり続けているという事。

不安がる私に主人は「僕もある程度の貯蓄もしてきたし、まずは賃貸のユニットに住んで働いて、そのうち家の値段も落ち着くだろうから、2、3年後に家を買う計画を立てればいいよ。君も慣れるまでは働く必要ないから安心して」と声を掛けてくれました。

そして結婚から2年後、長男と3人で渡豪。はじめは彼の実家にお世話になっていたのですが、3ヶ月後にようやく主人の仕事も決まり私たちだけの生活がスタートしました。

移民への門戸が広い一方で、高騰する家賃

フォト2

引っ越した先のアパートはシドニー郊外にありました。あの有名なオペラハウスやハーバーブリッジのある中心部からバスで1時間。2DKのアパートです。家賃が週に420ドル。1ヶ月でなんと1,680ドル、日本円にして14万円!物価の高さを思い知らされました。

まずは1年の契約を結び、「また1年後に先の事は考えよう」ととにかく前向きに新しい暮らしを送りました。そして1年後、やっとオーストラリアの生活を楽しめ出した頃でした。不動産屋から1通の手紙が。

『契約更新に伴う家賃の変更』と書かれた手紙には、「家賃は“週420ドル”から“週460ドル”へ変更。契約更新につきましては…」との文字が。これにはさすがに「いやいやいや」と驚きました。

これぞまさに、義父が心配していたことだったのですね。甘く見ていました。オーストラリアに住みたい人が増えている。そして移民への門がとても広い。借りたい人はいくらでもいる。家賃の値上げが気に入らなければどうぞ出て行ってくれ、と言わんばかり。

厳しい現実を目の当たりにし「この先どうなるのだろう……」と当惑しました。主人一人の収入ではとてもやって行けそうにない。私も何か仕事をしなければ。

どこか企業へ就職を、とも考えましたが、子供もまだ小さく言葉のハンデもあり、時間的にも融通の効くベビーシッターや家庭教師などフリーランスとして働き始めました。

結局シドニーの高い物価にはついて行けず、私たち一家は追いやられるように、シドニーより2時間半北へ上がり、家賃の少し安いエリアへ越して来ました。シドニーの中心部にある会社に勤める主人は、会社へ出勤の日は片道2時間半かけて通います。最近ではこのエリアも私たちと同じ理由でシドニーから引っ越して来られる人がたくさんいるそうで、家の値段も家賃もバブリーになってきました。 やはりそれだけシドニーから人が移動してきているということなのでしょう。

ダブルインカムではないと生活できない?

10530003181

主人はIT関連の仕事をしています。幸いな事にパソコンとインターネット環境があれば仕事ができるので、家から会社までの距離が長くなった分、週2日は家で仕事をするwork from homeのシステムを取り入れています。

会社へ行く日は朝5時半に家を出ますが、家で仕事の日には朝からサーフィン、お昼休みにもサーフィン、会社へ行けば6時半の帰宅も家では4時に終わるので、子供とたっぷり遊べる時間を取ってくれています。お陰で私もこうしてフリーランスとしての仕事を続けていくことが出来ています。

こちらでは、子供がいる家庭でもダブルインカム(2人分の収入/共働き)が当たり前です。男性は週5日の勤務を基本としその他にフリーランスとして副収入を得る人もいます。女性は時間が短めのフルタイムやパートタイムで働いたり、私のようにフリーランスで時間を有効に使い家事や子育てにも手を抜く必要のないようにしています。

独身の頃の様に、毎日ビシッとスーツを着こなし、フルタイムとして企業に勤めていたら……なんて思う事もありますが、きっと私は仕事も子育ても両立出来ず後悔していた事だと思います。今の私たちの家族には、彼がwork from homeの形を取り家事を手伝ってくれ、その間に私がフリーランスとして働くこのルーティーンがとても合っていると思います。

それでも魅力的な、豊かな大自然とおおらかなオージーの人柄

フォト3

日本にいると「えぇぇ!?」とビックリを飛び越えて驚くようなことが毎日起こるこの国。オーダーしたものが来ない。間違った商品が届く。修理屋さんが約束の時間になっても来ない。レジの人は仕事しながらおしゃべりにおやつに大忙し。

移民もたくさん入って来ているとはいえ、やっぱりオージーで成り立っているこの国では、こんなことで驚いていては暮らしていけません。私も6年、だんだんとそまりつつあるのでしょうか、食べながら接客されようが、そんなの全く気にならなくなりました 笑。

もしかすると、このおおらかな性格の根本には、スローで自由な大自然と暮らす生活があるのかもしれません。オーストラリアに来られた際には、オペラハウスやハーバーブリッジも良いですが是非ローカルの人が行くビーチに足をのばして欲しいです。日本にはないどこまでも続く海岸、白い砂にブルーの海。何も特別なことはしなくてもいい、ただそこにいて深呼吸するだけで心も体もキレイになります。

さて、今住んでいる賃貸物件の契約切れは2017年1月。焦らなければいけないところまで来ているのですが、「どうにかなるさ」というオーストラリア的考え方にそまりつつある私は、不安と根拠のない自信とが入り交じっています。明日にでもバブルが弾けないかなぁ、なんてお気楽すぎますね。

RECOMMEND
関連記事