業務委託の契約に収入印紙はなぜ必要か?

そもそも収入印紙にはどんな役目があるの?
業務委託の契約書に貼ってある収入印紙。「言われるがままに貼っていたけれど、実はどんな意味があるのか知らない」という方も多いかもしれません。
見かけは切手のようで額面もいろいろある収入印紙ですが、どんな役目があるのでしょうか? 実は収入印紙は「印紙税」という税金で、国が租税や手数料を徴収するために利用される証票です。
つまり契約書などに収入印紙を貼って消印(割印)するということは、印紙税を納付するということになります。
ただし収入印紙を貼るだけでは不十分。必ず貼り付けられた収入印紙と書面にまたがって消印(割印)しなければ印紙税を納付したことになりません。消印を忘れたがために税金を追徴された、なんてことにならないようくれぐれもご注意ください。
業務委託の契約書になぜ収入印紙を貼るの?
収入印紙が必要 = 印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書といわれる文書です。お金の授受が発生する契約は税金を課するに値する、という概念から課税される仕組みです。
課税文書の種類については国税庁のサイトの「印紙税額一覧表」に詳しく説明してありますので、ぜひご覧になってみてください。ちなみに、業務委託の契約書はその内容により、第2号文書と第7号文書のいずれかに該当します。
1、第2号文書[請負に関する契約書]
(例)工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、映画俳優専属契約書、請負金額変更契約書など
2、第7号文書[継続的取引の基本となる契約書]
(注)契約期間が3か月以内で、かつ、更新の定めのないものは除く
(例)売買取引基本契約書、特約店契約書、代理店契約書、業務委託契約書、銀行取引約定書など
業務委託の契約書にはいくらの収入印紙を貼ればいいの?
必要な収入印紙の金額は課税文書が印紙税額一覧表の何号文書に該当するかによって違います。先述の通り、業務委託の契約書は内容によって第2号文書と第7号文書のどちらかになる可能性があります。このように2つ以上の課税文書に該当する可能性がある場合には、どちらの課税文書とするか判定が必要になります。
基本的には号数の少ない方の課税文書になることが多いようですが、第2号文書と第7号文書の場合は請負か委託か、また継続的取引かどうか、契約金額の記載があるかどうか、ということも判断基準になります。第2号文書に必要な収入印紙の金額は記載された契約金額により異なり、1万円未満は非課税、10万円以下は200円等です。
7号文書の場合は一律4000円なので、大きな金額の取引でない限り第2号文書の方がお得と言えます。ちなみに業務委託の契約期間が3か月以内で、更新の定めのない「委任契約」の業務委託の契約書は課税文書第2号にも第7号にも該当しないとみなされ、収入印紙が必要ないケースもあります。
該当するかしないかを判断するのは事業者を管轄する税務署です。契約書を実際に見てもらい判断を仰ぐとよいでしょう。
業務委託の契約書に収入印紙を貼らなかったらどうなる?
もし業務委託の契約書に収入印紙を貼らなかったら、もしくは金額が間違っていたらどうなるのでしょうか?業務委託の契約そのものの成立・不成立には影響しませんが、故意に収入印紙を貼らなかった場合は脱税とみなされます。
「貼るべき収入印紙を貼ってない」「金額が不足している」ことが発覚した場合、印紙税法の規定により「本来の印紙税額 + その2倍に相当する金額」が過怠税として課せられます。
ただし、自己申告の場合は「本来の印紙税額 + 10%」で済みます。故意に収入印紙を貼らなかったとみなされた場合は「一年以下の懲役若しくは20万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と厳しい処分となりますのでくれぐれもご注意くださいね。
収入印紙代金を節約できる方法はある?
収入印紙がどんな意味を持つか、なぜ業務委託の契約書に収入印紙が必要かということはわかりました。でも契約書の数が増えたり、契約金額次第では大きな負担になる可能性もある収入印紙代金。
もし節約できるものなら節約したいですよね。そこで調べてみると、収入印紙を合法的に省略できる方法があることがわかりました。1つは、契約書をPDFなどの電磁記録にする方法。
ちょっと意外ですが、実は国税局も電磁的記録を利用した契約書に収入印紙を貼る必要はないと解釈している事例があるそうです。もう1つの方法は、署名押印がなされている契約書をコピーする方法。
署名押印がなされている契約書の原本とコピーの契約の効力は原則として同じであることから、契約書の原本にだけ収入印紙を貼り、関係者には原本のコピーを交付する事で必要な収入印紙を節約するという方法です。
どちらかというと普通過ぎることが目からウロコでしたが、たとえ国税庁のお墨付きがあるとしても取引先や案件によっては難しい場合もあるので、実践する場合は必ず取引先に事前に確認するようにしましょう。