お堅い業務からゆるゆるなイベントまで。 古ビルのなかに広がるめくるめく空間 | さくらWORKS<関内>

地域資源としてのコワーキングスペースについて考えてみると
横浜DeNAベイスターズの本拠地「ハマスタ」から歩いてすぐ、という好立地にあるコワーキングスペースが『さくらWORKS<関内>』です。
楽しいまちづくりを実践型で研究する NPO 法人「横浜コミュニティデザイン・ラボ」が主宰するこの空間は、人と人との良好なつながりをつくる「コミュニティ・デザイン」の一環と位置づけられているようです。出迎えて頂いた事務局の五十嵐洋志さんから話を伺いました。詳しくみていきましょう。
『さくらWORKS<関内>』ワークスペース情報 |
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■ 場所:横浜市中区相生町3-61 泰生ビル2F(関内駅北口より徒歩5分) ■ 料金:月間利用会員(プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズの4つのプランあり) 6,000円/月〜※ プランによって会議室利用時間や登記の可否などにちがいあり ドロップイン 1日1,000円(学生 500円) 一般2時間(500円) 学生3時間(300円) ■ 営業時間:プラチナ会員とゴールド会員は365日24時間利用可 上記以外は9:00〜21:00(土日祝休) ■ 席数:コワーキングスペース40席、会議室とイベントスペースで210平方メートル ゴールド会員専用オフィス 10席 プラチナ会員専用オフィス10席 ■ 電源 :◯ ■ WiFi:◯ ■ 特徴:ミキサーを含めた音響機器、プロジェクター、スクリーン、キッチンなどが充実している点。 |
広い空き物件の使い道を考えあぐねた結果
- オープンしたのはいつで、なぜこの場所を選んだのでしょうか?
開業は2011年の4月です。たまたまここに広い空き物件がある事が分かって、場所はあるけど、どう使うのか決まっていない白紙の状態だったんです。
そんなとき『横浜コミュニティデザイン・ラボ』の会員から「場所があるのなら、シェアオフィスにしてほしい」と言われたんです。この方は普段シェアオフィスをよく利用していたらしくて、うちでもやってほしいと思ったようです。
- 運営団体の『横浜コミュニティラボ』の仕事場としても使われているようですが、現在このビルではなん部屋程度、使っているのでしょうか?
2階が4部屋、5階が1部屋。「右側」とよばれているイベントの出来る部屋は4つのオフィスの壁をぬいて1部屋にしているのでかなり広めです。会議室は1部屋だけですが、ほかに40平米の部屋と60平米の部屋があります。ここは固定席で、プラチナ会員やゴールド会員が10人ずつシェアオフィスとして使っています。
- 会員数は?
月額会員は約60人ですね。とびこみの利用者は1日に1〜2人くらいです。ちょうど今日も設計事務所の方が1人来ていました。(NPO法人の運営ということもあって )行政から「ここを見ておいたほうがいいよ」と薦められ、視察に訪れる他の自治体の方々も多いですね。
やはり自分たちの街でも作りたい、と考えているところが多いようで。「イベント会場として使いたい」と下見に来る人もいます。毎日のように見学者が来ますね。「時間が空いたので顔を出した」という人もいます。
日ごろ顔を合わせているから協業しやすい
- 人気のある席はどこですか?
割と人気があるのは、2階の左側の部屋の丸テーブルの席。それから黙々と作業したい人はイベントが行なわれる右側の部屋に来ますね。左側の部屋は割と賑やかです。
ほぼ毎日来る人たちは、なんとなく座る席が決まってくるんですよね。とはいえ、席はフリーアドレスです。僕の席も決まっていなくて、必ず使うものはロッカーに仕舞っています。例外は代表の杉浦だけで、事務局スペースの決まった机の上にものを散らかしています。
- 会員の皆さんはどのように交流を図っていますか? 入居者間のコラボや協業の実績はありますか?
新しい人が入ってくると、その場に居合わせた人と引き合わせます。あとはfacebookのページで紹介してあげることでしょうか。不定期ながら年数回、会員会議もあります。しかしなにより大きいのは、日ごろ顔を合わせている、ということですね。仕事が発生したとき頼みやすいですから。
協業の実績はかなり多いですね。図書館系専門雑誌『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』を岡本真さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)と大谷薫子さん(本のモ・クシュラ株式会社)、佐藤理樹さん(アルファ デザイン)でつくったり。
建築家と照明家のコラボがあったり。ウェブデザイナーが会員のサイトを制作したり。イラストレーターとデザイナーのコラボがあったり。協業は個別にそれぞれの間で生まれています。
- 外部からの印象ですが、こちらで働いている方はまちづくり系とデザイン・メディア系の方が多い印象です。
そうかもしれません。と同時に「アイデアソン」や「ハッカソン」を開催するなどIT系の行事や「どうしたらオープンデータをまちづくりに活かしてビジネス化出来るか」といった勉強会を開いたりしています。
これはこの場所の運営母体が横浜市経済局の仕事を受託するなどしている関係なんですが、どうしても難しいイメージになってしまう。僕自身はITは分からないんですけどね。
お堅いイメージとは裏腹に、ゆるめのイベントも意外と多い
- 横浜市は革新政権が長く続いたせいもあって、リベラル色が強い土地柄ですよね。そのせいか、この街の優秀な人材の溜まり場は近づきがたいイメージがありますが、「さくらWORKS<関内>」はいかがでしょうか?
個人的にゆるめのイベントが好きで、オープンデータ関連のイベントやまちづくり関係のイベントの合間を縫って、お笑いやカルチャー系の企画を割り込ませていますよ。
毎月「オープンナイト」という催しをしていて、ほうきと戦って技をかけたりする「平面プロレス」や忍者に来てもらったり。鍋をつつきながらフォルクローレ、シタール、津軽三味線のトリオを聴く「ほっこり音楽祭」をやるなど文化系の催しは多いですね。
地元の有名ミュージシャンに来てもらうこともあれば、「バッファロー・ドーター(世界的に有名な日本のインディー・ロックバンド)」が演奏してモーガン・フィッシャー(イギリス出身のキーボード奏者)が聴きに来てくれる、ということもありましたね。
- それはすごいですね。
お酒のイベントも多いんですよ。これは会員の持ち込み企画ですが、出張で関西に行ったところ「現地の蔵元さんと仲良くなった」ということで、利き酒のイベントをやりました。蔵元さんに9銘柄運んでいただいたんですが、昼と夜とで150人くらいずつ集まりましたね。
ほかにワインの利き酒イベントやセミナー形式で「ラムフェスタ」のミニチュア版をやったり。いまはウイスキーの企画を考えています。
- いろいろなイベントをやっているんですね。
そういえば結婚式をやったこともありますね。運営母体のスタッフの式なんですが、新郎新婦の希望でね。ディレクターさんに装飾をお願いして。100人くらい参列していました。ほかにサスペンス映画の撮影が行なわれるなど、ほんとうにいろいろな使い方をされていますね。
地元に対して「さくらWORKS<関内>」が出来ること
- ところで先程、まちづくり関係の仕事をしている人が多いという話が出ました。いま私たちがいる関内エリアは市庁舎移転の影響で空洞化が懸念されていますが、「さくらWORKS<関内>」としてなにか貢献できる部分があると思いますか?
いろいろな人が来てリアルなつながりが出来る、新しいネットワークが出来る、という中間支援的な意味で力になっていると思います。
また、我々が「地域解決プラットフォーム」と呼んでいる「LOCAL GOOD YOKOHAMA」というウェブサイトがあります。ワークショップやイベント、クラウドファンディングなどをひっくるめた仕組みで、この『さくらWORKS<関内>』の母体と同じところが運営しているのですが、この関連の活動や行政から公開されたオープンデータ関連の取り組みに大きく関わっています。
それから、わたし自身が個人的に「関内まちづくり振興会」という有志団体のメンバーで、ここが自治会と協力して「関内エリアの駐車場50箇所を緑化する」というプロジェクトに今後取り組もうとしています。
そうした活動に場所を提供しているその間隙を縫って、さきほど言ったような文化イベントを実施している形ですね。
- 最後に、よそにはない『さくらWORKS<関内>』ならではの特徴といったら、なんでしょうか?
専用イベントスペースの存在でしょうか。ライブが出来るくらい音響設備はしっかりしていますし、キッチンつきというのも珍しいんじゃないでしょうか?
ちゃんと料理もつくれますし、冷蔵庫もありますよ。利便性が良いのも強みですね。ただ建物が古いので、車椅子の方が来るとたいへんです。小さな子供が来ると「どこで預かるのか」という問題も出てきます。これから解決しなければならない問題ですね。
(おわり)