確定申告で源泉徴収票を提出する? しない?

源泉徴収票についての基本知識
そもそも源泉徴収とは、正確には「源泉所得税」の徴収といい、給与や報酬などの支払いをする側が、あらかじめ所得税を差し引くことを言います。差し引いた所得税は、支払い側が税務署に納付し、後に支払いを受ける側が、確定申告で払われ過ぎた税金を還付してもらうことができます。
会社に雇われているときは、給料から所得税が天引きされていますが、個人で仕事をする際には、払いすぎた所得税などを還付してもらうために、源泉徴収票を確定申告の際に提出する必要があります。
本来なら還ってくる所得税が、何も申告しなければ「無かったこと」になるのです。申告方法は、確定申告までに送られてくる、クライアントからの「源泉徴収票(支払調書)」を申告書類に添付すること。
日本では様式的に当たり前のようにしているだけのことなので、自分でしっかりと源泉徴収額を記帳し、確定申告で忘れずに記載をしたうえで、源泉徴収票を添付するといった手続きを漏れなくやっておく必要があります。
個人でも、誰かに仕事を依頼したら源泉徴収の必要があるの?
源泉徴収義務は、「支払う側」が源泉徴収義務者であり、「受け取る側」が源泉徴収が必要な報酬・料金を支払っている場合に発生する義務です。まず支払う側は「人を雇って給料を払っている」場合、支払いを受ける側の法人、個人事業に関わらず、源泉徴収義務があります。
ただし「常時2人以下で、お手伝いや家事使用人へ給与などを支払っている場合」や、「給与などの支払いがなく、弁護士報酬などの「報酬・料金等」に限って支払っている場合」は、源泉徴収は不要となります。
次に「受け取る側」は「原稿料・講演料・弁護士、公認会計士、司法書士など特定の報酬・スポーツ選手やモデルなど外交員に払う報酬・ホステスやコンパニオンに支払う報酬等」定められている内容に当てはまる場合に源泉徴収義務が発生します。
ということは、個人事業でも青色専従者やアルバイトなどを雇って給料を支払っている場合、源泉徴収の必要があり、そういった人を雇っていなければ、例え、支払い先に源泉徴収対象の報酬を支払ったとしても源泉徴収義務はないのです。ただし、例外が1つだけあります。
フリーランサーが通常関わるのは「支払調書」
さて、フリーランサーとして受け取る源泉徴収票、あるいは、源泉徴収義務がある場合に作成し、相手に渡す源泉徴収票は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」が記載されているのが一般的です。
ここに、支払う側の所在地と氏名(会社名)、支払う金額と源泉徴収した金額、支払いを受ける側の所在地と氏名が明記されます。
支払調書があれば、確定申告の時の源泉徴収税額の記入欄に、改めて計算をしなくても楽に転載できるのですが、源泉徴収票や支払調書は、「受け取る側へ提出する義務はない」ために、稀に送ってこない企業もあります。
もちろん、受け取る側として送付してほしいことを請求することは可能なので、紛失の際の再発行もお願いすれば大丈夫です。が、そもそも提出してこない企業であれば「提出義務はないのだから、余計な業務を増やしたくない」のか、発行をお願いしても、快く引き受けてくれないケースもあります。
会社とのやり取りが面倒であれば、無理に発行をお願いしなくてもよいのです。支払調書は、確定申告で添付しなくてはいけない義務はないからです。
源泉徴収票が無い場合を見越して、記帳はこまめに!
源泉徴収額が明記された源泉徴収票や支払調書が手元にあれば、計算をしなくても良いのですが、ギリギリになって発行が無いことがわかった場合に、税率計算はちょっと面倒です。
というのも、平成25年~49年までは、復興特別所得税といって0.21%が加算徴収され、今までは10%であった源泉税が、合わせて10.21%で計算しないといけなくなったからです。
音楽業界でも以前は10%(正確には0.9)をかけた金額をのせて、30,000円のギャラの場合「3並びで(\33,333)」など簡単に計算ができましたが、これからはそうはいきません。
例えば10,000円の報酬契約だった場合に、源泉額は10,000円の10.21%で1,021円。これを差し引いて8,979円を実際受け取ったとすると、「売掛金」が10,000円、「売上」10,000円とし、実際に現金を受け取った日付で「入金」8,979円、「売掛金」8,979円、「事業主貸」1,021円、「売掛金」1,021円 とします。
これを毎回請求書などで計算して記帳するのも大変なので、自動計算を作っておくか、請求書ソフトを使うと良いでしょう。個人的にはスマホなどでも使えるクラウド型「Misoca」などがお勧めです。
確定申告では源泉徴収を漏れなく申告する
不躾な言い方かもしれませんが、国であろうと個人であろうと、「支払ってもらうべきお金は、きっちり請求されるが、あなたが本来受け取れるべきお金は、申告しないともらえない」のが世の中です。
私はシングルマザーとして色々「ひとり親家庭」がもらえるお金や、割り引かれるサービスをとことん使いました。役所で教えてもくれましたが、事細かには教えてくれず、自分でしっかり調べないと、損をすることを実感した覚えがあります。
また、源泉徴収についての申告も源泉徴収票や支払調書がなかったから申告しなかった年があり、まさか、そういった書類の添付が義務ではなかったとは知らず、遡っての源泉徴収額を申告し、12万円ほど還付された事があります。
自分から言わなければ、そういったお金は戻っては来なかったことを思うと、「もらえる義務があるものや、払わなくて済む方法があるもの」は、しっかりと調べておかないと「あなたは、これだけ損をしましたよ」と親切に言ってきてくれる人なんていないのです。
ビジネス上の観点からしても、金銭に関わることは「きっちり」した態度も必要です。今一度、申告してなかった源泉徴収票がないか確認してみてはいかがでしょう。