業務委託契約とは何か?

業務委託契約とは何か?
フリーランスで働き始めて、取引先から「業務委託契約でお願いします」と言われることは少なくありません。契約書の内容に怪しいところはないものの、どうもスッキリわからない。こんな声もよく聞かれます。フリーになったら、契約というものについての理解が大切です。ここでは、業務委託契約の概要を法律面から見てみましょう。
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「契約」は法律用語?

私たちの日常生活で「契約」という言葉を使うことは珍しくないと思います。アパートを借りれば、賃貸契約、水道や電気、インターネット回線や携帯電話も契約によって使えるようになります。

クレジットカードや銀行などからお金を借りれば「消費貸借契約書」なる書類に署名捺印が求められます。ところで、この「契約」というのは、単純な「口約束」とは違うのでしょうか?

法律でいうところの契約は「なにかをするという約束をした」という意味になります。ですから、言葉の意味そのものは「口約束」とあまり変わりがありません。

しかし、一般の「約束」が反故にしても問題にならないのに反して、契約はもう少し厳しい条件になります。法律上の意味での契約を交わした場合、その内容は法律の拘束を受けることになります。

約束を守らなかった場合は、法律の範囲で補償や弁済、罰則などが関わってくるからです。また、「契約書を作るのが”契約”で、口約束は、書面がないから、契約じゃない」と思っておられる方も多いようです。

「書面を作らない契約は無効?」という疑問もわきますね。民法では、契約は口頭でも成立する、と定めています。ですから、契約書の有無は「その契約が無効か有効か」には無関係で、契約そのものは「双方の合意」で成立します。

契約書を作るのは、お互いの意思が行き違うことや、後になってから、「あのとき、こういった」などの水掛け論が発生することを防ぐ意味のほうが大きく、契約の内容の重要度とは本来的には無関係といえます。



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「双務契約」と「片務契約」

ところで、契約を結ぶときに作る契約書、通常は2通作って、契約を結ぶ双方が1通ずつ持つのが一般的ですね。分かりやすい例でいえば、賃貸契約、携帯電話やクレジットカードの申し込みなどは、必ず転写式などで2通が自動作成され、両方に判をつくように指示されたりしていることと思います。

これには、意味があって、単に「契約したことを忘れないように」と、渡されているわけではありません。実は、契約書は、複数作る必要があるときと、1通だけで良い場合があるからです。これは、契約の性質と内容で変わってきます。

1通だけで良い場合は、「片方の人が、相手に一方的に何かをしてあげる場合」です。こういう契約を「片務契約」といいます。

2通作る必要がある場合は、「双方が、それぞれ相手に対して、義務と責任を持つ場合」です。こういう契約を「双務契約」といいます。

「一方的に何かをしてあげる契約なんて、あったっけ?」と思われるかもしれませんが、わかりやすいものでいえば「委任状」がこれに当たります。また、無償譲渡契約などもそうです。

業務委託契約はどうなのか? というと、多くの場合、依頼人は「依頼した内容をしてもらう代わりに、代金を支払う」、フリーランサーは「作業などを行う代わりに、報酬を受け取る」。

など、それぞれ異なった義務と権利を有していますから、一見、双務契約に見えます。しかし、実際のところは必ずしもそうとは限らず、いくつかの内容が入り混じって混乱気味になっているのが実情です。次に、業務委託契約について詳しく見ていきましょう。

「業務委託契約」は法律上どうなっている?

業務委託契約、と言われると、そういう法律上の規定があるように思われますが、実は「業務委託」という法律の要綱は存在しません。つまり、業務委託を直接規制するルールを定めた法律はないのです。

では、業務委託契約は法律上無効か?というと、そういうわけではなく、実際は法律上のいくつかの契約を組み合わせたものが「業務委託契約」として利用されています。

複数の形態の契約を一括して扱えるという意味では便利な形態であり、法律上の規制がないことから、内容を自由に決められるという点でも、好んで使われているという実情があります。

実際の業務委託契約は、法律でいえば「請負」や「委任」、あるいは、その両者を組み合わせたものに、ものにより「譲渡」が混ざった形になっています。

しばしば、契約書の題名にとらわれて、請負契約や委任契約とは別物のように誤解されることがあるようですが、法律上は「契約の名前がなんであるか?」よりも、「その内容がどうなっているか?」が問題とされます。

ですから、契約書の内容が請負になっているのであれば、「業務委託契約書という名前の請負契約」という扱いになります。このように、業務委託契約は非常に便利で使いやすいという反面、「好き勝手に扱える」というリスクも持っています。

これが業務委託契約の持つ問題点であるといえるでしょう。中には法律上適切でない内容を含んだものを作ってしまう可能性もありますし、業務委託の名を借りた雇用契約や、違法派遣になっている実態もあります。

これらの詳細については、また、別の機会に譲るとして、契約書を作るときは、「きちんと作ってもらえるから」と鵜呑みにせず、安易にハンコを押すことは避けるべきです。

フリーランスになったら、契約も自己責任が求められます。内容を十分に理解したうえで、署名捺印するように心がけてください。

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