来たる「人生100年時代」に我々はどう生きるべきか?LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

来たる「人生100年時代」に我々はどう生きるべきか?LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
2017年7月6日に開催された、ー『LIFE SHIFT』~あなたの人生も、100年つづく~ 20代、40代、80代の実践者が語る、長寿時代のLife&Workーの第1部で行われたトークセッションである東洋経済新報社『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』編集長の佐藤朋保氏とランサーズ株式会社 代表取締役社長 秋好陽介の対談の模様をお届けします。
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人生100年の時代到来。どんな世界が広がっているのか

2016年10月に出版されてから、現在にかけてビジネス書として人気を博している、リンダ=グラットン著『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』。

2017年7月6日、本書が掲げる「人生100年時代」をテーマに、東洋経済新報社とランサーズより『「LIFE SHIFT」100年時代を考えるイベント~あなたの人生も、100年つづく~』が開催された。

人生が100年になる時代とは一体どんな世界が広がっているのか。本稿では、東洋経済新報社『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』編集長の佐藤朋保氏とランサーズ株式会社 代表取締役社長 秋好陽介の対談の模様をお届けします。

パネラー・モデレーター紹介
佐藤 朋保氏:東洋経済新報社 編集第1部編集長。1998年東洋経済新報社入社。以来、一貫して書籍の編集に携わる。『クルーグマンミクロ経済学』や『高収益事業の創り方』(三品和広著)など、経済書、経営書を主に手がける。2012年より翻訳委員会委員長として、『善と悪の経済学』(T・セドラチェク著)、『ワーク・ルールズ!』(R・ボック著)、『ライフ・シフト』(L・グラットン/A・スコット著)などを担当。プロモーション・チームとともに本の編集・販売にあたる。

秋好 陽介:ランサーズ株式会社 代表取締役社長。大学卒業後2005年にニフティ株式会社に入社。複数のインターネットサービスの企画/開発を担当。2008年4月に株式会社リート(現・ランサーズ株式会社)を創業。日本初のクラウドソーシングサービス「Lancers(ランサーズ)」を提供している。

「人生100年時代」ライフシフトの潮流とは


秋好:2016年10月に出版された『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』読ませていただきました。実際現在の日本で、ライフシフトの潮流というものを感じていらっしゃいますか。

佐藤:そうですね、すごく感じますね。Twitterなどで検索しても、この本をテーマにしたイベントが様々な場所で催されていて、これ程までに潜在的なニーズがあったのかと、私たち自身も驚きました。

秋好:「人生100年時代」というタイトルがかなり衝撃的でした。個人的にはとてもポジティブな人間なので、「人生20年増えた、やった!」と思ったんです。ただ、人によっては「あと20年も生きるのか」というような声もあると思います。実際のところ、「人生100年時代」というのは良いことなんでしょうか。

佐藤:100年生きるといういうと、お金の心配をする方もいますが、ポジティブに考えてる人もすごくたくさんいるんですよね。たとえば、子どもと長くいれるであったり、孫やその下の世代も見れるであったり、やっぱり長生きしたい、健康でいたい、そういうふうにおっしゃる方もいます。

秋好:本の中でも、長寿社会というのは良いことなのか、それとも悪いことなのかという話題があります。良い悪いではなくて、良くするんだ、というマインドが大事だと私自身は思っているのですが、佐藤さんはどうお考えですか。

佐藤:良いものにするかどうか、それも自分次第だということなんですよね。本の端書きでも書いてあるんですが、この本は日本人にこそ読んでほしかったと著者であるリンダさんは言っています。

長く生きるという点では、日本は先端的なところにいるということですよね。課題先進国であり、その課題を解決するためのアイデアというのに、早く気づかなければいけない国でもあります。著者は、課題解決のアイデアに気づくことができれば、日本は世界をリードできるんじゃないかということも言っています。

著者が語る、日本の課題点とは

秋好:この本、日本が一番売れているらしいですね。著者からすると、日本の課題はどういうところにあるとおっしゃっているんでしょうか。

佐藤:ひと言で言えば、日本の課題は終身雇用です。ひとつの企業に、忠誠心を見せるという働き方はあり得ないと言っています。次々に技術革新が起こっている中で、企業の寿命というのは、もしかしたら人間より短くなるかもしれません。そういう時代に、長くひとつの企業でずっと生きていくというのは、考えにくいというか、あり得ないのではないかと彼女は言っています。

秋好:我々の業界で言うとインターネットやスマホの登場、驚くほどのスピードで進化する技術により、エンジニアによってはたった4年で職がなくなる可能性もあります。それぐらい産業寿命というか、職能寿命が短くなっていくので、ひとつの企業にずっといるというのが、逆にリスクになるということもあるんでしょうか。

佐藤:そうだと思います。それに加えて、最近ではAIも話題になっていて、人間が置き換えられる可能性があるということに、多くの方が注目していますよね。

秋好:世界と比べて日本の商慣習や生き方、働き方や暮らし方というのは、この人生100年時代において、ポジティブなこともあれば、先ほど話にあった終身雇用といった課題もあると思うのですが、ほかにも何か特徴はありますか。

佐藤:リンダさんが指摘しているのは、女性活躍の場の少なさですよね。男性がすごく多い。あとは、英語をしゃべれないということも言っていました。これだけグローバルな環境が広がっている現在、つながろうと思えば海外の人と仕事ができる機会がたくさんあるのにもかかわらず、ドメスティックな部分がまだ残っているので。

正社員への選択肢の多様化が、企業革命を進める?

秋好:日本の課題というのはよく耳にすると思います。その中でも、一丁目一番地たる課題は何だとお考えですか。

佐藤:やはり終身雇用ではないでしょうか。さらに言えば、正社員というのが、今の環境で既得権を持っているので、そこが変わるというのがすごい重要かなと。

秋好:どこが変われば、そこの既得権が変わってくるんでしょうか。

佐藤:この本に関する取材をしてくださった大阪大学の安田先生という方がおっしゃっていたのですが、それは、正社員の介護離職が日本企業を変える良いきっかけになるんじゃないかということでした。

正社員の50代くらいの方が、自身のご両親の介護が必要になって、今後の選択肢を会社から迫られた時、辞めるか、残るかという選択肢しかないとなると、会社自体が危なくなるということもあると思うんです。多様な仕組みが、こういったことから生まれてくるんじゃないかと思っています。

秋好:ただ一方では、ランサーズのようなサービスもそうですが、企業のテレワーク推進などもあります。テクノロジーの進化によって、働きながら親御さんをサポートするという形もあります。実は弊社の社員でも、そういった経験をしたものもいます。でも、実はテクノロジーの進化というのは、企業革命を阻害していると考えることもできるのでしょうか。

佐藤:いえ、そんなことはないと思います。ただ、企業はまだテクノロジーが進化したことによって生まれてきたものを使いこなせていないのではないでしょうか。それらを使いこなすということは、現在の企業形態ではなくなってくると思います。

今後はデジタルネイティブの時代となっていく


秋好:本日会場にいらっしゃる方では、40代の方が6割ぐらい、20代の方が3、4割ぐらいいらっしゃいます。本にはかなりコントラスト強く、明確に登場人物たちの世代間の価値観のギャップがあったかと思いますが、書かれているようなギャップはそれほどあるものでしょうか。

佐藤:個人差ももちろんもあるとは思います。世代の差というと、たとえばスマホが生まれたときからそばにあった人と、ない人では発想も違います。自分で働きたいと思ったときに、私たちの世代であれば、大学を出て新卒一括採用という枠に乗るというのが、ちゃんと働くという意味では良い仕組みだったと思います。ですが、今であれば、ランサーズを利用して自分がやりたい仕事を検索し見つけて働くという仕組みがあるというのは、大きな違いだと思うんですよね。

秋好:たとえば、私で言うと40歳ぐらいを前後にして、すごく価値観の差を感じるんですよね。

もちろん、個人差もあるので同じ35歳の1981年生まれでも、様々な考え方があるとは思います。ただ、良い意味で国に頼ろうであったり、何か大きなものに依存しようという人が、我々の世代はものすごく少ない。

今の20代は、産まれたときにはすでにインターネットがあるという世代なので、デジタルネイティブですし、ICT活用という発想がそもそも産まれたときある。たとえば我々からすると自動車活用と言っているような。発想の前提条件が違うんですよね。

とくに、これからの企業経営は、今はまだまだICT活用と言っていれば良いと思うんですが、私個人の思うところではありますが、10年後、たとえば、2025年、2030年になったときに、恐らく経営者の顔ぶれは全部変わっているんじゃないかなと思います。つまり、デジタルネイティブが前提じゃないと経営できないような時代になるんじゃないかと思っているんです。

デジタルネイティブが前提とした発想で、クリエイティブなり、テクノロジーがわからないと、会社経営はできない時代になるんじゃないかなと。本の中にも、そういうことも書かれていましたね。

佐藤:そうですね。ギグ・エコノミーと呼ばれるような強い個人が、それぞれコミュニティーを形成していくという時代になるんじゃないかなと思いますね。

ネットワークの資産=変身資産が重要

秋好:次に価値観の変容という話をお伺いしたいのですが、本のなかで言われているお金でもなく、時間でもなく、3つの資産というのはいったいなんでしょうか。

佐藤:お金を稼ぐための生産性の資産、あとは健康といった心身を健全にするための資産、そして変化に対応するネットワーク、変身資産の3つの無形資産ですね。

秋好:変身資産というのは、ちょっとわかりにくいかなと思ったのですが、どういったものなんですか。

佐藤:変化に対して柔軟な姿勢という、目に見えるとこで言うネットワークです。いろいろな友人や人間関係を持っていて発見を得られるという場所に自分を置いておくというのが、すごく重要だということですね。

秋好:本の中では、固定資産、つまりお金や土地ではなく、無形資産にシフトしていくんだと。まさに今、この瞬間も150万人のInstagramのフォロワーのいる人が、何かやるとお金をもらえたり、稼いだりするという。信用というか、ネットワークの資産ですね。

佐藤:100年あるので、有形資産で考えて維持し続けると思うと大変ですよね。だから、続けていくということはすごく重要ですよね。100年生き続けるということが重要だと、何かを貯めていくというよりは、その場その場で必要なものを組み合わせて生きていくというふうになるんじゃないかなと思いますね。

秋好:一番、皆さん聞きたいんじゃないかなと思うんですけど、人生が100年になり、産業寿命も短くなり、今日生まれた赤ちゃんのうち50%が今ない職業に就くと言われるような不確実な世の中で、個人として、今我々は何を気をつけておけば良いのですかね。

佐藤:それは、私自身も悩んでいるところなんですけれども、結局思うのは、自分は何が好きなのか。ほかの人は嫌いでやりたくないんだけど、自分は普通じゃなくてできるという、それが何なのかというのは、突きつめて考える必要があるのかなと。

と言うのも、ランサーズさんが「ガイアの夜明け」で紹介されたときに出ていた「pook(プック)」というサービスで、お風呂掃除をされていた方がいらっしゃっいました。他人の家の風呂掃除なんてなかなかできないと思うんですよね。人によってはお風呂掃除って嫌なことなんだけど、その人にとってはあまり苦痛じゃない。それを楽しくやれるといって、その時間を売るというのがすごく印象に残っています。

秋好:自分が何が好きなのかって、結構気づいてないというか、気づくのが難しいともよく言われますが、どうやったら見つけられるんですかね。

佐藤:それは、逆に伺ってみたいですね。秋好さんは、自分で何かやりたいこと、好きなことにどうやって気づいたんですか。

秋好:体験のn数な気がしますね。体験の数をどれだけするか。たとえば世の中で、コーヒーしか飲んだことない人に、何の飲み物が好きかって聞いても、コーヒーしか飲んだことなければコーヒー以外の答えは出てこない。会社員として何かの業界に勤めて、その仕事の経験しかなかったら本当にそれが好きかどうかってわからないですよね。

いろいろことをやってみると、もしかしたら今やっていることがクリアに好きなことって理解できるかもしれないですし、様々な経験をしていく中で、好きなことが見つかるんだと思うんですよね。偶然、自分のやりたいことが見つかったというのも良いと思うんですが、コントローラブルにできることとはチャレンジの数を自分で増やすことだと思うんです。

将棋好きだったら将棋してみるとか、旅行が好きだったら旅行に行ってみるとか、体験の数を圧倒的に増やすということが、コントローラブルに「好き」に行き着く可能性を高めるんじゃないかと個人的には思いますね。

私も若いときに、様々な経験をしました。本もたくさん読みましたし、いろんな人に会いに行きましたし。

佐藤:自分の中で、絶対的に探すというのは結構難しくて、いろいろなものを見て、相対的に発見するというのが「好き」を見つけるひとつの道は何だと思います。

秋好:最後になりますが、この『LIFE SHIFT』を通して、佐藤さんが編集長として今の日本社会に一番伝えたかったことは何ですか。

佐藤:自分にも言い聞かせているんですが、3割所得を下げて生きることです。お金に価値観を置かないということです。先ほど若い方は政府にも、国にも頼らないという話がありましたが、私ぐらいの世代だと、やはり計算したことあるんですよね。年金いくらぐらいもらえるのかだったり。企業にいたら、生涯いくらぐらいもらえるんだろうと。

こういった発想で生きていくと、選択肢がなくなっていくということを痛感しています。その基準でものを考えないというのは、すごく重要だと思っています。みなさんがお金に価値を置かなくなれば、自分もそっちに引っ張られるかなと(笑)。所得を3割削って、それでもハッピーな人生100年を作りたいですね。

改めて考える「人生100年時代」とは

「人生100年時代」に突入していくと考えられる今、ライフスタイルは文字通り「シフト」していくのではないでしょうか。今後、デジタルネイティブな考えを持っている方々が増え、今よりもさらに産業寿命も短くなり、終身雇用という考え方などをはじめ、既成概念が大きく変化していくことだと思います。

こういった中で我々は本質的に何を大切にして生きていくのかを考える事が、人生が100年あるというこれからの時代に必要となるのではないかと、強く感じさせる対談であったと思います。

変化していく概念の中で、新しい人生戦略を考えて行動する事が、これからの新時代を生きる我々の生き方なのではないでしょうか。

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