税理士さんがモテたくてつくった、フリーランスの便利グッズ「経費擬獣図鑑」。

税理士さんがモテたくてつくった、フリーランスの便利グッズ「経費擬獣図鑑」。
税理士さんがフリーランスのためにつくった領収書保管用の封筒「経費擬獣図鑑」。税理士さんの知識と経験をフル活用して、確定申告で得をする仕分けの方法を教えていただきました。実はあの費用が経費にできるかも!? 税理士らしくない、愉快な高橋先生にご教示いただきました。
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税理士さんは、フリーランス・個人事業主の味方!?

領収書保管袋『経費擬獣図鑑』をご存知でしょうか。新宿2丁目で開業する税理士の高橋 創(はじめ)さんが考案し、2018年5月に発売されたフリーランスのための便利ツールです。

確定申告時期に領収書やレシートを引っ張り出して、「これは何のレシートだろう? 勘定科目はなんだっけ」とか呟きながら帳簿と睨めっこしているあなた。モノグサなフリーランスのために開発(というほどではありませんが)された領収書の保管袋はいかがですか?

経費擬獣図鑑の封筒たち

高橋さんが経費擬獣図鑑を発売した理由は、寝ていても稼げる収入源が欲しかったから……ではなく、「税理士の印象を変えたい」からだそう。

「世間の人って、税理士に取っつきにくい印象をお持ちですよね。『合コンしたい職業』にランクインすることもない。『なんかお金にこまかそう』とか言われがちで。それを払拭するためにつくりました」と高橋さんは語りますが、本当はフリーランスのことを心底考えてくれたからに違いありません。

高橋さんは税理士事務所の他に、新宿ゴールデン街で『無銘喫茶』というお店を営み、確定申告の相談に乗る『確定申告酒場(不定期開催)』などフリーランスや個人事業主の味方といえるサービスを提供しています。

使い方を含めて、経費擬獣図鑑をつくった本当の理由と、ついでに税理士さんの仕事について聞いてみました。高橋さんのような税理士と出会えれば、確定申告が楽しくなること間違いなし!?

医療費の話はデリケートなので、自己申告で

ーーさっそくですが、経費擬獣図鑑の使い方について教えてください。

使い方といっても、領収書を入れるだけですよ。

ーー……それはわかるんですが、医療費・消耗品費・接待交際費・旅費交通費・雑費と袋が分れていますよね。どの袋にどの領収書が入るのか、仕分けの方法について教えてください。

それも……裏を見てもらえばどういうものが入るか書いてあるんですけど。

ーーまず医療費。知られていないけど医療費に該当するものを教えてください。

薬局で買った風邪薬は医療費に該当しますね。

ーーそれは聞いたことがあります。じゃあ、歯ブラシもOK?

歯ブラシは入りません。医療費じゃないんで。現状あるものが損なわれたとき、それを治すと医療になります。現状維持や現状プラスアルファは医療費じゃない。

あとは、近視なのでメガネやコンタクトレンズを買った場合、これも医療費に入りません。視力が低くて日常生活に支障があるかもしれませんが、病気じゃないんです。

他に知らない人がいるかもしれないところでは、不妊治療は医療費に入ります。インプラントとかレーシックも医療費扱いですね。

ーー歯並びを良くしたいから矯正した場合もいけますか?

美容矯正はダメ。「噛み合わせが悪くて早く死にますよ」ってのなら入りますけど。『医療』なのか『美容』なのかによって変わりますね。「この歯並びだと20歳を超えられません」とかなら医療的観点で該当です。

ーー医療的観点ということは、お医者さんに証明してもらう必要があるんでしょうか。

一番簡単なのは、一筆書いてもらうのがいいでしょうね。あとは税務署から問い合わせがあったら「医療として必要だった」と答えてもらうお願いをしておく。

ーーそういうのって知らない人が多いと思うんですが、税理士の先生と契約していたら教えてもらえますか?

伝えはしますよ、どういうものが医療費に入るのかは。ただ医療の話ってデリケートじゃないですか。障がい者控除の話なんかもそうなのですが、なかなかこちらから突っ込んで聞くのは難しいですよね。

それぞれ控除は受けられますけど、言いたくない気持ちもわかります。申告すれば数万円税金が安くなるかもしれませんが、「そんなことよりもプライベートを守りたい」と思うのも自然なことで。

税金に振り回されるのはおかしな話なので、知識としてはお伝えしますが、ご自身の判断、自己申告でお願いしてます。嫌な思いをさせて無理やり聞き出したら、翌年からお客さんがうちに依頼してくれなくなっちゃうかもしれませんし。

旅費交通費、必要の判断は自分がする

ーー続いて旅費交通費の袋。取材で北海道に行ったとしましょう。日帰りは可能ですが、一泊しました。しかもスイートルーム。これは?

日帰りにするかしないかは、自分の判断でかまいませんよ。スイートルームの領収書だって、封筒に入れてしまってください。

ーースイートルーム、経費になりますか?

値段というよりも、突っ込まれるとしたら「なんで二人で宿泊?」みたいな用途の問題です。

それに札幌中を探したけどスイートしか空いていなかった場合、泊まるしかないじゃないですか。税務署に通らない理由がない。一人で泊まったということが言えれば大丈夫です。

そもそも必要経費の『必要』って、判断をするのは国ではなくて皆さん自身なんですよ。皆さんの商売ですから、そこに必要かどうかを判断できるのは自分しかいません。

うちはお客さんが「必要経費です」って出してきたら、「そうですね」って。もちろん知識としてはいろいろ持っているので、前例や税務調査でいわれたことを参考に「これはヤバいかもしれません」というのはお伝えしてます。でも最終判断はご自身にしていただく。

「こういう理由でダメだと思う」と説明はするので、聞いた上で納得して取り下げるのか、勝負するのか。勝負するとおっしゃるなら「税務署にダメって言われたら、一緒にごめんなさいしましょうね」って言います。

つい税理士や税務署の顔色を伺うかもしれませんが、皆さんの商売なんで。税理士の分際で「それが必要なわけないじゃないですか!」って余計なお世話でしょ。

ーー勝負したいタイプなんですが、一緒に戦ってくれる税理士さんを見分ける方法ってありますか。

好戦的かどうかですね。私の場合は『法律的にはこうなるはず』という自分の判断基準に合わないことを言われたら戦いたくなります。好戦的かどうかの見分け方は……目つきが悪いとか、肉ばっかり食ってるとか(笑)。

あとは経費に対する考え方を税理士に質問してみるといいかもしれません。「必要経費ってなんですかね」と聞いて、第一声が「税務署が認めるかどうか」だったら保守的かも。「必要かどうかの判断は本人がしてください」なら、相談に乗ってもらいやすい税理士なんじゃないでしょうか。

接待交際費は、金額を理由に拒否はされない

ーー次はウサギの袋、接待交際費。高額すぎるとダメでしょうか。

これも金額の問題じゃないですね。例えば贈答品って、贈答していればOKです。あまりにいきすぎると贈与の問題が出てきますが、そこまで高額な物をあげる人はあんまりいないので。

仕事と結びついていれば大丈夫です。何かを贈ったり接待することで何とかお客さんを取っているような場合、それによって商売が成り立っているのだから必要経費ですよね。

私のお客さんで一番使ってる人は、個人で4,000万円くらい。ほぼ飲み代なんですけど、銀座とか。一緒に飲みに行ったときジャブジャブ使うんで、お勘定の金額が怖くなって先に帰ったくらいです。まぁ、考えたらその領収書は私のところに回ってくるんですが。ただ、その人の取引先を考えると「仕方ないかな」と思うんですよね。

ーー接待で風俗に連れて行った場合は……

飲食代じゃなきゃダメってことはありません。この科目には、接待・供応・慰安・贈答という定義があるんですよ。単語だけで判断したら、接待する場所が飲食店か風俗店かは関係ありません。

金額が高いって理由で弾かれることはない。あったら戦います。大事なのは金額じゃなくて目的なんで。

ーーグルメライターが3食全部を仕事に繋がると主張したら?

飲食専門のライターだったらいけるかな。やる価値はある。ただし似たような例で、飲食店の人が外食してメニューの開発と言い張ったんだけど、ある程度は否定されました。

あと反論されるとしたら、「メニューの開発なり執筆をしなかったら、君は飯を食わないのか?」ってのは考えられますね。生活費と経費のあいまいな領収書は、法律上はダメなんです。

ただし特例があって、商売に必要と証明できれば経費に入れられます。あいまいはダメだけど、証明できたらOK。

仕事とプライベート兼用の消耗品費は、割合で分けられる

ーー消耗品費っていうのは悩みますね。

何費かで迷って「もういいや」ってなる人はいますよね。消耗品の明確な定義はないんで、好きに分けてもいいです。困ったら雑費でも良し。どうしても迷うなら、税務署のホームページに収支内訳書ってのがあるから、それを見て欲しい。費目をゼロから考えるのは面倒だけど、この中から選ぶならできると思います。どれにも該当しなさそうなら、雑費に入れてください。

ただし領収書には、さっきの接待交際費もそうですけど、何に使ったのか、誰と行ったのかは書いておいて欲しいです。お品代って書いてもらうことがあるじゃないですか。あれは本当に税理士泣かせ。

世の中の物はほとんどがお品代ですからね。物を買ったのは知ってるんですが、消耗品なのか贈答品なのか資産なのかがわからないので、何費か決められません。お品代は禁止。書籍を買ったら書籍代。

ーースーツを買ったら?

スーツ代。経費になるかは見解が分かれるところではありますが。

ーー仕事に使うなら消耗品費でいいんですね。

仕事につかうなら消耗品で大丈夫です。例えばパソコンは消耗ってイメージがないけど、とりあえず入れてください。金額が10万円を超えたら減価償却費とかありますが、そんなものは決算の時に考えたらいいんです。

ーー仕事とプライベートの両方で使うものは?

とりあえず入れちゃいましょう。自分で分けられなくても税理士がやりますから。飲食代とかも、あいまいなものは全部、封筒に突っ込みます。セルフジャッジで外すのはもったいない。

テクニックとしては決算の時に、わかりやすいところでガソリン代ですが、週に5日は仕事で土日はプライベートというケースで、7分の5を経費にするのは合理的。走行距離で測るのは難しいですが、無理そうにみえても比率で分けることはできます。

ーーおにぎりを買いました。摂取したカロリーの50%は仕事で使います。

主張するのは自由。証明できるかですね。戦ってみてください、私以外の税理士さんと。

おにぎりは知りませんが、面積で割って、日数で割って、部屋数で割ってという前例はあるので、経費に入れられるものはたくさんあります。

税理士に依頼する境目は、向き不向きでしかない

ーー最後が雑費の袋です。

「他の項目に入らないから、この領収書は捨ててしまおうかな」という人に使ってもらう袋です。ゴミ袋みたいなもの。

ーーゴミ袋(笑)。でも本当にゴミを入れて渡されたら怒りますよね。

私生活を覗き見ることになりますが、それでもよかったらどうぞ。

経費擬獣図鑑をつくった理由になるんですが、ものぐさな個人事業主やフリーランスが幸せになるためには、第一歩として領収書を取っておく器を用意する必要があると思ったんです。どこに保管しておくかで迷って、心が折れてしまう人も多いので。

銀行の封筒に入れる人もいるでしょう。でも銀行の封筒なんて、家の中でどこにいったかわからなくなる。「ここに領収書をためるんですよ」って一歩目を端折る作業にいいかなと。

税理士がお客さんじゃない人のためにつくるメリットは皆無なので、今まではなかったんじゃないかと思います。単価も安いですし直接の顧客獲得につながるわけでもないですから、私だってこのままいったら赤字。事務所に在庫が山のようになってますから。

ーー遠い目になりましたね。この封筒を使うということは、自分で税務をやる気がある人ですよね。税理士さんに頼むか頼まないかという、境界線はどこにあるのでしょうか。

気持ちの問題ですよ。向き不向きで、やれる人はやれる。自分ではできない人に頼まれるのが、税理士としては幸せな関係です。自分でやれる人に「うちに頼みましょう」という必要はありません。

家計簿をつけられる人は、自分でやればいいんじゃないですか。逆に、私もそうなんですけど、こうやって財布の中にレシートが溜まってる人は向いてません。

ーー整理が苦手な人にとっては、この封筒は意味がある?

割り振って入れたら、自分でやる人は楽になると思います。経費擬獣図鑑を使いつつ「力尽きたから税理士を使おう」となったら税理士も楽ですね。

私の事務所がこの封筒を仕事につなげる唯一の方策として考えているのは、封筒を使った方でうちの事務所に確定申告を依頼してくれたら、請求金額から500円分を割引しようと思ってます。これ、500円なんで。

ーーまとめて税理士事務所に送れる封筒をつけてあげたら。

そのくらい、自分でがんばってもらいましょう。ひとつだけやってるのが、この封筒の領収書の発行です。元々の目的がみなさんが得た領収書を入れる袋なんで、封筒の購入に対して発行した領収書は、経費擬獣図鑑の消耗品費の封筒に入れてお送りしています。気づいてもらえたかわかりませんけど。

ーー器を用意して領収書を入れるという行為も、一歩目を手伝っているんですね。

マメにできる人はご自身で、ストレスになる人はお金を払ったら解決。仕分けはするけど、確定申告書をつくるのが面倒と思ったら連絡ください。

フリーランスは税理士をこう使え

ーー確定申告だけって、税理士さんにとって金額的に美味しくないと聞きますが。

金額は少ないかもしれませんが、作業も大変じゃないですから。あと、ちょっと気持ち悪い話をしますが、私は所得税法という法律が好きなんです。所得税法を愛してる。それを存分にぶつけられる確定申告作業は楽しいです。

それにお客さんの商売って、人生を賭けた勝負じゃないですか。ビジネスって、上手くいったら映画になるくらいエキサイティングなことです。それをアリーナ席で応援しながら見られる。だから税理士という仕事が好きなんです。

あと、私自身がお客さんに必要以上に税金を払わせるのが好きじゃない。知らなかったから損するとかは嫌なんです。税理士の仕事の本質は、そういうことを防ぐための知恵仕事だと思っていて。損してたら言ってあげるとか。

ーーなんだかんだ言っても、やっぱりフリーランスや個人事業主の味方なんですね。

本音を言うと経費擬獣図鑑をつくったのは、税理士だけどモテたかったから。税理士は地味な仕事だと思われますが、地味なことやってるっていう自覚はないんです。世間の税理士像と、僕の税理士像に差がある。遅ればせながらでも、世間が僕に付いて来てほしいじゃないですか。愛して欲しいし「きゃーきゃー」言われたい。

税理士のイメージを変えたかったんですよ。だから確定申告酒場っていうイベントをやりましたし、プロレス団体のスポンサーもしています。あとは東スポに出たくて、水着の女性を連れて行って来社PRをしたこともあります。ワタミ会長の都知事選出馬と同じ枠に載りました。でもその後、税理士会にものすごく怒られた。

税理士には品位保持っていう規定があったんですね。税理士の敷居は低くなったけど、下げ方を間違えました。ほとぼりが冷めたので、もう一回、今度は間違えていないやり方で敷居を下げたいなと思って。

ーーフリーランスにとって、税理士さんをどう使うのがwin-winの関係になりますか。

なにはともあれ相談してみてください。税理士は7万人もいて過当競争なので、相談されるのが嫌だって人はあまりいないと思います。だいたいのことは初めて聞かれるわけじゃないので答えられるし、初めてのことも知見が増えるので。

私もLINE@で無料相談を始めました。匿名で自由に相談できますし、私も「そういうところに迷うんだな」って勉強になってます。「税金はらわなきゃいけないんですか?」とか質問がきて、さすがにわからないので、「まず状況を教えてください」って。

そのくらい気軽に質問してもらってかまいませんよ。税金の話なんて、税理士にとっては世間話みたいなものですから。

(おわり)

無料相談できるLINE@

高橋 創:1974年東京生まれ 東京都立大学(現首都大学東京)経済学部卒業。専門学校講師、会計事務所勤務を経て2007年に高橋創税理士事務所を開設。著書に「税務ビギナーのための税法・判例リサーチナビ(中央経済社)」、「図解 いちばん親切な税金の本17-18年版(ナツメ社)」「誰かに話したくなる税金喫茶(会計人コース)」がある。

 

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