大企業のWebディレクターが副業で手に入れた、失恋でも凹まない強い心と未来に繋がるスキル。

副業を本業に活かす、Webディレクターの挑戦
小野 隆さん(仮名・30代)が働いているのは、グループ合計で数万人が働く日本有数の大企業。創立からは100年以上が経過する、老舗中の老舗です。2年前に中途入社した小野さんは、Web販売を行なう部門のディレクターとして勤務しています。
ベンチャー企業のみならず、大企業が働き方改革に乗り出して、副業解禁のニュースが増えてきました。ただし小野さんの働く会社では、副業はNG。時代に合わせて少しづつ変化をしているものの、まだ副業解禁には至っていません。
それでも小野さんは副業に勤しんでいます。大企業の優秀な社員ですから、収入面で困ることはありません。小野さんが副業に挑戦し続ける理由はどこにあるのでしょう。
本業の仕事をきちんと全うしながら、副業でも成果をあげるコツについて聞いてみました。小野さんいわく「副業によって本業にも好影響がでている。成果がきちんと出ているので、夏のボーナスに期待」とのこと。
働き方改革に前向きも、副業禁止の大企業
ー本業について教えてください。どのような会社で、どんな仕事を任されているのでしょうか。
本業は従業員が数万人いる大きな会社なんですが、業種を言うと絞られてしまうので伏せさせてください。100年以上続いている、老舗企業です。
携わっている仕事は、自社商品をWebで販売する部門にいて、サイト制作や開発、改善のディレクションです。いわゆるWebディレクターという立場ですね。
もともとは別の会社にいて、同じくWebディレクターをやっていました。現職に移ったのは2年くらい前になります。当時は今よりもっと対面販売が主軸だったので、Web活用が進んでいないということはチャンスがあると思って。
会社としてもWeb販売の比率を上げようとしているので、大企業にいながらベンチャーのような気質があって、新しいことに挑戦ができると感じたんです。
ー誰もが名前を知っている老舗企業ですが、働き方についてはいかがでしょうか。
働き方改革に注目が集まっていますが、当社はまだまだこれからですね。最近になってテレワークを実験的に取り入れて、人事部としては非常に前向きに取り組もうとしている印象です。
Webシフトすら完全ではないので、最新の働き方とは遠い会社だといえます。副業についても、本当は禁止されているんですよ。
ーでは、同僚で副業している人もいない?
おおっぴらに副業の話をしないので、実態はわかりません。社員が大勢いるので、ゼロではないでしょうね。でも社内で副業の話は聞きませんし、私も黙ってます。
ー働き方改革に前向きということなので、いずれは副業容認になりそうですか?
数年後には申請によって副業できるようになるかもしれませんが、私は少し様子をみようと思ってます。過去のことを探られたら困ってしまうので。ただし本業に悪影響はないと自認していますし、むしろポジティブな影響が大きくて、好循環をつくれていると感じているんですけどね。
副業はスキルアップ=未来への投資になる
ー副業を始めたきっかけを教えてください。
副業のスタートはランサーズなんですけど、使い始めたのが1年半くらい前からで、同時にデザインの専門学校へ通うことにしたんです。Webディレクターとしての幅を広げようと思ったので。いまでは、phpなどプログラミング言語も勉強しています。
副業の収入はそういう学習、投資に使っているんですが、目的は収入ではなく、学びを実践で定着させることでした。最初はひとつ数千円のバナーデザインの仕事でしたね。制作時間と報酬のバランスは微妙でしたけど、とにかく楽しいですし、自分の提案やデザインを認められるのは嬉しいですよね。
プログラミングにおいては、スキルセットが広がったことによって、副業で受注できる仕事の幅を増やすことができました。今では多い月は20万円、平均で5万円〜10万円の副収入になってます。
また本業の仕事においても、データ分析やシステム開発など難易度の高い仕事を任されるようになったのですが、入社時の自分だったらできない仕事でした。
ーそこで必要なスキルを実は持っていたと。会社側の反応はどうでしたか?
驚いてましたけど、「勉強してます」と。会社からの評価は上がったと思いますよ。6月にボーナスがありますけど、けっこう期待できるんじゃないですかね。
ー副業をすることで、苦労は感じますか?
会社は残業が少なくて、あっても月に20時間程度なので、時間管理は難しくないです。自分の場合は副業と同時に学習があるので、それが楽しくて。
実は最近、お付き合いしていた女性と別れたんですが、もしかしたら副業に夢中になりすぎたのかもしれないなって。
ーということは傷心中で、取材を受けている場合じゃないのでは。
こんなに充実してたっけ? というくらい楽しいので、不思議と凹んでいないんですよ。副業と学習、それを本業に活かすというサイクルが、精神面においても強くしてくれたのかもしれません(笑)。
(おわり)