副業生活10年。数年先の働き方を考えて、選択肢を増やすためのダブルワークに取り組んでいる。
副業生活10年以上。収入ではない、自分のために続ける理由とは
大手メーカーに勤務し、学習教材の企画〜編集業務に携わるタチバナ ユリさん。社を挙げて副業が推進されているわけではなく、あくまで個人的にサイドワークに挑戦しています。同じ部署のなかでは、上司や同僚も副業を行なっているそう。
本業の繁忙期を除いて、平日の夜や休日になると、定期的に副業の仕事を手がけていらっしゃいます。平日の日中は会社員として学習教材の編集者。終業後はフリーライターとして活躍する生活は、もう10年以上。
安定した会社で正社員勤務しており、収入や待遇に不満があるわけではありません。副業を続けているのは、自分自身で将来の選択肢を増やすため。自己研鑽の一環として続ける副業は、本業におけるスキルアップにも繋がっているといいます。
タチバナさんにダブルワークを続ける理由を伺うと、安易な副業推進ではなく、自己実現に向けた理想的な副業の形が見えてきました。
副業を始めたきっかけは、上司からの紹介
ーー副業の前に、本業について教えてください。どのような会社で、どんな仕事をなさっているのでしょうか。
会社として副業を容認するとか推奨するという話は出ていないので、社名は伏せさせてください。都内にある大手メーカー、従業員はグループ全体で5,000名以上の会社です。教育事業を手がけていて、未就学児から大学受験までを対象とした学習教材をつくっています。
私が担当しているのは、教材の企画から編集、デザインワーク、外注への依頼と管理、入稿という、教材づくりの全体に関わる仕事です。
大学卒業後、学芸員として美術館に就職したのですが、事情があって一年目で退職しまして。仕事を探すなかでみつけたのが今の会社になります。
最初に任されたのは校正の仕事です。教材の実制作は外部に依頼していたので、上がってきた原稿を校正する担当でした。慣れてくるにつれ幅が広がって、問題作成や外部への発注業務、校正を外部のチェッカーに依頼する場合はその確認、マニュアル作成や印刷所への入稿など、教材づくり全般を経験して今に至ります。
ーー問題作成やデザインワークまで手がけることもあり、やりがいのある仕事だそうですが、なぜ副業を始めたのでしょうか。
きっかけは上司からの紹介です。上司も副業をやっていて、おそらく自分で受けられない仕事があって、「誰か紹介してくれ」と言われたんじゃないかと思ってます。
私自身は副業に興味があったわけではないんですが、上司の紹介ということもあり、会社的にも大丈夫だろうからやってみようかな、と。
最初にいただいたのは、本業と同じく教材をつくる仕事でした。ただし編集ではなく、制作のほう。普段は発注している側だったのに、受注する側になるのが面白いなと思いました。
それをきっかけに、年に数本の仕事をいただくようになって、今ではWebの定期的な仕事もあったり、10年以上は副業をしていることになりますね。
副業は、働き方の選択肢を増やすための挑戦
ーー週5勤務の正社員として働くなかで、本業と副業の切り分けはどうしているんでしょうか。
副業に使う時間は、平日の帰宅後と休日に限定しています。紹介してくれた上司や同僚も副業をしているんですが、みんな終業後や休日に活動しているようです。
ただし本業の繁忙期、4年に1回ある改訂のときは、副業の仕事は控えさせていただいてます。といっても繁忙期は短い間なので、発注者さんに大きな迷惑をかけるほどではないんですけど。
ーー本業と副業、そしてプライベートまでを上手に並立なさっているようですが、それにしても10年以上副業を続けられているのはどうしてでしょうか。
実は将来的に、在宅で働きたいと思っていて。そうなると私には、ライティングが最適の選択になるんです。
いつかの働き方の自由な選択に向けて、副業で書き慣れておく必要があると思っていて、金銭的メリットは二の次で取り組めています。
同じジャンルだけでは飽きてしまうという、自分の性格も副業の動機になっているのかもしれません。副業でいただく仕事だと、例えばインテリア関連だったり、本業とは読者が違う記事を書かせていただけるので。
ーー副業やパラレルワークという働き方に注目が集まってきましたが、その先鞭として、他の人にも勧めたいと思いますか?
本業で閉塞感を感じていたり、退屈だと思っている人には良いかもしれませんね。副業を気晴らしに取り入れたり、別の世界を知ることはお勧めです。
私の場合は本業と副業がリンクするので、発注側と受注側の気持ちがわかるという相乗効果みたいなものがあると感じています。
ただ、楽ではないですよ。ライターの場合は企画を立てたり構成を考えるので、スランプみたいにまったく手がつかないこともあって。そんなときは散歩したり本屋さんで児童書や絵本を眺めてみたり(笑)、本業も副業も区別がなく、働くって苦労もあって当然ですからね。
<おわり>