フリーランスは福利厚生費が計上できない? その理由とフリーランスでも使える福利厚生を解説!

フリーランスの福利厚生費の扱いとは
会社員でもフリーランスでも、安心して働き続けるためには社会保険制度や、十分な健康増進の機会が欠かせません。
こうした目的のための費用は、企業であれば従業員のための「福利厚生費」として費用計上できますが、自分自身が事業主であるフリーランスの場合はどのように扱うべきなのでしょうか。
この記事では税理士紹介26年の株式会社ビスカスが運営する税金情報サイト『マネーイズム』の編集部が福利厚生費について税務における取り扱いを解説し、フリーランスでも一般企業の福利厚生と同等のサービスが利用できる仕組みを紹介します。
フリーランスが福利厚生費を経費にできない理由
基本的にフリーランスは福利厚生費を経費として扱うことはできません。理由としては、個人の支出と事業としての支出を明確に分けることができないためです。
そもそも福利厚生費とは
そもそも福利厚生は従業員の福祉を向上するための制度で、事業主であるフリーランスは対象と考えられていません。そうした点もフリーランスが福利厚生費を経費にできない理由の一つです。
福利厚生についてさらに理解するためには、「法定福利費」と「法定外福利費」の2つについて理解する必要があります。
法定福利費
法定福利費は法律によって義務付けられ、従業員の健康の維持と安全で快適な職場環境の管理のために企業が負担する費用のことを指します。具体的には、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料などの社会保険料などにかかる費用です。
法定外福利費
法定外福利費は法律によって義務付けられてはいないものの、交通費や住宅手当の支給、レクリエーション費用の支給などの会社によって用意されている様々な制度を示します。法定外福利については法律で義務付けられてないため、企業によって内容が大きく違うのも特徴の一つです。
福利厚生費の例
一般的な企業における福利厚生費に該当するものは、住宅手当や通勤手当の支給、健康診断やフィットネスジムの費用の補助、結婚や出産の祝い金などがあります。
その他にも、企業によってはユニークな福利厚生費を用意しているところもあります。最近では、託児所なども福利厚生費の一環で補助してもらえるケースがあります。
フリーランスは「従業員」ではない
そもそも福利厚生費とは、従業員の福祉向上を目的とした福利や厚生に関して支出する費用という解釈がされています。つまり、福利厚生費を考える上で重要なポイントは、従業員がいるかどうかという点にあります。しかし、フリーランスは誰かから雇われている従業員ではなく、個人事業主であると考えるのが一般的です。そのため、福利厚生費には該当しないと判断されるケースが多いようです。
福利厚生費には明確な定義がない?
これまで福利厚生費についての一般的な解釈や社会通念上の考え方をご紹介してきました。しかし、実は福利厚生費は明確な定義が存在せず、その取り扱いについての具体的なルールもありません。
日本の税法上では明確な定義がされていないため、フリーランスの福利厚生費は非常に曖昧でグレーゾーンであると主張する税理士も多くいます。しかし、あらゆる費用を経費に計上することはリスクが高く、あまりオススメはできません。
確定申告の際に福利厚生費用として計上したとしても、税務署から認められなかった場合もあります。さらに、修正や再申告に時間がかかってしまうことで申告期限を過ぎてしまい、無申告加算税が課せられるといったケースもありますので、注意が必要です。
フリーランスが「福利厚生」を必要な場合はどうする?
それでは、フリーランスとして働く人が健康増進や慰労目的の費用などの福利厚生を必要とする場合、どうすればいいのでしょうか。
お得な福利厚生代行サービスを利用する
個人事業主と大手企業の会社員での福利厚生の格差問題を受けて、個人事業主向けの福利厚生サービスの提供を行っている福利厚生代行業者があります。
福利厚生代行サービスを利用すると、人間ドックや旅行での宿泊施設を安く利用できたり、介護費用などの給付金を受け取ったりすることができます。月に数百円約ほどの会費を払えば、企業に勤務している人と同等のサービスを受けられます。
そのほかにも「クラウドソーシングサービス」や「公益法人」などもサービスを提供しているので、ぜひ活用してみてください。
健康診断の費用に医療費控除を適用できる場合も
従業員のいる会社などであれば、従業員の健康診断費用は福利厚生費として経費になります。その一方で、フリーランスの人の健康診断費用は個人が自分の意思で行うものになるため、健康診断を受診しても経費にはなりません。しかし、フリーランスの人でも健康診断の費用に医療費控除を適用できる場合があります。
健康診断を実施したことで病気が見つかり、その治療が行われるケースです。限定的なケースでの適用になるので注意しましょう。
福利厚生の意味を含ませた経費を計上する
福利厚生費が従業員の福祉の向上のために活用される経費と定義される以上は、事業主から従業員へ支払われる必要があります。その一方で、一般的な企業で福利厚生費として計上される食費や旅費は、フリーランスでも経費と考える余地が残されています。
というのも、税法上フリーランスの福利厚生費は明確に定義されておらず、グレーゾーンとなっているからです。ビジネスに必要で社会通念上相当と認められる費用を別の勘定科目として経費に計上することは差し支えないと言えるでしょう。
一部の食事代
従業員のいる会社であれば福利厚生費として、残業食事代や社内懇親会の飲食代などは経費として計上できます。その一方で、フリーランスが一人でする飲食は一個人の消費活動と見なされるため、経費として計上することは難しいです。しかし、フリーランスの食事代でも接待や打ち合わせを伴う食事代は経費として計上できます。
フリーランスの食事代は、リスクがある福利厚生費での計上を考えるよりも、接待交際費や会議費での計上を検討したほうが良いでしょう。
一部の旅行費用
一般的な企業であれば「福利厚生費」として経費になる旅行代として、社員旅行が挙げられます。残念ながら、フリーランスが旅行に行ったとしても経費にすることはできません。しかし、フリーランスの旅行が全て経費にできない訳ではありません。取材やマーケット調査など業務に関連する旅行代は、業務上で必要な活動として経費で計上できます。
まとめ
今回の記事では、フリーランスの福利厚生費の取り扱いについて解説しました。
福利厚生費は明確な定義が存在せず、グレーな部分も多いです。しかし、フリーランスだからそれらを一切経費にできないと判断し、ビジネス上必要な出費であるのに経費計上しないということがあると、思わぬ損をしてしまいます。
一般的なサラリーマンであれば福利厚生費の取り扱いに困るということはあまりないと思いますが、フリーランスの人にとっては非常に難しい判断を求められます。
確定申告の際に混乱しないように、福利厚生費などの税務処理についてあらかじめ理解を深めておきましょう。