真っ赤に染まった原稿に、クライアントの本気を感じた。厳しく接してくれて、ありがとう!

好奇心から受けた仕事が、思わぬスキルアップのきっかけに
メールマガジンやWEBサイトの文章を中心にライティングの仕事を始めて数年後。ライターとしての自信ができてきた私に、「ライフハック系の記事を書きませんか」という話が入ってきました。
具体的な内容は、ビジネス書や自己啓発書などを読み、その内容をわかりやすくまとめて紹介するというもの。記事のボリュームは1本あたり約2,000字。納品ペースは週7本です。
内容とボリューム、納品ペースを考えると、少々負荷が高いように思いました。しかし、ビシネス書などをたくさん読めるのは面白そうだからと依頼を受けることを決意。
このときの私は、まさかこんな好奇心から気軽に受けた仕事が、大きなスキルアップのきっかけになるとは予想もしていませんでした。
チェックバック原稿が、真っ赤!
「嘘でしょ……。」最初の原稿のチェックバックを見て、思わず呆然としました。原稿は修正箇所で真っ赤。ここまで赤を入れられたのは、初めての経験でした。
たとえば、「睡眠不足は注意力を低下させます。つまり、睡眠時間を確保することは注意力向上につながるのです。ここでは、ゆっくり寝られる方法をご紹介しましょう」という文章があったとします。すると、こんな感じでチェックが入っているのです。
■ 睡眠不足と注意力の関係について、数値的な裏付けがあればより説得力が出ます。探してください。
■ 1文目と2文目は同じ内容です。どちらか1文を削ってください。
■ 「睡眠時間の確保」と「ゆっくり寝られる」は意味が少し違います。表現を再検討してください。
それまで私が書いていた文章の多くは、販促用の文章など、感情を動かして「欲しい!」という気持ちを起こさせるためのものでした。しかし、この仕事で求められていたのは「説得力ある文章を、無駄なく、正確な言葉を使って」書いた文章。つまり、今まで書いてきたものとは根本的に違う、ロジカルな文章だったのです。
「ロジカルに」を意識したら、赤がどんどん減っていった
「駄目だ、書けない……。」真っ赤なチェックバック原稿を見て、私は深く落ち込みました。しかし、今さらこの案件から降りますとは言えません。落ち込んでいる時間はない。
とにかく、目の前にある仕事をするしかない。私はそう腹をくくりました。そこで、チェックバックで入った赤をしっかり読み、何がいけなかったのか、どうしたらよりロジカルな文章になるのかを考えながら修正することに。
それを何回か繰り返しているうちに、ロジカルに書くために意識すべきことがわかってきました。わかれば、あとは実行するのみ。やがて、チェックバックから赤がどんどん減っていきました。
赤が少しずつ減っていくたびに自信がついてきました。ついに、ほとんど赤が入っていないチェックバック原稿を受け取った時には、思わずガッツポーズを作ってしまいました。
急に指に違和感が……原因はタイピング!?
「なんか、指が痛いなあ~。」なんとか数ヶ月たって仕事に慣れてきたある日、指に違和感を覚えました。何が原因かなと考えながら軽く指を揉み、パソコンの前に座ります。そして原稿を作成しようとして「あっ」と気が付きました。
指の違和感の原因は、タイピングかもしれない! 当時、私は多い時には1日約10,000字近くの原稿を作成していました。完成原稿で約10,000字ですから、実際にキーを指で叩いている回数はその倍以上あります。
その間ずっと、指は動きっぱなし。「これが原因で指が疲れているのでは?」そう思ったのです。とはいえ、ライターである以上、タイピングせずに仕事をするということはできません。
では、どうすれはいいか。私は指になるべく負担をかけずにタイピングする方法を考えなければいけなくなりました。
親指シフト入力で、より早く疲れにくくタイピングできるように!
指の負担を軽くするためには、打鍵数を少なくすればいい。そう考え、私はまずGoogle日本語入力を導入しました。
Google日本語入力は予測変換ができます。予測変換ができるということはつまり、単語を全部タイピングしなくても大丈夫ということ。これで、打鍵数を少し減らすことができました。
次にしたことは、入力方法をローマ字入力から親指シフト入力に変えることでした。親指シフト入力については以前から、文章作成量が多い人に人気の入力方法だと聞いて興味を持っていました。
新しいキー配列を覚えるのは面倒そうだと避けていたのですが、背に腹は代えられません。導入方法を調べ、少しずつ練習を始めることにしました。
最初は、わずか100~200字程度の文章を打つのにも5分ほどの時間がかかりました。仕事ではまだまだ使えるレベルでなかったので、仕事ではローマ字入力、SNSなどの投稿は親指シフト入力、というように使い分けました。
その結果、数ヶ月でかなり思い通りに入力することができるようになり、指の負担も激減。今では、仕事ももちろん親指シフト入力。長い文章を打っていても、指の疲れや違和感はほとんどありません。
この仕事は、1年あまりの期間で終了しました。しかし、その1年あまりの間で、私はロジカルな文章の書き方を理解し、指が疲れにくい入力方法を身につけることができました。
この2点により、仕事の幅は広がりました。特に親指シフト入力をマスターし、より早く、より疲れにくく文章を作成できるようになったことは大きなプラスになっています。
一旦仕事を引き受けたものの、実際始めてみると予想以上に難しく「私にできるのだろうかと」悩み、胃が痛くなるようなこともフリーランスにはあります。
しかし、そんなときこそ成長のチャンス。正面から向き合って、どうすればこの仕事をやり遂げることができるのかを考えて行動することで、思わぬスキルアップの機会を手にすることができるのではないでしょうか。
(おわり)