会社を経営していて困ることの1つは、社員の離職・退職です。社員が頻繁に退職すると、社員教育にかけてきた費用は無駄になってしまいます。さらに、安定した会社経営は難しくなるでしょう。
そこで、この記事では社員の離職・退職の主な原因を統計(平成30年上半期雇用動向調査結果の概況)より割り出します。そして、離職・退職を防止する方法や社員の離職・退職が起こってしまったときの対処法も紹介します。

調査結果から分析する離職理由とは?
平成30年上半期雇用動向調査結果の概況の転職入職者が前職を辞めた理由から離職・退職理由の主な6つをランキング形式で紹介します。
1.労働条件がよくなかったため
労働時間、休日等の労働時間が悪かったため退職・離職する人も多いです。男性では、25~29歳で15.1%、30~34歳で12.6%、35~39歳で11%、40~44歳で11.4%の人が退職理由にあげています。
女性では、20~24歳で10.1%、25~29歳で21%、30~34歳で15.7%の人が、労働条件がよくないことを退職理由にあげているのです。女性に関しては、20~54歳までが二桁%で、女性全体でも13.2%の人が退職理由としています。
労働時間、休日に関しては、プライベートとのライフワークバランスを重視する人にとって大きな問題です。
例えば、男性の場合、残業や休日出勤が多いと、家族を過ごす時間が少なくなります。それを不満に感じる人も少なくないでしょう。女性も、労働時間が長く、子育てとのバランスをとることができないという理由で退職する人は多くいます。
2.賃金がよくなかったため
給与等収入が少なかったという理由で退職・離職する人も少なくありません。男性では、20~24歳で11.3%、25~29歳で14.7%、30~34歳で19.1%、35~39歳で12.3%、の人が賃金の少なさを退職理由にあげています。
女性では、25~29歳で10.6%、30~34歳で10.8%、35~39歳で10%、40~44歳で10.9%の人が賃金の少なさを退職理由にあげているのです。
賃金が少ないと、どれだけその仕事が好きでも生活していくために辞めて転職せざるを得ない人もいます。男性の場合、子育て世代の25~39歳はその点が顕著に表れているのです。
子育てすると、子どもが成長するにつれてお金がかかります。厚生労働省「21世紀出生児縦断調査」によると、1人あたり月額平均4.1万円かかるのです。そのため子どもを育てるため高い収入を求めて退職・転職する人が多いのです。
3.人間関係がよくなかったため
職場の人間関係が好ましくなかったという理由も、退職・離職で多い理由です。19歳以下の男性で14.6%、40~44歳で10.3%がこの理由です。女性では、19歳以下は18%、20~24歳で15.7%、45~49歳で12.4%、50~54歳で16.7%という数字になっています。
このデータからすると、年代男女を問わず、人間関係で悩み退職・離職する人が多いことがわかるでしょう。人間関係がぎくしゃくすると、その職場で働くのは苦痛になります。どんなに自分が好きな仕事でも、辞めてしまう人がいるほどです。
ケースによっては、うつ病を発症して退職せざるを得ない場合もあります。職場の人間関係の改善は、社員の退職・離職を減らすために取り組まなければならない課題です。
4.会社に将来性がないと考えたたため
会社の将来が不安だったという理由で退職・離職する人も多いでしょう。男性では、25~29歳で10.2%、30~34歳で12.1%、35~39歳で14.1%、45~49歳で12.2%の人が会社の将来性を考えて退職しています。一方女性は、全ての年代で二桁%に届かず、女性全体でも8.8%となっているのです。
このデータからわかることは、男性は女性よりも会社の将来性を重視していることがわかります。
また、男性で働き盛りといわれる20代~40代で、パーセンテージが上がっています。ここからわかるのは、働き盛りの年代ほど会社の将来性を考慮して、この先働き続けるのかそうでないのか決めているということです。
5.仕事が自分に合わなかったため
仕事の内容に興味を持てなかったという理由で退職する人は多くいます。19歳以下の男性では11.3%の人がこの理由で退職しています。20~24歳の女性の11%はこの理由です。
仕事に興味が持てないと、仕事へのモチベーションが上がりません。そこで、退職・離職してしまうのです。年齢がいくにつれて、仕事に興味を持てなくても生活していくために働き続ける人は多くなります。
しかし比較的若い世代は、生活のためにと割り切って仕事を行う人は少なくなる傾向です。比較的若い世代は仕事へやりがいや楽しさを求めています。また、若い世代ではなくても、仕事に興味が持てなかったという理由で辞める人は、約5%いて見過ごせない原因です。
6.自分の技能・能力が生かせなかったため
能力・個性・資格を生かせなかったという理由で退職・離職する人も多いです。男性全体の退職理由の4.6%、女性全体の退職理由の3%は、自分の能力や資格が生かせなかったというものとなります。
自分の能力に自信がある人は、自分の能力を生かしたいと思うのは自然なことです。
例えば、クリエイティブな能力に自信がある人は、毎日決まり切った仕事をルーティンのように繰り返していると、退職したいという欲求が出てくるでしょう。また、せっかく資格があるのに生かせない人もそうです。自分が取得した資格を生かして高収入を目指すのは自然なことといえます。
社員から本当に離職理由を聞き出すコツ
続いて、社員から本当の離職理由を聞き出すコツを紹介します。社員から本当の離職理由を聞き出すのは難しいです。
同じ街に住み続けたり、同業他社に転職したりする場合、またこれまでの職場の人と関わるかも知れません。そのため本音を言わず、建前を言って退職していく人は多くなります。どうすれば、社員が退職しようとしている理由を聞き出せるでしょうか?2つの役立つコツを紹介します。
日頃からのコミュニケーション
社員から本当の離職理由を聞き出すコツの1つは、日頃からコミュニケーションをよくとることです。当たり前のことかもしれませんが、この日頃からのコミュニケーションをとることは簡単なことではありません。
気軽に話せる打ち解けた関係を築けるかは、たいていは上司の側にかかっています。上司が小言や説教が多かったり、威圧的だったりすると、社員の多くは心を閉ざしてしまうでしょう。そうすると、辞める時には「家族のことで…」などとお茶を濁されてしまいます。
まずは上司の側から近づきやすい雰囲気を作ることは大切です。気さくに声をかけたり、時には食事をしたりしましょう。そして、会話している時は、話すことを意識するのではなく、よい聞き手になりましょう。
定期的なリーダー層や上司との面談
社員から本音を聞き出すコツとして、定期的にリーダー層や上司との面談を用意することもおすすめです。こうした面談があれば、日頃話す機会があまりない社員とも定期的に話す機会をもてます。
社員も悩んでいることを相談したいと思っているものの、話しかけにくく感じているかもしれません。あるいは話すタイミングが難しいと感じている場合もあるでしょう。そのような日頃あまりコミュニケーションがとれていない社員とも話す機会をもてるのでおすすめです。
また、日頃からよくコミュニケーションをとっている社員の中にも、まじめな話をあらたまってするのが苦手に感じている人もいます。きちんとした話し合いの場をもうけることは、日頃からコミュニケーションがとれている社員にとってよいです。
離職を防止するための具体的な改善策
ここからは離職を防止するための改善策を具体的に6つ紹介します。
労働条件の見直し
労働時間、休日等の労働時間が悪かったため退職する人が多いなら、労働条件の見直しを行うことをおすすめします。
昨今様々な働き方を求める人が多いことから、ワークシェアリングや在宅勤務(テレワーク)の活用を行っている企業は多いです。
関連:テレワークと働き方改革について
労働時間や休日が問題になっている人は、自分の余暇がないことや子育て・介護との兼ね合いで仕事を続けるのが難しいと感じています。ワークシェアリングなら、1人あたりの労働時間を減らすことができ、ワークライフバランスを保つのが容易になるでしょう。
また在宅勤務やテレワークは、自分の家で仕事ができますので、子育てや介護をしながら、仕事を続けられるケースもあります。
加えて、有給休暇が取得しやすい雰囲気や仕組みになっているかも見直しが必要なポイントです。有給休暇を取得しづらい雰囲気や仕組みになっているなら、社員の不満は溜まりやすいでしょう。そのため有給休暇を気持ちよく取得できる雰囲気づくりや仕組みづくりが大切です。
給与体系の見直し
給与体系の見直しも重要です。給与等収入が少なかったという理由の退職を減らすことができます。
給与体系の見直しを行うなら、まずは担当チームを作りましょう。複数人でチームを作ることで透明性が確保できます。
そして、会社として社員のどこを評価して報酬を与えるのかを考えましょう。仕事内容を評価するのか、数字を評価するのかで給与体系は大きく変わります。家族手当など社員の暮らしを守る手当をどうするかも考えましょう。
固定給と変動給をどうするのかも決めます。固定給は社員の生活の基盤になる部分です。変動給は社員のモチベーションを上げることにつながる部分です。
給与が増額される基準も明確にしましょう。成果主義の場合でも、個人の成果で判断するのか、部署の成果で判断するのかを決めなければなりません。このようにして給与体系を見直して、成果をあげている人がそれにふさわしい対価つまり給与を受け取れるようにします。
社員のコミュニケーションの機会を増やす
職場の人間関係が好ましくなかったという理由の退職を減らすには、社員同士のコミュニケーションの機会を増やすことが有効です。
食事やお酒の席で社員の親睦を深めるのは昔からのことです。時には、リーダー層や上司の側から社員を誘って、食事やお酒の席を設けるのも良いでしょう。
さらに、会社でコミュニケーションの機会を作ることもできます。例えば、ゲーム配信を行っている株式会社アカツキは、役員ランチ会を設けています。月に1度、役員を指名して一緒にランチができるのです。費用は会社負担で行っています。また、マンスリーパーティーも行っています。これは、社員同士つまりヨコのコミュニケーションを促進する目的で行われているのです。
社員のキャリアデザインを描きやすくする
会社の将来が不安だったという理由の退職を減らすには、社員のキャリアデザインを描きやすくするのが良いでしょう。
具体的には、会社の現在の取り組みと目指している目的に関しては、文字で伝えると良いでしょう。社内でミーティングを行い、現在の実情と目標のギャップには何があるのか、そのギャップを埋めるのにどんなことを取り組もうとしているのか社員に伝えましょう。
そして、その目標に対する想いは、トップが自分の言葉で語るのが重要です。スピーチで会社がどういう方向を向いているのか示します。
また、その他面談時に行えることとして、その社員の5年後、10年後、20年後の将来を一緒に考えることもできるでしょう。社員の個人的な目標を聞いて、それに向けて会社でどんな風に取り組めるかを話し合うことができます。
面接時に真実を伝える
仕事の内容に興味を持てなかったという理由の退職を減らすには、面接時に真実を伝えるのが良い方法です。面接時に、理想ばかり話すと、入社後に社員はそのギャップに苦しみます。
例えば、面接時に「将来的に商品のデザインをお願いしたい」と言ったとしましょう。しかし入社後しばらくは、工場の行員としての仕事を割り当てるとします。そうすると、クリエイティブな仕事をしたいと思っていた社員は、工場での毎日同じ仕事の繰り返しでモチベーションが低下していくことがあるのです。
このようにならないために、数年は自分が望む仕事ができないことや会社の全体を理解するために色々な部署に配属されることを面接時に予め伝えておきましょう。
定期的な上司との面談
定期的な上司との面談は、能力・個性・資格を生かせなかったという理由で退職する人を減らすのに有効です。なぜなら上司は社員がどのような能力・個性・資格を持っていて、どんなことを希望しているのか把握できるからです。
社員は、すぐに希望が実現しなかったとしても、自分の希望が叶う道標を知ることができます。そのためすぐに社員の希望が実現しなかったとしても、不満を持ちにくくなるのです。
例えば、株式会社サイバーエージェントは、上司と部下の面談を1対1で、月に1回実施しています。ヤフー株式会社も「1on1ミーティング」という名称で、週に1回上司と部下が30分対話を行うようにしているのです。
離職者が出て人員が不足した際の対処法
次に離職者が実際に出て、人員が不足した際の対処法を紹介しましょう。
外注する
離職者が実際に出て、人員が不足した際には、アウトソーシングつまり外注するのがおすすめです。
人材派遣という方法もありますが、人材派遣を利用した場合、やはり社内のルールや実務に関することなどある程度の教育が必要になります。もちろん人をどうしても補充しなければいけない場合は、人材派遣は有効です。
しかしこうした教育する手間を考えると、アウトソーシングでできる部分はアウトソーシングを利用する方が良いでしょう。
アウトソーシングの活用例としては、IT分野があげられます。IT分野は自社で育成するのが難しいです。しかしすでに技術を持っている企業や個人にアウトソーシングすれば、自社教育は必要ありません。
また、アウトソーシングをお願いした企業や個人が高い技術を持っているなら、自社だけではできなかったことも成し遂げることができるのです。
クラウドソーシングサービスもおすすめ
離職者が出て、人員が足りない時にクラウドソーシングサービスを利用するのもおすすめです。上述したアウトソーシングを、インターネットを介して依頼することができます。
現在、様々なクラウドソーシングサービスがあり、自分の会社にあったクラウドソーシングサービスを利用できます。
例えば、ランサーズはクラウドソーシングサービスにおいては老舗ともいえる存在です。プロフィールを見比べて実績ある企業や個人にアウトソーシングすることもできるでしょう。
同じくクラウドソーシングサービスで有名なのはクラウドワークスです。ホームページ制作、ライティングなどを外注できます。グラフィックやウェブデザインを外注したいなら、99designsもおすすめです。192か国、112万人のデザイナーが登録しています。
離職原因を探って労働環境を改善しつつ外注を利用する
この記事では、社員の退職・離職が相次ぐときの原因と対策を紹介しました。社員が退職する理由は、仕事に興味が持てないことや人間関係、労働条件などです。給与に不満を持って退職する人もいますし、会社に将来性を感じなくて辞めてしまう人もいるでしょう。
社員は会社に対してどう思っているのか本音を聞き出すためにコミュニケーションを頻繁にとりましょう。
対策としては、面接時に現実的な話をきちんとしておくことやコミュニケーションをよくするためにランチミーティングを開くことがおすすめです。
また、人員が不足してどうしても困ったときは、アウトソーシングを利用しましょう。クラウドソーシングサービスはこの点で便利なサービスです。特にランサーズなどの実勢が豊富なクラウドソーシングサービスを利用することをおすすめします。
