

海外に事業を広げていきたい。けれど、何から手をつければいいのか分からない。
そんな悩みを抱える企業は少なくないのではないでしょうか。
今回お話を伺ったのは、リサイクル着物の販売を中心に事業を展開し、着物の新たな価値を国内外に届けようとしている「株式会社Colorful Studio」代表の袴田 久美子さん。実際に一歩を踏み出す中で見えてきたのは、想像以上に広がる選択肢と、その中での判断の難しさだったといいます。
理想として思い描いていた方向と、現実的に進めやすい選択肢。その間で揺れる中、外部人材との出会いが1つの転機となりました。
視点が整理され、海外に向けた取り組みから始まったプロジェクトは、やがて「まず何を整えるべきか」という足元の見直しへとつながり、結果的に進むべき方向が見えてきたそうです。
初めての外部人材との協働はどのように進み、どのように道筋を見出していったのか。詳しくお話を伺いました。
【インタビュイー概要】
株式会社Colorful Studio
代表 袴田 久美子様
HP:https://www.colorful-studio.jp/
Etsy:Kimono Chuemon

目次
「やりたいけど進めない」海外展開、何から始めればいいのか分からなかった

――まずはじめに、御社の事業内容を教えてください。
リサイクル着物の販売を中心に、着物を使ったリメイク商品の展開やアパレル事業、体験工房の運営などを行っています。
どの事業でも共通して大切にしているのは、「サービスを通して自己肯定感を高めるきっかけをつくりたい」という想いです。リサイクル着物の事業でも「この着物を選んでよかったな」「これを着ることでちょっと前向きになれるな」という体験を提供したいと思っています。
着物は長く保管されていることも多いため、次の方に気持ちよく手に取っていただける状態に整えることも大切にしています。一枚一枚の着物の良さが伝わるよう、丁寧に扱うことが私たちの強みです。
こうした着物の価値を、今後は海外にも届けていきたいと考えています。
――海外展開に向けて、実際にこれまでどのような取り組みをされてきたのでしょうか?
海外進出は2023年の11月頃から検討を始め、2024年の秋頃にはJETROの海外展開支援事業にも参加しました。2025年1月には実際にパリへ渡っています。
――その中で、どのような課題やお悩みがありましたか?
動き出していくうちに商品開発や現地での販売方法など、さまざまな選択肢が一気に広がり、「どこから手をつければいいのか分からない」という状態になってしまったんです。
大きく分けると、リサイクル着物をそのまま販売していく方向と、着物をリメイクして新たな価値を加えていく方向の2つが見えてきました。
私としてはリメイクやアップサイクルをやっていきたいと考えていたのですが、動いている間にリサイクルのほうがすぐに進められるという現実も見えてきたんですね。
海外事業を伸ばしたいけれど、社内の人手や時間も限られている中で「どちらを優先すべきか」「どう進めていくべきか」という点に悩んでいました。
——今回が初めてのプロ人材への依頼でしたが、不安や迷いはありましたか?
正直なところ「どこまでお願いしていいのか」がわかりませんでした。
どういう方がいるのかも見えなかったですし、どのくらい私たちの力になってくれるのかという不安もありました。
作業者ではなく、もう少し上流の仕事もできる人材がいるのでは、というイメージは持ち始めていたんですが、実際は人による部分が大きいと聞いていたので、余計に判断が難しくなっていたように感じます。
そんなときに静岡県の補助金事業を知って、「補助金があるなら1度試してみようかな」という気持ちになったんです。静岡県の外部人材活用に対する補助金制度を活用すれば、費用の8割が補助されるのは大きいと思います。
補助金がなければ、知り合いや紹介された方に依頼していたかもしれません。やはりどういう人で、どう動いてくれるのかが見えている人のほうが安心感があります。
もし依頼後に合わなかったと分かった場合でも、契約したら一定期間は関係が続くと思うと少し不安に感じていました。
「海外」ではなく「国内」からスタート。想定を変えた外部人材の存在

——今回、ご相談いただいたのは海外進出に向けたマーケティング分野だったとお聞きしました。
実はまだ、海外に関する依頼はしていないんです。
いずれはお願いしようと思って関係自体は続いているんですが、今は国内を先に見てもらっています。
——海外ではなく、国内からご依頼されたのは何か理由があったのでしょうか?
一番大きかったのは、依頼した方が「想像していた以上にできる方だった」ことです。
もともとは、海外分野の人手が足りなかったので「ある程度、作業をお願いできればいいかな」というイメージで依頼を考えていました。
しかし、実際にお話してみると、視点がただの作業者とはまったく違っていることに気づいたんです。
単に「何をやりましょうか」という話ではなく、「どこから手をつけるべきか」「どう進めていくべきか」といった、経営全体を踏まえて提案してくださる方でした。なので、弊社の経営について相談できる相手として関わっていただこうと思ったんです。
そうすると、海外進出も会社の事業の中では一部分にすぎないなと気づいて、まずは事業全体を整理した上で進めたほうがいいんじゃないか、という考えに変わりました。
——複数の候補者がいる中で、その方に依頼しようと思った決め手は何でしたか?
1つは、私とバックグラウンドが近かったことです。
私自身、M&Aに関わってきた経験があり、今回依頼した方もオンラインで洋服の販売を行っていて、似たような経験をしている者同士だったんです。同じような背景を共有して経営目線から考えていらっしゃるのがわかって、アドバイスいただきたいなと思いました。
もう1つは、提案の具体性です。
「何をしましょうか」というところから始まったんですが、「どこから着手するのか」「どの部分をどう見ていくのか」といったところまで落とし込んで提案していただけました。事業の大きな方向性の話だけでなく、最後には細かな解析をする仕事も必要になってくるとイメージが持てたんです。
候補者として紹介されて履歴書を見た段階から「この方は話が合いそうだな」という感覚はありました。実際に面談をしてみても、経営目線で会話ができる方だと感じましたし、「この方なら、事業全体を見ながら一緒に考えていけるかもしれない」と思えたのが大きかったです。
最初に「方向性を一緒に決めていく」というところから伴走していただけると感じたことが、最終的な決め手になりました。
――候補者があらかじめ絞られていた点も影響はありましたか?
それは大きかったと思います。
今回、私と外部人材の方の間にコーディネーターが入ってくださったんですけど、最初から3名に絞って候補者をご提案いただいたんです。実際に面談で候補者の方とお話できたので、それぞれのスキルの違いや強みを比較しながら検討することができました。
いろいろなプラットフォームを見ると、本当にたくさんの方がいらっしゃって、その中から選ぶのは正直かなり大変だと思います。ランサーズさんだけでも登録者は300万人いらっしゃるそうですし。
その点、ある程度候補を絞った状態でご紹介いただけたことで、「この方とこの方はこう違うな」と判断しやすかったですね。
結果的に、自分たちに合う方を見つけやすくなったのでよかったなと感じています。
外部人材は“外注”ではなかった。強みが掛け合わさる関係へ

——契約後、どのようにプロジェクトは進んでいきましたか?
まずは国内のマーケット調査から入っていただいて、その結果をもとにどの販売方法や集客の導線に力を入れていくかといった全体の設計を一緒に進めていきました。
6ヶ月ほどかけて取り組んできたんですが、単に依頼した作業を進めるだけでなく、「こうしたらどうなるか」「ここまで見たほうがいい」といった形で、毎回お願いした以上に一歩踏み込んだ提案をいただけたのが印象的でした。
――進める中で大変だったことや、難しさを感じた点はありましたか?
分析や仕組みづくりの部分が大変でした。どうしても専門的な内容も多く、理解に時間がかかる場面もありました。
また、依頼した方がまとまった時間を取れるのは週末中心ということもあり、進み方がゆっくりに感じる時期もありましたね。進捗が1週間や1ヶ月単位になることもあったので、その点は難しさを感じた部分でもあります。
ただ、私からの依頼がボリュームの大きいものになってしまい、負担をかけていると感じていましたし、週末中心になることは事前に共有されていたので、納得した上で進めることができました。
——そうすると、事前に進め方や前提をお互いに共有しておくことは重要でしょうか?
そうですね。事前にしっかり打ち合わせを重ねたというよりは、契約前の面談でお聞きした程度だったと思います。「実は…」と話してくれていたので、その後の進行についても大きなズレは感じませんでした。
常に一緒に動いているわけではないからこそ、最初に認識を合わせておくことは大切だと思います。
――逆に、一緒に取り組む中でよかったことや価値を感じた場面はありましたか?
単に業務を依頼するだけでなく、一緒に考えながら進めていけるパートナーとして関われたことが大きかったです。
私はどちらかというと細かい数字を見るのが得意ではないのですが、担当してくださった方が細かい分析が得意な方で、目標に向けた指標を設定し、実際に数値を見ながら「次に何をすべきか」を考えてくださっていました。
お互いの強みが補い合える関係だったことで、事業の進め方そのものが変わっていく感覚があり、とても心強かったです。
「まず試す」外部人材活用で広がった、事業の進め方と経営の視点

——今回の取り組みを通して、どのような変化を感じていますか?
本格的な運用に入る前から「進捗が見やすくなった」という声は社内でも出ています。
また、販売方法や集客動線ごとにKPIを設定できるようになったことで、「今どこが足りていないのか」が見えるようになってきました。
例えば、よく言われる購買率や商品単価を上げたり、購入点数を増やすことを、これまでは感覚的に捉えていた部分があったんですね。ですが今回、設定から仕組み化までしてもらったことで、具体的に何をするべきか把握できるようになりました。大きな変化だったと感じています。
仕組みづくりは、会社を経営していく中で非常に重要なことです。
まだ入力で煩雑だと感じる部分はあるんですが、今後しっかり運用していくことで、より効率的に改善を回していけるのではないかと考えています。
――外部人材に依頼したことで、袴田さんご自身に何か変化はありましたか?
はい、ありました。これまで「やらなければいけないと思いつつ、手をつけられていなかったこと」を実際に形にしてもらえたのは大きかったです。
正直、細かい分析や仕組みづくりは手間もかかります。経営者が自分でやるとなると「今は他に優先したいことがある」と判断してしまい、どうしても後回しになりがちです。
だからこそ「できる人材が社内にいないのであれば、外部の方にお願いするのも1つの選択肢なんだ」と考えるようになりました。
経営者がすべてを抱え込むのではなく、必要に応じて強みを持つ外部の方と手を組んでいくことの重要性を実感しています。
依頼や指示の伝え方についても工夫するようになりました。単に私の主観で伝えるのではなく、『市場のトレンドやデータではこう示されている』といった客観的な視点を交えて伝えるようにしています。そうすることで、チーム全体が納得感を持って動けるようになり、コミュニケーションがより建設的になりました。
――最後に、外部人材の活用を検討している企業にメッセージをお願いします。
補助金を活用できる期間に、外部人材の活用を試してみることをおすすめします。
今は、社内だけで完結させるのではなく、外部の専門人材の力を借りながら事業を進めていく時代になってきていると感じています。
特に地方の企業はリソースが限られていることも多く、経営を支えるパートナーや頭脳となる人材が不足しているケースもあるのではないでしょうか。そこで「社内の足りない部分を外から補う」という選択肢を持つことができれば、事業や経営の幅は大きく広がると思います。
一方で、自社の状況やフェーズに合った外部人材の方にご依頼することも非常に重要です。
スキルや評価の高い人が、必ずしも自社に合うとは限りません。要望の出し方によっては、自分たちがやりたいこととは異なる領域のスキルを持つ人材とマッチングする場合もあります。
私たちも、最初はかなり抽象度の高い状態からスタートしましたが、コーディネーターの方に紹介いただいた方の中から「この人だ」と思える方に出会うことができ、結果として想定以上の形でプロジェクトを進められました。
その経験を通して実感したのは、「自分たちは何を求めているのか」「何を実現したいのか」を言語化しておくことの大切さです。
まずは1度試してみることで、自社にとってどのような関わり方が合っているのかが見えてくるはずです。
