ShopifyのECサイト構築と合わせて銀行独自の支援策を提案!「お客さまと一緒に汗をかく」を徹底


地域の小規模事業者の未来をどう切り拓いていくか。多くの地方銀行が直面している問題です。少子高齢化やデジタル化などの社会変化に対応できず、取り残されている地方事業者は少なくありません。また、コロナ禍ではインバウンドの客がほぼいなくなったことなどから売上が急減し、廃業した事業者も少なくないでしょう。

そんななか福井県の第二地方銀行である「福邦銀行」は、2021年5月にランサーズと業務提携。ランサーズに登録している人材と地域の事業者を結びつけてECプラットフォーム「Shopify」を使ってECサイトを構築し、海外での商品販売につなげようと支援を続けています。

提携のねらいやメリット、銀行独自の取り組みなどについて福邦銀行営業統括部の吉岡正さんにお聞きしました。

【インタビュイー概要】
株式会社福邦銀行
営業統括部次長 吉岡 正さん
ホームページ:『https://www.fukuho.co.jp/

【福邦銀行・ランサーズのShopify導入支援キャンペーン】
2021年5月に業務提携した福邦銀行とランサーズは、ECプラットフォーム「Shopify」を活用した福井県内の企業のDX化と越境ECによる新規販路開拓をサポートするキャンペーンを展開。福邦銀行から紹介を受けた企業にランサーズのプロフェッショナル人材をマッチングし、Shopifyのサイト構築・運用を進めている。

ランサーズが間に入ってくれる安心感は大きい。事業者もプロ人材の力を安価に借りられる

ランサーズと地域の金融機関の連携
――御行では地域の事業者のサポートに尽力されていますが、今回のランサーズとの取り組みにはどのようなメリットがあると考えて連携を決断されましたか?

最大のメリットはECサイト構築にあたり、事業者の負担が軽減されるという点だと思っています。通常、事業者がランサーズを利用して仕事を発注する場合、自らランサーズ内で人材を探してスカウトしたり募集をかけたりして人材を見つけ、メールや面談を通して最終決定します。これらをすべて自分たちでやらなければいけないため、初めて利用する事業者には少しハードルが高いでしょう。

一方で今回の取り組みはランサーズの専任コーディネーターが間に入って、お客さまからの要望を聞き、適した外部人材を複数人選んだうえで、それぞれの方との面談をセッティングしてくれます。当行もランサーズの利用ノウハウがないため、ランサーズ側でふるいにかけられた人材であれば、安心してお客さまに紹介できます。

――デジタルに慣れていない事業者は、ランサーズというプラットフォームを利用することやオンラインで人材を探すことをまずためらってしまうのですね。

そうですね。あとは費用が抑えられている点もメリットだと思います。当行のお客さまは小規模事業者が多いため、内容がどれだけ良くても費用が高額であれば参加はされないと思います。でも今回は手が届きやすい費用で、かつプロの外部人材の力を借りてShopifyでECサイトを立ち上げられる。そのためお客さまの反応も良く、紹介件数は増えていますね。

――実際に取り組みが始まってからは、どのような点が良いと感じていますか?

ランサーズの担当者が丁寧にお客さまからの聞き取りをしてくれることですね。最初にランサーズと事業者、当行で1時間ほどの面談を行うのですが、担当者の方がお客さまのニーズや今後の希望などを上手に聞き出して、ランサーの選定など次のステップに生かしてくれます。

私たちも越境ECについては勉強をしていますが、Shopifyや海外の販路開拓などについて熟知しているとは言いがたい。そこに知識のあるランサーズが入ってくれることで、お客さまとの間に認識の違いが生まれた場合にも軌道修正してもらえます。とてもありがたいですね。

デジタルに縁のなかった事業者に海外商談会などと合わせて紹介。サイト構築後まで考えサポート


――具体的にどういった事業者に提案をされているのですか?

ランサーズの担当者からは「伝統工芸品を作っていて、ECサイトなどデジタルの取り組みをやったことがない事業者がいいのではないか」というお話がありました。確かに伝統工芸品や地域の特産品を作っている事業者は、昔と変わらぬ手法でビジネスをしていてデジタルとは縁遠いケースが多い。でも時代に合わせて変化していかなければ、存続は厳しくなるでしょう。

こういった商品は目新しさがなければ県内では売れないし、県外で売ろうとしてもすでにその地域で似たような商品があることも珍しくありません。でも海外であれば注目してもらえるし、購入につながる可能性があります。そこで今は伝統工芸品や特産品を作ったり扱ったりしている事業者を中心に提案をしています。

――提案先はどのように見つけているのですか?

行内で勉強会を開き、キャンペーンの魅力やアプローチの方法について話し合っています。すると理解や感心が広まったのか、徐々に支店の営業担当者から提案先の候補があがってくるようになりました。

――実際に今キャンペーンに参加しているのは、どういった事業者ですか?

業種はさまざまですが、共通しているのは「事業承継をしたばかり」という点ですね。70〜90歳代の先代から事業を引き継いだ40歳代の経営者が「先代のやり方とは違う、何か新しいことをやりたい」と考えていたときに当行から提案を受け、参加を決断してくださっているようです。事業承継は変化にはいいタイミングです。越境ECはそこに響いたのだと思います。

――若手経営者のみなさんも次の一手を探していたのでしょうね。とはいえ、提案内容が良くなければ受け入れてはもらえないと思います。

やはりいきなり「Shopifyで越境ECを始めましょう」と言ってもお客さまは戸惑います。それにサイトが完成した後、実際に軌道に乗せられるのか不安に思うはずです。そこで当行ではShopifyでのECサイト構築とは別に独自のサポートもしています。

例えばクラウドファンディングを行ってテストマーケティングをしたり、海外のバイヤーさんとのオンライン商談の機会を設けたりしています。Shopifyと並行して進めることで、ECサイト完成時に実際に商品が売れる状況になっているようにしています。

ランサーズで制作した「いぶし柿」のECサイト(Shopify)
(SELAS Shopping:https://shoppingselas.jp/products/echizen-smaked-persimmon?variant=42577012031742

――「いぶし柿」の海外との商談の様子はテレビでも取り上げられていました。ECサイトを作って終わりではなく、その後のことも考えたサポートをされているのですね。

はい。こういったお客さまに提案できる“武器”は行内の勉強会などを通じて共有し、事業者への提案に活用してもらっています。また実際にお客さまの参加につながったケースは、ほかの行員が参考にできるように行内のイントラネットで提案内容などを公開しています。

――行内で情報共有をする、みんなで“武器”を考える、というのは今回のキャンペーンを成功させるために大きなポイントですね。

“武器”はほかにもあるんです。それが補助金のコンサルティングです。できるだけお客さまの費用負担を軽くするために、利用できる補助金はないかを探します。補助金があることでキャンペーン参加の後押しになりますからね。

お客さまと一緒に汗をかくことが大事。融資よりまず「お客さまの役に立つ」を考える

福邦銀行
――ShopifyでのECサイトが構築できたら終わりではなく、きちんと事業にプラスになるように考えて提案されているのですね。

私はお客さまと一緒になって汗をかくことが大事だと思っています。実は“武器”が本当に通用するのか確かめるために、また事業者から直接意見を聞くために、今でも自ら営業に行っているんです。事業者からは「ほかの銀行よりもたくさんの提案を持ってきてくれる」と感謝の声を聞くこともあり、本当にやってきてよかったと思います。

――さまざまな提案をすることで、事業者は「自分たちのことを考えてくれている」と感じるのでしょうね。

若い行員にはよく「融資のことは忘れて、まずは本業支援の提案をしよう」と伝えています。まず相手のためになることを全力でやり、信頼関係ができたときに当行の商品や融資を考えてもらう。この流れでいいと私は思っています。

そのため行内の評価体系も変えました。以前は融資実行額しか見ていませんでしたが、今はどれくらいお客さまの売上支援をしたかを評価基準の一つとしています。また本業支援を頑張った店舗には表彰もしているんです。

「本業支援ばかりしていて、銀行としての経営は大丈夫なのか?」と思われるかもしれませんが、そこは私が上場企業への融資を開拓して成果を出します。だから若手には本業支援に力を入れてほしい。「融資ありきではなく、何でもいいのでまずはお客さまの役に立つ」という姿勢は、相手にも伝わると信じています。

取材・文:ひろみね
https://www.lancers.jp/profile/Merry5
報道記者、大学職員を経てフリーライターに。インタビューやコラムなどを多数執筆している。