外国語で書かれた書籍や記事、プレスリリース、報告書などを翻訳したい場合、どのような翻訳者を選べばいいのでしょうか?翻訳を適正な価格で依頼するためにも、料金の仕組みや相場を事前に知っておきたい人もいるでしょう。
また依頼先の選択肢のひとつとして、中間マージンの不要なフリーランスへ依頼するメリットについても把握しておくことがおすすめです。
本記事では、翻訳を依頼する際に知っておきたい料金の仕組みや相場、流れや選び方、および注意点などについて解説します。

目次
翻訳依頼の料金の仕組み
翻訳料金は、主に「文字数」あるいは「単語数」を元に算出される仕組みです。例えば日本語、中国語や韓国語であれば文字数をベースに、英語であれば単語数をベースに数えます。
ほかに「ページ数」や「時間単位」で算出されることもあるので、翻訳者に確認するようにしましょう。また文章量の把握方法は、翻訳前あるいは翻訳後のどちらの原稿で数えるのかも翻訳者ごとに異なります。
翻訳者のレベルごとに料金も異なるので、求める仕上がりのレベルについても事前に検討しておきましょう。
言語別の翻訳依頼の料金相場(料金相場表)
翻訳を依頼する原稿の分野・難易度・種類や、翻訳者あるいは翻訳会社を利用するのかによって料金は大きく異なります。難易度の目安は次のとおりです。
難易度 | 訳文の用途 |
---|---|
低い | 個人的な手紙や通信内容 |
中程度 | ビジネス文書全般 |
高い | 専門・特殊知識や入念な校正を要するもの |
上記を踏まえて、次のような対象言語別に翻訳料金相場について見ていきましょう。
- 英語(和英)
- 中国語
- スペイン語
- フランス語
- ドイツ語
- タイ語
- ベトナム語
実際の料金は、下記で示す相場よりリーズナブルであったり高額になったりしますので、目安にしてください。
英語(和英)の翻訳依頼の料金相場
英語に関しては、日本翻訳連盟の「翻訳料金の目安」も参考にされるとよいでしょう。
対象言語 | 翻訳料金 |
---|---|
英日翻訳 | 12円〜35円/word |
日英翻訳 | 8円〜30円/文字 |
中国語の翻訳依頼の料金相場
対象言語 | 翻訳料金 |
---|---|
中国語→日本語 | 9〜20円/文字 |
日本語→英語 | 9〜20円/文字 |
スペイン語の翻訳依頼の料金相場
対象言語 | 翻訳料金 |
---|---|
スペイン語→日本語 | 20〜24円/word |
日本語→スペイン語 | 12〜16円/文字 |
フランス語の翻訳依頼の料金相場
対象言語 | 翻訳料金 |
---|---|
フランス語→日本語 | 20〜24円/word |
日本語→フランス語 | 12〜16円/文字 |
ドイツ語の翻訳依頼の料金相場
対象言語 | 翻訳料金 |
---|---|
ドイツ語→日本語 | 21〜25円/word |
日本語→ドイツ語 | 12〜16円/文字 |
タイ語の翻訳依頼の料金相場
対象言語 | 翻訳料金 |
---|---|
タイ語→日本語 | 12〜25円/文字 |
日本語→タイ語 | 12〜35円/文字 |
ベトナム語の翻訳依頼の料金相場
対象言語 | 翻訳料金 |
---|---|
ベトナム語→日本語 | 12〜25円/文字 |
日本語→ベトナム語 | 12〜25円/文字 |
翻訳を依頼するときの流れ
はじめて翻訳依頼を検討している人に向けて、成果物を検収するまでのおおまかな流れを次のとおりご紹介します。なお大口の案件は、個人の翻訳者よりリソースの豊富な翻訳会社への依頼が安心です。
- 翻訳依頼の問い合わせ
- 送付した原稿を元に見積もりを依頼
- 料金と納期が折り合えば翻訳を依頼
- 納品物のチェック
- フィードバックに応じた修正対応
ではそれぞれについて、見ていきましょう。
翻訳依頼の問い合わせ
まずは翻訳会社やフリーランスを探せるWebサイトなどを確認し、サイトのメッセージ機能やフォームなどから問い合わせをします。
対象言語、日英あるいは英日といった翻訳方法の他に、「分野」「用途」「読み手」「文章量」などの情報を伝えましょう。
読み手については、社内あるいは顧客や取引先などの社外向けか。また翻訳者にも得意・不得意な分野があります。
翻訳の質を高めるためは、案件に最適な翻訳者に出会うことが大切です。次の例を参考に、依頼を検討している原稿の概要について的確に伝えましょう。
分野 | 用途 |
---|---|
法務関連 | 契約書、裁判資料、会社定款、社内規定など |
技術関連(建設、電気・通信、機械、ITなど) | 取扱説明書、特許文書など |
マーケティング・広報関連 | Webサイト、会社案内、プレスリリース、スピーチ原稿など |
ECサイト関連 | 化粧品・健康食品などの商品説明、ECサイト運用のマニュアルなど |
送付した原稿を元に見積もりを依頼
基本的に、見積もりに費用はかかりません。問い合わせ後、または問い合わせの際に原稿を送付して、翻訳料金の見積もりを依頼します。
フリーランスを探せるWebサイトで依頼内容と予算の情報を公開して、対応可能な翻訳者の応募を待つ「公募」もひとつの方法です。
またプロフィールや実績を見て相性のよさそうなフリーランスを「指名依頼」する、あるいは「直接依頼」することもできます。
料金と納期が折り合えば翻訳を依頼
料金が折り合えば、正式発注予定日と納期などのスケジュールを決めましょう。一般的には、契約書を交わすことになります。
フリーランスを探せるWebサイトでは、契約書を交わす手間は不要です。プラットフォーム上で発注者と受注者の合意が形成されると契約成立と見なされます。
また依頼する際には、オリジナルの原稿に上書きするのか、あるいは併記とするのか納品形態について決めておくことです。
翻訳以外のオプションについても確認が必要です。レイアウト調整作業や文字起こし、Webサイトを多言語化する場合に必要なCMS入稿作業などは、別途コストがかかります。
納品物のチェック
翻訳が完了すると、訳文がメール、郵送による送付、あるいはプラットフォームを通じて送信されます。訳文を受け取ったら、依頼内容に則した成果物かどうか確認しましょう。
基本的に依頼の目的に則した訳文が届き、想定していた用途にそのまま使用できる場合がほとんどでしょう。
しかし訳文を読んで修正箇所があれば、フィードバックをして修正に関する指示をします。
フィードバックに応じた修正対応
疑問点や修正依頼があれば、フィードバックとともに差し戻します。
見積もりの段階で、修正が必要な場合の対応について回数や期限などの取り決めがあればスムーズに対応してもらえるでしょう。
依頼側の一方的な都合で、依頼内容の変更など大幅な修正が発生した場合には、別途料金がかかるケースもあります。
翻訳会社の中には、後払いに対応しているケースもあるでしょう。プラットフォームを活用する場合、依頼段階でクレジットカード情報を入力し、納品物を承認したら決済される仕組みが多いです。
翻訳者の選び方
まず発注時に大事なことは、翻訳者選びです。翻訳者選びのポイントとなる、以下の2点を確認します。
- 専門知識を持っている
- 読ませる文章を書くことができる
ではそれぞれについて、見ていきましょう。
専門知識を持っている
ひとつめの選定ポイントは、翻訳するジャンルに詳しい人を選ぶことです。翻訳する原文は、ジャンルごとに細かく分かれています。書籍翻訳であれば、小説や科学、健康、音楽などです。
読者は、「専門知識が欲しい」「そのジャンルが好き」といった理由で、翻訳された文章を読みます。専門知識を持っていないと、読者の求める情報の勘所がわからなかったり、正しい情報をもとに訳したりすることができません。
例えば、訳された文章の中で歴史の整合性が取れていないとき、知識がなければ修正できません。最低でも「そのジャンルが好き」という気持ちを持った人にお願いしなければ、「嫌々、訳された文章だな」と読者に悟られてしまうことがあります。
読ませる文章を書くことができる
ふたつめの選定ポイントは、(日本語として)こなれた文章が書ける人を選ぶことです。例え納品スピードが遅くとも、面白い文章を書くことができる人は、読者を楽しませることができます。
また、読みづらい文章は、読み進めるのに苦痛を感じさせます。「面白い文章か?」「スラスラ読める文章か?」などをチェックするために、翻訳者にテスト案件(オーディション)を行うことが一般的です。
複数の人にテスト案件を実施してみると、同じ原文でも、さまざまな文章で訳されてくるので、理想的な文章を見つけやすくなります。
翻訳を依頼する際に気をつけたい3つの注意点
翻訳を依頼後に「誤訳や違和感」「納期や費用」などの面で失敗しないためにも、次の3つの注意点に気をつけることが大切です。
- 校正(ネイティブチェック)を行う
- 丸投げをしない
- 発注側も専門知識を学ぶ
ではそれぞれについて、見ていきましょう。
校正(ネイティブチェック)を行う
翻訳者から納品されてきた原稿には、「校正を入れること」が理想です。特にWeb上の記事は乱れやすいので、注意して校正しましょう。
校正は、校正ができる社内の人に頼む(もしくは自分で行う)か、アウトソーシングします。校正のコストを下げたい場合に、翻訳者に校正とセットで翻訳を頼むときもあります。校正とは、以下の2パターンを指します。
- ( A )翻訳された文章として正しいのか、誤字脱字のチェック
- ( B )記事に対する専門家のチェック
これらの( A )( B )を人に任せる場合、校正者を増やし過ぎない工夫をします。確認作業の人数が増えれば増えるほど、「誰が正しく訳せているのか?」という議論になりがちだからです。
もしも複数人に依頼しなければならないとき、発注担当者は文章の確認がスムーズに終わるよう、それぞれの担当者に指示を与えることが役割となります。
丸投げをしない
発注するときは、翻訳者や校正者が、気持ちよく仕事できるような環境づくりを心がけます。原文がある翻訳では、ゼロベースから文章をつくり出すことをしません。
しかし、一つひとつの言葉を他言語に置き換えていくので、それなりの集中力がいります。そのことを忘れて、「ただ原文を訳すだけだから簡単だろう」と、短すぎる納期でスケジュールを組んでしまうとミスが起こりがちです。
また、「完璧な状態で納品されることが当たり前だ」と思わないことです。例えば「校正者に依頼したので、もう大丈夫だろう」という気持ちでいると、誤字脱字を見落とす危険があります。
「納品物は完璧じゃないので、しっかりとチェックしよう」と緊張感を持って、納品物の確認をしましょう。
発注側も専門知識を学ぶ
もう一つ、依頼するときに心がけることは、発注側も専門知識を身につける努力をすることです。そもそも翻訳を依頼するときに、原文についての専門知識を有していないと「こんなふうに訳して欲しい」と指示することができません。
また、プロの翻訳者や校正者には、発注側の原文翻訳への熱量は自然と伝わります。もし、発注側の熱量がなければ、翻訳者たちのモチベーションが下がる可能性もあります。
そのため、もしも未知のジャンルの翻訳を発注することになったときは、専門知識をコツコツ勉強することが大切です。「もっとよい翻訳文にしたい」という気持ちが伝われば、パートナーたちから自然とクオリティーの高い翻訳文が納品されるでしょう。
翻訳をフリーランス(個人)に依頼するメリット
翻訳業界では、スキルの高いプロの翻訳者がフリーランスとして働いていることで知られています。フリーランスに依頼するときには、自分で探し出した翻訳者(個人)に直接連絡をとり、取引条件を交渉するなどの手間が必要です。
多少の手間がかかる代わりに、翻訳会社(法人)に依頼する場合と比べて次のようなメリットがあります。
- 実績に裏付けされた専門性の高い翻訳者が見つかる
- 翻訳者と直接やり取りするので、タイムリーかつ的確に指示や要望を伝えられる
- 社内メールの翻訳など、小口の案件でも適宜対応してもらえる可能性が高い
- 手が空いていればスピーディに対応してもらえるので、納期も最短になる
- プラットフォームを利用すると、夜間や土日祝日問わず依頼できる
- 中間マージンが不要なので、翻訳会社よりリーズナブルで予算内に抑えやすい
うまくフリーランスを活用して、自社と条件の合う翻訳者を探してみてはいかがでしょう。
まとめ:フリーランスからレベルの高い翻訳者を探してみよう
翻訳は、原文を別の言語に置き換える仕事です。誤訳されていないことはもちろん重要ですが、読者にわかりやすく伝えようとする工夫が必要なのです。
レベルの高いフリーランスの翻訳者に出会えば、短納期かつリーズナブルな費用で質の高い成果物を入手できる可能性があります。
発注側の立場になったとき、今回ご紹介したポイントを押さえて、読み進めたくなるような文章に仕上げていきましょう。
