新規事業を行うときや、商品のマーケティング担当になったとき、あなたはどのような手法で競合調査を行っていますか?
競合調査とは、自社で展開している事業・商品と類似した他社事業やサービスを比較して、自社の課題や改善点を見出すことです。正しい競合調査を実施するために、競合調査の目的の決め方、調査方法、収集すべきデータ項目、分析方法やデータ活用方法まで本記事でご説明します。
また、競合調査と市場調査の違いや、3C分析やPEST分析など調査実施の際に便利なフレームワークについてもあわせてご紹介します。

競合調査とは?競合調査の概念と市場調査との違い
競合調査とは、競合他社の事業やサービスなどと自社事業を比較し、さまざまな項目の分析調査を行うことです。競合調査の目的によって、調査対象と調査範囲・調査項目や分析方法は大きく異なります。
競合調査と市場調査が混同されることも多いですが、競合調査と市場調査は別物です。市場調査はマーケットリサーチとも呼ばれ、数値で現在の市場を把握してマーケティング施策を立案することを指します。
関連:マーケティングリサーチとは
具体的には、商品が取引される業界の動き、取引先となる客先企業の動向、競合他社の取り組みなど市場(マーケット)全体などを調査して、どのような施策を打てば自社商品が売れるのか考えていくこととなります。
競合調査のやり方と押さえるべきポイント
続いて競合調査の手順を、4つの項目に分けて押さえていきましょう。
1:競合調査の目的を決めよう
競合調査の目的(ゴール)を決めずにやみくもに情報収集するのは危険です。何も目的を決めずに調べ始めてしまうと、調査対象が多すぎて、膨大な時間がかかってしまいます。
競合調査は、自社の課題を見出して、課題解決の施策立案を行う(マーケティング施策を立てる)ところまでセットで行う必要があります。
正しい分析結果を出すためにも、しっかり競合調査の目的を定めましょう。
・新商品の開発
・商品、サービスをリニューアルする
・社内の人員体制を一新する、ビジネスモデルを再度立て直す
・営業資料やHPの改善
・お客様満足度を高める など
商品リニューアルであれば、類似した商品を扱っている競合他社や、同価格帯の商品を展開している企業について調査をしていきます。社内の人員体制や従業員満足度のアップが目的であれば、商品軸だけではなく、同じ規模感の企業や同じエリアにある企業を調査していく必要があるでしょう。
まずは、自社で何が課題なのか、何を成し遂げるために競合調査を実施したいのかを明確に定めましょう。
2:競合調査では調査対象を明確に決めることが大切!
調査目的が決まったら、次は調査の対象となる競合企業をピックアップします。手あたり次第、A社もB社も調査対象にすることはおすすめできません。以下のポイントに留意しながら、調査対象となる企業をしっかり絞り込むようにしましょう。
・類似商品、サービスを扱う競合企業の中でトップシェアの企業
・類似商品、サービスを扱う競合企業の中でシェアが1番低い企業
・類似商品、サービスを扱う競合企業の中で自社と同レベルの企業
・類似商品、サービスの価格帯が同じ企業
・類似商品、サービスを扱う競合企業の中でマーケティング戦略が似ている企業
・類似商品、サービスを扱う競合企業の中で直近売上を伸ばしている企業
・類似商品、サービスを扱っていないが、性別や年齢・地域属性が同じターゲットを狙っている企業の中で、シェアが高く成長が目立つ企業 など
売上が伸びている企業だけではなく、うまくいっていない企業の悪い事例も調査することで、より客観的な分析が可能になります。
1で立てた目的に合わせて、競合調査の対象を3社程度、定めていきましょう。
3:仮説を立てよう
競合調査の目的と調査内容を決めたら、いくつか仮説を立てていきます。
たとえば、「競合内でトップシェアのA社は〇〇が弱い可能性があるので、その根拠となる数値を調査から見つけよう。その上で自社で〇〇に対する施策立案をしよう」と言うように、仮説を確認するために競合調査を進めていきます。
仮説を立てる際は、以下の調査項目を参考にしてみてください。
◇競合調査の項目例(BtoBのWebサービスが商品の場合)
会社情報 | 企業規模、事業内容、商品リリースの年度、立地、資本金、投資家 |
---|---|
人に関する情報 | 組織・営業人数、目立つ営業マンはいるか、どのような採用や人材教育をしているのか |
商品情報 | 商品概要、技術力、価格、提供方法、販売後のアフターフォロー体制、商品の優れている点と弱い部分、商品キャッチコピー |
広告宣伝・PR力 | 利用している広告媒体、広告ビジュアルと露出度、SNSアカウントの有無、口コミ調査 |
4:実査
1~3で定めた調査目的、対象、仮説に基づいて実際の調査を開始していきます。調査実施から分析を終えるまでの流れは「実査」と呼ばれています。
代表的な実査方法は、ネットリサーチと競合企業への直接訪問、調査会社の利用が挙げられます。近年ではインターネット上に「お客様の声」や「商品特徴」が掲載されていることが多いため、ネットリサーチを実施する方が多いでしょう。
しかし、競合からリサーチをされることを恐れて、インターネット上に情報公開を限定的にしている企業もいます。その場合は、覆面調査サービスや競合調査・市場調査の代行サービスを利用することも可能です。または、フリーランスや副業希望者に「顧客として競合のサービスを体験してくれませんか」と依頼して実査していく方法もあるでしょう。
競合調査で役立つマーケティングフレームワーク6選!
ここまでの章で、競合調査の具体的な流れをご説明してきました。競合調査のやり方は理解できても、調査対象のリストアップや、調査後の分析がうまくできない方も少なくないでしょう。
そこで本章では、競合調査や市場調査時に役立つフレームワークをご紹介します。
それぞれのフレームワークは、競合調査の目的を決める前や、自社の改善点や強み弱みを発見するときに役立てることが可能です。
また、競合調査の仮説を立てるときや、思考整理のタイミングで活用することをおすすめします。
3C分析
顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)それぞれの視点から、情報を整理していくマーケティングのフレームワークです。
ここでの顧客(Customer)とは、販売相手のお客様だけではなく、市場そのものを指す場合もあります。
▶詳しくはこちらの記事で説明しています。
3C分析とは何か。
5フォース分析
5フォース分析とは、競合要因となる5つのフォース(脅威)を洗い出し、分析するためのフレームワークです。
◇5フォースとは
1.売り手(供給者)
2.買い手(購買者)
3.新規参入者
4.代替製品
5.競合他社
この5つのフォース(脅威)を書き出して、自社を取り巻く競争の構図を理解しましょう。
▶詳しくはこちらの記事で説明しています。
5フォース分析とは何か。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは、自社や競合他社の事業を分類し、どのビジネス工程でバリュー(価値)が生み出されているか分析する方法です。
▶詳しくはこちらの記事で説明しています。
バリューチェーン分析とは何か。
SWOT分析
SWOT分析とは、下記4つの要因を調査して、自社を客観的に理解した上で、事業計画の立案や戦略を立てる際に役立てるフレームワークです。
S「Strengths」=「強み」
W「Weaknesses」=「弱み」
O「Opportunities」=「機会」
T「Threats」=「脅威」
SとWは企業の内部的要因であり、OとTは外部的要因となります。自分たちの利点と課題、自分たちが置かれた市場の要因をバランス良く分析できるフレームワークです。
▶詳しくはこちらの記事で説明しています。
SWOT分析とは何か。
4P分析
4P分析とは、マーケティングにおける4つの視点を組み合わせて、マーケティング戦略を立てていくための分析方法です。
◇4つのP
1.Product(製品、商品)
2.Price(価格)
3.Promotion(プロモーション)
4.Place(流通)
この4つのPは、商品をどのように売るか計画・実施していく上で非常に重要な項目となります。やみくもに競合リサーチを行うのではなく、4Pの項目を意識して調査していくと良いでしょう。
▶詳しくはこちらの記事で説明しています。
4P分析とは何か。
財務分析
財務分析とは、企業の財務諸表を元に、企業の経営状態を分析する方法です。健全な経営ができているか、競合他社と財務諸表の数値を比較していくことで、具体的に経営上の課題が把握できます。
日常的に財務諸表を目にする機会は多くないため、経理や会計の専任担当や、財務コンサルタント以外の方には少々とっつきにくい分析方法とも言えます。
▶詳しくはこちらの記事で説明しています。
財務分析とは何か。
競合調査を自社で対応できないときは外注もあり!
競合調査の方法や、実査のときに役立つフレームワークを複数ご紹介してきました。やり方は理解したものの、自社で対応する時間がない…とお困りの方もいるでしょう。
本章では、競合調査または市場調査を、外部に委託する方法をご紹介します。
①競合調査の代行会社に依頼する
代表的な方法として、競合調査・市場調査を代行している調査会社へ依頼する方法があります。
競合の営業方法や、営業体制、社内の人員体制から営業利益や今後の計画まで、競合で働く人しか知り得ない情報も収集してくれる点が強みです。
その他にも、覆面調査やネットリサーチなど、さまざまな形態で実査代行をしてくれます。
費用相場は、調査対象、調査項目の多さ、調査データ納品までの日数で大きく変動します。価格非公開となっているものが多く、百万円単位で費用がかかる可能性がある、という情報も見受けられるため、まずは見積り依頼をしてみましょう。
②コンサルティング会社に依頼する
競合調査や市場調査を、コンサルティング会社に依頼することも可能です。コンサルティング会社には、経営全体の相談をする経営コンサル、財務コンサル、採用コンサル、マーケティング系のコンサル会社など、さまざまな種類があります。
コンサル会社と経営戦略を立てる一貫として、競合調査を実施していくことは多いでしょう。
費用相場は、一般的にコンサルティング会社は月々、数十万円~数百万円かかるケースが多いです。
③フリーランスに依頼する
3つ目の外注先として、フリーランスに依頼する方法があります。調査会社やコンサルティング会社に依頼する場合、月々の費用が数十万円~数百万円のパッケージになっていることが多いため、どうしても中小企業やスタートアップ企業にはコスト感が合わないでしょう。
クラウドソーシングなどで、個人活動しているフリーランスのコンサルタントやマーケターを探して発注をすれば、予算が厳しい企業でも依頼ができる可能性があります。
ただし、フリーランス=安いとは限らず、調査対象や調査項目、実査後の分析など幅広く依頼すると、その分金額は跳ね上がるため注意しましょう。
費用相場も、月数万円~10万円代でコンサル可能な場合もあります。※依頼範囲が大きければ価格も変動します。
まとめ
競合調査や市場調査の概念や、調査の流れ、実査時に役立つフレームワークをご紹介しました。競合調査を実施するときは、調査目的、対象、仮説の流れを押さえて実施していくことが大事です。
調査対象が多いとき、各種フレームワークを用いてリサーチすることに不慣れな場合は、ぜひ競合調査の外注も視野に入れてみて下さい。
競合調査や市場調査の代行企業やコンサル会社はどうも費用が高くなってしまう、というお悩みがあれば、
まずはランサーズのようなクラウドソーシングサービスを用いて、気になるコンサルタントがいるか探してみましょう。
相談であれば無料でできるので、まずはフリーランスを探してみましょう。
