ロゴを商標登録しようとする場合、類似する商標がないかどうかを事前に確認しておくことが重要です。類似する商標が既に登録されていると、商標登録できないだけでなく、使用をすることもできなくなるからです。本記事では、既に出願・登録されている商標の検索方法と、具体的な商標登録の手続き方法について、ご説明いたします。

商標登録は必要なのか?
商標登録には、出願料や登録料の費用がかかります。また、出願から登録までには、通常、約7か月程度の期間がかかります。したがって、商標登録に積極的になれない方も多いかもしれません。
しかし、過去の記事にある通り、商標登録をしておけば、出願時に指定した商品・サービスについて、独占的にその商標を使用でき、類似する商標についても他人が使用することを排除できるというメリットがあります。
また、商標権は更新することで半永久的に存続する財産権であることから、ライセンスや譲渡による収益をあげられる可能性もあります。さらに、商標登録表示やR(丸R)マークを付すことで、社会的な信用を高めてくれます。
一方で、商標登録をしていない場合、商標法は先願主義(いわゆる、「早い者勝ち」)を採用していることから、他人に同一または類似する商標を先に登録されてしまうと、その後、差止請求を受けて使用できなくなったり、登録商標の権利者に損害が発生している場合には、損害賠償請求をされたりする可能性があります。
したがって、コンペなどで作成したロゴについては、商標登録をしておくことが非常に重要です。
まずは商標検索で他の企業の登録商標をチェック
商標を出願する前に、事前に類似の商標が既に登録されていないか確認しておく必要があります。せっかく出願しても、同一または類似の登録商標がある場合には、登録ができなかったり、権利範囲を狭める必要が出てきて登録が遅れたりする可能性があるからです。
(1)ロゴ商標の検索
それでは、ランサーズのロゴを例に、ロゴ商標の検索方法をご紹介いたします。なお、出願日から約2か月程度しか経過していない商標は、データベースに蓄積されていませんので、ご注意ください。
出願・登録された商標は、特許情報プラットフォーム(以下、「J-PlatPat」といいます。)で、無料で検索することができます。
まずは、調査範囲を限定するために、「類似群コード」を調べます。類似群コードとは、数字とアルファベットを組み合わせてなるコードで、全ての商品・サービスにこのコードが付与されています。同一の類似群コードが付与された商品・サービスは互いに類似と推定されます。したがって、登録商標と同一または類似の商標を、その登録商標の指定商品・サービスに付与されたコードと同一のコードが付与されている商品・サービスを指定して出願しても、原則として登録できません。
具体的に説明します。登録商標①「Japax」と登録希望の商標②「JapaX」は類似するものとします。商標①「Japax」が、商品「チョコレート」(類似群コード30A01)について登録されている場合、これに類似する商標②「JapaX」を、同一のコードが付与された商品「クッキー」(類似群コード30A01)について出願しても、原則として登録できない、ということです。
一方で、類似群コードが異なる場合は、登録できる可能性があります。先ほどの例でいうと、商標②「JapaX」を、商品「ハンドバッグ」(類似群コード21C01)について出願する場合は、前記登録商標①「Japax」を引用されて拒絶されることはありません。
それでは、具体的に類似群コードを調べてみます。類似群コードは、J-PlatPatの中央にある「R商標」タブの「6.商品・役務名検索」の欄に、具体的な商品名(例えば、「ティーシャツ」、「運動靴」、「香水」等)やサービス名(例えば、「マッサージ」等)を入力して調べることができます。
ランサーズは、仕事の依頼者とフリーランサーを結びつけるサービスですので、例えば「売買契約 仲介」というキーワードを入力して検索します(右側のプルダウンで、「and」または「or」条件を選択できます。今回は「and」条件で検索しています)。
検索結果の右端を見ると、「商品の売買契約の仲介」は、35B01の類似群コードが付与されていることが分かります。このとき、左端に記載してある「区分*」についても、一緒に確認してください。上記サービスは、第35類の区分に属していることが分かります。
*区分…商標を使用する商品やサービスを、大まかなジャンルごとに分けたものをいい、全ての商品・サービスが第1類~第45類の区分に分けられています。
次に、ロゴに付与される図形等分類コードを調べます。図形等分類コードとは、図形要素に付与されるコードで、通常、1つのロゴ商標に複数のコードが付与されています。図形等分類コードは、J-PlatPatの中央にある「R商標」タブの「5.図形等分類表」で調べることができます。
ランサーズのロゴは、よろいを着たランサー(槍騎兵)ですので、まずは「大分類」の「23 武器、弾薬、甲冑(「よろい」と「かぶと」)」の矢印(↓)をクリックします。
そうすると、選択した大分類の下位概念である中分類が表示されている箇所に飛びます。そこで「23.5 甲冑(「よろい」と「かぶと」)」の矢印(↓)をクリックし、さらに、ランサーズのロゴは甲冑全体が表されていますので、小分類の「23.5.1 甲冑」をクリックします。このようにして選択された図形等分類コードは、自動的に最下欄の検索条件にセットされます。
ランサーズのロゴは、ランサーが持っている「L」の字が表示された盾が印象的ですので、同様に、大分類から順に選び、最終的に「24.1.5 その他の図形要素又は文字を内包する盾」を選択します。
これにより、検索条件には「23.5.1」と「24.1.5」が自動入力されました。ここで、右側の「セット」ボタンをクリックすると、自動的に新規ウインドウで図形等商標検索が開き、「図形等分類1」には、先ほどの図形等分類コードが入力された状態になります。
ここで、「類似群コード」の欄に、先ほど調べた類似群コード35B01を入力して、検索を行います。コードが複数ある場合は、スペースを介して複数入力すれば、「or」条件で検索可能です。ヒット件数が表示されるので、「一覧表示」をクリックすれば、入力した類似群コードが付与された商品・サービスの範囲で登録されている、「甲冑」や「盾」の図形要素を含む登録商標が表示されます。ランサーズのロゴの登録商標(第5656198号)を確認することができました。
この画面で、各登録商標の登録番号をクリックすれば、権利者や登録日、存続期間満了日などの詳細情報を確認できます。
(2)文字商標の検索
つぎに、文字商標の検索方法をご紹介します。ここでは、「ランサーズ」という文字商標に類似する商標がないか検索してみます。出願した商標が、登録商標と類似と判断される場合で多いのが、称呼(商標から生じる読み方)が似ていることによるものです。そこで、J-PlatPatの「称呼検索」を用いて、称呼が似ている商標を検索します。
まずは、前記同様、登録したい商品やサービスの類似群コードと区分を調べます。つぎに、J-PlatPatの中央にある「R商標」タブの「3.称呼検索」を選択しました。
「称呼1」の欄に、調べようとする商標の称呼を片仮名で入力します(今回は「ランサーズ」)。そして、「類似群コード」欄に、商品・役務名検索で調べた類似群コード35B01を入力して検索してみます。
ヒット件数が表示されるので、「一覧表示」をクリックすると、入力した類似群コードが付与された商品・サービスの範囲で登録されている、「ランサーズ」の称呼と同一または類似の称呼が生じる登録商標が表示されました。ランサーズの登録商標「Lancers」(第5338673号)及び「Lancers」(第5619197号)を確認できました。
基本的に、称呼が同一の商標、または、商標全体の称呼が長く、中間音における1音相違の商標などは、両商標から生じる外観(見た目)や観念(意味)が明確に相違する場合等を除き、両商標は類似と判断されることが多いです。登録を希望する商標が、既に登録されている商標と同一または類似する場合、登録希望の商標を、登録商標の指定商品と同一または類似する商品・サービスに使用・登録することはできません。このような場合は、別の商標を採択することが考えられます。
登録希望の商標を変更したくない場合は、既に登録されている類似商標の存続期間満了日や、使用状況、登録された経緯などを鑑み、様々な対応を検討できますが、それは弁理士に相談した方がよいでしょう。
文字商標の文字列での検索
J-PlatPatでは、称呼以外にも、商標の文字列で検索することもできます。文字列での検索は、J-PlatPatの「商標出願・登録情報」を用います。前記同様、類似群コードと区分を調べたら、J-PlatPatの中央にある「R商標」タブの「2. 商標出願・登録情報」を選択します。
一番上の検索項目「商標(検索用)」の右側にある検索キーワード欄に文字列を入力します。そのまま「ランサーズ」と入力すれば完全一致の検索ができます。「?」と組合せて「ランサーズ?」と入力すれば前方一致、「?ランサーズ」とすれば後方一致、「?ランサーズ?」とすれば部分一致の検索ができます。
類似群コードは、その下にある検索項目を「類似群コード」にして、検索キーワード欄にコードを入力し、AND条件で検索します。
調べる商標の一部のみを入力したり、漢字・平仮名・片仮名・英語表記など、様々な表記方法を入力したりすると、漏れのない検索ができます。
商標登録の方法
さて、商標登録をするためには、願書を特許庁へ提出しなければなりません。出願方法は、電子出願と書面で出願する方法があります。ただし、電子出願は事前準備が必要ですので、ここでは、ロゴ商標を書面で出願する方法をご紹介いたします。
願書の用紙はA4を縦長にし、余白は少なくとも用紙の上に6㎝、左右及び下に各々2㎝をとり、原則として左右は各々2.3㎝を超えないように気をつけてください。書き方は左横書き、1行は36字詰めとして、各行の間隔は少なくとも4㎜上をとり、1ページは29行以内とします。文字は、10~12ポイントまでの大きさで、タイプ印書等により、黒色で、明瞭かつ容易に消すことができないように記載します。
【整理番号】
ローマ字(大文字のみ)、アラビア数字若しくは「-」又はそれらの組み合わせからなる記号であって、10字以下のものを記載します。
【商標登録を受けようとする商標】
商標を願書に直接記載する場合は、8㎝平方(細かい部分が潰れてしまう場合など、特に必要があるときは15㎝平方)の商標記載欄(枠線)を設け、その枠線内に商標を記載します。一方、商標を記載した書面を願書に貼り付ける場合は、8㎝(または15㎝)平方の用紙を商標記載欄とし、枠線は記載してはいけません。用紙は、願書の記載事項が隠れないようにし、容易に剥がれないように全面を貼り付けます。
どちらの場合も、商標を容易に消すことができないよう、印刷等により鮮明に記載し、鉛筆やクレヨンなどは使用しないでください。
【指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分】
商品・サービスが属する区分と、商品・サービス名を記載します。区分が2以上ある場合は、【第○類】及び【指定商品(指定役務)】の欄を繰り返し設けて記載します。
【商標登録出願人】
【識別番号】は、特許庁に手続きをしたことがある者に付与される番号を記載します。初めての手続きの場合は不要です。 法人が手続をするときは、【代表者】の欄を設け、代表者の氏名を記載して押印します。
商標登録にかかる料金
願書には、出願料分の特許印紙を貼る必要があります。出願料は、3,400円+(区分数×8,600円)です(平成29年4月現在)。特許印紙は、全国の主要な郵便局で購入できます。小さい郵便局では取り扱っていない場合も多いので、あらかじめ電話で確認するのが良いでしょう。特許印紙は、願書左上の余白部分に貼り、その下に、その額を括弧内に記載します。
なお、願書を書面で提出する場合は、出願手数料の他に、1,200円+(700円×提出書類の枚数)分の電子化手数料が必要です。電子化手数料の納付は、出願日後に送付される払込用紙で行います。
出願書類の提出方法と必要な日数
提出方法は、特許庁の受付窓口へ直接持参する方法と、郵送する方法があります。郵送する場合は「〒100-8915 東京都千代田区霞が関3丁目4番3号特許庁長官」宛てとし、表面余白に「商標登録願 在中」と記載して提出します。提出日が分かるよう、簡易書留郵便などで提出するのがよいでしょう。
最初の審査結果は、通常、出願から約7か月後に通知されます。登録査定が出たら、30日以内に登録料を納付することで設定登録され、商標権が発生します。
なお、商標は登録される前でも使用することはできますが、登録前の使用は、調査漏れの先登録商標の権利者により差止請求等を受けるリスクがありますので、登録後に使用する方が安全でしょう。
なお、これらの事前の商標調査、願書の作成・提出手続きは、特許事務所に依頼すれば、全て一任できます。また、ほとんどの事務所はオンライン手続きをしていますので、電子化手数料はかかりません。手間と時間を考えれば、特許事務所に依頼するのも選択肢の一つです。
商標登録は大変
ここまで、自ら商標検索・出願をする場合の方法をご説明しましたが、商標登録が初めての方や商標登録に慣れていない方には、これらの作業は、大変時間と労力がかかるものだと思います。
また、商標の類否判断は、両商標の称呼だけでなく、外観や観念についても考慮し、それらを総合して判断しなければならず、これには専門的な経験や知識が必要です。
さらに、商標が登録できるかどうかは、類似の登録商標がないかどうかだけでなく、商標としての機能を有しているかどうか等の一般的適格性や、品質誤認が生じないか等の具体的適格性、その他様々な拒絶理由に該当しないかを全て審査された上で、判断されます。したがって、その拒絶理由を全て自分で確認することは難しいといえるでしょう。
願書の作成においても、方式要件を満たしていなかったり、区分の違いや不適切な商品・サービス名の記載などがあったりすると、特許庁から補正指令や拒絶理由通知が出され、登録が遅延してしまうことがあります。
このように、自分でロゴの商標検索・出願をすることは大変困難といえます。ランサーズでは、ロゴコンペにて提案されたロゴの事前商標チェック・商標登録までを一括で行える商標チェック・登録サービスを提供しています。
フォームから簡単に申込みでき、無料で専門家の商標検索結果が得られます。登録には別途費用がかかりますが、願書の作成から登録まで、全て専門家である弁理士に任せられますので、スムーズに商標登録を行えます。大切なロゴを作成した場合には、ぜひ「商標チェック・登録サービス」を活用されてみてはどうでしょうか。
大学在学中より特許事務所に勤務し、様々な知財実務について学ぶ。
28歳で弁理士試験に合格し、1年後に独立して、都内に事務所を設立。不動産・ベンチャー・士業・美容室・カフェ・占い・スポーツジムなど、多くのご依頼者様からの商標登録を行う。
