ロゴ作成の仕事を行う上で、感覚だけで作成していませんか。クライアントを心の底から納得させられるだけの力や、見る人を無意識のうちに惹きつけるような底力を持つロゴを完成させることが難しくなってしまうのです。プロとしてロゴを仕上げるためには、きちんとした手順を踏む必要があります。

あなたは、ロゴを「感覚」で作成していませんか?
アーティストも、デザイナーも、直感やインスピレーションに頼るところの大きい仕事…というイメージがありますよね?しかし、「アート」と「デザイン」には明確な違いがあり、ロゴを作るという作業は「デザイン」の方にカテゴライズされる仕事となります。
アートの世界では、人の意見に左右されず、直感を信じ、感性の赴くまま、手の動くままに、キャンバスへ己のセンスをぶつけていくことが大切ですが、デザインの世界ではそうはいきません。ロゴを「感覚」だけで作ってしまうのは、大きな間違いなのです!
何だか当たり前のような話に思えてしまったかも知れませんが、実は知らず知らずのうちにこれをやってしまっている人…意外と多いです。
大した理由や動機もないまま、何となく「好きな色だから」「好きな形だから」「得意としている雰囲気だから」「クライアントにウケそうだから」…という具合に、大雑把なアイデアを出し、そのまま制作を進めていってしまっている人はいませんか?そして、デザインが完成した段階で、プレゼンをする際、クライアントに対し、アピールするポイントを後付けしている…こんなやり方で、乗り切れる!と思ってしまっている人はいないでしょうか?
もちろん、ロゴ作成の仕事を行う上では、直感やインスピレーションなどの「感覚」も必要ですが、それだけに頼っていたのではいけません。感覚だけに頼って作成しまうと、クライアントを心の底から納得させられるだけの力や、見る人を無意識のうちに惹きつけるような底力を持つロゴを完成させることが難しくなってしまうのです。プロとしてロゴを仕上げるためには、きちんとした手順を踏む必要があります。その具体な手順について、次からの項目でご説明していくことにしましょう。
ロゴ作成時のルール
ロゴ作成の手順について説明していく前に、こちらでは、最低限守るべき「ルール」についてお伝えしていきます。どれも当たり前のことのように思えるかも知れませんが、意外に守られていないケースも多いので、改めて基礎を学習するつもりで、目を通していってください。
シンプルにまとめる
優秀なロゴを並べてみると、そのほとんどが驚くほど「シンプル」であるということに気づかされるでしょう。
デザインをする際に「不安感」が強いと、つい、様々な要素を足してしまいたくなるものですが、あれもこれもとゴテゴテ付け足されているロゴは、かえって人々にマイナスな印象を与えてしまいます。「優秀なデザイナーは白紙を恐れない」と言われることもあるように、シンプルにまとめるということは、実はレベルの高い人にしかできない技術だったりするのです。余計な要素を削ぎ落とし、伝えたいことが何なのかを、大胆かつ明確に表現してある方が、見る人の心には真っ直ぐ刺さるのです。だからこそ、シンプルであるということはとても大切なのです。
読みやすく作る
当たり前のことですが、ロゴは「誰でも読める」ことが大前提です。デザインが凝り過ぎていて、読みづらい…、何と読むのかわからない…、そんなロゴは、見た目がどんなにカッコよくても、ロゴとしての機能をしっかり果たしているとは言えません。
また、これも当たり前のことですが、クライアントが望んでいないのに、勝手に英文字でデザインしてしまったり、あるいは正確な綴りが「KYOTO」なのに「KYOUTO」と記してしまったり…といったようなミスは、最低限ないようにしましょう。
ひらがな表記なのか、漢字表記なのか、また、日本名表記+ローマ字表記を望んでいるのか、それとも、それぞれ別々に用意して欲しいと考えているのか…、こういった点も、プロならば、事前にクライアントにしっかり確認を取るようにするべきでしょう。
単色でも通用するように作る
ロゴを作成する上で、色のイメージはとても大切ですが、「色ありき」のデザインを完成させてしまうと、思わぬところで不都合な事態に直面する場合が出てきます。
ロゴは、いつどのような場所や状況で使用されるかわかりません。カラーで見るととても良いデザインだけれど、モノクロ印刷で使用されたものを目にした瞬間、なんのことやらわからない…そんなロゴだと、非常に使い勝手が悪いということになってしまいます。
…というわけで、ロゴを作成する際は、単色になったとしても、明確に何を意味しているかがわかるデザインというものを意識してみてください。
ロゴを作成する手順と抑えておきたいポイント
それでは、実際にロゴを作成する際の手順を解説していきましょう。ただし、これは、あくまでも一例であり、全てのロゴが、この手順を踏んで完成させられている…というわけではありません。初心者の方が、どのようにロゴを作れば良いのか迷ってしまった際に、道しるべとして利用してください。
1. モチーフとなるシンボルを決める
たとえば、印鑑を作る企業のロゴだったら、全体をハンコで押したようなデザインにするといったように…。あるいは、農場のロゴを作るとしたら、そこで栽培されているイチオシの野菜をデザインのどこかに組み込むといったように…。
まずは、モチーフとなる「シンボル」を最初に掲げましょう。こうすることで、全体がまとまりやすくなりますし、何より「何をやっている企業なのか」「何を目的とした商品なのか」ということが、見る人に伝わりやすくなります。
この「シンボル」は、2つ…3つ…と増えていってしまうと、全体に締まりがなくなり、ゴテゴテとした印象になっていってしまいますので、できる限り「1つ」に決め打ちすることが望ましいです。
先程の農場の例を挙げると…、この農場の主が「桑の葉」をメインに栽培していたら「桑の葉」の形をモチーフにしたロゴを作成すれば良い、と考えるのは、短絡的かも知れません。
実は、桑の葉以外にも色々な作物を栽培していて、大切なのは「太陽の恵みをたっぷり浴びた野菜を人々に届けること」だ…と考えている可能性もありますよね?その場合は、桑の葉ではなく、太陽をモチーフにしたようなロゴに、デザインの方向性を切り替える必要があります。
業態ではなく、業務の結果提供したい価値をロゴに生かしたロゴ事例
ロゴはその企業や商品にとって、名刺代わりであり、顔のようなものです。クライアントが一番大切にしている思いは何なのか…、どういったことを世に広めたいと考えているのか…、ここは、その意思を汲み取る、最も大切な行程になりますので、決して感覚だけでは進めないようにしましょう。可能であれば、この段階で、一度たっぷりと時間を掛けて、インタビューなり打ち合わせなりを行うべきです。
2. 企業名とシンボルを絡めて構成する
モチーフとなるシンボルを決めたら、それを企業名(商品名)と、どのように絡めるのか、構成を決めていきます。大きなシンボルを描き、その中にタイトルを組み込む形なのか、それとも、たとえば「@pple」「☆pple」というように、タイトルの1文字目をシンボルマークそのものにするのか、あるいはモチーフとなるシンボルが、どこかにぶらさがっているようなデザインにするのか…などなど、ここはデザイナーとしてのセンスの最大の見せどころです。
ロゴとして優秀なデザインであるかどうかは、この段階までで、およそ90%以上が決まってしまうといっても過言ではありません。ここまでの段階は「コンセプト」をまとめる作業であり、芸術的なセンスとともに、重要な情報をまとめ、不要なものを削ぎ落とす、ハイレベルな知力を必要とします。ここでいかにクライアントのハートを射抜くような案を出せるかが、他のデザイナーと差をつけるポイントなのです。
3. 字体やカラーを決める
全体の構成が決まったら、具体的な字体やカラーを決めていきましょう。
たとえば、ガツンとしたインパクトのある男らしい商品を展開したい!と考えている企業に対し、明朝体風の細い字体や、クルリンとカールした女性らしい雰囲気のロゴを提案しても、受け入れられなそうですよね?たとえば「Mutlu」というフォントは女性的で、いかにもネイルサロンなどで使われそうな雰囲気です。男性に対してアピールするのはちょっと難しいということになるでしょう。
また、そういった企業に、ピンクや淡い紫など、明度の高いパステル調のカラーでまとめたロゴを提案しても、「ちょっと違う…」ということになってしまいそうです。
ここではクライアントが大切にしている「イメージ」や「雰囲気」を、とにかく繊細に汲み取り、表現するよう、意識してください。
4. ディテールを仕上げる
日本人は「生け花」に対する美の感覚を持っていますよね?枝ぶりが少し右にズレただけでも、なんだか迫力がなくなってしまう…あるいは、かすみ草の位置がやや下過ぎるだけで、なんとなく締まりのない印象になってしまう…、そういった「なんだかおかしい」「違和感を治したい」というような感覚を、ここは100%MAXまで研ぎ澄ませましょう。
微妙な差で、どちらの方が良いか分からない時には、人に意見を伺うことも大切です。たとえば、文字の先端をブツリと切りっぱなし状態にするのではなく、スッと角度をつけるだけでも、全体の印象は大きく変わります。
ただし、ここでゴテゴテと装飾を付け足し過ぎてしまうと、かえって洗練された印象から遠ざかってしまう場合もありますので、あくまでも「大事なことが際立っているかどうか」をベースにクオリティを上げ、全体をブラッシュアップしていきましょう。
右脳と左脳を使いこなす者がロゴ作成を制する
以上、こちらでは、ロゴ作成初心者の方に向けて、最低限気をつけなければいけないルールや、実際にロゴ作成していく際の手順等についてお伝えしてきました。
ロゴを作成する際には、芸術的なセンスやインスピレーションだけでなく、クライアントの意志や要望を聞き出し、重要な情報をまとめあげる力、また不要なものを削ぎ落とす力なども必要であるということがおわかりいただけたのではないでしょうか。
「なんとなく、カッコイイから…」「特に理由はないけど、好きだから…」という「感覚」に頼っていただけでは、ロゴ作成において、本当に人々の心を掴むような作品を仕上げることは難しいでしょう。かといって、ルールだけに縛られていては、「なんだかおかしい…」「いまいちパッとしない…」という事実を見落としてしまう可能性もありますから、ここでは「直感」を使う必要もあります。
ロゴ作成は、感覚的な右脳と、理論的な左脳、どちらもバランス良く使うことが求められる、非常に高度で繊細な仕事ということですね!
