取り扱い商材や重視したいポイント、予算によって、適したECサイトの構築方法は異なります。構築方法や内製・外注かによっても、ECサイトの構築費用やランニングコストは変動します。
本記事では、ECサイトの構築方法別の費用の相場や、構築方法やサービス別のメリット・デメリット、予算別のおすすめ構築方法、自社でのECサイト制作や外注時の注意点について解説します。
ポイントや予算を踏まえたECサイトの構築方法を確認し、大きな費用対効果を期待できるECサイトの構築を目指しましょう。

目次
ECサイトの構築方法別の相場費用
ECサイトで用いられる代表的な構築方法を6つご紹介します。まずそれぞれのECサイト構築方法にかかる費用を見てみましょう。
ECサイトの構築方法は6つある(構築方法別の比較表)
ECサイトを構築する方法には、以下の6つがあります。
- ECモール
- ASP
- クラウドEC
- オープンソース
- ECパッケージ
- フルスクラッチ
構築方法によって、構築に必要となる費用や毎月のランニングコスト、制作期間が異なります。代表的なサービスとともに表にまとめました。構築や月々の運用に必要な費用に差が出るのは、各構築方法の特徴によるところが大きいです。
構築方法 | 構築費用 | 毎月かかる費用 | カスタマイズ性 | 制作期間 | 代表的なサービス |
ECモール | 無料~10万円 | ・月額利用料(~10万円) ・システム手数料(売上の2~15%) | なし | ・1日〜1ヶ月 | ・Amazon ・楽天市場 ・Yahoo!ショッピング |
ASP | 10万円~100万円) | ・月額利用料(~10万円) ・システム手数料(売上の2~15%、ASPのプランにより異なる) | 多少可能 | 1〜2ヶ月 | ・Shopify ・BASE ・カラーミーショップ |
クラウドEC | 10万円~100万円) | サービス利用料(~10万円) | 多少可能 | 2〜5ヶ月 | ・メルカート ・ebisumart |
オープンソース | 10万円~500万円 | メンテナンス費用(数万~10万円) | あり | 2〜5ヶ月 | ・EC-CUBE |
ECパッケージ | 100万円~500万円 | システム利用料(数万~10万円) メンテナンス費用(数年に一度数万~10万円) | あり | 2〜8ヶ月 | ・ecbeing ・EC Orange |
フルスクラッチ | 500万円~数千万円) | メンテナンス費用(数年に一度数万~10万円) | あり | 4〜8ヶ月 |
※各構築方法の構築費用は、外注に依頼する工程によって金額に幅がある
ECモール
ECモールとは、ネットに構築されている市場のようなものです。商品を販売したいショップは、ECモールの中に出店します。ちょうどショッピングモールに入っているテナントのようなイメージです。サービスを提供している事業者が用意したシステムを使って出店・出品するだけなので、サイトをゼロから構築する必要はありません。
ECモールには、楽天のように市場にショップを出店する「テナント型」と、Amazonのように商品だけを出品する「マーケットプレイス型」があります。
できるだけ安くECサイトを構築したい人、試験的にECサイトを構築したい人向けの構築方法です。
構築方法 | 構築費用 | 毎月かかる費用 | 制作期間 | 代表的なサービス |
ECモール | モール側の構築システム・テンプレートを使って自作、原稿や写真は依頼側が用意(無料~10万円) | ・月額利用料(数千~10万円) ・システム手数料(売上の2~15%) | ・自作(1週間〜1ヶ月) ・素材がそろっている(1〜3日) | ・Amazon ・楽天市場 ・Yahoo!ショッピング |
ECモールのメリット
ECモールのメリットは以下の通りです。
- 必要な情報をテンプレートに入力するだけで簡単にECサイトが完成する
- 初期費用を安く抑えられる
- ECモールの知名度が高いので集客数の向上が見込める
- メンテナンスなどのサポートが受けやすい
自力でECサイトを構築したいときにも、ECモールなら簡単にECサイトが制作できるでしょう。
ECモールのデメリット
ECモールには以下のデメリットがあります。
- 初期費用は安いがランニングコストが高くなる
- ECサイトのデザインや機能にカスタマイズ性がない
初期費用は安く済む一方、月額利用料が固定額として発生するだけでなく、システム手数料が売上に応じて高くなります。また、用意されているシステムの中でデザインや機能を決めるため、カスタマイズ性は低くなります。
ASP
ネット上でASP(Application Service Provider)と契約することで、ASPが提供するシステムを利用して自社ECサイトを立ち上げられます。ECサイトのシステムを提供している事業者やサービスは「カートASP」「ASPカート」とよばれています。ECモールに比べると、ショップの独自性を出すことができます。
代表的なカートASPに「Shopify」「BASE」「カラーミーショップ」などがあります。費用はできるだけ抑えつつ、オリジナルのECサイトを構築したい人向けの構築方法です。
構築方法 | 構築費用 | 毎月かかる費用 | 制作期間 | 代表的なサービス |
ASP | ・無料ASPなどのテンプレートデザインを使って自作(10万円~) ・有料ASPなどのテンプレートデザイン(~100万円) | ・月額利用料(~10万円) ・システム手数料(売上の2~15%、APSのプランにより異なる) | 1〜2ヶ月 | ・Shopify ・BASE ・カラーミーショップ |
ASPのメリット
APSには以下のメリットがあります。
- テンプレートに入力するだけでECサイトを構築できる
- ECモールよりもある程度カスタマイズ性のあるECサイトを構築できる
- ソフトやサーバーの準備が不要
- 独自ドメインが導入できる
- ランニングコストはECモールよりも抑えられる
ECモールよりもカスタマイズ性を出しつつ、ランニングコストを抑えたECサイト運用ができるのが特徴です。
ASPのデメリット
APSのデメリットは以下の通りです。
- 複雑なカスタマイズや機能の追加はできない
- 集客は自分で行う必要がある
- ASPやプランによって使い勝手や機能が異なる
- 外部システムとの連携ができない
ECサイトによりオリジナリティのあるデザインや機能を設けたいときには、他の構築方法が選択肢となります。またASPサービスやプランにより操作性や機能、コストが異なるため、サービスやプランを比較し検討するのが重要です。
クラウドEC
ECサイトに必要なシステムが用意されているクラウドにアクセスし、ECサイトを構築・運営する仕組みを「クラウドEC」といいます。カートASPと似ていますが、クラウドECのほうが機能を拡張したり、外部システムとの連携ができたりして、より自由度の高いサイト設計が可能です。
代表的なクラウドECとして「メルカート」「ebisumart」などがあります。ASPよりもカスタマイズ性の高いECサイトを構築したい人に向いています。
構築方法 | 構築費用 | 毎月かかる費用 | 制作期間 | 代表的なサービス |
クラウドEC | ・デザインや機能はこだわらない場合(10万円~) ・オリジナルのデザインや機能を追加する場合(~100万円) | サービス利用料(~~10万円) | 2〜5ヶ月 | ・メルカート ・ebisumart |
クラウドECのメリット
クラウドECには以下のメリットがあります。
- ASPよりもカスタマイズ性の高いECサイトが構築できる
- ソフトやサーバーを準備する必要がない
- いつでも最新の状態にアップデートできている
- 外部システムとの連携ができる
ある程度デザインや機能をカスタマイズしたECサイトが構築できます。またクラウド内にECサイトを構築することで、サーバーやアップデートが不要なうえ、外部システムと連携できるのもメリットです。
クラウドECのデメリット
クラウドECのデメリットは以下の通りです。
- 集客は自分で行う必要がある
- クラウドECやプランによって使い勝手や機能が異なる
- ソースコードを自社で管理できない
クラウドECでは、ASPと同様に集客に対する施策や、利用するサービス、プランの比較検討が必要になります。また、オリジナリティのあるECサイトを構築できるものの、ソースコードが共有できないため自社に残せないのもデメリットです。
オープンソース
ネット上で企業などが公開している無料のECシステムのブログラムコード(オープンソース)を使い、ECサイトを構築する方法です。代表的なオープンソースには「WordPress」があります。
社内でオープンソースを扱う人材がいない場合には、オープンソース型ECサイトの制作支援を行っている会社に外注することになります。ECサイトのオープンソースでは「EC-CUBE」が有名です。
オープンソースは、自社に開発のリソースがあり、費用を抑えてオリジナリティの高いECサイトを構築したい人に向いています。
構築方法 | 構築費用 | 毎月かかる費用 | 制作期間 | 代表的なサービス |
オープンソース | ・デザインや機能はこだわらない場合(10万円~) ・オリジナルデザイン・機能を追加する場合(~500万円) | メンテナンス費用(数万~10万円) | 2ヶ月〜5ヶ月 | ・EC-CUBE |
オープンソースのメリット
オープンソースのメリットは以下の通りです。
- ソースが無償のため初期費用を低く抑えられる
- カスタマイズ性が高い
ソースは無料で使えるため、ソースを取り扱うスキルや知識があれば費用を抑えつつオリジナリティのあるECサイトを構築できます。
オープンソースのデメリット
オープンソースには以下のデメリットがあります。
- 専門知識や開発のリソースが必要
- メンテナンスやサーバーや自社で用意する必要がある
- セキュリティ対策が必要
- 制作会社に依頼すると構築費用が高額になる場合がある
無料で利用できる一方、社内にプログラムコードを自社用にカスタマイズできるエンジニアがいないと、ECサイトを構築することは難しいでしょう。
ネット上で公開されているシステムを使う場合、セキュリティ面で不安がある点には注意が必要です。
ECパッケージ
カート機能や受注管理など、ECサイトの構築に必要な機能がひとつになったソフトを使い、ECサイトを構築する方法です。自社に合わせてカスタマイズもできます。事業の柱となる規模のECサイトにも対応可能です。
代表的なECパッケージソフトに「ecbeing」「EC Orange」などがあります。幅広くカスタマイズできるECサイトを構築したいときや、規模の大きいECサイトを構築したい人向けです。
構築方法 | 構築費用 | 毎月かかる費用 | 制作期間 | 代表的なサービス |
ECパッケージ | ・デザインや機能はこだわらない場合(100万円~) ・オリジナルデザインや機能を追加する、システム連携をする場合(~500万円) | ・システム利用料(数万~10万円) ・メンテナンス費用(数年に一度数万~10万円) | ・オリジナルデザインや機能(2〜5ヶ月) ・オリジナルのコンテンツも追加 (4〜8ヶ月) | ・ecbeing ・EC Orange |
ECパッケージのメリット
ECパッケージのメリットは以下の通りです。
- デザインや機能の開発・制作が不要
- カスタマイズ性が高い
- 開発や集客のサポートも受けられる
- 大規模なECサイト構築も可能
必要なデザインや機能はすでにそろっているため自社開発の必要もなく、オリジナリティのあるECサイトが構築できます。開発や集客のためのサポートを提供しているECパッケージがあるのもメリットです。
ECパッケージのデメリット
ECパッケージには以下のデメリットがあります。
- サーバーは自社で用意する必要がある
- 初期費用、ランニングコスト、更新ともに高い
ECサイトを構築するためのサーバーが必要となり、自社でのメンテナンスも必要です。そのため各種費用のコストが高くなります。
フルスクラッチ
「フルスクラッチ」はECサイトのシステムをゼロから構築する方法です。6つの構築方法の中で、最も自社に合わせたシステムを構築できるのがこの方法です。
デザイン性や機能性の高いECサイトを一から作りたい人や、ECサイトを活用したブランディングを検討している人に向いています。
構築方法 | 構築費用 | 毎月かかる費用 | 制作期間 | 代表的なサービス |
フルスクラッチ | ・最低限のオリジナルサイトを構築する場合(500万円~) ・システムの連携や高度なカスタマイズをする場合(数千万円) | メンテナンス費用(数年に一度数万~10万円) | 4~8ヶ月 | – |
フルスクラッチのメリット
フルスクラッチには以下のメリットがあります。
- 独自開発のためもっともカスタマイズ性が高い
- ASPやパッケージで提供されていないオリジナルの機能を付与できる
ECサイトの構築方法の中でも、もっとも高いカスタマイズ性を発揮できます。既存のシステムと連携してECサイトの業務を効率化させたり、ECサイトをブランディングに利用したりすることも可能です。
フルスクラッチのデメリット
フルスクラッチには以下のデメリットがあります。
- 開発コストがもっとも高くかかる
- ECサイト完成までの納期が長い
- 完成後オリジナルのシステムを運用するノウハウが必要
カスタマイズ性が高い一方、開発にコストと納期がもっともかかります。オリジナルのシステムや機能を構築した場合には、社内でECサイトを運用するノウハウを蓄積しなければいけません。
予算別のおすすめ4つの構築方法
ECサイトの構築方法により、初期費用が異なります。あらかじめ予算に応じたECサイト構築のイメージを持っておくことで、スムーズなECサイト構築がはじめられます。予算別に、おすすめのECサイト構築の選び方を解説します。
30万円でスモールスタート
30万円までの予算なら、「モール型EC」「ASP」「オープンソース」での構築方法がおすすめです。
ECモールやASPのテンプレートを活用してECサイトを構築するため、カスタマイズ性やデザイン性は低いものの、費用を抑えてスモールスタートしたいときに向いています。
10万円までの予算なら、制作会社へ依頼せず自作することが必要です。30万円の予算なら、制作会社への依頼も選択肢となります。いずれの場合も写真や原稿は自社で用意しなければいけません。
オープンソースコードを開発できる知識やスキルがあるなら、機能を極力おさえたシンプルなデザインのECサイト構築もできるでしょう。
50万~100万円で独自のECサイトを立ち上げ
100万円までの予算なら、「ASP」「ECクラウド」「オープンソース」での構築方法がおすすめです。
ASPやECクラウドのテンプレートを使って制作会社に依頼できるため、ある程度のカスタマイズ性のあるECサイトが構築できます。ただし高度なカスタマイズは望めません。写真や原稿は自社で準備が必要です。
モール型ではなく独自のECサイトを構築したいときや、デザイン性やカスタマイズ性よりも、予算を重視してECサイトを構築したいときに向いています。
100万~500万円で事業に合わせたオリジナルのECサイトを構築
500万円までの予算なら、「ECパッケージ」「オープンソース」「フルスクラッチ」が構築方法の選択肢となります。この予算から、オリジナルデザインでのECサイト構築や機能の追加も視野に入れられます。
写真や原稿は自社で用意が必要なときもあれば、予算によっては制作会社側へ依頼もできます。よりオリジナリティの高い自社独自のECサイト構築や、機能を追加したいときに向いているでしょう。
500万円以上で高度なカスタマイズや自社システムと連携したECサイトを構築
500万円以上の予算なら「オープンソース」「ECパッケージ」「フルスクラッチ」の構築方法が選択肢となります。
オリジナルのデザインや機能の追加のほか、自社の商材や事業に合わせて機能をカスタマイズする、すでに使用しているシステムとECサイトを連携させるといったことも可能です。
ECサイト運用を事業として本格的に行いたいとき、既存のECサイトの業務を効率化させたいとき、ECを含めたブランディングに活用したいときに向いています。
ECサイトの構築方法別の制作手順
ここでは、構築方法ごとの制作手順を見てみましょう。
ECモール
ECモールへの出店は、以下の手順を踏むだけです。
順番 | 項目 | 詳細 |
1 | モール事業者に申し込み | Web上で申し込み後に、2週間~1ヶ月程度でアカウントが作成できます。 |
2 | 開店準備 | アカウントを作成したら、商品を登録したり、決済方法・配送方法の準備を進めたりします。 |
3 | 審査 | モール事業者による審査が行われます。 |
4 | 開店 | 販促や集客を行いながら、サイトを運営します。事業者のサポートを受けることもできます。 |
ASP
ASPカートでECサイトを構築するには、ASPサービスのWebサイトの申込フォームから申し込みます。申し込み後すぐにアカウントを作成してショップを開設できます。
順番 | 項目 | 詳細 |
1 | アカウント作成 | Web上で必要事項を登録すれば、すぐにアカウントを作成できます。 |
2 | 商品登録・ ショップデザイン | 商品を登録し、用意されているテンプレートなどを活用しながらショップの各ページをデザインします。 |
3 | 各種設定 | 決済方法や配送料金・方法などを設定します。 |
4 | 開店 |
クラウドEC・ECパッケージ
クラウドEC型とECパッケージ型は、ECサイトに必要なシステムが一括で提供されるという点で同じです。クラウドEC型がネット上のクラウドでサイトを構築するのに対し、ECパッケージ型はソフトを自社のサーバーにインストールして構築します。
順番 | 項目 | 詳細 |
1 | 要件定義 | サイトに盛り込む機能など、サイトに関する要望をまとめます。制作を外注する場合は、必要な機能・デザインと費用をしっかりすり合わせておくことが大切です。 |
2 | 設計・開発 | サイト画面や搭載する機能などを設計し、設計書にもとづいてプログラムを開発します。 |
3 | テスト | 動作確認を行います。 |
4 | 開店準備 | 商品登録や決済・配送などの設定を行います。 |
5 | 開店 | 開店後は随時メンテナンスや保守を行います。 |
オープンソース
オープンソースはネット上で公開されているプログラム(ソースコード)から、自社で使用するプログラムをダウンロードしてサイトを構築します。
順番 | 項目 | 詳細 |
1 | 要件定義 | サイトに盛り込む機能などをまとめます。 |
2 | プログラムのダウンロード | プログラム(ソースコード)を自社のサーバーなどにダウンロードします。 |
3 | システム構築 | プログラムを使ってシステムを構築します。 |
4 | テスト | 動作確認を行います。 |
5 | 開店準備 | 商品登録や決済・配送などの設定を行います。 |
6 | 開店 | 開店後は随時メンテナンスや保守を行います。 |
フルスクラッチ
フルスクラッチの構築工程はクラウドサービスやECパッケージ、オープンソースと同じですが、既存のプラグラムやシステムを使わず、ゼロから設計します。その分、費用も時間もかかります。
ECサイト構築が内製できなければプロに外注
ECモールは社内でも対応可能
先述したように、ECモールは事業者が用意しているシステムに商品を登録したり、設定を行ったりするだけなので、プログラムに関する高度な専門知識を持たない社内スタッフでもECサイトを構築することが可能です。また、保守などもモール事業者側が行うので、社内で対応する手間がかかりません。
「これからECサイトを始めたい」「試験的にECサイトの運営を行いたい」という場合は、ローコストでECサイトを運営しましょう。まずはECモールを活用してサイトを構築し、社内でノウハウや知識の蓄積に努めましょう。
自社のECサイトを構築したいなら外注
独立したECサイトを運営したいのであれば、デザイン性の高いサイトにしたり、商品管理や配送などにかかわる部分を自社向けにカスタマイズしたりする作業が必要です。こうした作業ができるスタッフが社内にいるケースはあまり多くなく、実際は外注に依頼することになります。
ASPやクラウドなど、それぞれの構築方法に対応したWeb制作会社があり、それぞれ強みが異なります。また、サイトの構築だけでなく、コンサルティングやサイトの運用支援もあわせて行っている制作会社もあります。
ECサイト構築の外注時の3つの注意点
ここでは、自社ECサイトの構築を外注する際の注意点について説明します。
見積もりの内訳を確認する
制作会社を選定する際には構築費用の見積もりを取りますが、見積もり金額だけでなく、内訳をしっかり確認しましょう。依頼者と受注者の双方で、サイトに搭載する機能やデザインの作りこみなどについて共通認識ができていないと、盛り込まれているべきデザイン・機能が見積もりに含まれていないという事態になります。
「依頼者側の当初想定していた機能・デザインが見積もり金額に含まれておらず、追加発注する羽目になった」ということにならないようにしましょう。
競合サイトをチェックする
自社ECサイトのデザインや搭載機能を決めるにあたり、自社と競合していて成果を上げているサイトはかならずチェックしておきましょう。商品の注文から決済までの流れやクーポンなどの販促手法など、他社サイトがすぐれている点は自社のサイトの参考にしたいものです。
運用開始後もメンテナンスやリニューアルが発生する
ECサイトは構築できたことがゴールではなく、サイト運営を開始してからが勝負です。サーバーを定期的にメンテナンスしたり、システムを常に最新のものにアップデートしたりする必要があるからです。特にECパッケージやフルスクラッチでECサイトを構築した場合には、システムのアップデートを自力で行わなければなりません。
ECサイトを運営しているうちに売上が伸びると、在庫管理や決済方法など、ECサイトの機能を見直さなければならなくなります。ECサイトを構築する際は、数年後にメンテナンスやリニューアルが必要になることを考慮したうえで、構築方法や費用を決定しましょう。
【事例別】サイト構築を外注した際の構築費用目安(Shopify)
ECサイト構築を外注する選択肢として、制作会社とフリーランスがあります。それぞれ、どれくらいの構築費用がかかるのでしょうか。代表的なASPサービス事業者である「Shopify」を例に、外注費用の目安を見てみましょう。
構築・集客対策・売上改善までトータル支援してもらえる制作会社への依頼費用
Shopifyでのサイト構築を制作会社に依頼する場合には、費用相場は30万円~1,500万円と幅広くなっています。これは「どこまで制作会社に依頼するか」によって費用が異なるからです。
例えば、30万円~100万円未満の価格で依頼できるのは、Shopifyが提供している無料テンプレートを使ったECサイトの構築です。加えて、アカウント取得やドメイン設定、商品登録、決済手段設定など、ECサイト運営初心者向けのサポートを行っているところもあります。
Shopifyのテンプレートではなくオリジナルデザインを使いたい、またはサイトを自社に合うようカスタマイズしたいといった依頼をすると、100万円以上は見積もっておく必要があります。
さらに、BtoB向けのECサイトのような大規模のものになると、構築費用が500万円以上かかることもあります。社内の販売管理システムなどと連携したいといったニーズに応えるには、1,000万円程度の費用が必要です。
制作会社の中にはECサイトの構築だけにとどまらず、集客のためのSEOやSNS対策、販促提案、売上アップのためのサイト分析・改善といったコンサルティング業務を行っているところがたくさんあります。サイトの構築から運営後まで頼れる制作会社に依頼すれば、そのメリットは大きいでしょう。
技術的な話が直接できるフリーランスへの依頼費用
フリーランスにECサイトの構築を外注する場合には、ランサーズのようなフリーランスが登録しているクラウドソーシングサービスを通じて、依頼するフリーランスを探します。ランサーズを活用すれば、Shopifyでの構築を得意としているフリーランスが簡単に見つかります。
ランサーズで提示している「ShopifyでのECサイト構築の標準的なプラン」では、ドメインなどの各種設定やテンプレートを使ったページ作成、商品登録、決済設定などを含んだ料金は20万円~となっています。
依頼後にはビデオ通話などを通じて技術的な細かい点まで話を詰めることができ、小回りも利くのがフリーランスに依頼するメリットです。
ECサイト制作に公的補助金を活用しよう
ECサイトを外注すると、相応の費用がかかります。高額な費用がネックになっているなら、補助金制度を利用してはいかがでしょうか。ECサイトの構築で利用できる補助金として、国による次のものがよく知られています。
- 事業再構築補助金
- IT導入補助金
いずれも申請に条件があるほか、補助金が交付されるには審査に通過する必要があります。
また、これらのほかにも自治体で独自に設けられている補助金制度もあります。条件に合うものがあれば、積極的に活用を検討しましょう。
事業再構築補助金(中小企業庁)
新型コロナ禍ののちに来る社会の転換を見据え、事業転換や新事業の展開など、事業の再構築につながる取り組みに対して補助金が出ます。審査によって、ECサイトの構築が事業再構築につながると認められると補助金が出ます。中小企業・中堅企業が対象で補助金額は最大1億円、補助率は中小企業2/3、中堅企業1/2です。
公募は順次行われます。くわしくは公式ホームページを確認してください。
▼事業再構築補助金
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
IT導入補助金(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
中小企業・小規模事業者を対象に、ITツール導入に活用できる補助金です。「通常枠」(最大補助率1/2、補助額30万円~450万円)と「低感染リスク型」(最大補助率2/3、補助額30万円~450万円)があり、ビジネス枠対象となる事業者やツールが指定されています。
ECサイト構築補助金を申請したい場合、IT導入補助金の公式ホームページから対象となる支援事業者やツールを探し、希望しているものと合致するか確認しましょう。
今後の公募スケジュールについては公式ホームページで確認してください。
▼IT導入補助金
https://www.it-hojo.jp/
自社の規模や予算など多角的に分析して適切な構築方法を選ぼう
ECサイトの構築費用は、選ぶ構築方法によって大きな差が出ます。自社の事業規模や予算、ECサイト運用歴などを分析し、無理のない構築方法を選びましょう。ただし、ECサイトは作って終わりではありません。事業規模が大きくなったり、デザイン・機能・購入導線などが時代に合わなくなってきたら、バージョンアップを検討しましょう。
