物やサービスを売り、売上高を増やすことは、企業を存続し発展させていく中で、言うまでもなく重要なことです。それと同等に重要ではありますが、優先順位で後回しにされやすいのが、コストを削るという考え方。納得のいくコスト削減のための進め方や施策をお伝えします。

コスト削減を今一度考えてみる
コスト削減において、コストが0に近くなるほど、売上はそのまま純利益として手元に残ることになります。しかし、現状で機能している部分で何かを削るという考えは、一見すると不可能にさえ思えてしまいます。
コスト削減と称して原価を下げることによって品質が下がり、顧客が離れてしまった場合、本末転倒になってしまいます。そうなると、利益を上げるための施策にはなり得ません。コスト削減を行う上で最低限、品質は守られなければならないということです。
また、安易な人員削減や過度なノルマなどによって、安全性を損なうようなコスト削減も行うべきではありません。そして、大きな効果が見込まれるコスト削減ほど、品質や安全性を損なう可能性があるので、正しい方法と計画性のある施策が必要となります。
社内全体でのベクトルを合わせる
多くのケースにおいてコスト削減が上手く機能しないという実態があります。その主な原因は、会社全体のコストに頭を悩ませているのは経営陣であり、周辺業務にしか目の届いていない従業員は、己の業務に直結しない作業に対して不自由や面倒と考えているということです。
例えば、「ガソリン代が高くなったから社用車を減らす」であったり、「カラー印刷は原則禁止で、コピーは裏紙を使用する」といった話は、従業員にとってやる気を損ねてしまうばかりか、経営陣への不信を招いてしまう可能性もあります。
これまでと体制を変えずにコスト削減に取り組んでいても、経営陣の満足に留まってしまい、本当の成功とは言い難いです。そこで従業員と一丸となって社内全体の体制を変えつつ、正しい考え方や手法で思い切ったコスト削減に取り組むことで、結果として生産性が高まり、コスト削減の成功へと繋がっていきます。
優先順位を決める
ベクトルが整った後は、優先順位をつけて着手することが重要となります。その鍵となるのは、「スピード」です。例え、コスト削減の効果が大きい施策だとしても、期限がわからないものや効果が出るまで数年を要するものなどに最初に手を付けてしまうと、他のコスト削減への着手が遅くなってしまいます。
いったん全てのコスト削減項目を洗い出し、下記の3つに振るい分けると、次に行うべきコスト削減が一目瞭然となります。
(1)コスト削減のスピードが速く、効果の高いもの
(2)コスト削減のスピードが速く、効果の低いもの
(3)コスト削減のスピードが遅く、効果の高いもの
以上のように、(1)→(2)→(3)の順で優先順位をつけて取り組むことで、スムーズで効率的なコスト削減が行えるようになります。コスト削減のためにかかる「対策コスト」も重要な項目の一つではありますが、全体を通しての費用対効果を算出することで、効果の高低を見極められます。
固定費の中で最も重い「人件費」
ここでコストの構造を解説いたします。コストは、「変動費」と「固定費」の2つに大きく分けられます。材料費のように売上の増減に対して変動する費用を「変動費」、家賃や人件費のように変動しない費用を「固定費」と言います。
ここで「固定費」に着目すると、3つに分類されます。電気代やガス代など一般家庭でもかかる「エネルギーコスト」、通信費やコピー代、家賃、警備費、事務用品費、備品代など会社経費となる「オフィスコスト」、調達、設備、人件費などの「オペレーションコスト」です。
3つの中で最もコスト削減のスピードが速く、コスト削減の効果が高いのが「オペレーションコスト」であり、多くの割合を占めるのが「人件費」です。人件費の削減と聞くと、リストラや派遣切りなどの非情な施策を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
実際に不景気などにより売上が伸びず、会社が存続の危機に立たされた時には、非常な施策も避けては通れない道となってしまいます。
「人件費」の削減をどう調理するか?
世間的に良く耳にする「ボーナスのカット」や「社員の給与を削減する」といった比較的軽い「人件費」の削減でさえ、社員のモチベーション低下に繋がり、コスト削減自体が成功したとは言えないでしょう。
総じて「人件費」の削減に手をかけること自体、最終的な妥協策としての意味合いが強く、良いイメージが無いようにも捉えられます。そのような背景から「人件費」の削減というのは、消極的になりがちな施策とも言えます。
しかし、「人件費」の削減だからこそ、敢えて積極的に取り組むことで大きなプラスを産むことも可能となります。例えば、社員が辞めたり、別の部署へ移動をするタイミングで、雇用形態の違う人材を雇うなどの計画を事前に立てて、機を見るに敏で行うことで、コスト削減における大きな成功を収めることが出来るのです。
まとめ
突発的なコスト削減は、様々な意味合いで失敗の可能性が高くなります。だからといってリストラなどの最終的な妥協案を執行するまで放置せず、積極的な姿勢をもって計画的に優先順位をつけて実行し、定期的な数値化によってのフィードバックを行うことで、コスト削減を成功へと導けるようになります。
そして、コスト削減として手の付けにくい「人件費」だからこそ、積極的に取り組むべきといえるでしょう。今後の不景気にも耐えうるコスト削減の一大施策として、フリーランスなどの雇用形態の違う人材確保に踏み切る、早急な決断が必要な時代が来ているのかもしれません。
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