最近では、フリーランスへサイト作成やアプリ開発、SEO対策などを外注する企業が増えています。御社でもフリーランスへの外注をご検討されているのではないでしょうか?外注の際には、必ず「契約書」を作成しましょう。契約書がないと、将来もめごとが発生したときに解決が困難となったりトラブルが拡大したりする可能性が高まってしまいます。またフリーランスとの契約には「請負」や「委任」など、いくつかの類型があります。それぞれの内容を正しく把握しておきましょう。今回はフリーランスとの契約の種類や契約書に盛り込むべき必須事項、注意点を解説します。

業務委託契約とは一体何なのか?
法律上の契約類型ではない
フリーランスとの契約では、タイトルと「業務委託契約」とするケースがよくありますが、「業務委託契約」とは何なのでしょうか?
実は業務委託契約という法律上の契約類型はありません。法律上の契約類型としては「請負契約」と「委任契約」があるだけです。ただフリーランスへ何らかの業務を委託するので、その契約を「業務委託契約」といっているのです。
法律上の契約類型でないとすると、業務委託契約は法律上どういった位置づけになるのでしょうか?
それは、請負契約や委任契約、両者の混在したものです。
業務委託契約は、「請負契約」または「委任契約」のいわば「変形版」です。どちらかがベースになっており、それぞれの状況に応じた「特約」をつけ、調整しています。特約とは、そのケースにおける当事者間の特別な約束事であり、契約に特約をつければ民法の原則より優先的に適用されます。
フリーランスと企業の契約は民法の「請負契約」や「委任契約」をそのまま適用すればよいものではありません。費用の発生時期、支払時期や検収の方法、著作権などいろいろ定めなければならない事項があります。
そこで民法の「請負契約」や「委任契約」を基本としつつも、そのケースに応じた特約をつけて調整し「業務委託契約」としているのです。
フリーランスとの業務委託契約は2種類
フリーランスと企業との契約類型には「請負契約」と「準委任契約」の2種類があります。
1.請負契約
請負契約とは、「仕事の完成を目的として、何らかの業務遂行と完成物の引き渡しを注文する契約」です。
請負契約では「仕事の完成」が重要です。たとえば建物の建築請負では「建物が完成したかどうか」がすべてであり、仕事が完成したときに報酬が支払われます。「過程」は重要ではありません。
途中で頓挫した場合には一切の報酬が支払われないのが原則です。
フリーランスとの契約が「請負契約」になると、「きちんと納品物が納品されたときに報酬を払う」必要があり「納品されなかった場合や不完全なものが納品された場合」には報酬を払う必要がありません。
※民法改正による影響
2020年4月1日の民法改正により、請負契約における納品物が欠陥品だった場合には「契約不適合責任」を追及できます。具体的には修理や代替品の請求、代金減額や契約の解除、損害賠償請求が可能となります。
これまでの「瑕疵担保責任」は廃止されて「契約不適合責任」に変更されました。契約書作成時にも「瑕疵担保責任」ではなく「契約不適合責任」を前提に条項を定める必要があります。
2.準委任契約
準委任契約とは、「何らかの行為(法律行為以外)を依頼する契約」です。準委任契約では「行為」そのものが重要であり「完成」は問題ではありません。たとえばコンサル業務の委任の場合、コンサルによって「利益が上がったか」どうかにかかわらず、コンサルが「アドバイスなどを行うこと」に対して毎月報酬が発生します。
フリーランスとの契約が準委任契約になると、納品物に無関係に報酬が発生しますが、受任者には善管注意義務もあり、委任者のために定められた仕事を丁寧に行っていく必要はあります。
委任契約に向くのは「SEOコンサル」など「結果に対する報酬を設定すべきでないケース」です。アプリ開発やサイト制作、デザインやライティングなどの「結果を求める契約」には請負契約が適しているでしょう。
【注意!】派遣契約との違い
企業担当者の方は、フリーランスとの「業務委託契約(請負契約、委任契約)」と「派遣契約」を混同されているケースがありますが、この2つはまったく異なります。
もっとも大きな違いは「業務委託契約は直接契約」「派遣契約は派遣会社を挟んでおり直接契約ではない」ところです。
派遣契約とは
派遣契約とは、派遣会社に依頼して社員を派遣してもらい、社内ではたらいてもらう契約です。
企業が契約を締結する相手は「派遣会社」であり、社員本人ではありません。派遣会社が適切な社員を企業へと派遣し、社員は企業内ではたらき、企業は「派遣会社」へ利用料金を支払います。
受け入れ企業が派遣社員に直接給料を支払うことはありません。社員を雇用しているのはあくまで派遣会社であり、社員へは派遣会社が給料を支払います。
派遣会社と社員との間には労働基準法などの労働関係法令が適用されます。また派遣会社にも受け入れ企業にも派遣法による規制が及びます。
業務委託契約との違い
業務委託契約では、企業が直接フリーランスと契約して仕事を外注します。報酬は企業が直接フリーランスに支払いますし、派遣会社のような第三者は介在しません。業務委託契約は労働契約ではないので労働基準法などの労働関係法令による規制はありません。派遣ではないので派遣法も適用されません。
派遣契約を利用すると、自分で社員を探さなくて良いですし、何かあったときには派遣会社に責任を追及できる安心感があります。ただ派遣会社に仲介手数料的な差額をとられる分、フリーランスと直接の業務委託契約より割高になるケースが多いでしょう。
契約内容が偽装請負にならないための注意点
フリーランスと契約をするとき「偽装請負」にならないよう注意が必要です。
注意点0:偽装請負とは
偽装請負とは、本来は「雇用契約」とすべきなのにあえて「請負契約」の形をとり、「労働基準法」などの労働関係法令の適用を免れようとする行為です。
企業が個人に仕事をしてもらうときには「雇用」と「外注」の2種類の方式があります。
雇用契約とは、使用者が被用者を管理して指示監督を行い、仕事に対して「給料」を払う契約です。労働基準法を始めとしてたくさんの規制が及び、企業側は厳しく拘束されます。
一方、請負契約は、請負人の裁量で仕事を行い、仕事が完成したら発注者から「報酬」が支払われる契約です。請負人は発注者から個別の指示を受けずに自分の裁量で仕事を進められます。労働関係法令は適用されず、企業への拘束はほとんどありません。
労働関係法令が適用されると「最低賃金」「残業代」「長時間労働の制限」「解雇の制限」などいろいろ厳しい規制が及ぶので、本当は「雇用契約」なのに「請負契約」の形をとり、雇用契約による強い拘束を避けようとする企業があります。それが偽装請負です。
偽装請負と認定されたら労働基準法違反や最低賃金法違反などで処罰される可能性もあります。
偽装請負にならないため、以下のような点に注意しましょう。
注意点1:フリーランス側が仕事の完成について責任を負う
仕事を完成させるのはフリーランスの責任とします。
注意点2:フリーランスに対し、指揮監督してはならない
仕事の進め方についてはフリーランスに決定権があります。企業がフリーランスに対し「指揮監督」と捉えられるような口出しをしてはなりません。
注意点3:単なる労働力の提供ではなく、フリーランスの技術を使って仕事を行う
単なる肉体労働は「雇用」とみなされます。業務委託契約というからには、フリーランス独自の技術や知識、ノウハウを活かすものである必要があり、器材などについても基本的にフリーランスが用意します。
注意点4:フリーランスの従業員や外注先については、企業側は一切口出しをしない
フリーランス自身が雇用している従業員やフリーランスからの外注先については、企業側は関与しません。ただし契約で「再外注は禁止」する(外注せずにフリーランス本人に仕事をしてもらう)ことは可能です。
フリーランスとの契約では適正な契約書を作成しよう
フリーランスと契約をするときには、請負契約や委任契約をもとにしつつも状況に応じた内容に調整する必要があります。とはいえ一回「ひな形」を作っておけば、それを使って同種の契約に適用できます。頻繁にフリーランスへ外注する企業さまは、契約に関する正しい知識を持って書式も用意しておくのが良いでしょう。
業務委託契約書の書き方や記入すべき項目は以下の記事を参考にしましょう。
業務委託契約書の書き方と記入すべき12項目
