毎月一定の収益を得られる定期購入(サブスクリプション)は「売り上げ予測が立てられる」「顧客が確保できる」メリットのほか、「注文の手間を省く」「割引になる」など顧客側の満足度を高めるうえでも有効です。ECサイトプラットフォームのShopifyでも、定期購入の設定が可能です。
本記事ではShopifyで定期購入を設定するふたつの方法や、おすすめのアプリ、スムーズな導入方法について解説します。Shopifyでの定期購入開始にぜひ役立ててください。

目次
定期購入のニーズは増加傾向にある
定期購入とは、特定の商品またはサービスを利用中のみ料金が発生する販売体系です。代表的な定期購入には以下のものがあります。
- 紙おむつ、ミルク、カミソリ、ペットフードなどの消耗品
- 音楽や動画の配信サービス
- 書籍の購読サービス
- 会員制など特別な顧客体験
- 定期券、定額通信サービス
定期購入は英語の定期購入を表すサブスクリプション(Subscription)から、略して「サブスク」「サブスクサービス」とも呼ばれています。定期購入は、年々市場ニーズが増加傾向にあります。
株式会社矢野経済研究所の「2020年度サブスクリプションサービス市場に関する調査」によると、2020年度のサブスクリプションサービスの国内市場規模は前年度(6,828億2,900万円)比28.3%増の8,759億6,000万円です。2021年度の国内市場規模は同13.8%増の9,965億円が予測されています。定期購入のニーズはコロナ禍による巣ごもり需要もあり、今後も定期購入市場の拡大が期待されるでしょう。
今後のECサイトによる売り上げ増や顧客獲得のためには、定期購入の導入も有効な手法です。
Shopifyで定期購入を導入する2つの方法
Shopifyで定期購入(サブスクリプション)を導入するには、以下の2つのうちいずれかの方法を取ります。
- Shopify定期購入アプリを導入する
- ShopifyサブスクリプションAPIと商品サブスクリプションApp extensionでアプリを構築する
ほかのECサイトプラットフォームサービスでは、定期購入の機能が付属していることが多いです。ところが、Shopifyはリリース当初から基本的な機能のなかに定期購入が含まれていませんでした。よってShopifyで定期購入をはじめるための一般的な方法としては、定期購入機能を付与できるアプリの導入が多く用いられています。
また、2020年10月よりShopifyの新しいAPIである「ShopifyサブスクリプションAPI」と拡張機能の「商品サブスクリプションApp extension」がShopifyに導入されました。APIと拡張機能によって定期購入を導入すれば、Shopify上で通常購入、定期購入の決済が一括で管理できます。
Shopifyアプリで定期購入を導入するメリット・デメリットと方法
Shopifyの定期購入導入方法として多く利用されてきた方法がShopifyアプリを導入する方法です。Shopifyアプリで定期購入を導入するメリットとデメリットとともに、導入する方法を解説します。
Shopifyアプリで定期購入を導入する2つのメリット
Shopifyアプリで定期購入を導入すると、以下2つのメリットがあります。
- 機能に応じたアプリが選べる
- APIよりも導入がかんたん
Shopifyの定期購入アプリはいろいろなものがリリースされています。ECサイトで取り扱う商材や重視したいポイントに応じたアプリが選べるのがメリットです。また、アプリの導入はAPIと拡張機能からアプリを構築する方法よりも、専門的な知識は必要なく定期購入が導入できます。スムーズにShopifyでの定期購入をスタートできるでしょう。
Shopifyアプリで定期購入を導入する2つのデメリット
Shopifyアプリで定期購入を導入するとき、忘れてはいけない2つのデメリットが以下の通りです。
- 決済方法が引き継げない
- 月々のコストが発生する
Shopifyの定期購入アプリで定期購入を導入すると、Shopifyで設定した決済方法を引き継げないデメリットがあります。アプリ導入時には、決済方法を再設定しなければいけません。また、アプリによって対応している決済方法が決まっているため、通常購入では選べる決済方法が定期購入では選べない、ということもあります。
Shopifyでの決済管理を通常購入、定期購入と別々のタスクとして管理しなければいけないところも忘れてはいけないポイントです。
定期購入アプリは無料で利用できるプランを設けているものもありますが、アプリの機能を最大限に使うなら有料プランに加入する必要があります。アプリで定期購入を導入すると、アプリの月々のコストが発生することもデメリットです。
Shopifyアプリで定期購入を導入する手順
Shopifyアプリを定期購入で導入する際は、以下の3つの手順を踏みます。
- Shopify アプリストアからアプリを選ぶ
- インストールする
- 設定して完了
Shopify アプリストアから利用したい定期購入アプリを検索します。「アプリを追加する」ボタンを押してインストールしましょう。インストール完了後は、決済方法や商品登録、定期購入のタイプ、期間、価格などの設定をして完了です。
アプリによって設定方法は異なりますが、手順を踏んでいけばスムーズにShopifyで定期購入が導入できるでしょう。
定期購入導入におすすめのShopifyアプリ4選
Shopifyでの定期購入導入におすすめの、以下4つのShopifyアプリの特徴を解説します。
- Bold Subscriptions
- Recharge Subscriptions
- Mikawaya Subscription
- 定期購買
1. Bold Subscriptions
Bold SubscriptionsはShopify上での利用者の多い代表的な定期購入アプリです。おもな特徴は以下の通りです。
- 日本語の翻訳機能
- 失敗した決済の自動削除機能
- Shopify割引コードを使用可能
- 顧客情報の変更や間隔調整が可能
- メール通知機能
- 60日の無料トライアルあり
Bold Subscriptionsの言語表示は英語ですが、日本語の翻訳機能がついています。決済に失敗したクレジットカード情報の自動削除機能があります。Shopify割引コードの使用も可能です。
顧客自身はもちろん、ECサイトの管理者側が顧客のアカウントにログインし、情報の変更も可能です。定期購入の1回目、2回目の間隔が短い場合も管理者側で調整できます。Shopifyで定期購入が成立するとBold Subscriptionsからメールで通知を送るため、スムーズな対応ができます。60日の無料トライアル後、月額49.99ドルが発生します。
2. Recharge Subscriptions
Recharge SubscriptionsもShopifyでの利用者が多い定期購入アプリです。カスタマイズ性を求めている人に向いています。おもな特徴は以下の通りです。
- 督促処理機能
- オートメーション機能
- 機能のカスタマイズ可能
- UIのカスタマイズ可能
- 無料プランあり
- 日本語実装なし
Recharge Subscriptionsは、催促メール送信機能を実装しています。顧客が支払いの対応に失敗したときや、有効期限間近のクレジットカードで決済を行ったときなど、決済に関して問題が発生する可能性のある顧客に対し催促メールを自動送信します。
割引設定をしておけば次回購入時に自動割引になるなどの、オートメーション機能も付属しています。APIに欲しい機能を追加したり、画面の文字やテーマを変更したりなどのカスタマイズ性が高いのも特徴です。機能は限定されますが、無料プランがあります。すべての機能が使える有料プランは月300ドルです。なお日本語には対応していません。
3. Mikawaya Subscription
Mikawaya SubscriptionはShopifyでの定期購入を手掛ける企業が開発した日本製アプリです。以下の特徴があります。
- バンドル形式販売がかんたんにできる
- 顧客がマイページで変更可能
- 解約アンケートの実施と集計
- 他アプリと連動してステップメール作成
- 顧客管理機能
- 日本語対応
顧客が定期購入で希望する商品やサービスを選択できる、バンドル形式の定期購入がかんたんに設定できます。定期購入での商品や期間などの項目の変更を、ECサイト側ではなく顧客側がマイページでできるのも魅力です。
解約時、解約メッセージとともにアンケートを配信できます。アンケートの集計結果をECサイトでのマーケティングに活かせるでしょう。ShopifyのメルマガアプリKlaviyoと連携するとステップメールが送れる機能や、注文回数や契約期間などの顧客管理画面機能も付属しています。日本語に対応しています。
4. 定期購買
導入店舗1800突破を達成した、Shopifyの日本製アプリのなかでもっとも使われているアプリです。導入コストの低いものを試したい人にも向いています。定期購買には以下の特徴があります。
- 他アプリからの移行ができる
- 直感的な操作ができる
- サポート体制が充実
- テストモードのみの無料プランあり
- 基本機能がそろっているため導入コストがおさえられる
すでに定期購入アプリを導入している場合でも、定期購読なら顧客情報を他アプリからかんたんに移行できます。移行にともなって顧客側でクレジットカード情報を再入力してもらうなどの手間もないため、アプリ乗り換えによる解約が防げます。直感的な操作がで扱いやすいのも魅力です。
日本製のため日本語に対応し、おまかせ設定を依頼できるなどカスタマーサポートが充実しています。テストモードのみなら無料プランでお試し可能です。定期購入のための基本的な機能がそろった有料プランは1か月あたり49ドル+取引手数料1%のため、比較的導入コストも低くなっています。
APIと拡張機能でShopifyに定期購入を導入方法とメリット・デメリット
Shopifyアプリでの定期購入導入は多くのメリットがあるものの、通常購入と定期購入の決済管理が別々になってしまうデメリットがあります。長期的なECサイト運営をふまえて、決済管理面でのデメリットを払しょくできるのがAPIと拡張機能によって定期購入を構築する方法です。
ShopifyサブスクリプションAPIと商品サブスクリプションApp extensionを使った定期購入を導入するメリットとデメリット、方法を解説します。
APIと拡張機能でShopifyに定期購入を導入する3つのメリット
APIと拡張機能でShopifyに定期購入を導入するメリットは以下の3つです。
- 管理を一元化できる
- マーケティングや顧客管理が可能
- 月々のコストが抑えられる
APIと拡張機能によって、既存商品のShopifyチェックアウト(決済ページ)上に定期購入が導入できるようになります。アプリでの定期購入導入の場合、同じ商品でも通常購入、定期購入と別での管理が必要なため決済方法や商品設定も別々に行わなければいけません。APIと拡張機能なら、Shopifyの既存設定を変えなくても定期購入が導入でき、管理も一元化できます。
また商品の決済だけでなく、顧客データも一元化できます。通常購入と合わせた顧客データの分析によるマーケティングや、顧客管理も効率化できるでしょう。
APIと拡張機能によって定期購入を導入すれば、Shopify全体でのメンテナンスの一部として組み込めます。アプリのように独立したコストとしては発生しないのもメリットです。
APIと拡張機能でShopifyに定期購入を導入するデメリット
APIと拡張機能でShopifyに定期購入を導入するデメリットは、導入の難易度が高いことです。以下の設定が必要になります。
機能ごとに分かれた3つのAPIは以下のとおりです。
API | 提供機能詳細 |
Selling Plan API | Shopifyの販売方法の拡張機能で「今すぐ購入」以外のさまざまな販売方法をサポート |
Subscription Contract API | サブスクリプション契約の作成と管理 |
Customer Payment Method API | 顧客の将来的な注文をチェックアウトなしで決済 |
さらに、商品サブスクリプションApp extensionによる設定が必要になります。商品サブスクリプションApp extensionは、アプリからのコンテンツをShopifyに表示する拡張機能です。
設定手順のページはShopify上で公開されていますが、すべて英語です。アプリ開発の知識も必要になるため、開発者でなければ設置難易度が高いと言えます。
APIと拡張機能でShopifyに定期購入を導入する方法
APIと拡張機能でShopifyに定期購入を導入する手順は以下の通りです。
- Shopifyサブスクリプションのマーチャント資格を得る
- 販売計画と販売計画のグループを作成する
- チェックアウト割引コードを作成する
- 配送プロファイルを作成する
- 適用する課税ルールを作成する
- ストアフロントにコードを設定する
なおすでにECサイトをStripeで構築、既存のサブスクリプション契約を実行している場合には、Shopifyへの移行も可能です。
APIと拡張機能でShopifyに定期購入を導入するのは難易度が高い一方、決済や顧客管理、マーケティングを一元化できるためECサイトの業務効率化にもつながります。APIと拡張機能によるShopifyへの定期購入導入は、アウトソーシングすることで導入の手間が省けます。ECサイトの運営業務に集中できるでしょう。
Shopifyへの定期購入導入を依頼する場合、先の選択肢のひとつとしてShopifyの定期購入の構築を得意としているフリーランスに依頼する方法があります。SEO対策、APIと拡張機能によるアプリの追加、ページの翻訳など、依頼したい内容に応じてフリーランスも選べます。ぜひ検討してみましょう。
Shopifyで定期購入を導入して売り上げを拡大しよう
Shopifyで定期購入する方法ごとのメリット・デメリットと手順、おすすめの定期購入アプリを解説しました。Shopifyに定期購入を手軽に導入したいなら、アプリの利用が選択肢になります。
最初はアプリで定期購入を実装してみて、ECサイトや商材と相性がよければ、APIと拡張機能による定期購入導入も検討してみるのも選択肢のひとつです。ニーズの増加傾向が続く定期購入を導入して、ECサイトの事業拡大や売上アップを目指しましょう。
