Shopify Markets(ショッピファイ・マーケット)は、世界最大級のECプラットフォームShopify(ショッピファイ)が2021年9月にリリースした新たなソリューションです。越境ECに必要な機能を簡単に一元管理できるShopify Marketsの導入によって、越境ECに関する多くの課題が解消されます。
本記事では、Shopify Marketsの概要、主な機能、費用、導入手順などをわかりやすく解説していきます。

目次
Shopify Marketsとは?注目を集める3つの理由
Shopify Marketsは、Shopifyが2021年9月にリリースした新たなソリューションです。越境ECに必要な機能を簡単に一元管理でき、通貨や言語の変換といったEC事業者が抱える課題を解消することが期待されます。
1. 急速に拡大するEC市場のニーズに即した新ソリューション
EC市場は世界各国で急速な拡大を遂げています。新型コロナウイルスの感染拡大の影響も加わった2020年のEC売上は、世界全体で4.2兆ドル(約477兆円※)に上り、さらに2021年には5兆ドル(約568兆円※)に近づくと予測されています。※1ドル=113.6円で計算
また、日本貿易振興機構(JETRO)が2021年1月に発表した「2020年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(ジェトロ海外ビジネス調査)」によると、日本企業の越境EC活用率は過去4年間で約15%上昇していて、EC活用によって海外展開を実施する中小企業数も急増しています。
Shopify Marketsは、年々高まる越境ECへのニーズに即し、Shopifyが開発したソリューションです。
2. 拡張アプリ不要で越境ECの課題を解消
越境ECには通貨の変換や言語の翻訳、地域に適した支払い方法の提供、関税や輸入税などの計算といった数多くの課題が存在します。Shopify Marketsの目的は、越境ECの課題や問題の解決をより簡単にして、越境ECに取り組んでいる事業者の海外市場の新規開拓や売上向上をサポートすることです。越境ECへの参入を促進する試みとして大きな注目を集めています。
3. 複数国でのビジネスを自動的に最適化する
Shopify Marketsは、Shopifyが有する膨大なデータや市場動向にあわせて、ショップに表示する商品や取引条件などを自動的に最適化する機能を備えています。自動最適化機能によって、既存のビジネスを複数の国や地域への拡大が容易になります。必要に応じて手動で管理することもできます。
Shopify Marketsが提供する越境EC向けの8つのソリューション
Shopify Marketsには、越境ECの課題に対応するソリューションが数多く備えられています。主な8つのソリューションについて以下に説明します。
1. 表示価格を133種類の現地通貨に変換
商品の価格は、国や地域ごとに133種類の現地通貨に変換して表示されます。複数の国や地域で商品を販売する場合、顧客は現地通貨の価格表示を確認して、スムーズに支払いができます。返金対応も現地通貨で行います。
各国で表示される価格は、市場為替レートを使用した自動変換と、事業者が手動で選択した為替レートでの変換のいずれかが選択できます。
2. 複数言語への対応
ストアのコンテンツを最大20言語に翻訳し、国や地域ごとに表示できます。販売する商品やサービスに関する情報や配送条件、返品時のポリシーなどを、それぞれに国や地域で使用されている言語に変換します。
事業者から購入者に伝える各種情報を各マーケットの主要言語で表示することで、ショップに対する顧客の理解を深め、売上の向上につなげられます。
3. 国別に決済方法を選択
Shopify Marketsでは、決済方法を国や地域別に選べます。クレジットカードでの決済を有効にするためには、Shopify Payment(ショッピファイ・ペイメント)または外部の決済サービスを利用する必要があります。
1.Shopify Payment
Shopify Paymentは、簡単な操作ですぐに決済を受け付けるShopify独自のサービスです。主なクレジットカードなどに加え、決済情報を保存して次回の購入手続きを簡単にするShop Payを使うこともできます。
Shopify Paymentで利用できる決済サービスは、以下の6種類です。
- Visa
- Master card
- AMEX
- Shop Pay
- Apple pay
- Google pay
2.外部の決済サービス
Shopifyペイメント以外に利用できる主な外部決済サービスは、下表の通りです。
決済サービス | 特徴 | 対応するクレジットカード |
PayPal(ペイパル) | Shopifyストア開設時の初期状態から利用可能 | Visa、MasterCard、American Express、JCBなど |
Amazon Pay(アマゾンペイ) | Amazonアカウントを持つユーザーは支払い情報登録や住所入力不要 | Visa、MasterCard、American Express、JCB |
Paidy(ペイディー) | メールアドレスと携帯電話番号認証コード入力で翌月払いの決済を利用 | クレジットカード不要 |
GMOイプシロン | クレジットカード、コンビニ決済に加え、セキュリティコードや3Dセキュアなどのオプションサービスも提供 | Visa、MasterCard、American Express、JCB |
BitPay(ビットペイ) | ビットコイン、ビットコインキャッシュの仮想通貨での決済 決済手数料が1%と割安 | クレジットカード不要 |
4. あらゆる販売サイトで利用地域に応じた言語と通貨を自動表示
インターネット上のあらゆるサイトで、利用する国や地域に最適な言語と通貨に自動変換して表示します。海外ドメインという国や地域別に決められるURLを使用し、Shopifyストアの情報を現地の通貨と言語に自動変換できます。
5. 関税・輸入税を自動計算して輸入手数料を表示
主な国や州の関税や輸入税を自動的に計算して、商品購入者が支払う輸入手数料を表示します。
6. 国別の価格設定
商品を販売する国や地域のマーケット動向などを踏まえて、そのマーケットに適した価格が設定できます。
7. 国別の在庫管理
在庫のある全ての拠点を一元管理し、購入者のいる国や地域に最も近い拠点の在庫数を知らせます。
8. 複数国の売上を確認して国際市場を分析
世界中の数百万に上るネットショップで収集・蓄積された信頼性の高いデータを活用し、各マーケットに最適な販売方法を特定します。国際マーケットで得た豊富なデータは、将来の需要の予測やマーケットごとの目標設定にも役立つものです。
Shopify事業者のShopify Markets導入は追加費用無し
すでにShopifyを利用している事業者がShopify Marketsを導入する際、追加費用は発生しません。Shopifyを利用していない場合は、まずShopifyの提供しているプランのいずれかを選び登録する必要があります。
初めてShopifyを利用する際は、各プランの料金、Shopify Marketsで利用できる機能の違いを確認しましょう。
Shopify各プランの月額費用
Shopifyにはベーシック、スタンダード、プレミアムの主要な3つのプランに加え、既存のサイトやSNSにショップ機能を追加するShopify Lite(ショッピファイライト)、エンタープライズ用のShopify Plus(ショッピファイプラス)があります。
1.プラン別の月額料金
5種類のプランそれぞれの月額料金は以下のようになります。
Lite | ベーシック | スタンダード | プレミアム | Plus | |
月額料金 (1ドル=113.6円で計算) | 9ドル (約1,022円) | 29ドル (約3,294円) | 79ドル (約8,974円) | 299ドル (約33,966円) | 2,000ドル (約227,200円) |
2.プラン別の決済・取引手数料
Shopifyの購入によって発生する手数料には、主に取引手数料と決済手数料の2つがあります。
取引手数料は事業者がShopifyに支払う手数料で、上で説明したShopify Paymentを利用すれば無料で、外部の決済サービスを利用する場合は、プランによって変わります。
一方の決済手数料は、事業者が決済サービス会社に支払う手数料で、利用するクレジットカードの発行が国内か海外かによって異なり、プランによっても変わります。
プランごとの手数料は以下の通りです。
Lite | ベーシック | スタンダード | プレミアム | Plus | |
取引手数料 ※Shopify Payment利用では無料 | 2% | 2% | 1% | 0.5% | 0.15% |
国内発行クレジットカード決済手数料 | 3.4% | 3.4% | 3.3% | 3.25% | 3.15% |
海外発行クレジットカード決済手数料 | 3.9% | 3.9% | 3.85% | 3.8% | 3.75% |
Shopifyの全プランで利用できるShopify Marketsの機能
Shopifyで利用中のいずれのプランでも利用できるShopify Marketsの機能には次の6つがあります。
- 海外の各マーケットでの販売方法を一元管理
- Shopify Paymentを使用して133の通貨で販売
- Shopify Paymentを使用して現地の決済オプションを提供
- 最大20言語に対応して情報を表示
- カスタムドメインを設定して検索を最適化
- スマート設定を使って海外の各マーケットでの事業展開を最適化
プレミアムとShopify Plusプランで利用できるShopify Marketsの機能
プレミアムとShopify Plusの2つのプランだけで利用できる機能には次の4つがあります。
- チェックアウト時に関税と輸入税を自動計算して表示
- Shopify Paymentを使用して海外の各マーケットの価格を設定
- マーケット別にカタログとストアフロントをカスタマイズ
- 海外の各マーケットでの業績を一元管理
Shopifyの無料体験とShopify Marketsへの早期アクセス
Shopify Marketsを導入する手順について、具体的に説明します。
14日間のShopify無料体験
Shopify Marketsは、Shopifyを利用している事業者向けのソリューションです。Shopifyを利用していない場合は、まずShopifyのプランへの登録が必要です。
初めてShopifyを利用する際には、14日間の無料トライアルが設けられています。無料期間中に、Shopifyが自社に適しているかどうかをじっくりと検討できます。無料期間の開始は、ストアでの作業開始時ではなく登録した段階からとなりますので、注意が必要です。
トライアルを経て有料プランを選択する際には、無料期間中にストアで行った作業は全て保存されます。また、トライアル中に有料プランを選択する場合、無料期間が終了するまでは月額料金の請求は発生しません。
Shopifyの無料体験中でもストアの各種設定が行えます。しかし、商品やサービスの販売は月額プランを選択しないと開始できません。もし無料体験期間の終了までに月額プランを選択しなかった場合は、ストアは一時停止され、有料プランの選択後から利用可能になります。
料金プランを選択しない場合は、Shopifyアカウントのキャンセル手続きは不要です。無料体験期間終了時にアカウントは凍結され、もちろん請求は発生しません。
Shopify Marketsをいち早く体験する早期アクセス
2021年9月のリリースから、Shopifyの公式サイト上でShopify Marketsの利用を開始する「早期アクセス」への申し込みができるようになっています。2021年10月末の段階では、早期アクセスの受付期間や今後の変更の有無などについては、発表されていません。
すでにShopifyを利用している場合は、無料で導入できるShopify Marketsを実際に試してみることをおすすめします。
Shopify Marketsの導入や越境EC全般に関する疑問はプロに相談
Shopify Marketsを活用した越境ECへの取り組みに関して、問題点や課題が生じた際は、Shopifyのストア構築や運用に精通し、越境ECに関する専門スキルやノウハウを持ったエキスパートへの相談を検討しましょう。
Shopifyの構築・運用に精通したShopifyエキスパート、Shopifyパートナー
Shopify Marketsの利用検討や運用に関して課題や問題が発生した際は、Shopifyや越境ECに精通した制作会社への相談やサポート依頼を検討しましょう。Shopifyの構築・運営経験が豊富で、さらにShopify Japan社が実施する6週間の教育・研修プログラム「Shopify Partner Boot Camp: Japan」の修了者であれば、安心して相談することができるでしょう。
ShopifyエキスパートやShopifyパートナーは、Shopifyの構築・運用に関するノウハウや実績を示す呼称です。Shopify パートナーはShopifyのパートナー制度に登録している制作会社やフリーランスで、一定以上の支援実績を持つShopifyパートナーのうち、厳しい審査を通過した制作会社やフリーランスがShopifyエキスパートに認定されます。
ランサーズで活動するShopifyエキスパート
ランサーズでは、Shopifyに関する専門技術とノウハウを学ぶ6週間の「Shopify Partner Boot Camp: Japan」を修了したフリーランスのShopifyパートナーが100名以上活動しています。また、日本国内ではわずか5名の個人のShopifyエキスパートのうち、3名がランサーズで活動中です。
Shopifyのプロとして認められた経験豊富なフリーランスは、課題に即した有益なソリューションやサポートを提供してくれるはずです。Shopify Marketsや越境ECに関する疑問や課題は、ぜひランサーズのフリーランスにご相談ください。
Shopify Marketsを活用して越境ECを成功させましょう
この記事では、Shopifyが提供を開始したShopify Marketsについて、以下のポイントに沿ってご説明しました。
- 越境ECの課題やニーズに即したShopify Marketsの特徴
- Shopify Marketsが提供する8種類のソリューション
- Shopify MarketsはShopify事業者であれば追加費用不要、費用や利用できる機能はプランごとに異なる
- 14日間のShopify無料体験とShopify Marketsへの早期アクセスについて
- Shopify Marketsに関する課題はShopifyや越境ECに精通したエキスパートに相談
Shopify Marketsを使って越境ECを成功させるために、ここで紹介した情報を参考にして準備や運用を進めてください。
