ECサイトをオープンソースで構築すると、本当に低コストで済むのか不安ではありませんか。オープンソースは、確かにライセンスの購入コストはかかりません。しかし、開発や運用のコストなどは必要で、低コストで済むとは言い切れない点には要注意です。
本記事では、ECサイトをオープンソースで構築するメリット・デメリットを説明し、必要となる費用についてもまとめました。また、オープンソース以外のECサイト構築方法や、ECサイト構築前にいろいろと相談できるフリーランスも3名紹介しますので、ぜひ、ECサイト構築にお役立てください。

目次
ECサイトをオープンソースで構築するメリット3点
オープンソースとは、ソフトウェアプロダクトを構成するソースコードを無償で一般公開することです。世界中の有志が継続的に改良するほか、企業がオープンソースをベースに改良した自社のソースコードを有償で公開するケースもあります。本記事で「オープンソース」という場合は。無償で公開されているソースコードを指すこととします。
ECサイトのオープンソースも数多く公開されており、オープンソースを利用したECサイトも多く見られます。オープンソースを利用してECサイトを構築するメリットは、以下の3点です。
- ライセンス費用は無料
- 世界中のコミュニティでアップデートや情報交換が可能
- カスタマイズ自由で拡張機能も豊富
各メリットについて順番に解説します。
1. ライセンス費用は無料
パッケージソフトの場合、例えば「ebisumart」では、料金プランによって300~1,000万円以上の初期費用がかかります。オープンソースを利用する最大のメリットは、ライセンス費用が無料だという点です。構築するECサイトの数が多い場合は、さらに初期コストの節約効果が高まります。
2. 世界中のコミュニティでアップデートや情報交換が可能
オープンソースの場合、世界中のコミュニティでアップデートや情報交換が可能な点も大きなメリットです。コミュニティの活発なオープンソースプロジェクトであれば、ナレッジベースも充実しているため、様々な疑問をすぐに解決しやすいと言えます。
3. カスタマイズ自由で拡張機能も豊富
ソースコードはすべて公開されており、自社の希望通りのカスタマイズが可能です。また、世界中で拡張機能も多く用意されているため、自社で開発しなくても欲しい機能が見つかる可能性もあります。
カスタマイズ性の高いECサイト構築方法としては「フルスクラッチ(すべてのソースコードを自社開発)」もあります。しかし、基本機能が揃っており必要分のみ開発すればよいオープンソースを活用する方が、開発コストを抑えることが可能です。
ECサイトをオープンソースで構築するデメリット4点
ライセンス費用は無料のオープンソースですが、ECサイト構築に利用する上では、以下のデメリットがあります。
- サイバー攻撃の標的になるリスク
- カスタマイズや運用には高いITスキルが必要
- 障害対応のサポートを受けられないなど運用面の負担
- ライセンス費用は無料だが開発・運用は高コスト
これらのデメリットを確認し、オープンソースを利用するかどうかについてご検討ください。
1. サイバー攻撃の標的になるリスク
ECサイトは世界中に公開する上、お客様の個人情報やクレジットカード情報を取り扱うため、サイバー攻撃の標的にされやすいという特徴があります。また、オープンソースはソースコードが世界中に公開されているため、脆弱性を知られるリスクがあり、サイバー攻撃の標的になりやすい点にも要注意です。
さらに、セキュリティ対応をベンダーに任せられるECモールなどに比べ、自社管理のECサイトは、セキュリティ対策のコストがかかります。
オープンソースに対するサイバー攻撃の例としては、有名なオープンソースのロギングライブラリ「Apache Log4j」の脆弱性に対するゼロディ攻撃が挙げられます。多くのWebアプリケーションで利用されているライブラリであり、脆弱性が発表されてからすぐにサイバー攻撃を行う「ゼロディ攻撃」が確認されました。
サイバー攻撃への備えとして、セキュリティアップデートのこまめな適用やサーバーマシンのセキュリティ対策などが必要です。また、ECサイト開発時のセキュリティ機能の作りこみなども必要になります。
2. カスタマイズや運用には高いITスキルが必要
高いカスタマイズ性を期待してオープンソースを導入する場合は、本格的なシステム開発が必要です。運用作業では、障害発生時の対応と解決方法の調査、バージョンアップやセキュリティアップデートの取り込みなどにも対応しなくてはなりません。これらの作業にも、高いレベルでのITスキルが求められます。
3. 障害対応のサポートを受けられないなど運用面の負担
オープンソースの場合、パッケージソフトやASPカートシステムのように、ベンダーからのサポートは期待できません。ECサイトの運用まで自社で行うと、どうしても負荷が大きくなります。
開発時の疑問や障害対応の調査は、世界のコミュニティを活用します。コミュティ内の有益な情報は英語であることも多く、ITスキルに加えて英語力も必要です。
4. ライセンス費用は無料だが開発・運用は高コスト
ライセンス費用が無料でも、開発コストまで考えるとかえって高くつくケースは少なくありません。特に、オープンソースをベースに大幅にカスタマイズしたい場合は、開発コストが高騰しがちです。自社リソースでIT人材を確保できない場合は、開発や運用をアウトソーシングする必要があり、結果的に総コストがかなり高くなるケースも珍しくありません。
オープンソースを利用してECサイトを構築する場合は、ライセンス費用だけでなく、開発コスト・環境構築・運用コストをすべて洗い出してください。総コストをしっかりと見積もり、その他のECサイト構築方法と比較することをおすすめします。
ECサイトをオープンソース以外で構築する3つの方法
ECサイト構築方法は、オープンソース以外にも様々な種類があります。中でも主要な構築方法は、以下の3パターンです。
- 無料で構築したいなら「無料のASPカート」
- 手軽に運用したいなら「有料のASPカート」や「クラウドサービス」
- 自由にカスタマイズできてサポートも手厚い「パッケージソフト」
これらの構築方法とオープンソースのメリット・デメリットを比較しました。
ECサイトの構築方法 | メリット | デメリット |
無料のASPカート | 無料で手軽にECサイトを構築できます。 システムの運用業務はベンダーに任せられます。 | 機能面で物足りなく、大規模なECサイトには向きません。 |
有料のASPカート・ クラウドサービス | 比較的低価格で利用でき、大規模なECサイトに適用できるサービスもあります。 システムの運用業務はベンダーに任せられます。 | カスタマイズ性が低く、自社がサービスに合わせる必要があります。 |
パッケージソフト | 機能面が充実しており、カスタマイズを依頼することもできます。 大規模なECサイトにも適用できます。 ベンダーのサポートを受けることができます。 | ライセンス費用や初期構築費用がかなり高額です。 自社で運用する必要があり、運用コストやセキュリティ対策のコストがかかります。 |
オープンソース | ライセンス費用は無料で、多くのマシンに導入できます。 自由にカスタマイズできます。 | カスタマイズや運用には技術力やコストが求められます。 ベンダーのサポートが受けられません。 |
1. 無料で構築したいなら「無料のASPカート」
無料でECサイトを構築したい場合は、初期構築費用や運用面の負担が少ない点から「無料のASPカート」がおすすめです。有名な無料ASPカートには「BASE」や「STORES」「カラーミーショップ」などがあります。無料というだけでなく、誰でも手軽に構築できる点も無料ASPカートの大きな特徴です。その一方で、機能的には物足りない、大規模なECサイトには向かないなどのデメリットもあります。
2. 手軽に運用したいなら「有料のASPカート」や「クラウドサービス」
有料のASPカートやクラウドサービスのECサービスは、機能面もそれなりに充実しており、初期費用や月額費用も比較的低コストで利用できます。「Shopify」や「Makeshop」などは代表的な例です。
機能面が充実しているだけでなく、料金プランを選んで自社に合った機能を選択できる点も魅力です。その一方で、多くの契約者が使用するサービスのため、基本的にカスタマイズはできず、自社の業務をサービスに合わせて利用しなくてはなりません。
3. 自由にカスタマイズできてサポートも手厚い「パッケージソフト」
パッケージソフトは、ベンダーが提供するECサイト構築のためのソフトウェア製品です。自社内に環境を構築し、サーバーマシンにインストールして利用します。ベンダーに依頼すればカスタマイズも可能で、サポートも手厚く受けることが可能です。
オープンソースとパッケージソフトの大きな違いはライセンス費用とベンダーサポートの有無です。自社にITシステムを構築する人材がいる時は、ライセンス費用がかからないオープンソースを選択し、自由に開発を行う方法も選択肢のひとつです。
ECサイトを構築できるオープンソース3選
ECサイトをオープンソースで構築する場合におすすめの製品は以下の通りです。
- EC-CUBE
- AdobeCommerce
- WordPress
それぞれの特徴を簡単にご紹介します。
1. EC-CUBE
日本での導入実績は35,000店舗以上で、有名なオープンソース型のネットショップ構築システムです。自社のサーバーにインストールするダウンロード版と、クラウド版があります。クラウド版の場合も開発環境があり、カスタマイズできる点が大きな特徴です。
自社ECサイトのブランディングに力を入れたい場合やクラウドの手軽さとカスタマイズ性の料率を希望する場合に適しています。
2. AdobeCommerce
Adobeの提供するECプラットフォームで、BtoBおよびBtoCどちらにも対応しています。商品登録が無制限でできるため、ECサイトの規模を問わず導入できる点も特徴のひとつです。
多言語対応もあり、複数国での展開を検討しているケースにも適しています。
3. WordPress
ブログに利用されることの多いWordPressですが、ECサイト構築も可能なオープンソースのソフトウェアです。同一ドメインでブログとECサイトの両方を運用することもできます。しかし、あまりにも有名なため、こまめなセキュリティアップデートなどのセキュリティ対策が必要です。
オープンソース利用などECサイト構築の相談にはフリーランス活用も
ライセンス費用は無料で自由にカスタマイズできる点が魅力のオープンソースですが、開発コストや運用・セキュリティという観点からは、必ずしもメリットばかりとは言えません。
ECサイトに期待する年商規模や、業種・業態によっては他の方法を検討した方がいいケースもあります。しかし、ECサイト構築経験がないと、どの方法で自社サイトを構築するべきかを見極めることは困難でしょう。
このような場合は、フリーで活躍するエンジニアやコンサルタントに相談する方法もおすすめです。ECサイトの構築経験が豊富な専門家ならではの観点から、最適なECサイトの構築方法について、有意義なアドバイスを受けられます。
オープンソースに限らず、自社に合ったECサイトの構築方法を見定めるためにも、ぜひフリーランスをご活用ください。
ECサイト構築の相談ができるフリーランス3選
ランサーズでは、ECサイトの構築経験豊富なフリーランスが多数在籍しています。中でも、ECサイト構築前に相談ができるフリーランスを3名ご紹介します。
「内田 翔史さん」WordPressやShopifyでのECサイト構築ならお任せ
WordPressやShopifyでのECサイト構築経験豊富なWebデザイナーです。業務経験は10年以上あり、オリジナルのデザインで他社と差別化できるECサイトを構築したい場合に大きな力になるでしょう。デザインにこだわりたい方、ECサイト構築全般について相談したい方におすすめです。
「藤本 英樹さん」ECサイト・ネットショップのお悩みをサポート
Shopifyの構築・運用サポートやECモール出店、デザインカスタマイズやSEO対策を得意とするマーケターです。実績が豊富で、自社のECサイトをどのように構築すればよいか、という点から相談ができます。ECモールやShopifyを利用したECサイト構築も検討したい場合などに、ぜひご相談ください。
「津田 眞さん」EC-CUBEを使ったオンラインストア構築可能
オープンソースの「EC-CUBE」を使ったオンラインストア構築を依頼できるエンジニアです。EC-CUBEを導入したいとお考えの場合や、希望する構成のECサイトに必要な予算に関する見積もりを相談する際などにおすすめです。
ECサイトをオープンソースで構築するには技術力がカギ
ECサイトの構築にオープンソースを利用するメリットは、ライセンス費用がかからない点や自由にカスタマイズできる点です。しかし、オープンソースを利用するには技術力が必要です。自社リソースでIT技術者を確保するか、アウトソーシングするかを検討しなければなりません。
開発から運用までの総コストを見積もり、予算や人員の兼ね合いから、ECサイト構築を別の方法で行うかどうかも要検討です。
ECサイトの構築方法選定にも、技術スキルが求められます。技術的に難しい検討をする場合は、専門の知識を持ったフリーランスに相談して、疑問点を整理してみてはいかがでしょうか。自社に合った方法でECサイト構築を成功させてください。
