ECサイトの既存顧客を優良顧客やロイヤルカスタマーとして育成したいなら、CRMの導入がおすすめです。競争が激しいEC市場では、新規顧客の獲得ばかりに頼っているのは得策ではありません。
本記事では、CRMの3つのステップや具体的な施策、CRMシステムの選び方をご紹介します。休眠顧客の掘り起こしやクリエイティブ制作についても解説していますので、ぜひECサイト運営者の方はぜひ参考にしてください。

目次
ECサイトにおけるCRM導入の目的とは
CRMとは「Customer Relationship Management」の略で、顧客関係管理と呼ばれています。顧客情報を一元管理することで、顧客との関係を管理し深めていくためのマネジメント手法です。
EC通販ではマーケティング競争が激化しており、新規顧客の獲得に注力するだけではなかなか成長が見込めません。そこで近年では、CRMの導入が注目されているわけです。ここでは、ECサイトの運営にあたってCRMを導入する2つの目的について見ていきましょう。
- 優良顧客・ロイヤルカスタマーの育成
- LTVを向上させる
1. 優良顧客・ロイヤルカスタマーの育成
CRM導入の目的は、優良顧客・ロイヤルカスタマーの育成です。特にECモールの集客力に頼らない自社ECストアの運営において、優良顧客・ロイヤルカスタマーの育成は重要な課題と言えるでしょう。
マーケティングの世界では、既存顧客と比べて新規顧客獲得には5倍のコストがかかる「1:5の法則」がよく知られています。そこでECサイトの運営でCRMを適切に行い、2回目以降の購入リピート率を高める施策が注目されているというわけです。
既存顧客をリピーターへ、そして優良顧客・ロイヤルカスタマーへ育成すれば、口コミによって新規顧客が増えることも期待できます。
2. LTVを向上させる
CRM導入のもう1つの目的は、「LTV(ライフタイムバリュー)」の向上です。競争が激化するEC通販で生き残るためには、顧客1人あたりが生涯に渡って生み出す価値の合計であるLTVの向上が不可欠と言えます。リピーターとは、自社ECサイトあるいは自社商材のファンのことです。ファンを増やす施策が、結果的にLTVの向上に繋がります。
ファンを増やす施策は、対象となる顧客を性別・年齢層・居住地域・行動などの傾向別に分けた「顧客セグメント」ごとに実施する必要があります。顧客セグメントはターゲットのニーズを把握するために役立ち、より効果的な施策を実施できるというわけです。
一斉配信のメルマガやDMに頼るのではなく、個別に対応するコミュニケーション戦略を立てましょう。
EC通販の売上をアップさせるCRMの3つのステップ
EC通販において、どのようにCRMを活用すれば売上アップに繋がるのでしょうか?ここでは、CRM活用の3つのステップについてご紹介します。
- 顧客分析を行う
- CRMマーケティングを実施する
- PDCAサイクルを回す
1. 顧客分析を行う
CRMのステップ1は、顧客分析の実施です。直接顧客と会うことのないECサイトの運営において、CRMシステムを導入すれば幅広いデータを非常に細かく蓄積できます。まずは顧客データを分析して、優良顧客のペルソナを明らかにしましょう。収集した顧客データを分析する手法は、主に以下の6つです。
CRM分析手法 | 概要 |
LTV分析 | ・平均購入単価・購入頻度・購買期間などから算出。 ・金額の大小に関わらず、長期間に渡り継続購入している顧客のLTVは大きくなる。 ・長期的な視点で重要性の高い顧客を明らかにできるので、ファンに寄り添ったアプローチが可能。 |
RFM分析 | ・直近購入日を示す「Recency」、購入頻度を示す「Frequency」、購入金額を示す「Monetary」の指標を使って顧客を分析する手法。 ・顧客の重要度を測り、優良顧客かどうか客観的に判断可能。 |
CTB分析 | ・商品分類を示す「Category」色・模様・形・サイズを示す「Taste」ブランドやキャラクターを示す「Brand」の指標を使って顧客を分析する手法。 ・顧客によって購入される確率の高い商材を予測する手法。 ・顧客の嗜好を明らかにできるので、商品開発やプロモーションに活用できる。 |
CPM分析 | ・カスタマーポートフォリオマネジメント分析のこと。 ・RFM分析の3つの指標に「顧客の在籍期間」を加えた計4つの指標で顧客を分析する手法。 ・顧客層を見える化できる。 |
デシル分析 | ・「デシル」とは「10分の1」という意味がある言葉で、顧客を10のグループに分けて、購入金額順に優先順位をつける手法。 ・高い売上に繋がる顧客グループを明らかにできるので、優先的にアプローチ可能。 |
セグメンテーション分析 | ・顧客を特定の条件で分類する「セグメンテーション」を行い、顧客の傾向を明らかにする手法。 ・自社の商材と相性の良い顧客のニーズを明らかにできるので、商品開発やプロモーションに活用できる。 |
2. CRMマーケティングを実施する
顧客をセグメント化したら、セグメントごとにEC通販に特化したCRMマーケティング施策を策定します。CRMマーケティング施策とは、主に次の3つの要素のことです。
CRMマーケティング施策 | 概要 |
CRM施策 | ・メールマーケティング ・ステップDM ・CRMデジタル広告配信 |
CRMライティング | ・休眠顧客の掘り起こしやアップセル・クロスセルなどを目的としたCRMを意識したライティング |
CRMクリエイティブ制作 | ・CRMを活かしたLPやサイトの制作 |
自社ではリソース不足で、CRMを意識したクリエイティブ業務を短期間で完成させるのは難しいというEC事業者も多いでしょう。フリーランスの中には、CRM領域で豊富な経験や知見を持つクリエイターが数多くいます。
CRMマーケティング施策を策定したら、専門性の高いフリーランスに顧客に刺さるLPやメールの文面の作成を依頼してみてはいかがでしょう。
3. PDCAサイクルを回す
CRMマーケティングを実施したら効果を分析し、改善策を検討するPDCAサイクルを回します。PDCAとは「P:Plan(計画)」「D:Do(実行)」「C:Check(評価)」「A:Action(改善)」のことです。
マーケティング計画の段階でKPI(Key Performance Indicator)を設定し、達成したい目標を具体的な数値に落とし込むようにしましょう。KPIを活用すれば、効果の度合いを測定しやすくなります。
ECサイトで使えるCRMを活用した具体的な施策
ここでは、ECサイトの運営で検討したい具体的なCRM施策を3つご紹介します。自社ECサイトのアクティブユーザーを増やすためにも、ぜひ活用してみてください。
- セグメントに応じたフォローアップメールを送る
- 休眠顧客との接点を増やす
- 同梱物・DM・LPなどCRMクリエイティブ制作に注力する
1. セグメントに応じたフォローアップメールを送る
顧客セグメントごとにニーズを洗い出し、フォローアップメールを送る施策です。フォローアップメールの対象は、主に次のような顧客層が考えられます。
- 優良顧客
- 休眠顧客
- 初回客
- 定期客
いつまでも自社ECサイトのファンでいてもらうためには、コミュニケーション戦略が必須です。各顧客セグメントが抱える問題の解決を意識したメール文面の設計が必要となります。
しかし顧客に刺さる文面の作成は、社内では難しい面もあるでしょう。マーケティングやライティングの知見の高いフリーランスに文面作成を依頼すると、第三者目線を取り入れられるので自社にとっても有益な情報を得られます。
2. 休眠顧客との接点を増やす
休眠顧客とは、1度は購入してくれたものの、それ以降リピート購入のない顧客のことです。かつて自社商材に興味を持ってくれたことは確かなので、運営担当者が接点を増やせば戻ってきてくれる可能性が高いと言えるでしょう。
休眠顧客を掘り起こす方法は、主に2つ考えられます。
- 休眠理由を分類して、理由ごとにメッセージを発信する
- アプローチ方法を増やして、休眠顧客との新しい接点を作る
サンプル購入のみの顧客には、キャンペーンの告知をすることも考えてみましょう。商材やサービスに不満を持つことが想定される顧客には、利用メリットを再訴求するのも1つのアプローチ方法です。
メールに反応しなくても、SNS・広告なら反応があるかもしれません。文章を読むことに興味がなくても、動画なら視聴してくれるかもしれないため、アプローチ方法を広げることも重要です。
3. 同梱物・DM・LPなどCRMクリエイティブ制作に注力する
顧客との接点を効果的に増やすため、CRMを意識して自社と相性の良い同梱物・DM・LPに注力することも大切です。CRM分析を行った結果を踏まえて、もっとも重要度の高い顧客セグメント層に訴求力の高いクリエイティブを作成しましょう。
社内でノウハウを蓄積したい場合は、設備投資をして内製化するようにしましょう。しかし変化の激しいEC通販で勝ち抜くためにも、クオリティ高く短納期に完成させたいなら外注するのがおすすめです。
コンサルタントに依頼する前に、クリエイティブ制作やEC通販に知見のあるフリーランスの活用を検討するのも1つの方法と言えます。フリーランスに外注すると、制作会社に依頼する場合と異なり、自社の案件を最優先で対応しさまざまな提案をしてもらえる可能性があるからです。
ECサイト運営に役立つCRMシステムの選び方
ECサイトの運営に役立つCRMを実現するCRMシステムが数多くあることから、後悔しないシステム選びをしたいものです。ここでは、ECサイト運営に役立つCRMシステムの選び方をご紹介します。
- CRMの役割を正しく理解する
- 顧客関係管理の課題を書き出してみる
- 本当にCRMシステム導入は必要か今一度考える
- ECサイト運営担当者にとってメリットがあるかどうか考える
- CRMベンダーが存続するかどうか
1. CRMの役割を正しく理解する
「CRMと営業支援を混同していないか」「CRMをあいまいに理解していないか」など、CRMの役割について今一度見直す必要があります。顧客情報を集約管理するCRMシステムとは、データを販促・マーケティングや顧客へのサービス・ケアに活用する支援です。
一方、営業支援とは営業事務の効率化はもちろん、ノウハウ・コツなどの営業ナレッジのチーム内共有を推進します。自社のニーズに最適なのは、CRMか営業支援なのか見極めましょう。
2. 顧客関係管理の課題を書き出してみる
本社が想定する顧客関係管理の課題は、現場で顧客に対応するECサイトの運営担当者が抱える課題とは必ずしも同じではありません。
間違った認識のもとにCRMシステムを選定しないためにも、まずは顧客関係管理における課題を書き出してみると良いでしょう。例えばSNSやメール、電話などの問い合わせ窓口を1本化したいといった課題のことです。
ECサイトの運営では、CRMは顧客に近い「フロントエンド業務」をサポートするシステムです。マーケティング上の概念であるCRMを実現するための支援として、CRMシステムは役立ちますが、必須ではありません。
もしリソース不足が問題で、顧客とコミュニケーションをとる時間が確保できないのであれば、CRMシステム導入の前にリソース不足を解消すべきでしょう。
3. 本当にCRMシステム導入は必要か今一度考える
ECサイトではインターネットを介した取引が行えますが、ビジネスは人間を介して行われます。そこで、顧客との関係を良好に維持・発展させたいというECサイト運営側の方針がまず重要です。その上で多様化した個々の顧客ニーズを満たすサービスを提供するためにも、情報量を処理できるITの力が必要となります。
ただしオンプレミス型やクラウド型、アカウント数・機能・データ容量によって料金体系が異なるので、コストの比較が大切です。
EC通販業界で生き残るためにCRMシステムの導入は必須の戦略ですが、新規顧客の獲得や運営業務の効率化に注力する立ち上げたばかりの時点では不要でしょう。立ち上げ時はCRMシステム導入の前に、様々なCRM施策を実施するリソースの確保を検討してはいかがでしょう。
4. ECサイト運営担当者にとってメリットがあるかどうか考える
CRMシステムをECサイトの運営にあたって導入するなら、運営担当者にとってメリットが大きいかどうかも検討してみてください。運営メンバーが抱えがちな悩みは次のとおりです。
- 専門的で高機能すぎるため、運営を担当するメンバー全員が使いこなせない
- 初期導入費や運用コストを考えると、従来のようにエクセル管理を続けたほうが安心できる
- 既存のシステムと連携できず、いろいろと手間がかかる
- 顧客体験や顧客満足度の高いビジネスを目指していないのでCRMシステムの必要性がわからない
CRMシステムを導入すると、実施したCRM施策の効果を検証する上で役立ちますが、すぐ利益に直結するわけではありません。新しい業務を増やして運営担当者のITスキルの範囲を超えないように、CRMシステムを選定する際には注意しましょう。
5. CRMベンダーが存続するかどうか
変動の激しいIT業界でベンダーが企業として存続するかどうかも、CRMシステム選定の際には検討しておきたい点です。CRMを提供するベンダーが、吸収合併や倒産を経て存続できなくなる可能性もゼロではありません。
経営形態が変動し、しわ寄せを受ける可能性があるのはCRMを導入した側です。すべてを予測することは不可能ですが、CRMベンダーの永続性も選定の際に考慮するようにしましょう。
顧客との関係を強化しECサイトの運営を成功させよう
顧客との関係を強化してECサイトの運営を成功させるためにも、さまざまなCRM施策の実施が不可欠です。多様化する顧客ニーズを把握するためにも、顧客のセグメント化は役立ちます。顧客セグメントごとにメール・DM・LPの文面を調整し、顧客に刺さるメッセージを発信することが大切です。
CRMライティングやCRMクリエイティブ制作を得意とするフリーランスも数多くいます。自社で内製化が難しいと感じたら、フリーランスに相談してCRM施策を充実させましょう。
