新型コロナウイルス蔓延の状況下でネットショップ市場が拡大しています。ネットショップで買い物する人が増え、売上を延ばしているショップは少なくありません。
ネットショップを運営する中、多くの運営者が課題にしているのが「かご落ち」の回避です。ショップを訪れるユーザーにとって利便性の高い決済方法を用意することは、売上アップにとっても重要です。購入者を失わないように、ネットショップの決済方法や自社にあった選び方を知りましょう。
本記事では、利用頻度が多い決済方法のランキングと、各決済方法のメリットやデメリット、選び方のポイントまで徹底解説します。

目次
最も利用されているのはクレジット決済
ネットショップでの決済方法として最もよく使われているのはクレジットカード決済です。そのほかにどのような決済方法が使われているのか、総務省の調査結果から利用者数の多い決済方法をご紹介します。
調査から見た利用頻度の高い決済方法
総務省の「令和2年度通信利用動向調査(世帯編)」によると、ネットショップで利用が多い決済方法は以下のランキングになっています
順位 | 決済方法 |
1位 | クレジットカード払い(代金引き換え時の利用を除く) |
2位 | コンビニエンスストアでの支払い |
3位 | 代金引換 |
4位 | 銀行・郵便局窓口・ATMでの振込・振替 |
5位 | 通信料金・プロバイダ利用料金への上乗せによる支払い |
6位 | 電子マネーによる支払い |
下図はネットショップで利用されている決済方法の割合です。
令和2年の結果をみると、インターネットで商品を購入する際は、クレジットカード決済の利用者が75.0%で最も高いです。続いてコンビニエンスストアでの支払いが36.5%、代金引換が24.6%と高くなっていますが、平成30年からの推移をみるとどちらも利用者は減少しています。
電子マネーによる支払いが増加しており、今後は電子マネーによる決済のニーズが高まることが予測されます。
ランキングで見る主な決済方法のメリット・デメリット
ネットショップで利用頻度の高い決済方法について、先述した紹介した総務省のランキングの順位ごとに、ショップ運営者側のメリットとデメリットを見てみましょう。
1位 クレジットカード払い
2位 コンビニエンスストアでの支払い(コンビニ決済)
3位 代金引換(代引き)
4位 銀行振込・郵便振替
5位 通信料金・プロバイダ利用料金への上乗せによる支払い(キャリア決済)
6位 電子マネーによる支払い(電子マネー決済・外部ID決済)
1位 クレジットカード払い
クレジットカード決済はネットショップで最も利用者が多い決済方法です。購入時にオンラインで決済まで完了可能で、コンビニエンスストアや金融機関に改めて支払いに行く必要がないことが人気の理由です。また、手数料がないことも人気の理由です。
クレジットカード払いの主なメリット・デメリットは以下のとおりです。
クレジットカード払いのメリット | クレジットカード払いのデメリット |
・購入時に決済が完了するので未払いのリスクが少ない ・利用者が多いのでショップ利用を途中でやめる「かご落ち」が防止できる ・顧客単価があがる ・注文確認後、すぐに発送作業に入れる | ・導入するカードのブランドごとに手数料が発生する ・審査手続きに時間がかかる ・不正利用対策が必要になる |
2位 コンビニエンスストアでの支払い(コンビニ決済)
便利なクレジットカード決済ですが、近年不正利用のニュースも多くなり、ネットショップにカード情報を入力することに不安を感じる人も少なくありません。そんな利用者に人気が高い決済方法がコンビニエンスストアでの支払い(コンビニ決済)です。
コンビニ決済には、前払いと後払いがあります。
- 前払い … 事前にメールなどで「支払番号」などの情報を送付し、コンビニのレジで支払う
- 後払い … 商品と同時に支払票を送付し、商品到着後に決済してもらう
コンビニ決済の主なメリットとデメリットは以下のとおりです。
コンビニ決済のメリット | コンビニ決済のデメリット |
・クレジットカードを持っていない、利用したくないユーザーにも利用してもらえる ・支払いがあれば、すぐに入金を確認できる ・手数料が比較的安い | ・入金してもらえずキャンセル扱いになる可能性がある ・後払い利用の際は、代金が回収できない可能性がある ・コンビニごとに申請が必要になり、手続きが煩雑 |
3位 代金引換(代引き)
商品を受け取る際、運送会社に料金を回収してもらう仕組みです。ユーザーにとっては、商品を受け取る際に料金を支払うので安心感を持って利用してもらえます。運送会社によっては、クレジットカード決済に対応しているところもあるので、クレジットカード情報を入力したくないというニーズにも応えられます。
代金引換の主なメリットとデメリットは以下のとおりです。
代金引換のメリット | 代金引換のデメリット |
・クレジットカードを持っていない、利用したくないユーザーにも利用してもらえる ・代金の未回収が防げる | ・利用手数料が高い ・運送会社ごとの契約が必要になり、手続きが煩雑 ・受取拒否や不在により配送不可になった際には、往復の送料と代金引換の手数料負担が発生する |
4位 銀行振込・郵便振替
銀行や郵便局の窓口、ATMで代金を支払ってもらう方法です。振込手数料はユーザーの負担となりますが、クレジットカードを持っていない利用者でも商品購入が可能です。特にシニア層の利用が多いので、シニア向けのネットショップで多く導入されています。
近年では、ネットバンキングも普及しており、窓口やATMへ行かなくても決済ができるようになりました。振込手数料が無料になるサービスを導入している銀行もあり、シニア層以外の利用も増えています。
銀行振込・郵便振替の主なメリットとデメリットは以下のとおりです。
銀行振込・郵便振替のメリット | 銀行振込・郵便振替のデメリット |
・クレジットカードを持っていない、利用したくないユーザーにも利用してもらえる ・口座があればすぐに利用可能 | ・入金されず、注文がキャンセルになってしまう可能性がある ・振込の反映に時間がかかることがあり、発送までに時間がかかる |
5位 通信料金・プロバイダ利用料金への上乗せによる支払い(キャリア決済)
NTTドコモ、au、ソフトバンクなど携帯電話会社のアカウント情報を利用して決済してもらう仕組みです。それぞれ「d払い」「auかんたん決済」「ソフトバンクまとめて支払い」と呼ばれています。ユーザーは購入代金を携帯電話の利用料金と一緒に支払います。
スマートフォンやパソコンから、各携帯会社で作成したIDとパスワードなどを入力するだけで決済できるので、クレジットカードを持っていない人も利用できます。
キャリア決済の主なメリットとデメリットは以下のとおりです。
キャリア決済のメリット | キャリア決済のデメリット |
・クレジットカードを持っていない、利用したくないユーザーにも利用してもらえる ・代金の未回収が防げる | ・月々の利用限度額が低い(10万円上限が多い) ・審査が厳しく、手続きが煩雑 ・決済手数料が高い |
6位 電子マネーによる支払い(電子マネー決済・外部ID決済)
Suicaやnanacoなどのほか、PayPayや楽天ペイ、au PAYなどを利用した、電子マネー決済は、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどでの利用も伸びています。
ネットショップの決済方法でも利用する人が増加しています。最近ではスマートフォンからネットショップを利用する人も増えており、注文から決済までスマートフォンのなかで完了する手軽さで人気です。
電子マネー決済の主なメリットとデメリットは以下のとおりです。
電子マネー決済のメリット | 電子マネー決済のデメリット |
・簡単に利用してもらえるので、利用者のハードルが低くなる ・クレジットカードを持っていない、利用したくないユーザーにも利用してもらえる ・代金の未回収が防げる | ・ネットショップのシステムによっては導入できないサービスがある ・サービスごとに決済手数料がかかる |
ユーザー層を考えて決済方法を選ぼう
導入する決済方法を決める際には、運営しているネットショップのユーザー層に注目しましょう。ユーザーの利用が多い決済方法を優先するのがポイントです。
- 10代・20代にニーズが高い電子マネー決済
- シニア世代には銀行振込も人気
- 3つ以上の決済方法があると安心
1. 10代・20代にニーズが高い電子マネー決済
JCBが行っている「クレジットカード総合調査」によると、クレジットカードの保有率は20代だけが8割を下回っています。10代と20代が主なユーザー層であれば、クレジットカード決済に加え、電子マネーでの支払いができる外部ID決済を準備しておくと、スマートフォンから利用してもらいやすくなります。
さらに、コンビニエンスストアによく行く世代でもあるので、コンビニ決済も追加しておくのがおすすめです。
2. シニア世代には銀行振込も人気
昨年からシニア世代のネットショップ利用者が急激に増加しました。利用してみたいという意向を持つ人も多く、今後もシニア層のユーザーは増えることが予想されます。この世代を主なユーザーと考えるのであれば、代金引換や銀行振込、コンビニ決済など、現金で支払える方法を導入しましょう。
シニア世代にとって、ネットショップ利用に関する一番大きな壁になっているクレジットカード情報の入力を避けられることにもつながり、安心して利用してもらえるネットショップとしてアピールできます。
3. 3つ以上の決済方法があると安心
ネットショップで利用できる決済方法が増えれば、商品を購入してもらうユーザーの幅が広がり、売上アップにつながります。ですが、決済方法の導入にもそれぞれに申請の手続きが発生するだけでなく、毎月の決済手数料も発生するので、それを考慮するとすべての決済方法を導入するわけにはいきません。
決済方法を決める際にはクレジットカードを軸に、ユーザー層に合った決済方法を、まずは3つ決めておくのがいいでしょう。それ以上の決済方法については、ユーザーからの要望や、決済直前のかご落ちの有無も確認しながら、追加を検討することが重要です。
ネットショップでの対応状況や決済手数料も考えておこう
ネットショップで決済方法を導入したいと思っても、契約したネットショップのシステムでは利用できないことがあります。導入したい決済方法に関するネットショップの対応を事前に確認しておきましょう。
- 決済方法で手数料が異なる
- ネットショップのシステムによっては対応していない決済方法も
1. 決済方法で手数料が異なる
ネットショップで決済方法を導入する際には、ほぼすべてのサービスで月額利用料や決済手数料が発生します。どのくらいの手数料が発生するかはネットショップのシステムや決済サービス代行会社によって異なるので、事前に十分に比較して、確認しておくことが重要です。
また、同じクレジットカード決済、コンビニ決済であっても、ブランドによって手数料が異なることもあります。手数料は、決済サービスの種類ごとではなくブランドごとに必要です。
利便性を高めようと多くの決済方法を導入しても、手数料コストがかかりすぎて赤字になることもあります。充分に注意しましょう。
ネットショップの決済手数料の目安は以下のとおりです。
決済方法 | 決済手数料 |
クレジットカード決済 | 決済額の3~10% |
コンビニ決済 | 決済額の2~5%(定額)または130円~/1決済 |
代金引換 | 20円~/1決済(ネットショップと連動させる場合) |
銀行振込・郵便振替 | 決済額の2~5%(定額)または130円~/1決済 |
キャリア決済 | 決済額の5~10% |
電子マネー決済 | 決済額の3~4% |
2. ネットショップのシステムによっては対応していない決済方法も
各ネットショップのシステムや決済代行会社では、さまざまな決済方法を多くのブランドで用意してくれていますが、すべてをカバーしているわけではありません。「キャリア決済に対応していない」「電子マネー決済ができない」など、思うようには使えない決済方法もあります。
また、クレジットカード決済でもVISAとMasterCardは扱っていてもJCBが使えなかったり、電子マネーには対応しているけれど種類が限定されていたりします。いざ、ネットショップをオープンしようとしたら、導入したい決済方法が使えなかった、ということがないように、ネットショップの契約前に確認しておきましょう。
ネットショップ運営の際は「買いたい!」と思ってもらえる決済方法を選ぼう
ユーザーに「このネットショップを利用したい」と思ってもらうためには、どんな決済方法を選ぶかは重要なポイントです。ニーズの高い決済方法を複数導入すれば、売上も上がってきます。
利用者にとって人気の決済方法は日々変わっていきます。自社のネットショップのユーザーの声を聞き、経済産業省の調査結果をもとにしたランキングを確認することで、求められる決済方法が何か、時々確認するのもおすすめです。
ネットショップの売上額や商品数、ユーザー層なども考慮して、適切な決済方法を選択するようにしましょう。
