インターネット上での売買取引にあたるのが、eコマースです。オンライン上でショップや自サイトを展開する企業や店舗は幅広い業種におよびます。eコマースを導入することで企業の利益向上やブランディングの実現など多くのメリットが得られます。
eコマースを成功させるために必要なのが、自社や商材に合うECサイトの展開です。本記事では、eコマースの概要や種類、メリット・デメリット、eコマース事業の実現方法や成功するためのポイントを解説しています。自社に最適なeコマースを実現し、利益向上や企業のブランディングにつなげましょう。

目次
eコマースとは
eコマースとは、英語の”Electric Commerce”が元になっている言葉です。日本語に訳すと「電子商取引」となり、電子的に行われる取引全般を指します。
eコマースのビジネスモデル
eコマースを分類すると、以下の4つのビジネスモデルがあります。
- 企業対企業の取引であるBtoB
- 企業対消費者の取引であるBtoC
- 消費者対消費者の取引であるCtoC
- 消費者対企業の取引であるCtoB
ただし「eコマース」と用語としてもちいる際は、上記のビジネスモデルのなかでもBtoCの売買取引であるネットショッピングを指すことが多くなっています。
eコマースは、他にも以下の表現方法があります。
- Eコマース
- EC
- ネットショッピング
- オンラインショッピング
- ネット通販
科学の分野において、電子を表す言葉は「e」と小文字で表現されるのが一般的です。一方、ネットショッピングを指すeコマースは、Eコマースと大文字で表現されることがあります。英語の”Electric Commerce”を略した「EC」でも同義です。
オンライン上での売買取引を行うネットショッピング、オンラインショッピングもeコマースと同義で扱われます。日本語の通信販売をネット上で行う「ネット通販」も同じ意味です。
eコマースでの売買取引を行う場所は、以下のように表現されます。
- ECサイト
- ネットショップ
- オンラインショップ
本記事では「eコマース」および「ECサイト」で統一します。
eコマースの販売形態
eコマースの販売形態は、商材や取引方法で分類すると以下の4つがあります。
- 物理的な商品の取引をするECサイト
- デジタル商品の取引をするECサイト
- サービスの取引をするECサイト
- ドロップシッピングサイト
取引をする商材によってECサイトを分類すると、食品、日用品、アパレル、電化製品など物理的な商品を取引するECサイト、動画や音楽、ゲームコンテンツなどのデジタル商品を取引するECサイト、フリーランスに依頼できるなどサービスを取引するECサイトの3種類に分けられます。
ECサイトでの販売方法や在庫管理方法は、商材によって異なるのが特徴です。例えば物理的な商品の取引は宅配事業者による配送が欠かせませんが、デジタル商品の取引はダウンロードで完了することもあります。
販売形態は、ECサイト側の在庫の有無によっても分類可能です。在庫を持たないECサイトは、ドロップシッピングサイトと呼ばれています。ECサイト側は在庫を持たない代わりに、サプライヤーと契約するのが特徴です。売買取引が発生すると、契約したサプライヤーがECサイトに代わって商品を顧客へ届ける業務を行います。
eコマースと似ている用語の比較
eコマースと似ている用語に以下のふたつがあります。
- Mコマース
- Vコマース
Mコマースとは”Mobile Commerce”の略です。スマートフォンやタブレットなどの、携帯端末を利用した売買取引を指します。Vコマースとは”Virtual Commerce”の略で、VRやARなどのテクノロジーを取り入れた仮想空間(ヴァーチャルリアリティ)での売買取引のことです。いずれもeコマースの手法のひとつと数えられます。
ECサイトで分類するeコマースの種類
eコマースは、ECサイトの展開方法によって以下の6種類に分類されます。
- モール型ECサイト
- ショッピングカートASP
- ECパッケージ
- クラウドEC
- フルスクラッチ
モール型ECサイト以外の5つのECサイトは、自社でECサイトを立ち上げる「自社ECサイト」に分類されます。自社ECサイトは、ECサイトを立ち上げるプラットフォームによってさらに5つに分類可能です。eコマースのECサイトによる分類と、それぞれの特徴について解説します。
1. モール型ECサイト
モール型ECサイトとは、複数のショップがひとつのECサイトに集まっている販売形態です。モール型ECサイトでECサイトを開く際、自社のショップを出店する形になります。代表的なモール型ECサイトは、以下のものです。
- Amazon
- 楽天市場
- Amazon pay
- LINE pay
- Yahoo!ショッピング
- PayPayモール
- Wowma!
- Qoo10
- au PAY モール
モール型ECサイトは、メリットとデメリットが表裏一体であるのが特徴です。
- 集客しやすい → 競合が多くなる
- 出店がかんたん → 個性が出ない
- 卸売型ならデータや在庫管理が不要 → マーケティングに活かせない
モール型ECサイトは、モールそのもの知名度が高いため出店後でもある程度の集客が見込めます。ただし、集客が多い分、競合が増えるのがデメリットです。
モール型ECサイトには、商品登録、送料設定、ページデザインなど出店をかんたんにできるツールやサービスがそろっています。その分カスタマイズの余地が少なく、自社や製品のブランディングには向いていないでしょう。
モール型ECサイトには、ショップが顧客情報や在庫管理を行う出店型(ショッピングモール型)のほか、モール型ECサイト側がデータや商品を管理する卸売型(マーケットプレイス型)もあります。
Amazonは出店型、卸売型両方の販売形態を設置しているのが特徴です。卸売型の場合自社でデータや在庫の管理をする必要がないため業務の効率化につながります。
一方で自ショップ側で商品を購入した顧客の個人情報などのデータが手に入りません。マーケティングに活かしたり、値段のコントロールができないなどのデメリットが生じます。
2. ショッピングカートASP
ショッピングカートASPは、オンライン上でECサイトを開店できるサービスを指します。ECプラットフォームサービスとも呼ばれています。主なショッピングカートASPが以下のものです。
- Shopify
- MakeShop
- BASE
- EC-CUBE
- カラーミーショップ
ショッピングカートASPは、用意された機能を使いクラウド上でECサイトを構築します。月々に契約するプランの内容や、利用するショッピングカートASPによって用意されている機能は異なるのが特徴です。
多機能の使えるプランの契約や、オプションで機能やテンプレートなどを追加購入することで、オリジナリティのあるECサイトを構築することもできます。
3. ECパッケージ
ECパッケージとは、ECサイト構築に必要な機能のそろったソフトウェアを購入して構築する方法です。構築したECサイトは、自社で用意したサーバーにアップロードして運用します。
ソフトウェアの購入費用はかかるものの、基本的な機能がそろっているためECサイトのページデザインやシステム構築をする必要がありません。規模の大きなECサイトを立ち上げたいときにも向いています。
4. クラウドEC
クラウドECとは、クラウド上に用意されたプラットフォームにECサイトを構築する方法です。ECサイトの機能やデザインはカスタマイズできる部分もあります。ショッピングカートASPとECパッケージの特徴を合わせ持ったECサイト構築方法といえるでしょう。
5. オープンソース
オープンソースとは、インターネット上で公開されているソフトウェア(オープンソース)を利用してECサイトを構築する方法です。代表的なオープンソースにはWordPressがあります。構築したECサイトは、自社で用意したサーバーにアップロードして運用します。ECサイトの機能やデザインをカスタマイズできたり、比較的費用をおさえてECサイトを構築できたりする一方、ECサイトを構築するためのスキルや知識が必要です。
6. フルスクラッチ
フルスクラッチとは、ECサイトの構築を0からすべてを作成する方法です。フルスクラッチの依頼先には制作会社やフリーランスのエンジニアなどがあります。ECサイトの制作費用は、すべてのECサイトのなかで最も高くなりますが、機能やデザインなどオリジナリティのあるECサイトの構築につなげられます。
eコマースの6つのメリット
eコマース事業を展開することで、以下の6つのメリットがあります。
- 新たな顧客や売上の獲得が期待できる
- 場所を選ばず開業できる
- 時間を選ばず売買取引ができる
- 運営コストの削減
- オンライン上での多角的なアプローチができる
- データによるマーケティングができる
それぞれのメリットについて解説します。
1. 新たな顧客や売上の獲得ができる
eコマース事業を展開すると、ECサイトを通じて新たな顧客層の獲得につながります。ここでは国内、海外のEC市場規模について紹介します。
1. 国内のECサイト市場規模
日本でも世界でもEC市場規模は拡大傾向にあります。2021年7月に経済産業庁が発表した「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、2013年のBtoC-EC市場規模は11.2兆円だったのが年々増加し、2020年は19.3兆円まで伸びたことが分かります。
新型コロナウイルスの感染症拡大の対策として行われた、外出自粛の呼びかけやECの利用推奨なども、EC市場規模が拡大した理由のひとつです。なおEC化率を見るとBtoCで8.08%(前年比1.32ポイント増)、BtoBで33.5%(前年比1.8ポイント増)と増加傾向にあります。
2. 海外のECサイト市場規模
米国では2020年の新型コロナウイルス感染症の流行によって、米国のEC化率は20%以上、2021年までにオンラインで買い物する人が米国全体の53.9%、2023年までに、世界のEコマースの売上高は700兆円以上に達すると予測されています。
今後もEC市場の拡大傾向が続くことが予測されているため、eコマース事業による顧客獲得や売上増加も見込めるでしょう。
2. 場所を選ばず開業できる
eコマースはインターネットに接続している状態なら、場所を選ばず売買取引ができるのがメリットです。販売エリアを限定せずに開業できるため、都市部でなくても幅広い顧客へのアプローチができるでしょう。国内だけでなく、海外への販売もふまえた越境ECの開業も可能です。
3. 時間を選ばず売買取引ができる
eコマースによって、インターネット上で24時間365日営業ができます。顧客が好きなタイミングで商品の閲覧や購入ができるため、多くの販売機会が得られるでしょう。
4. 運用コストの削減
ECサイトは実店舗を持たずに開業できるため、店舗の賃料や光熱費などのコストが発生しません。運用に携わるスタッフも最小限にできるため、人的なコストもおさえられます。
eコマースを利用すると、企業が中間事業者を持たずに消費者と売買取引ができるDtoCも可能です。例えばメーカー直販サイトとしてECサイトを展開すると、卸売や小売業を間にはさまず直接消費者と取引ができます。中間マージンの削減による利益率のアップもECサイトで実現できます。
5. オンライン上での多角的なアプローチができる
eコマースでは、実店舗とは異なる以下の主な方法で消費者へアプローチができます。
- 写真画像
- 動画
- オウンドメディア
- SNS
- クーポンコードの発行
実店舗と異なり、eコマースでは消費者は自宅でくつろいでいるときなどにECサイトを利用することが多いです。商品や自社の魅力を伝える手法がオンライン上では多くあるため、ECサイトはブランディングにも有効でしょう。
6. データによるマーケティングができる
eコマースでは、購入した顧客の個人情報のほか、ECサイトへの流入経路や時間帯によるアクセス傾向などのデータも収集できます。
実店舗よりも顧客動向に関するデータを入手しやすいため、マーケティングにつなげやすいのもメリットのひとつです。なおeコマースの売上増加のためのマーケティング施策を、ECマーケティングと呼びます。
eコマースの4つのデメリット
eコマースはメリットが多い一方、以下の4つのデメリットもあります。
- 集客がしにくい
- 競合が増える
- 対面でのコミュニケーションができない
- eコマース展開のための知識やスキルが必要
それぞれのデメリットについて解説します。
1. 集客がしにくい
ECサイトは実店舗と比べると、集客がしにくいデメリットがあります。実店舗は開店するだけで周辺地域にアピールできますが、ECサイトはインターネット上で開店するだけでは集客が望めません。自ECサイトを消費者に見つけてもらうためのプロモーションやマーケティングの施策が必要となるでしょう。
2. 競合が増える
インターネット上で開業できるメリットは、競合が増えるデメリットでもあります。検索サイトでは商品名を検索するだけで、該当する商品を取り扱うECサイトが一覧としてページに表示されます。そのときに自サイトが表示されないと、販売機会の損失につながるでしょう。さらに自サイトが表示されても、値段や送料などの面で他のECサイトよりも優遇される面がなければ購入にはつながりません。
自サイトが検索結果の上位に表示されるためのSEO対策や、価格決め、商品展開などのマーチャンダイジングも必要です。
3. 対面でのコミュニケーションができない
ECサイトでは実店舗のように顧客と対面でのコミュニケーションができません。消費者は購入前に実物を目で見たり、手に取ったりすることが不可能です。販売員として顧客へリアルタイムでの接客のアプローチもできません。そのためサイズ違いやイメージ違いなどを避けたい理由で、アパレル業界などeコマースに向かない業種もあります。
商品をより魅力的にアピールするための見せ方や、施策が必要となります。アパレル業界などでは、リアルタイムでスタッフが接客を行うライブコマースなどの施策も取り入れるのも有効です。
4. eコマース展開のためのスキルや知識が必要
eコマース事業を展開するには、ECサイト構築、ECマーケティング、SEO対策などの専門的なスキルや知識に加えて、在庫管理、商品管理などの業務も行わなければいけません。ECサイトの運用は、実店舗の運用とは必要な知識やスキル、業務が異なります。業務内容や必要なことをふまえたうえでeコマース事業を展開するのが重要です。
eコマース事業を成功させるための5つのポイント
eコマース事業を成功させるための5つのポイントは以下の通りです。
- 最適なECサイトの形態を選ぶ
- ターゲットを設定しておく
- マーケティング施策をする
- 必要な業務を把握しておく
- アウトソーシングを検討する
それぞれのポイントについて解説します。
1. 最適なECサイトの形態を選ぶ
ECサイトには、大きく分けてモール型ECサイトと自社ECサイトがあります。さらに自社ECサイトはプラットフォームや構築方法によっても種類が分かれます。重視したいポイントに沿って最適なECサイトの形態を選ぶのが重要です。
例えばモール型ECサイトは出店や集客がしやすい一方、マーケティングのコントロールやブランディングがしにくいデメリットがあります。フルスクラッチはオリジナリティのあるECサイトの実現につながりますが、ECサイト開業までの納期やコストが大きくかかります。
また、「運営のしやすさ」「ほどよくカスタマイズできる」などのポイントをふまえてショッピングカートASPを選ぶのも一案です。自社サーバーがあるなら構築しやすさからWordPressでECサイトを構築するなど、ECサイトの形態についても見直しをしてみましょう。
2. ターゲットを設定しておく
eコマース事業は、ターゲットを設定したうえでECサイトの方向性を決めるのが重要です。ターゲットを幅広くしすぎると、ECサイト運用やマーケティングでの方向性やカラー、トンマナなどにばらつきが出てしまい、消費者への訴求力が落ちてしまいます。設定したターゲットに向けてのECサイト制作をするようにしましょう。ターゲットのおもな閲覧環境がモバイルデバイスなら、ECサイトのスマートフォン最適化も必要です。
3. マーケティング施策をする
ECサイトを訪れる顧客のデータや購入した顧客の個人情報などを分析し、サイトの改善やマーケティングに役立てましょう。ECサイトのマーケティングには、リスティング広告やSNSを使用した方法があります。
ECサイトが上位に表示されるためのSEO対策を行うのも重要です。ECサイトが上位表示される機会が多ければ大きいほど、自社ECサイトがより多くの消費者の目にとまることになります。多くの販売機会につなげられるでしょう。
4. 必要な業務を把握しておく
eコマース事業を展開するには、必要な業務も多くあります。以下の必要な業務を把握しておき、円滑な運営につなげましょう。
- ECサイトの構築と改善
- 集客のための施策
- 販促企画
- マーチャンダイジング業務
- 商品登録
- 受発注業務
- 在庫管理
- 商品の梱包と発送
- 問い合わせ対応
- 総合的な管理
5. アウトソーシングを検討する
eコマース事業を開業し成功させるには、ECサイトの構築から運用まで多くの必要な業務が発生します。人的リソースを自社で補えない、ECサイト構築や運用のスキルを持っている人材がいないときには、各業務をアウトソーシングすることも検討しましょう。
例えば、ランサーズではeコマースの各業務に特化したプロのフリーランスに直接依頼ができます。
eコマース事業をはじめるためのECサイト構築の依頼はもちろん、マーケティング施策や商品登録、在庫管理なども依頼可能です。「自社に最適なECサイトの形態が分からない」「どのショッピングカートASPを選んでいいかわからない」などの悩みがあれば、eコマース事業開業前のコンサルティングを受けることもできます。
フリーランスには直接依頼ができるため、中間マージンが発生せずコストパフォーマンスの良い依頼ができるのもメリットです。
eコマースで新たな販売経路を見出そう
eコマースの概要や似ている用語、メリット・デメリット、eコマースを成功させるためのポイントを解説しました。EC市場は拡大傾向にあり、多業種でEC化が進んでいます。eコマース事業を新たに展開するのは、売上による利益向上のほか、ブランディングや新しい顧客層の獲得にもつながるでしょう。
eコマースを成功させるには、自社に最適なECサイトの構築と、マーケティングやSEO対策、必要な業務内容を把握しての運用が必要です。業務のアウトソーシングをするなどECサイトの構築と運用を経て、eコマースの成功につなげましょう。
