どうすればネットショップの売上をアップできるのかお悩みのEC事業者は多いでしょう。EC事業で売上を伸ばすためには、自社商材の売上アップを目指す販促と集客のためのマーケティング施策の両輪が必要です。
本記事では、なぜ販促計画を立てたりキャンペーンを実施したりする必要があるのか、販促の基礎知識をご紹介します。すぐに実践できる販促手法も紹介するので、ECサイトの運営を成功させたい人は参考にしてください。

目次
販促のそもそもの目的は「新規顧客の獲得」「既存顧客の育成」
大手ECモールがキャンペーンを開催する際には、バナー広告のほかにもテレビCMを通じて広告を打つため見かけたことがある人も多いでしょう。キャンペーン・セール・特集などは販促(販売促進)の一環で、ユーザーにアピールして数多くの競合ネットショップの中から興味を持ってもらうことでEC事業の売上を伸ばすイベントです。
そもそも販促とは、販売したい商品を魅力的に見せるプロモーションであり、購買意欲を刺激する効果があります。販促の目的は次のとおりです。
- 新規顧客を獲得する
- 既存顧客から優良顧客へ育成する
- 既存顧客をさらに囲い込む
販促イベントの広告を出すと、自社ブランドおよび自社ECサイトの認知度向上や既存顧客が再訪問するきっかけにつながります。
ターゲットごとに販促イベントを実施する
以下のように、新規顧客なのか既存顧客なのか、ターゲットによって販促イベントの内容や告知の戦略を練ることが大切です。
ECサイト向け販促イベントの例 | 販促イベント告知の戦略 | |
新規顧客 | 認知度が高い記念日にちなんだギフト購入の動機付け (母の日、クリスマス、バレンタインデーなど) | 有料広告や複数メディアへの露出を意識 |
既存顧客 | 顧客がECサイトの利用でVIP感や恩恵を感じられる施策 (◯周年記念、シークレットキャンペーンなど) | 手元の顧客情報の活用を意識し、広告費用をかける代わりに割引還元を意識 (メルマガ、同梱チラシ、クーポン発行) |
効果的に販促を進めるために販促計画を立てることが重要
「いろいろな施策を試しているが、ECサイトの売上が伸びていない…」このような悩みは、販促計画を作成することで改善できる場合があります。思いつきなど場当たりな発想でECサイトを運営しているのであれば、ぜひ販促計画を立ててください。
販促計画が売上アップの有効な手立てになる理由は、次の2点です。
- 各施策の判断基準になる
- キャンペーンの企画・準備・告知の準備に時間がかかる
ではそれぞれの理由について見ていきましょう。
1. 各施策の判断基準になる
ECサイトを運営し始めると幅広い業務をこなすことになり、毎日の業務に追われがちです。そこで重要になるのが、販売計画の立案です。販促計画を立てることで、次の点を見える化できます。
- シーズンごとに移り変わる顧客ニーズ
- 定価販売あるいはセール販売する時期・タイミング
- ECサイトに陳列すべきセール商品や新商品の選定
販促計画を軸にイベントを実施していけば、無駄な広告費を抑えられるほか、定価販売で利益を確保する予定だった商品を思いつきで割引販売する事態を避けられます。販売計画という判断基準を得られると、ECサイトの運営を進めやすくなるというわけです。
2. 販促イベントの企画・準備・告知の準備に時間がかかる
行動指針とも言える販促計画を立てる大きな理由は、売上アップに効果的な販促イベントの段取りを滞りなく進めるためです。販促計画を立てると、販促イベントの準備で運営業務が過密になる時期と余裕のある時期を簡単に把握できます。
ECサイトの販促キャンペーンの効果を最大化するためには、3ヶ月程度を見込んでおきましょう。毎日の運営業務に追われながら、販促計画なしで時間のかかるキャンペーンの段取りを行うのはひじょうに難しいことです。
販促イベントを実施する際の業務フローは、次のとおり3つあります。
実施業務 | 業務詳細 |
企画 | 以下の項目を決定し、販促イベントを企画する ・販促イベントのターゲット |
準備 | 販促イベントに必要となる以下を作成する ・広告バナー |
告知 | 販促イベント実施日の少なくとも1ヶ月前から、以下の手法を参考に告知をスタートする ・メルマガ |
ECサイトの運営が成功する販促計画の立て方と業務の進め方
ここではECサイトの販促計画の立て方の基本をおさえ、販促計画とあわせて計画したい業務の進め方を見ていきましょう。
- 季節や記念日など年間イベントを把握する
- 商品の仕入れ・開発を検討する
- 商品を定価販売とセール販売に仕分ける
- 販促用の特設商品ページおよびLP作成
- 利用する広告媒体を決める
1. 季節や記念日など年間イベントを把握する
販促計画は年単位で作成することが大切です。そこで、まずは認知度の高い伝統的な年中行事はもちろん、様々な企業や団体がPR目的で制定した記念日を把握しましょう。年間の販促イベントスケジュールは、季節や記念日をベースに組み立てると効果的です。
「いい夫婦の日」など広く浸透されているものからまだ知られていないものまで、年間を通じて1,000を超える記念日があります。自社の商材のイメージに合った記念日を探してみてください。
全体的な計画があれば販促に関する予算組みが事前に可能になり、広告に資金を投入できる時期と節約すべき時期が明確になります。年間の販促計画を立てると仕入れや商品企画の検討材料のほか、販促イベントの効果を検証する材料が手に入りますので丁寧に作成しましょう。
なお販促イベントの実施時期が近くなったら、年間の販促計画をさらに月単位、週単位に細分化していきます。
2. 商品の仕入れ・開発を検討する
ECサイト向けの販促計画を作成できたら、自社が抱える商材の在庫を把握します。在庫を確認したら、年間の販促イベントスケジュールを見ながら、次の点を検討しましょう。
- 仕入れるべき商品
- 新たに開発すべき商品
年間の販促計画を立てておくことで、商品を準備する資金計画も立てやすくなります。
3. 商品を定価販売とセール販売に仕分ける
仕入れるべき商品や新たに開発すべき商品を把握できたら、販促計画を元に定価販売する商品とセール販売する商品を販促イベントごとに割り振りしましょう。販促計画を立てた段階で、シーズンニーズがあるため定価販売する商品とシーズン落ちのためセール販売する商品を決めておくというわけです。
あらかじめ商品群が定価販売とセール販売に仕分けられていると、販促計画どおりに商品の価格を設定すれば良いため、ECサイトの運営業務をスムーズに進めやすくなります。
4. 販促用の特設商品ページおよびLP作成
年間の販促計画を元に、ECサイトの特設商品ページやLP作成の計画も立てておくことが大切です。販促の方向性が定まっていないと、商品ページやLPの作成は大仕事になります。
販促計画を立ててあれば、販促イベント開催時に目玉となるセール販売商品と定価販売の商品の構成で悩むことはありません。ユーザーを誘導したい商品が明確であれば、商品ページやLPを作成しやすくなります。
LPの作成時期もあらかじめわかるので、余裕を持ってアウトソーシングできるようになるでしょう。販促計画を元にフリーランスへ明確な指示を出せるので、より販促効果の高いLPに仕上がります。
5. 利用する広告媒体を決める
販促計画を立てる際に重要となるのが、販促イベントの告知に利用する広告もあわせて選定しておくことです。そもそも販促とは、商材を魅力的に見せユーザーの購買意欲を喚起することですが、気をつけていないと広告を出すことが販促イベントの主体になる事態が起こりえます。
そこで広告ありきの施策を防ぐためにも、販売計画でユーザーを誘導する商品を選定した上で、広告施策を決定しておくことが大切というわけです。選定した商材にあわせて、集客のためのWebマーケティングを実施しましょう。
大手のECモールに出店している場合には、ECコンサルタントに集客の相談ができます。Webマーケティングの知見をもつフリーランスに相談するのも1つの方法です。いずれの相談方法でも、商品主体に留意して自社の商材に適した広告施策はどれなのか相談すると良いでしょう。
ECサイトの売上アップに役立つ6つの販促手法
ここでは「特集」「セール」「キャンペーン」など、ECサイト内で実施する販促イベントに役立つ販促手法6つご紹介します。
- 割引(期間限定、数量・回数限定)
- クーポンの発行
- シークレットセール
- 早期割引
- 送料無料までのレコメンド機能
- ID決済
1. 割引(期間限定、数量・回数限定)
「割引」はおトク感がダイレクトにユーザーに伝わるので、売上アップにつながりやすい販促手法です。割引は、さらに次のよう細分化できます。
- 期間限定(「00月00日23:59まで!」「夏季・冬季限定」など)
- 数量限定(「先着◯セット限定」「1日◯食限定」「在庫限り!」など)
- 回数限定(「初回購入限定」など)
- ◯%割引(「最大◯%割引」を掲げたECサイト特集ページへ誘導)
いずれの手法にも共通するのは、「今だけ」「滅多にないチャンス」「すぐに売り切れてしまうかも」といった商品の希少価値を高めていることです。希少価値を高めることで、ユーザーの購入意欲を喚起します。
2. クーポンの発行
クーポンの発行とは、自社のECサイトで購入したばかりのユーザーや初めて利用するユーザーなどにクーポンを発行する販促手法です。ECサイトの店頭では、値引きが表示されません。また付与されたクーポンがチェックアウト時に使用されなければ、ショップ側はクーポンを獲得したユーザーに対して割引する必要がありません。
クーポンを獲得していないユーザーには安売りしている印象を与えずに、基本的には定価販売のイメージを保ちつつ、販促のターゲット層にだけクーポンを付与する手法です。自社の販促戦略に応じてユーザーごとに異なるクーポンを配布することもできます。
クーポンには有効期限が設定されていることが多いことから、獲得したユーザーは期間内に使わないと損をする感覚に陥りやすく、購買行動につながりやすい手法です。
3. シークレットセール
既存顧客をリピート顧客に育てたい場合に、役立つ販促手法がシークレットセールです。シークレットセールでは招待客のみがおトクな価格で購入できるため、自社ブランドがすでに広く認知され確立されている場合には特別感を演出できます。
既存顧客を招待する方法は、メルマガ配信が有効です。お知らせが届いたメルマガ会員のみが、シークレットキャンペーンの特設ページへ案内され、一般向けセールよりもおトクな割引率が適用されるようにします。
4. 早期割引
早期割引は、クリスマスケーキやおせち料理など季節商品の予約で使われることが多い手法です。予約早割を打ち出すことで、シーズン到来により注文がピークを迎える前に販売します。同じように季節商品の販売を手がける競合他社に対して、先手を打つために使われる販促手法です。
5. 送料無料までのレコメンド機能
送料を顧客に請求する販売手法を採用しているECサイトでは、「注文合計金額が◯円以上、送料無料」といった販促手法が売上アップに有効です。「送料無料までのレコメンド」機能が搭載されていれば、活用すると良いでしょう。ECサイトのユーザーはチェックアウト時に「あと◯円購入すれば、送料が無料になる」と確認できることから、「送料を支払うくらいならもう1点購入しよう」と動機付けされ客単価のアップが見込めます。
送料無料は、ターゲット層を設定する必要がありません。全てのユーザーに適用されるサービスなので、幅広いターゲットに対して効果のある販促手法です。
なおレコメンド機能は送料だけでなく、ユーザーと関連性の高い商品やピックアップ商品を自動表示する機能が搭載されている場合もあります。ユーザーと親和性の高い商品が表示されることで興味が深まり、売上が向上する可能性がありますので、取り入れると良いでしょう。
6. ID決済
オンラインショッピングは日常生活の一部になりつつありますが、それでもECサイトでクレジットカード情報を入力することにためらうユーザーは一定数存在します。
そこで導入を検討したいのがID決済です。ユーザーは日頃から利用している大手サービスの会員IDでログインすることで支払いができるようになるため、クレジットカード情報をECサイトで入力する必要はありません。
代表的なID決済は次のとおりです。
- Amazon Pay
- PayPay
- 楽天ペイ
カゴ落ちを防ぐためにも、幅広い決済手段を提供することも販促の一環と言えるでしょう。
販促計画を立てて販促イベントを成功させよう
販促計画を今まで立てていなかったEC事業者の方は、早急に年間の販促計画を立てるようおすすめします。ECサイトの運営業務は多岐にわたるため、業務を効率よく運営するためにも販促計画は重要です。
その上で、広告ありきではなく商品ありきに留意して販促イベントを企画します。今回ご紹介した販促手法も考慮して、販促イベントを成功させましょう。
