中国EC市場は、近年ますます拡大傾向にあります。購買力の高い中国の消費者に向けて、自社商品を販売する方法についてお探しの方も多いでしょう。
本記事では、越境ECサイトの構築をご検討中の方に向けて、中国のEC市場の特徴、商習慣、EC展開する方法についてご紹介します。Shopifyで中国向けに自社ECストアを運営する際の施策について知りたい海外販売担当の方はぜひ参考にしてください。

目次
中国のEC市場の5つの特徴
ここでは、中国で海外販売を行う前に知っておきたい5つの特徴をご紹介します。
中国のEC市場規模は拡大中
ジェトロが取りまとめた中国EC市場のレポートによると、中国は今や世界最大のEC市場です。中国国家統計局などの調査によると、2020年の中国におけるEC小売の総額は前年比10.6%増の11兆7,601億元に達しました。日本円に換算すると(1元=約16円)、約188兆1,616億円です。
世界的な感染症の影響で、実店舗からEC市場での消費に大きくシフトしたことから、小売総額に占めるEC小売額の割合は30%まで拡大しました。2021年は前年比21%の成長が予想されており、中国のEC市場は引き続き拡大傾向にあります。
インターネットの利用はモバイル機器中心
中国ではインターネットが急速に普及していることから、EC通販の利用者数も増加しています。中国のインターネット利用者の99.7%が、PCではなくモバイル機器を利用している点は特徴的だと言えるでしょう。
2020年12月時点で中国におけるインターネットの普及率は70.4%、インターネット利用者数は9億8,899万人に達し、そのうち79.1%がEC通販を利用しています。
中国で越境ECを利用するターゲット層と消費傾向
中国で越境ECを利用するメインユーザーは、1・2級都市在住の月収5,000元(日本円で約8万円)以上、30歳以下の若年層です(2019年)。基本的に、中国で越境ECを利用するユーザーは「正規品」「ブランドと品質」を重視しています。ターゲット層ごとの商品選定の傾向は、次のとおりです(アリババジャパン調べ)。
- 中間所得層:安全と品質にこだわる
- 若者層:KOL(キー・オピニオン・リーダー)という名前で中国において定着しているインフルエンサーやトレンドの影響を受けている他、ライフスタイルへのこだわりや新しい体験を求めている
高品質で知られる日本製品は、中国人消費者から高い評価を得ています。後述する「W11期間」の越境ECモール「天猫国際」の国・地域別商品取引額ランキングで、日本製品は5年連続で1位を獲得しました(アリババグループ調べ)。なお、2020年に天猫国際は驚異的な成長を見せ、前年比の伸び率が高かった商品カテゴリーは以下のとおりです。
- マタニティ・ベビー用品(妊婦用のサプリメントやケア用品)、食品・飲料:2,000倍以上
- 美容関連商品(フェイスパック、肌ケア・毛穴ケア、美白・抗酸化機能を持つ化粧品):約52倍
- 医療機器・健康食品:約21倍
中国の消費者向けEC事業の販促戦略は大規模なセール
中国におけるEC事業の販促戦略は、大規模なセールです。そのため中国におけるEC通販では、頻繁に開催されるバーゲンセールや祝日に合わせた在庫管理が必要となります。
中でも最大のECセールは、独身の日を祝うイベントの1つ「W11期間」です。例えば、次のような祝日でバーゲンセールが行われています。
- 3月8日(婦人の日)
- 6月18日(618 セール)
- 11月11日(W11)
中国の消費者の間で人気の決済方法
越境ECを利用する中国の消費者が好む主な決済方法は次のとおりです。コンバージョン率を上げるためにも、中国の消費者にとって馴染みのある決済方法を導入するようにしましょう。
- 第三者決済:支払宝(アリペイ)、銀聯(ユニオンペイ)、微信支払(WeChat Pay)
- ネットバンキング:銀聯カードなどのデビットカードやクレジットカード
- クイック支払い(アカウントに金融機関のカード番号を紐付けパスワード入力で決済する)
なおShopifyでは、SBペイメントサービスを導入すれば支払宝(アリペイ)が使えます。
中国の消費者向けECを展開する方法は大きく2種類
ここでは、中国の消費者向けにEC通販を展開する2種類の方法をご紹介します。
中国向け越境ECは「保税区モデル」と「直送モデル」から選ぶ
中国向け越境ECを行う際には、「保税区モデル」と「直送モデル」の2つのモデルから選びます。ここではそれぞれの概要とメリット・デメリットをご紹介しましょう。
モデル | 概要 | メリット | デメリット |
保税区モデル | ・商品の保管場所は中国政府指定の保税区内にある保税倉庫 ・受注があれば、保税倉庫から出荷・通関・検疫を経て中国国内の消費者へ配送する | ・商品を一括で保税倉庫まで輸送でき、輸送コストを軽減できる ・リードタイムを短縮可能 ・安定した通関手続きを確保できる | ・倉庫保管料などが必要 ・商品に賞味期限 ・使用期限がある場合、期限切れ商品の廃棄処分コストがかかるなど在庫リスクになる ・返品された商品は保税倉庫に戻せない。返品用倉庫を別に設ける必要があり、再販売は不可 |
直送モデル | ・受注後に日本もしくは海外の倉庫から出荷する ・通関/検疫を経て、中国国内の消費者へ配送する | ・中国保税倉庫に保管するといった工程・手間・コストを削減できる ・在庫リスクが低い ・新商品の試験的な販売ができる | ・リードタイムが長く、注文後に消費者の手元に届くまでに時間がかかる ・「行郵税」がかかる。費用の増大や通関時間の長期化などの可能性がある ・返品が発生すると中国から海外向けになるため、国際物流費用・運送 |
中国国内でのEC販売(一般貿易型EC販売)とは
一般貿易型EC販売とは、すでに中国国内で現地法人があり、実店舗を構えている企業向けの方法です。中国国内の輸入者が、海外に拠点のある販売者との間で貿易手続きを行い、中国国内のECモールやECサイトで商品を販売します。商品の保管場所は、一般貿易倉庫です。
中国の2大越境ECモールの特徴とメリット・デメリット
天猫国際や京東国際などは越境EC専門のプラットフォームなので、中国で現地法人を持たない日本企業でも出店できます。出店する方法は、次の3つです。
- 越境ECプラットフォーム内に自社のフラッグシップ・ショップを出店
- 越境ECプラットフォーム内にある他社のフラッグシップ・ショップ向けに卸売する
- 越境ECプラットフォームの直営店に販売する
「越境ECプラットフォームの直営店に販売する」ケースの出店方法は、アリババに卸売をして天猫国際で販売する「天猫国際官方直営モデル」やアリババの海外倉庫を利用し天猫国際上のTOFストアで販売する「天猫国際海外直購モデル」などのことです。
ここでは、中国の2大越境ECモール「天猫国際」と「京東国際」の特徴とメリット・デメリットをご紹介します。いずれも品揃えが豊富な総合型ECモールで、集客力は高く消費者からの信頼が厚いのも特徴です。
ではそれぞれについて見ていきましょう。
中国における越境ECモール | 特徴 | メリット | デメリット |
天猫国際(Tmall Global) | ・アリババ傘下 ・中国最大規模の越境ECプラットフォーム ・中間所得層や30歳以下の若年層がメインユーザー | ・出店基準を厳しくすることで、消費者に安心と信頼を提供。偽物を排除し、国内外で信頼度が高い | ・天猫国際としてブランドを確立しているので、初期費用や年会費など京東国際よりコストがかかる |
京東国際(JD Worldwide) | ・デジタル製品や家電に強みがある ・中国最大のSNS「WeChat(微信)」を運営するテンセント(Tencent)とパートナーシップを結んでいる | ・独自の物流ネットワークを構築しており配送スピードが速い | ・天猫国際よりシェアが低い |
本格的な中国向け越境ECならShopifyで自社構築がおすすめ
重要な販売チャネルとして海外販売を位置付け、本格的に育てたいなら「自社構築・自社運営」が向いています。自社商材が中国の消費者の間で知名度があれば、Shopifyで自社ECサイトを構築し運営するのがおすすめです。
越境ECサイトを自社で構築・運営するメリット・デメリット
自社構築・自社運営を行うメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
・自社の舵取りで海外販売できることから、ブランド訴求力が高い ・安定運用フェーズに乗りさえすれば、利益率が高い | ・リソースを確保する必要があり、費用・工数の負担が大きい ・集客などのマーケティング施策や、バーゲンセールなど販促施策などは別途自社内で企画する必要がある |
自社ECサイトのブランディングで重要な役割を果たすSNS
Shopifyを活用して自社ECサイトを立ち上げたら、中国の消費者の興味・関心を喚起するためにも、ターゲットの属性に最適なSNSで自社商材について積極的に情報発信することが大切です。中国のEC市場では、SNS上の口コミが商品の売れ行きを大きく左右しています。
中国でSNSを運用する際には、言語の問題があります。中国事情に詳しいフリーランスの知見や語学力を活かしながら試行錯誤すれば、中国のSNS事情を自社で把握できるようになるでしょう。
以下は、中国のマーケティングで重要な役割を果たしている主要なSNSです。
SNS名 | 概要 |
微信(WeChat) | ・中国大手IT企業のテンセント(Tencent)が運営するLINEのような機能を搭載したメッセンジャーアプリ ・微信支払(WeChatPay)も搭載しており決済や送金も可能 |
WeChatミニプログラム | ・WeChat内で閲覧・利用できるアプリ内アプリ ・他のアプリを開かなくてもWeChatミニプログラム内で幅広いサービスを利用できるため膨大なユーザー数を獲得している |
新浪微博(Weibo) | ・中国版Twitterとも呼ばれるモバイルやポータルサイトなどで閲覧可能なミニブログ ・アリババグループの子会社から出資を受ける |
抖音(Douyin) | ・2016年9月に正式にリリースされ、バイトダンス(ByteDance)により開発運営されているモバイル向けのショート動画アプリ ・翌年にリリースされたのが海外版アプリの「TikTok」 |
小紅書(RED) | ・口コミと体験談が集まるソーシャルコミュニティ ・アマゾンとインスタグラムを融合させたような機能を持ち「ソーシャルEC」と呼ばれる |
快手(Kuaishou) | ・モバイル向けのショート動画アプリ ・テンセント(Tencent)から出資を受け2020年5月末には京東(JD.com)との提携を発表 |
ビリビリ動画(bilibili) | ・ニコニコ動画とYouTubeの要素を含む ・若者に愛用されている |
なおアリババとテンセントはビジネス上のライバル関係にあります。例えばテンセントが出資しているSNSではアリババが運営しているECモールの天猫と連携しづらいといった特徴があるので知っておきましょう。実際にWeChatミニプログラム内ではアリババ傘下の支払宝(アリペイ)が使えません。
越境ECを始める際にShopifyで対応できること・自社で取り組むこと
Shopifyなら、海外販売用のECサイトを構築する上で次のような対応が可能です。
Shopifyで対応できること | 特徴 |
多言語に対応 | ・50の言語と130ヶ国以上の通貨に対応 ・ShopifyアプリでECサイトをターゲット国の言語に自動翻訳させたり、設定画面で翻訳済みのコンテンツを直接入力したりすることも可能 ・カート画面やストアの基本となるような箇所は、言語設定をすれば自動でターゲット国の言語に変換可能 |
多通貨に対応 | ・自動でレートを変換可能 |
100種類以上の決済方法に対応 | ・サイト開設時からPayPalを利用可能 ・Shopifyペイメントから仮想通貨の決済まで、100種類以上の決済方法から選べる |
海外配送の手配がラクに | ・送料の設定、関税や税金の計算、送り状やインボイス作成などの業務が簡単にできる ・初期設定で20ヶ国に対応した発送完了時などのメール通知テンプレートを利用できる |
拡張性が高くグローバルな変化に対応できる | ・何千ものShopifyアプリが日々進化しており、スピード感をもってグローバルな変化にも対応できる |
自社で取り組むべきことも多くあります。商品の表示など、ターゲット国の消費者に好まれるECサイトのUIおよびUXを検討することが大切です。現地の実情に合ったカスタマーサポートなど、ECサイトの運営を最適化させましょう。
中国であれば集客の施策はSNS抜きには語れません。ニーズの高い決済方法も現地の商習慣に合ったものを選ぶ必要があります。広告法などの禁止項目を把握するほか物流・法律・税制などの最新情報も入手しておくことが大切です。
自社商材の知名度が高いならShopifyで越境ECがおすすめ
Shopifyを活用し中国向けの自社ECサイト構築・自社運営は、各国の事情に通じた専門知識が必要で、運用の負担も大きくなります。しかし利益率の高い手法であることから、自社商材の知名度が中国で高いならおすすめです。
知名度がまだ低くても、日本市場が冷え込んだ場合のリスクヘッジとして本格的に海外販売に取り組むなら、フリーランスの知見を活用して活路を見出すのも1つの方法と言えるでしょう。
