ECサイトを運営にはASPやクラウド、フルスクラッチなどさまざまな仕組みを利用できるために、どのように自社ECサイトを構築すべきかお悩みの人も多いのではないでしょうか。
本記事ではクラウドECにフォーカスして、クラウドECの概要や他のEC形態との違い、メリット・デメリットについて解説します。クラウドECを選ぶときのポイントや、人気のクラウドECサービス5つを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

目次
クラウドECとは
クラウドECとは、ECサイトを運営するための機能をクラウド上で提供しているサービスのことです。商品の販売や在庫管理、コンテンツ編集など、ECサイトを構築・運用するために必要な機能を、外部企業が提供するプラットフォーム上で利用できます。
インターネットを通じてシステムが定期的に自動アップグレードされるため、利用者側がシステムの保守・点検を行う必要もありません。クラウドECは非常にコストパフォーマンスが高いサービスといえるでしょう。
クラウド形態と他のEC形態との違い
クラウドECと他のEC形態の相違点について下記の表にまとめました。
項目 | クラウドEC | ASP | ECパッケージ | フルスクラッチ |
初期費用 | 500万円~ | 10~30万円 | 600万円~ | 1,000万円~ |
月額費用 | 数十万円~ | 数万円~ | 数十万円~ | 数十万円~ |
導入期間の目安 | 3ヶ月~ | 1ヶ月~ | 3ヶ月~ | 1年~ |
セキュリティ性 | 〇 | 〇 | △ | △ |
カスタマイズ性 | 〇 | △ | 〇 | 〇 |
連携機能 | 〇 | △ | 〇 | 〇 |
アップデート機能 | 〇 | 〇 | △ | △ |
おすすめの企業 | 費用対効果を重視する企業 | コストをできるだけ抑えたい企業 | 自社サーバー上でECサイトを運営したい企業 | 自社独自のシステムを構築したい企業 |
ASPは、インターネット上で提供されるECサイト構築のプラットフォームですが、クラウドECと比べてカスタマイズ性や外部ツールとの連携機能が低くなっています。サーバー機能も不足しており、一時的に大量のユーザーがサイトにアクセスすると、動作が重くなったりサーバー落ちしたりする可能性があります。
ECパッケージは、ECサイトの構築や運用に役立つ機能をパッケージングしているソフトウェアです。利用者のニーズごとに必要な機能を追加していくため、クラウドECよりも運用するまでの期間が長くなります。個別にシステムを構築するため、インターネット上でシステムアップデートすることもできません。
フルスクラッチはECサイトの目的に合わせて、必要なデザインや機能性を一から構築する方法です。ゼロからソフトウェアを開発するため、クラウドECに比べて多額の初期費用がかかります。導入期間も最低半年から1年程度と長期に及びます。
クラウドECにおける6つのメリット
クラウドECには具体的にどのような利点があるのでしょうか。メリットを6つご紹介します。
1. 費用対効果が高い
クラウドECでは必要に応じて機能を追加できるため、費用対効果の高いECサイトを構築できます。
ECサイトは最初から必要な機能を網羅しようとするほど、開発コストが大きくなりがちです。特に新規事業の場合は、ECサイト運営中にトラブルが起こることも多く、開発コストをかけたわりには費用対効果が悪くなることも多くあります。
先の見通しが立ちにくい状況では、クラウドECのように初期投資額を抑え、必要に応じて機能を追加できるサービスを利用する方がよいでしょう。
2. 高度なセキュリティのもとECサイトを運営できる
クラウドECでは、常に最新のセキュリティ体制のもとでECサイトを運営できます。パッケージ型やフルスクラッチ型のように、最新のウィルスやマルウェア情報が公開されるたびに、セキュリティ体制を見直す必要がありません。
ベンダー側が最新のセキュリティ体制を常に維持してくれるため、システム保守・メンテナンスに関する担当者の負担も軽減できます。
ECサイトは顧客や社内の機密情報を数多く取り扱うため、高度なセキュリティのもと運営する必要があります。セキュリティが不足しているサイトだと、情報漏えいが発生しやすく顧客からの信頼を失う可能性も高まります。
3. ECサイトの規模や機能性をカスタマイズできる
クラウドECには、アクセス数に応じてサーバーを強化したり、既存の社内ツールと連携したりできるカスタマイズ機能が豊富に用意されています。フルスクラッチには及ばないものの、ASPに比べるとある程度自由度の高いECサイトを構築できます。
4. 常に最新技術を利用してECサイトを運営できる
インターネットの世界は移り変わりが早く、1年ごとにさまざまな新しいサービスやソリューションが生まれるものです。そのためパッケージ型やフルスクラッチ型のように手動でシステムアップデートするものだと、数年後には技術的に他のECサイトと大きな差がつく可能性があります。
必要な機能を追加したりシステムを改修したりするたびに、多額の費用が発生します。
クラウドECはベンダー側が自動でシステムアップデートしてくれるため、常に最新の技術環境でECサイトを運営できます。社内人材が足りなくなり、システムの保守メンテナンスができなくなることもありません。
5. 自社でインフラを用意する必要がなく導入しやすい
クラウドECでは、ECサイトの運営に必要な機能をすべてクラウド上で利用できます。ベンダー側が自社の目的や要望に応じて必要な機能を実装してくれるため、自社で専用のインフラを用意する必要がありません。専門スキルや知識をもった社内人材がいないときにもおすすめです。
フルスクラッチ型やパッケージ型では、最初に必要な機能を網羅し専用のインフラを構築する必要があります。ベンダー側がサポートしてくれる可能性もありますが、基本的には社内人材でシステムの保守・点検などを行う必要があるでしょう。
6. ECサイトの運営だけに集中できる
クラウドECではベンダー側がシステムの管理を行ってくれるため、ECサイトの運営だけに集中できます。パッケージ型やフルスクラッチ型のように、社内でECサイトのサーバーを監視したり、最新のセキュリティに対応したりする必要がありません。
クラウドECのデメリット
クラウドECは費用対効果が高い便利なサービスですが、デメリットも存在します。例えば多くのクラウドECはベンダー側がシステムのソースコードを保有しているため、自社でメンテナンスや保守管理したい企業には不向きです。
初期費用は最低でも500万円ほど必要なため、ある程度予算に余裕のある企業でないと資金繰りに苦労する可能性があります。また、ECサイトの開発コストが会計上経費として計上されるため、システム開発費を自社資産として扱いたい企業にも向いていません。
クラウドECサービスを選ぶときに意識したい5つのポイント
クラウドECの特徴や機能性は、製品によってさまざまです。クラウドECを選ぶときに意識したい5つのポイントについて詳しく解説します。
1. 自社の予算規模が合っているか
ほとんどの企業では、ECサイトの構築・運用のために予算が決められています。そのためECサイトを運用する際は、自社の予算規模に応じたサービスを利用することが大切です。
年商数億円規模の場合は、初期費用として数百万円払うことも問題ない可能性が高いので、クラウドECを利用するとよいでしょう。年商数十億円規模の場合は、クラウドECよりもフルスクラッチの方が自社の目的に合ったECサイトを構築できるかもしれません。
年商が1億円に満たない場合は、初期費用や月額コストが予算を圧迫する可能性があるため、クラウドECよりも安価なASPを利用したほうがよいでしょう。
2. 自社の目的とサービス内容が合っているか
ECサイトを構築する際は、自社の目的に応じた適切な機能やサービスがあるか確認しましょう。例えばすぐにECサイトを構築したい場合は、初期費用が安く導入期間も短いASPがおすすめです。
システム管理を他社に任せてECサイトの運営だけに集中したい場合は、クラウドECの方がよいでしょう。カスタマイズ性能の高さを重視する場合は、クラウド型に加えてパッケージ型も選択肢に入るかもしれません。
EC サイトの構築サービスは、自社の目的達成のために最適なものを選んでください。
3. 自社のECサイト運営体制と合っているか
ECサイトをどのように運営するかで、最適なサイトの構築方法が異なります。例えばシステム管理を他社に任せたい場合は、クラウドECやASPのように、社内に専門的な人材がいなくてもECサイトを運営できるサービスがおすすめです。
システムや機能をすべて自社仕様にしたい場合は、大規模な予算を組んでフルスクラッチ型にする方がよいでしょう。自社独自のシステムをある程度構築したい場合は、パッケージ型の方がよい場合もあります。クラウドECの導入は、自社がどのようにECサイトを運営したいのかを把握した上で決めましょう。
4. ベンダーのサポート体制が充実しているか
クラウドECは、ベンダーによってサポート体制が異なります。自社の目的や状況に応じて適切にサポートしてくれるところを選びましょう。例えばECサイトの運営経験がない場合は、導入前はもちろんのこと、導入後も電話やメールなどですぐに問題を解決できることが大切です。
ECサイトの運営を軌道にのせたい場合は、マーケティングやコンサルティングサービスがあるところをおすすめします。
5. サーバーやシステムが安定しているか
クラウドECは、中長期的に安定してECサイトを運営できるかを重視しましょう。ECサイトの運営途中でサービスが終了すると、商品の売り上げや今まで培ってきた顧客からの信頼が一気になくなります。
ある程度知名度のあるサービスでも、途中で倒産する可能性はゼロではありません。そのためクラウドECを導入する際は、ベンダーの事業規模や経営理念、過去の成長率などをもとに、安定したサイト運営ができるか確認しましょう。
人気のクラウドECサービス5選
選び方のポイントがわかったところで、おすすめのクラウドECサービスを5種類ご紹介します。
1. メルカート
メルカートは、サイト構築やマーケティング、集客支援などのサポート体制が充実しているクラウドECです。 ECパッケージの開発・販売で得た経験をもとにシステム設計されているため、ユーザーの利便性とECサイトの業績を向上させるための機能が豊富に搭載されています。
EC業界歴21年以上のecbeingが母体となっているため、システムの安定性も問題ありません。
初期費用 | 49万円~ |
月額費用 | 5万円~ |
2. aishipR
aishipRは、スマートフォンなどのモバイル端末に最適化されているクラウドECです。レスポンシブWebデザインで設計されているため、パソコンやスマートフォン、タブレットなどのさまざまなデバイスに対応しています。
AWSのオートスケーリング機能を利用しており、ECサイトへのアクセスが急増した場合でも問題なく対応可能です。
初期費用 | 20,000~100,000円 |
月額費用 | 9,800~89,800円 |
3. ebisumart
ebisumartは、カスタマイズ性に優れたクラウドECです。ECサイトの目的や規模に応じて、ショッピングカートや在庫管理、物流連携などのEC機能を柔軟にカスタマイズできます。急なトラフィック増にも柔軟に対応できるよう環境整備されているため安定性も抜群です。
週に一度の無料アップデートにより、常に最新のシステムやセキュリティを利用できます。
初期費用 | 300万円〜 |
月額費用 | 要問い合わせ |
4. GMOクラウドEC
GMOクラウドECは、業界で人気の同社製ASP「MakeShop」をもとに改良されたクラウドECです。既存の基幹システムとの連携機能やメーカー直送機能など、BtoC・BtoB向けECサイトに必要な機能が数多く用意されています。
定期的にシステム点検やサーバー増設、バックアップを行うなどセキュリティも万全です。電話やメール、掲示板を利用した、マーケティング支援やコンサルティングサービスなども利用できます。
初期費用 | 110,000円~ |
月額費用 | 55,000円~ |
5. ec-cube.co
ec-cube.coは、国内シェアが大きい国産のクラウドECです。オープンソースのEC向けコンテンツ管理システムである「EC-cube」を簡単にカスタマイズできます。
常時SSL化や24時間不正アタック監視機能を搭載するなど、セキュリティも問題ありません。さまざまなテンプレートが用意されているため、レスポンシブデザインに特化したモバイルページなども作成できます。
初期費用 | Liteプラン:要問い合わせ、Standardプラン:70,000円 |
月額費用 | Liteプラン:要問い合わせ、Standardプラン:49,800円~84,800円 |
クラウドECは複数のサービスを比較検討して決めよう
クラウドECは、ベンダーによってサービスの内容や特徴、料金などが異なります。初期費用がある程度かかるためどうしても安さに目が行きがちですが、予算にあったサービス内容になっているか、自社ECサイトに求める機能があるか、といったことも重視しましょう。
複数のサービスを比較検討して、コスト面や費用面を総合的に判断してください。
クラウド型のメリット・デメリットを理解してECサイトの運営を成功させよう
クラウドECは、ASP型よりもカスタマイズ性や連携機能が、フルスクラッチ型やパッケージ型よりもセキュリティ性や自動更新機能が優れています。他の提供形態に比べて費用対効果が高いので、初めてECサイトを運営する人にもおすすめです。
ただしシステムを自社で管理したいときなどには不向きなので、メリット・デメリットをしっかり理解したうえで導入の可否を決めましょう。
