EC業界への参入を検討して企業や、あらたにEC担当者になったなら、業界の動向を確認しておきましょう。ECは「電子商取引」とも呼ばれ、インターネットを介した買い物などの商取引を指します。
本記事では、2021年度EC業界の特徴やトレンド、よく課題となる点などをご紹介します。加えて、今後予想される展開や知っておきたい業界予後についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

目次
EC業界の市場規模【2021年度】
EC業界の市場規模は、世界中で毎年増加し続けています。特に外出自粛の影響が大きかった2020年、2021年にはECを利用する人や機会が増え、今後も増加が予想されています。
そこで、EC業界の市場規模がどう変化しているのか、ここ数年における国内・海外それぞれの変化や、国内EC通販の売り上げランキングなどを見ていきましょう。
国内の消費者向けECは増えている
日本で電子商取引(以下、EC)が登場したのは1993年でした。1997年頃の楽天市場の登場を契機にECを利用する人が増え始め、年々増加しています。
2020年は外出自粛の影響で、日本国内におけるBtoC分野の取り引きは、旅行業界などのサービス分野では減少し、全体でも前年より微減しました。しかしサービス分野以外のデジタル分野や物販では増加しています。
しかし、ECでの売り上げは実店舗などEC以外での売り上げには及んでいません。内閣府がかかげるムーンショット目標などの影響もあり、今後もデジタル化は加速していくでしょう。それに伴いECの売り上げも増加していくことが予想されます。
EC通販の売り上げランキング
EC業界の動向を把握する上で知っておきたいのが、売り上げランキングです。2020年における国内ECモールの中で、売り上げが上位の3サービスをご紹介します。
- 1位:Amazon.co.jp
- 2位:楽天市場
- 3位:Yahoo!ショッピング
1位と2位は僅差ながら、高い伸び率があったAmazon.co.jpが首位でした。また、ECサイトにおける上位3サービスは下記の通りです。
- 1位:Amazon.co.jp
- 2位:ヨドバシ.com
- 3位:ビックカメラ.com
ECモールと同じようにAmazon.co.jpが首位で、家電量販店が上位です。また、衣料品や食品系のサイトなども上位に入っています。
世界でもEC市場の売り上げは増加している
BtoC市場におけるECの売り上げが伸びているのは、海外も同じです。経済産業省の公式サイトに掲載されているデータを参照すると、旅行やチケットの売り上げを除いたBtoCでのECの売り上げは、年々増加している様子がわかります。
大きな要因は、スマートフォンなど従来よりも安価に手に入れられるデバイスが普及したことなどです。日本だけでなく世界中でECは伸びており、それに伴い越境ECを利用する人も増えています。
EC業界のトレンド5つの特徴【2021年度】
これからEC業界に参入する場合、過去の事例を参考にするとともに、業界のトレンドを押さえておくことも大切です。例えば越境ECやSNSの活用、スマートフォン利用者の増加など、いくつかのポイントがあります。
ここでは、2021年のEC業界にどのような傾向があったのかを見ていきましょう。
1. スマートフォン利用者が増加
スマートフォンではない、いわゆるガラケーの廃止が携帯各社で次々と発表されることなどから、スマートフォンの利用者は年々増加中です。ECでもスマートフォン利用者は増えていて、ECでのスマートフォン利用率が8割を超えるという調査結果もあります。
今後EC業界に参入するなら、スマートフォンへの対応は必須と言えるでしょう。
2. ブログやSNS活用の増加
知名度が低いブランドやメーカーでも、SNSやブログからユーザーと直接つながることが可能な時代になりました。うまくWebマーケティングを行いフォロワーを増やせば、売り上げにつながりやすくなっています。
FacebookやInstagramなどは、商品の宣伝に使えるだけでなく、販売チャンネルとしても使える機能が搭載されました。
ShopifyなどSNSとの連携機能を搭載しているECプラットフォームも登場しており、高額な費用をかけずとも連携させられます。
3. DtoCへの注目
DtoC(D2C)とは「Direct to Consumer」の省略形です。メーカーが商社や卸、ECモールなどを通さずに、直接自社ECサイトで販売するビジネスモデルを指します。
ECサイトの作成において、高額な費用をかけなくてもいいECプラットフォームが登場しました。中でもASPカートなら、基本料金無料や毎月数千円程度で導入できるなど、初期費用や維持費用を抑えられます。
さらにSNSの登場で、自社でPRしやすい環境となったことから、DtoCを行う会社は多いです。
4. ID決済の普及
ID決済とは、クレジットカード番号の入力をせずとも、既存のIDやパスワードだけで決済できる仕組みのことです。
ECサイトで買い物をする際、ユーザーは店側のセキュリティ対策が信頼できないと、クレジットカード番号を入力するのが不安になります。ID決済ならクレジットカード番号を入力する必要がありません。
ID決済には下記のようなものがあります。
- 楽天ペイ
- Amazon Pay
- Apple Pay
- d払い
- LINE Pay
- PayPay
ECサイトによって対応しているID決済の種類は異なります。顧客にとっては個人情報の入力を省略でき、手間や不安を軽減可能です。ID決済は今後広がりが予想される決済方法ですので、これからEC業界に参入するなら対応を検討してみてください。
5. 越境ECの拡大
越境ECとは、ECサイト経由で海外へ向けて行うECのことです。2020年以降の渡航自粛などの影響もあり、アメリカ・中国向けを中心に、越境EC市場は急成長しています。これからEC業界に参入するなら越境ECに対応させることも検討してみましょう。
ShopifyなどASPカートなどを利用することで、高額な費用をかけずとも外国語や海外通貨に対応した海外販売チャンネルは簡単に作成可能です。
EC業界へ参入している企業によく課題とされる4つのポイント
これからEC業界に参入するのであれば、よく問題になっているポイントについても理解しておきましょう。問題点となりうるポイントを理解しておくことで、うまくいかなくても改善につなげやすいです。
ここでは、集客や購入率など、EC業界へ参入している企業によく課題とされるポイントを紹介します。
1. 集客不足
集客とはECサイトへの訪問者数を集めることで、集客に成功するとアクセス数が増えます。
ECサイトでの売り上げはアクセス数と大きく関わっており、公式は下記の通りです。
売り上げ = アクセス数 × 転換率 × 客単価
この公式からわかるように、ECサイトを開設してもアクセス数が伸びないと売り上げにはつながりません。そのため、ECサイトにおいて集客は重要です。
SEO対策やWeb広告など、集客に対する対策を行いましょう。
2. リピーターにつながらない
長期的に安定した売り上げを確保するために、リピーターが重要な役割を果たしてくれます。リピーターは定期的にサイトで買い物をしてくれますので、新規顧客を増やすようなコストをかけずに売り上げにつながりやすいです。
しかし、ECサイトには競合が多く、リピーターを獲得するのは簡単ではありません。
メルマガやクーポン発行、コンテンツ作成など再訪問につながるよう工夫して、リピーターの獲得につなげましょう。
3. 転換率が低い
転換率とはECサイトへのアクセス数に対して商品が購入される確率のことで、購入率やCVRと呼ばれることもあります。前述した売り上げの公式からもわかるように、転換率が低いと売り上げは伸びにくいです。
転換率が低いECサイトは、訪問者を満足させられるページが作成できていないことが考えられます。
顧客がよく訪問するページを充実させたり、商品ページの画像や説明文を充実させたりして、転換率を挙げられるよう対策しましょう。
4. セキュリティ対策
クレジットカード番号の流出やハッキング被害などが多いことから2021年3月に経済産業省によって、「クレジットカード・セキュリティガイドライン」が発表されています。
EC取引でクレジットカードを取り扱う場合、下記のような対策が必要です。
- クレジットカード情報保護対策
- クレジットカード偽造防止のための不正利用対策
- EC取引におけるクレジットカード情報の不正利用対策
顧客が安心してクレジットカードを使えるよう、クレジットカード取扱店であるECサイトにも、対策が求められます。
EC業界で今後予想される4つの展開
EC業界は日々進歩していて、日々対策が必要となる業界でもあります。これからEC業界に参入するのであれば、今後予想される4つの展開を理解して、事業展開していくことが、売り上げを伸ばしていく上で重要です。
ここでは、EC業界で今後どのような展開が予想されるのかについて見ていきましょう。
- 販売経路が増えていく
- コンテンツマーケティングが拡大していく
- 越境ECの増加
- 自動化ツールの発展
1. 販売経路が増えていく
これまで一般的だったのは、ユーザーがECサイトにアクセスして商品を購入する方法です。しかし、SNSにショップ機能が搭載されたことから、ネットショップでの活用が広がっています。
さらに販売経路が多様化することが予想されていて、DMやSNS、外部メディアはもちろん、実店舗とECサイトを横断するようなキャンペーンを実施する企業が増えるでしょう。
販売経路が多様化しても売り上げにつなげていくには、ブランド力の強化やチャンネルごとの連携などが重要です。
2. コンテンツマーケティングが拡大していく
コンテンツマーケティングとは、自社ECのターゲットに価値あるコンテンツを発信してファンを増やし、商品・サービスの購入につなげていく手法です。短期での効果は出にくいですが、中長期的な収益の獲得が期待できます。
これまではブログやウェブメディアを通じたコンテンツマーケティングが用いられていました。さらに範囲が拡大することが予想され、メールマガジンやSNSと組み合わせて活用する企業は増えていくでしょう。
3. 越境ECの増加
2020年以降、EC業界では越境ECが話題になることが多い状況でしたが、法律や言語、通貨など乗り越えるべき課題も多くありました。それらの課題に対応したサービスも徐々に増えており、越境ECは今後さらに盛り上がることが予想されます。
自社ECサイトを越境ECに対応させたいのであれば、世界133の通貨で販売できるShopifyなど、越境ECにふさわしいプラットフォームを選ぶことも重要です。
4. 自動化ツールの発展
ECショップを運営していても、人の手で行う工程はまだまだ多い状況でした。しかしIT化は徐々に進んでいて、自動化ツールの導入も進んでいます。
接客ツールやおすすめ機能などAIが活用されている分野も登場しました。今後も発展が進み、自動化できる部分が徐々に広がっていくことが予想されます。
これからEC業界に参入するなら知っておきたい4つのEC業界用語
EC業界では昨今よく話題となっているいくつかの用語があります。これからEC業界に参入するなら意味を理解して、戦略に取り入れていくと役立ちます。
ここでは、これからEC業界に参入するなら知っておくと役立つEC業界用語について見ていきましょう。
1. EC化率とは
EC化率とは、実店舗とECを含む全商取引の中で、ECサイトでの売り上げの割合を指す言葉です。
物販においてEC化率は年々増加していて、2020年はBtoC市場では8.08%、BtoB市場では33.5%でした。年々増加していますが半分にも達しておらず、伸びる余地があります。
2. オムニチャネルとは
オムニチャネルとは、実店舗とECサイトの情報管理を統一して、顧客へのフォローを行って、販売機会損失を防ぐための仕組みです。
会員の個人情報・受注情報・ポイント情報などのデータベースを統合することで、顧客がいつでも情報にアクセスでき、買い物に役立てられます。顧客満足度を追及しやすくなり、リピーターを増やして売り上げ増加につながりやすいです。
3. O2Oとは
O2O(またはOtoO)とは、オンライン to オフラインまたはその逆の略語です。
例えば、「スマートフォンアプリで手に入れたクーポンを、実店舗に持って行って割り引きを受ける」ということはO2Oにあたります。つまりOtoOとは、オンラインでクーポンなどを配り、実店舗の集客を目的に使う方法です。
期間限定で売り上げを伸ばしたい場合など、短期的な施策として行われます。この施策を行うためには、オンラインとオフラインのポイントデータを統合しておきましょう。
4. OMOとは
OMOとは、「Online Merges with Offline」の省略形で、「オンラインをオフラインに融合する」という意味があります。顧客がオンラインかオフラインかを意識せずにサービスを利用できるように、オンラインとオフラインを分け隔てることなくマーケティング戦略を立てていく考え方です。
例えばOMOには、スマートフォンなどのモバイル端末で、近隣で利用可能なレンタサイクルを探すといったサービスなどがあります。
OMOは広義では、オムニチャネルと違いはありません。しかし狭義でみると、オムニチャネルはデータ連携などの意味で使われることが多いですが、OMOはユーザーの体験という観点で使われることが多いです。
EC業界の市場規模はますます拡大!これからの参入を検討しましょう
今回の記事ではEC業界についてお話ししました。再度、ポイントをまとめます。
- ECでの売り上げは国内外で増えている
- 国内ECサイト・ECモールともにAmazon.co.jpの売り上げが1位
- SNSやWebコンテンツとECサイトと連携する企業は今後も増加が予想される
- まだまだEC業界には参入の余地がある
- 越境ECにも注目が集まっている
これからEC業界に参入して売り上げを伸ばしていくなら、国内での販売だけでなく越境ECへの対応も検討しましょう。自社での対応が難しければ、Web制作会社やフリーランスへ依頼するのもおすすめですので、ぜひ検討してみてください。
